25 / 580
2章 強さへの道標
023 5等級冒険者オーサンの実力の片鱗
しおりを挟む
「オラオラ休んでんじゃねぇよ走れ走れ!強くなりてぇんだろうが!迷宮で死んでから後悔しても遅ぇんだぞ!」
始めにやらされたのは走り込みだった。足腰の強化や基礎体力の向上効果が見込める、定番のトレーニングと言って良いだろう。
定番なので、確実な効果を期待できる半面、実際やらされたらめちゃくちゃきついんですけどねえええええええ!
マッドスライム狩りではジュギングのようなペースで走り回っていたけれど、今回の走りこみは、全力疾走に近いくらいの速度でのランニングだ。
喉が痛い。肺が痛い。なんか喉の奥から血の味がするぅぅぅぅぅぅ!
「走り込みの成果なんざ1日で出るわきゃねぇがな。全力に近いペースで限界まで走りこんだって経験は無駄にならねぇ。走り込みなら自分1人でも出来るんだからな。
今日の訓練を今後に繋げたいと思うなら、ぶっ倒れるまで走りやがれ!」
後ろから俺たちを追い立てながら捲し立てているオーサンは、息切れどころか汗ひとつかいていない。
くっそー!涼しい顔で好き勝手言いやがって~!
「良し、リーンは止まれ。2人が走ってる間は休んでろ。お前はまだ体が出来上がってないからな。今無理すると、逆に良くない場合もある。
お前が子供だからと馬鹿にしてるわけじゃあねぇからな」
「はっ……、はっ……、はっ……、はっ……、はっ……」
終了を言い渡されたリーンが、大の字になってぶっ倒れている。
お、俺はまだっすかね……!
10代の若者と35のおっさんを、一緒に走らせないで欲しいんですけどおおおお!
「トーマぁ!ぺース落ちてきてんぞ!お前は若くねぇんだから、意識して自分を追い込むんだよ!若者みてぇに勢いで物事こなせると思ってんのか!甘えんじゃねぇ!」
オーサンくっそうぜええええええええけど、言い返す余裕もないよおおおおおお!
俺とシンがぶっ倒れるまで走ったところで、ようやく走り込みが終った。
「毎日今の状態くらいまで、自分を追い込めとは言わねぇけどな。1人で走り込んだ時に、どのくらい甘えた考えで走りこんでるかは分かるようになんだろ。
お前らは今、自分自身を推し測る物差しを手に入れたんだと思え。自主訓練に対する意識の向上や、訓練の質も上がるはずだ」
オーサンがなんか言ってるけど、ぶっちゃけ死にそうだ。もうこのまま寝てしまいたい。
「じゃあそこでぶっ倒れてる、中年トーマの息が整うまでは休憩だ。
水飲んでも構わないが、飲みすぎると動けなくなるし、戦闘中は水分補給なんて出来ないからな。飲むにしても少し、実戦想定なら我慢しろ。トーマは飲むな」
なんか俺にだけ、妙にあたり強くないっすかねオーサンよぉ……。
「よし休憩は終わりだ。全員武器を持て。お前らの武器の扱い方を見てやるから、普段使ってるように、武器を振って見せろ。
ただし力は入れなくて良い。なるべく力を抜きつつ、いつもの動きを意識して見せてくれ。ああ、武器がすっぽ抜けないようにだけ気をつけろ。
一応全員、もうちょっと距離を取ってくれ」
次は、技術的な指導に移るようだ。力は入れなくて良いっつうか、力入らんねぇんですけどねぇ……。
石斧を振り上げようとしただけで、腕がぷるぷ「トーマ!サボってんじゃねぇ!」あーもーうっせーな!いつかぜってー泣かしてやるからなこのハゲ!ハゲてないけど!
くっそ、こんなことなら装備更新せずに、軽い棍棒持って来れば良かった……!
リーンの武器はダガー?って言えば良いんだろうか。刃渡り30センチあるかないかって感じの、小さくて軽そうな刃物だった。見るからに軽そうだ。ほんと軽そうで羨ましい。
「そうだ。その調子だ。まずは体の動かし方を覚えるんだ。今は力は必要ない。
刃物ってのは腕力より、技術のほうが大切だ。正しい扱いを覚えれば、お前でも問題なく魔物と戦えるはずだ」
なんか、リーンばっかり熱心に教えてないっすかねぇ……。
なんつって、俺だって恐らくリーンを重点的に指導するだろうな。
年齢的に一番伸びしろがあるだろうし、なにより1人になった場合に一番危険だ。
「トーマは技術的には特に言うことはねぇな。石斧なんて、全力でぶん殴りゃいいだけの話だしな」
真面目に指導しろやテメー!
「ただ将来的には、この程度の重量の武器は片手で扱って、もう一方には盾を持つなりしたほうがいいな。この程度の重量の武器に振り回されてるようじゃ先は無い。
それとどうしても、重い武器ってのは取り回しが遅く、小回りが利かない。石斧の他に、例えばリーンが使ってる様なダガーなんかでもいい。緊急時に咄嗟に扱える武器を、もう1つ身につけておくべきだな」
いきなり真面目に指導すんなテメー!
「よし、じゃあギルドの休憩室でちょっと寝てもらう。起きたら1人ずつ俺と模擬戦だ。交代で日没まで続けるからそのつもりでな。
そういえば休憩室にはベッドが2つしかないから、トーマは床で寝ろ」
「なんで俺を名指しすんだよ!」
そりゃあ2人に譲るけどさ!自分で譲るのと、オーサンに言われるのじゃ、気分的なもんがさぁ!
このおっさん、絶対面白がってんだろ!
そのくせ指導内容はまともだから怒るに怒れねぇ!くそがっ!
始めにやらされたのは走り込みだった。足腰の強化や基礎体力の向上効果が見込める、定番のトレーニングと言って良いだろう。
定番なので、確実な効果を期待できる半面、実際やらされたらめちゃくちゃきついんですけどねえええええええ!
マッドスライム狩りではジュギングのようなペースで走り回っていたけれど、今回の走りこみは、全力疾走に近いくらいの速度でのランニングだ。
喉が痛い。肺が痛い。なんか喉の奥から血の味がするぅぅぅぅぅぅ!
「走り込みの成果なんざ1日で出るわきゃねぇがな。全力に近いペースで限界まで走りこんだって経験は無駄にならねぇ。走り込みなら自分1人でも出来るんだからな。
今日の訓練を今後に繋げたいと思うなら、ぶっ倒れるまで走りやがれ!」
後ろから俺たちを追い立てながら捲し立てているオーサンは、息切れどころか汗ひとつかいていない。
くっそー!涼しい顔で好き勝手言いやがって~!
「良し、リーンは止まれ。2人が走ってる間は休んでろ。お前はまだ体が出来上がってないからな。今無理すると、逆に良くない場合もある。
お前が子供だからと馬鹿にしてるわけじゃあねぇからな」
「はっ……、はっ……、はっ……、はっ……、はっ……」
終了を言い渡されたリーンが、大の字になってぶっ倒れている。
お、俺はまだっすかね……!
10代の若者と35のおっさんを、一緒に走らせないで欲しいんですけどおおおお!
「トーマぁ!ぺース落ちてきてんぞ!お前は若くねぇんだから、意識して自分を追い込むんだよ!若者みてぇに勢いで物事こなせると思ってんのか!甘えんじゃねぇ!」
オーサンくっそうぜええええええええけど、言い返す余裕もないよおおおおおお!
俺とシンがぶっ倒れるまで走ったところで、ようやく走り込みが終った。
「毎日今の状態くらいまで、自分を追い込めとは言わねぇけどな。1人で走り込んだ時に、どのくらい甘えた考えで走りこんでるかは分かるようになんだろ。
お前らは今、自分自身を推し測る物差しを手に入れたんだと思え。自主訓練に対する意識の向上や、訓練の質も上がるはずだ」
オーサンがなんか言ってるけど、ぶっちゃけ死にそうだ。もうこのまま寝てしまいたい。
「じゃあそこでぶっ倒れてる、中年トーマの息が整うまでは休憩だ。
水飲んでも構わないが、飲みすぎると動けなくなるし、戦闘中は水分補給なんて出来ないからな。飲むにしても少し、実戦想定なら我慢しろ。トーマは飲むな」
なんか俺にだけ、妙にあたり強くないっすかねオーサンよぉ……。
「よし休憩は終わりだ。全員武器を持て。お前らの武器の扱い方を見てやるから、普段使ってるように、武器を振って見せろ。
ただし力は入れなくて良い。なるべく力を抜きつつ、いつもの動きを意識して見せてくれ。ああ、武器がすっぽ抜けないようにだけ気をつけろ。
一応全員、もうちょっと距離を取ってくれ」
次は、技術的な指導に移るようだ。力は入れなくて良いっつうか、力入らんねぇんですけどねぇ……。
石斧を振り上げようとしただけで、腕がぷるぷ「トーマ!サボってんじゃねぇ!」あーもーうっせーな!いつかぜってー泣かしてやるからなこのハゲ!ハゲてないけど!
くっそ、こんなことなら装備更新せずに、軽い棍棒持って来れば良かった……!
リーンの武器はダガー?って言えば良いんだろうか。刃渡り30センチあるかないかって感じの、小さくて軽そうな刃物だった。見るからに軽そうだ。ほんと軽そうで羨ましい。
「そうだ。その調子だ。まずは体の動かし方を覚えるんだ。今は力は必要ない。
刃物ってのは腕力より、技術のほうが大切だ。正しい扱いを覚えれば、お前でも問題なく魔物と戦えるはずだ」
なんか、リーンばっかり熱心に教えてないっすかねぇ……。
なんつって、俺だって恐らくリーンを重点的に指導するだろうな。
年齢的に一番伸びしろがあるだろうし、なにより1人になった場合に一番危険だ。
「トーマは技術的には特に言うことはねぇな。石斧なんて、全力でぶん殴りゃいいだけの話だしな」
真面目に指導しろやテメー!
「ただ将来的には、この程度の重量の武器は片手で扱って、もう一方には盾を持つなりしたほうがいいな。この程度の重量の武器に振り回されてるようじゃ先は無い。
それとどうしても、重い武器ってのは取り回しが遅く、小回りが利かない。石斧の他に、例えばリーンが使ってる様なダガーなんかでもいい。緊急時に咄嗟に扱える武器を、もう1つ身につけておくべきだな」
いきなり真面目に指導すんなテメー!
「よし、じゃあギルドの休憩室でちょっと寝てもらう。起きたら1人ずつ俺と模擬戦だ。交代で日没まで続けるからそのつもりでな。
そういえば休憩室にはベッドが2つしかないから、トーマは床で寝ろ」
「なんで俺を名指しすんだよ!」
そりゃあ2人に譲るけどさ!自分で譲るのと、オーサンに言われるのじゃ、気分的なもんがさぁ!
このおっさん、絶対面白がってんだろ!
そのくせ指導内容はまともだから怒るに怒れねぇ!くそがっ!
2
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる