異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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2章 強さへの道標

034 スクロールの相場

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 とりあえず一旦持ち帰ることにしてスクロールを受け取った。2人はあまり興味が無さそうだ。ハズレって言ってたくらいだからなー。

 まぁ分からないことは素直に聞こう。商家出身の2人に聞けば詳しい話が聞けるだろ。リーンパイセンも、売り物は見たことあるって言ってたしな。


「悪い2人とも。今日は読み書きじゃなくてスクロールについて教えて欲しい。音魔法で出来ることとか、他のスクロールの一般的な相場とか。
 俺のことをなんにも知らない子供だと思って、1から教えてくれないかな」

「うん?教えるのは構わないよ。しっかしトーマは年齢の割に変なところで世間知らずなところがあるね。トーマにも事情があるんだろうけどさ」

「まったくトーマったら何も知らないのねっ。先輩の私が居ないと仕方ないんだからー」


 俺が何も知らないのは仕方ないとして、この2人はちゃんと教育を受けたからか実際頭も良いし、知識量もなかなかなんじゃないのか?
 俺が無知なんじゃなくて、この2人が優秀な可能性、あると思います。


「よろしく頼むよ先輩。とりあえず音魔法の相場と、音魔法で何が出来るのか知ってたら教えてくれ」

「うんっ。始めに、音魔法は『発生型』の『生活』魔法だと言われてるよー。魔力を代償に音を発生させる魔法だねー。
 生活魔法なので使い方に応用は利くみたいだけど、誰かに干渉したり、攻撃にも使える様な大きな音を出したりすることは出来ないって言われてるんだー」

「そして音魔法の相場は6000リーフ、銀板6枚ほどで安定しているよ。これはスクロールとしては飛びぬけて安い値段で、音魔法の需要が如何に少ないかを物語る値段と言って良いね」


 2人はすらすらと答えてくれる。やっぱ俺が駄目なんじゃなくて、2人が優秀なんじゃねぇのかマジで。


「銀板6枚で飛びぬけて安いのか。他のスクロールの相場ってどうなってるんだ?」

「そうだね、基本的に生活魔法全般は安めなんだけど、それでも金貨を下回るものは1つもないんだ。
 音魔法の次に安いのは『設置発生型』の生活魔法である『照明』の魔法で、これもあまり需要がないはずなんだけど、それでも金貨6枚くらいするはずだよ」


 は?音魔法の次に安いスクロールが10倍の価値に跳ね上がるワケ?


「今は照明の魔導具が普及しているから、あまり必要とされない魔法なんだけどね。設置型のおかげで、迷宮で囮に使ったり、遠くへの連絡手段として使用する例があるんだよ。迷宮はどんどん暗くなっていくわけだし、迷宮の外でも夜間なら、照明の魔法はかなり遠くまで確認できるらしいからね」

「はぇ~なるほどねぇ」

「生活魔法でも日常生活に役立ちやすい『洗浄』とか『火』、『水』、『熱』なんかは金板まで行っちゃうこともあるみたい。
 そして攻撃魔法になると金板数枚の取引が当たり前、物によっては白金貨まで行ってもおかしくない。
 出回ることが少ない『治療』や『空間』魔法のスクロールなんて白金板出しても買えないだろうね。欲しいなら迷宮に潜って自力入手しか有り得ないだろう」


 う~ん、めちゃくちゃ高価すぎて、もし手に入れても使うのが怖くなりそうだ。でも売却したら次に手に入れられるか分からないっていう。

 ラストエリクサー症候群ってヤツ?俺はステータス上昇アイテムをレベルカンストしてから使おうと溜め込んで、結局使わずにクリアしてしまうタイプの人間です。


「逆になんで音魔法は需要が無いくせに、銀板6枚以下に下がらないんだ?」

「音魔法はね、魔法の練習用として買う人が居るんだよー。
 攻撃魔法は発生型の魔法が多いし、音魔法は使い方を間違えてもちょっとうるさいくらいで、あんまり危険なこともないんだー。
 お金持ちの人が子供の練習用に買ったり、いつか攻撃魔法を覚える日のために発生型魔法の扱いに慣れておきたい人とかが買ってくみたいだねー」


 練習用かよ!音魔法さん不憫すぎる……。


「音魔法を使った仕事とかはないのか?例えば遠くに居る人に声を届けたりとか、通常声が届かない距離で会話が出来るようにするとか」


 いわゆる通信手段としての使い方はないのかな?


「いくつか例外はあるんだけど、魔法って基本的にあまり遠くまで効果を届かせられないんだよ。
 それに音ってのは広がっていくものだろう?他人に聞かれたくないような情報をやり取りするのは難しいんじゃないかな。実際、そんな使い方が出来るという話は僕は聞いたことがないよ」


 通信手段として使うのは難しいと。でも、科学知識の水準が低いこの世界の認識と、現代日本で暮らしてた俺とでは、音の認識に恐らく差があるんじゃないか?


「音魔法の使い方として有名なのは、多くの人に自分の声を届けるために、自分の声を大きく増幅するというものだね。貴族の人や兵隊を指揮する立場の人が使ったりするらしいねー。
 ただ低階層でも出る割に必要としている人があまり増えないからねー。スクロールとしてはハズレって言われてるんだー」


 少なくともリンカーズの人間には全く人気がないってこった。


「なるほどなー。ちなみに2人はどうなんだ?せっかく手に入れたんだし、ハズレでも魔法を使ってみたいと思ったりしないの?」

「僕は必要ないかな。練習用といっても、将来攻撃魔法が覚えられるかは分からないし。お金を出して買う場合は、中階層くらいには潜れるようにならないと手が出ないと思う。あまり使い道のない魔法を練習したいとも思わないしね」

「私も要らないよー。魔物を怯ませたり出来るのかも知れないけど、それって一発芸でしかないしー。あんまり役に立つとは思えないんだよねー」


 2人とも全く興味ないってことは、余すことなく伝わってきた。


「2人とも必要としてないことは分かった。ならこれ俺が貰っても良いかな?銀板6枚が相場だと想定して、俺から3枚払うからさ」


 俺は魔法に興味津々だからな!

 それに以前読んだ『リンカーズマニュアル』に、強力な魔法ほど制限が強くかけてあると書いてあったはずだ。
 リンカーズの住人に全く必要とされてないほどの弱い魔法であるならば、他の魔法と比べて様々な使い方を開発できる可能性があると思うんだよね。


「トーマが欲しいなら構わないよ。僕たちが銀板3枚貰えるなら、僕にとっては売却したのと変わりないし」

「私も構わないけど、銀板3枚も払っちゃってだいじょぶー?明日は訓練だし、明後日は動けなくなっちゃうんじゃないのー?」


 ぐあ、リーンパイセン嫌なこと明日の訓練思い出させないでくれよぉ。


「2人のおかげで資金には余裕があるよ。2日間収入がなくても多分大丈夫だ。
 あー、あと知ってたらで良いんだが、スクロールの使い方も教えて貰えるかな」


 銀板3枚を支払って、正式にスクロールが俺のものとなる。
 
 俺はついに異世界で魔法を手に入れたのだ!出費は痛いけど、半額になったと思えば安いってもんだ。


 これでようやく俺も、ファンタジーに片足くらいは突っ込めるかな?
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