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3章 別れと出会い
050 新しい先生
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「ああトーマさん。アンタの依頼を受けてくれる人が来たんだよ」
開口一番ポポリポさんに告げられる。毎日商工ギルドで確認するつもりで居たんだが、思いのほか早く依頼を受けてもらえたらしい。
「それでアンタ、詳しい待遇は応相談で依頼出しただろう?出来れば実際に依頼を受ける前に、アンタと会って交渉したいって話なんだよ。
今日の陽天の報せの頃に、またこっちに顔を出してくれる話になってるんだ。トーマさんの都合はどうなってるか教えとくれ」
「それなら陽天の報せに俺も顔出すよ。商工ギルドでなにか都合の良い場所って用意してもらえたりする?」
急いで回れば帰ってこれるだろう。最悪ホムロのところに顔を出すのを後回しにすれば良いし。
「言ってくれれば個室を貸せるよ。銀貨1枚かかるけどね。ただ依頼内容的にそこまでする必要があるのかって思うけどねぇ。まぁすぐ用意できるから、必要ならいつでも言っておくれよ」
予約とかは要らないらしい。まぁ商工ギルドって言うくらいだし、商取引で個室の使用率は高そうだし、常に用意はしてあるんだろうな。
今日は時間制限もあるし、出来れば面会の前に補修再生に武器を出しておきたいから急がないと。
6階層に着いてからも小走りで移動し、索敵も殲滅も効率と速度を重視。まぁ普段だって効率を重視してやってるんだけども。
オーサンとの訓練も3度経験したし、これでも毎日探索上がりにギルドで走り込みと訓練も続けている。おかげさまで持久力は、リンカーズに来たばかりの頃とは比べ物にならないくらい身についた自覚がある。
転移直後なんて、転移場所からベイクまで歩いてくるだけで息あがってたな……。日本にいたころは運動なんてロクにしてなかったからなぁ。
早めのジョギング、ランニングに近いペースで動き回り、とにかく敵を探しては倒していく。
こうなってくると正直石斧が邪魔だな。魔装術さえあれば手放せるんだけど、まだちょっと手放すには力が足りないよな。
正確な時間は分からないけど、前回よりかなり速いペースで荷物が埋まった。体感時間でしかないけど、陽天の報せにはかなり余裕があるはず。
冒険者ギルドで買い取り中に一休み。オーサンに確認したところ、やっぱり陽天の報せはまだ鳴っていない。勝利!
ホムロのところにも顔を出して短剣をメンテに出す。
商工ギルドについてもまだ陽天の報せには早かったようだ。
「おやトーマさんもう来たのかい。まだ結構あると思うよ。
まぁ時間を守れる人ってのは商人に向いてるね。商工ギルドとして歓迎したい心がけだねぇ」
なんかポポリポさんが勝手に感心している。
「それじゃ待ち人が来たら案内してあげるから、トーマさんはロビーで待ってておくれ」
とのことなので、案内はポポリポさんに任せてロビーで休むことにした。
それにしても、今回の走り込みながらの迷宮探索は結構良いかもしれない。ソロなので他のメンバーに気を使う必要もないし、今のところ6階層の戦闘で脅威を感じることもない。
足腰のトレーニングにもなるし、なにより今日のペースで回れるなら1日3回ペースを取り戻せそうだ。
今のところ、ダンジョンといえば必ず付いてくる、トラップのようなものはない。
オーサン曰く、そういう悪辣な仕掛けは、10階層を越えてから急激に増えてくるらしい。
10階層なんて当分先のような気がするけれど、4階層から早かったからなぁ。俺が思ってるよりもずっと早く到達する可能性はある。
「トーマさん。依頼の人が来たわよぉ」
考え事をしていたら結構時間が経っていたようだ。陽天の報せが鳴ったのにも気付かないとは、気を抜きすぎだったな。
ポポリポさんが俺の依頼を受けてくれる人を案内してくる、ってあれ?
「トーマってやっぱりアンタかい」
「え、依頼を受けてくれるのってユリンさんなの?」
これは予想してなかったな。でも宿の仕事をしつつ俺の教師役なんて可能なんだろうか?
「なんだ知り合いかい?じゃああとは任すよ。依頼が成立したら報告に来とくれ」
ポポリポさんが去り、ユリンさんが目の前の席に座った。
「依頼人の名前がトーマで、読み書きを教えて欲しいなんて内容だったから、ひょっとしたらアンタなんじゃないかと思ってね。
待遇も良さそうだし、引き受けるつもりで話をしにきたんだよ」
「俺としては知り合いに教えてもらえるのはありがたいんだけど、ユリンさんのほうは宿の仕事しながら俺の勉強に付き合う時間取れるの?」
「ああ、その部分をトーマに相談したくてね。宿の仕事は夕食が終ったあとは暇なんだよ。だから夕食後から就寝までの時間なら教えられる。私もトーマも同じ場所に寝泊りしてるから、多少遅い時間になっても問題ないだろう?
その条件で良ければ引き受けさせてもらいたいんだけど、どうだい?」
なるほど、勉強が終ったらあとは寝るだけなら俺としても好都合だな。俺からすれば、迷宮探索にも影響しないし最高の条件じゃないか?
「それなら俺のほうにも都合がいいので、ぜひお願いします。ユリンさんの都合がつかない日は中止でも構わないし」
「ハハハ。なるべく毎晩教えてやるよ。なんせ宿で客に読み書きを教えるだけで1日銀貨3枚も貰えるなんて、こんな旨い話もないってもんだ。
むしろこんなに出してトーマは大丈夫なのかい?」
「読み書きできないのって結構苦痛なんだよなぁ。じゃあ都合が良ければ、今日か明日からお願いしても良いかな?」
「今晩からで良いよ。これでも子供たちに読み書き教えてたころもあったからね。教えるのは慣れてるつもりだよ」
交渉成立だ。リーンに代わり、ユリンさんに読み書きを習うことになった。ポポリポさんに報告する。
「話がまとまって良かったねぇ。依頼はこれで完了扱いで良いかい?」
「あ、そうか。完了でお願い」
初めて自分が出した依頼は無事終了した。
銀貨3枚はまぁまぁの出費なので、無駄にしないように頑張ろう。
開口一番ポポリポさんに告げられる。毎日商工ギルドで確認するつもりで居たんだが、思いのほか早く依頼を受けてもらえたらしい。
「それでアンタ、詳しい待遇は応相談で依頼出しただろう?出来れば実際に依頼を受ける前に、アンタと会って交渉したいって話なんだよ。
今日の陽天の報せの頃に、またこっちに顔を出してくれる話になってるんだ。トーマさんの都合はどうなってるか教えとくれ」
「それなら陽天の報せに俺も顔出すよ。商工ギルドでなにか都合の良い場所って用意してもらえたりする?」
急いで回れば帰ってこれるだろう。最悪ホムロのところに顔を出すのを後回しにすれば良いし。
「言ってくれれば個室を貸せるよ。銀貨1枚かかるけどね。ただ依頼内容的にそこまでする必要があるのかって思うけどねぇ。まぁすぐ用意できるから、必要ならいつでも言っておくれよ」
予約とかは要らないらしい。まぁ商工ギルドって言うくらいだし、商取引で個室の使用率は高そうだし、常に用意はしてあるんだろうな。
今日は時間制限もあるし、出来れば面会の前に補修再生に武器を出しておきたいから急がないと。
6階層に着いてからも小走りで移動し、索敵も殲滅も効率と速度を重視。まぁ普段だって効率を重視してやってるんだけども。
オーサンとの訓練も3度経験したし、これでも毎日探索上がりにギルドで走り込みと訓練も続けている。おかげさまで持久力は、リンカーズに来たばかりの頃とは比べ物にならないくらい身についた自覚がある。
転移直後なんて、転移場所からベイクまで歩いてくるだけで息あがってたな……。日本にいたころは運動なんてロクにしてなかったからなぁ。
早めのジョギング、ランニングに近いペースで動き回り、とにかく敵を探しては倒していく。
こうなってくると正直石斧が邪魔だな。魔装術さえあれば手放せるんだけど、まだちょっと手放すには力が足りないよな。
正確な時間は分からないけど、前回よりかなり速いペースで荷物が埋まった。体感時間でしかないけど、陽天の報せにはかなり余裕があるはず。
冒険者ギルドで買い取り中に一休み。オーサンに確認したところ、やっぱり陽天の報せはまだ鳴っていない。勝利!
ホムロのところにも顔を出して短剣をメンテに出す。
商工ギルドについてもまだ陽天の報せには早かったようだ。
「おやトーマさんもう来たのかい。まだ結構あると思うよ。
まぁ時間を守れる人ってのは商人に向いてるね。商工ギルドとして歓迎したい心がけだねぇ」
なんかポポリポさんが勝手に感心している。
「それじゃ待ち人が来たら案内してあげるから、トーマさんはロビーで待ってておくれ」
とのことなので、案内はポポリポさんに任せてロビーで休むことにした。
それにしても、今回の走り込みながらの迷宮探索は結構良いかもしれない。ソロなので他のメンバーに気を使う必要もないし、今のところ6階層の戦闘で脅威を感じることもない。
足腰のトレーニングにもなるし、なにより今日のペースで回れるなら1日3回ペースを取り戻せそうだ。
今のところ、ダンジョンといえば必ず付いてくる、トラップのようなものはない。
オーサン曰く、そういう悪辣な仕掛けは、10階層を越えてから急激に増えてくるらしい。
10階層なんて当分先のような気がするけれど、4階層から早かったからなぁ。俺が思ってるよりもずっと早く到達する可能性はある。
「トーマさん。依頼の人が来たわよぉ」
考え事をしていたら結構時間が経っていたようだ。陽天の報せが鳴ったのにも気付かないとは、気を抜きすぎだったな。
ポポリポさんが俺の依頼を受けてくれる人を案内してくる、ってあれ?
「トーマってやっぱりアンタかい」
「え、依頼を受けてくれるのってユリンさんなの?」
これは予想してなかったな。でも宿の仕事をしつつ俺の教師役なんて可能なんだろうか?
「なんだ知り合いかい?じゃああとは任すよ。依頼が成立したら報告に来とくれ」
ポポリポさんが去り、ユリンさんが目の前の席に座った。
「依頼人の名前がトーマで、読み書きを教えて欲しいなんて内容だったから、ひょっとしたらアンタなんじゃないかと思ってね。
待遇も良さそうだし、引き受けるつもりで話をしにきたんだよ」
「俺としては知り合いに教えてもらえるのはありがたいんだけど、ユリンさんのほうは宿の仕事しながら俺の勉強に付き合う時間取れるの?」
「ああ、その部分をトーマに相談したくてね。宿の仕事は夕食が終ったあとは暇なんだよ。だから夕食後から就寝までの時間なら教えられる。私もトーマも同じ場所に寝泊りしてるから、多少遅い時間になっても問題ないだろう?
その条件で良ければ引き受けさせてもらいたいんだけど、どうだい?」
なるほど、勉強が終ったらあとは寝るだけなら俺としても好都合だな。俺からすれば、迷宮探索にも影響しないし最高の条件じゃないか?
「それなら俺のほうにも都合がいいので、ぜひお願いします。ユリンさんの都合がつかない日は中止でも構わないし」
「ハハハ。なるべく毎晩教えてやるよ。なんせ宿で客に読み書きを教えるだけで1日銀貨3枚も貰えるなんて、こんな旨い話もないってもんだ。
むしろこんなに出してトーマは大丈夫なのかい?」
「読み書きできないのって結構苦痛なんだよなぁ。じゃあ都合が良ければ、今日か明日からお願いしても良いかな?」
「今晩からで良いよ。これでも子供たちに読み書き教えてたころもあったからね。教えるのは慣れてるつもりだよ」
交渉成立だ。リーンに代わり、ユリンさんに読み書きを習うことになった。ポポリポさんに報告する。
「話がまとまって良かったねぇ。依頼はこれで完了扱いで良いかい?」
「あ、そうか。完了でお願い」
初めて自分が出した依頼は無事終了した。
銀貨3枚はまぁまぁの出費なので、無駄にしないように頑張ろう。
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