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3章 別れと出会い
051 モテない男
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読み書きの授業は夕食が終った後の食堂で教わることにした。多少お客さんが残っていても別に気にならないし。
ユリンさんには空いてる個室で教えても良いと言われたんだが、辞退しておいた。既婚者のユリンさんと、夜に密室で2人きりになるようなことは避けたい。ユリンさん美人だしな。
ご主人には料理も習ってることだしね。不義理を働くわけには行くまいて。
「トーマってさ。女にモテないだろう?」
「…………まぁ、自覚はあるけど。でもなんでこのタイミングで?」
くくくくっ、と楽しげに笑いながらユリンさんは語ってくれた。
「女ってのはね、男には甘えて欲しいもんなのさ。男を自分に酔わせるなんて、女冥利に尽きるってもんさ。
トーマはなんていうか……、遊びが無いというか隙がないんだよ。簡単に言えば、下半身に動かされてないってこったね」
「えええ?男は下半身に従ったほうが女にモテるっての?うっそだ~」
ただしイケメンに限る、って続くやつだろそれ。
「女は男を骨抜きにしたいのさ。この男には自分が必要、この男は私が居なかったら生きていけないだろうってね。男に必要とされる自分に酔うのが女の幸せってね」
背中をバンバンと勢いよく叩かれる。
「トーマは良い男だと思うよ。真面目だしね。
でも女から見てると、トーマは1人で生きていけるんだろうなぁ、私なんて必要ないんだろうなぁ、って思えちゃうだろうね。
まぁそういう男が好きだって女も居るけど、自分だけを全力で愛してくれる男に女は惹かれるもんさ。常に一線引いてる男よりも、その線をいとも簡単に踏み越えてくるような男にね」
1人で生きていけそう、か。そもそもリンカーズに来るまでも日本で1人で生きてきたわけだから、的を射た見解だな。
でも俺がモテないのはやっぱり容姿が最大の要因だと思いますわよ奥様。
6階層探索1度で金貨1枚近い報酬が得られることが回ったので、全力でぶん回してみる。
しかし頑張っては見たものの、やはり3周の壁を突破することは出来なかった。
夜に予定も入れちゃってるからあまり遅くまで探索できないしね。
日没後もしつこく探索続けてると、暗視ポーション切れる可能性もあるし。
2日間フルでぶん回して、経費を差っ引いても金貨5枚以上の黒字だ。
リンカーズの一般的な年収は金貨15~20枚くらいだと以前シンに聞いたので、俺の収入が如何に多いかってのが伺える。
おかげさまでスキル獲得資金にも不安はなくなったし、装備の更新も捗りそうだ。
さて、金貨6枚溜まったわけだしスキルを取得しに行きたいのだが、明日はオーサンの訓練指導日なのが問題だ。スキルも欲しいが、強くなるためには訓練もすっぽかすわけには行かない。
それに訓練日は収入がなくなるし、次の日もまともに動けなくなるので、大きい買い物をするのは訓練が終わってからの方が良いだろう。訓練明けのゾンビデーにスキルを覚えに行くのが良い気がする。
一夜明けて、オーサンとの訓練日である。とうとうオーサンとマンツーマンでの訓練である。中年のおっさん2人の汗だく訓練風景、一体誰得なのであろうか。
毎度の如く、走り込みからの素振りをこなしていく。
「今回で4回目の指導だったか?始めに比べるとトーマも大分冒険者らしくなったなぁ」
走り込みも武器の練習も、訓練じゃない日も続けてるからな!特に持久走はかなり慣れた自信がある。
10日に1度の訓練が4度目ってことは、リンカーズに来て50日以上経ってるってことだからなぁ。ずっと迷宮に潜ってる身としては、流石にそろそろ冒険者が板についてきてくれないと困るってもんよ。
お昼寝休憩を挟んで模擬戦。今回は俺1人しか居ないので、交代なしでひたすらオーサンに凹られる。
「ソロで迷宮に入るやつなんてほとんど聞いたことがないからなんとも言えんが……。
トーマがまだ6階層までしか進んでないってのはちょっと信じられねぇな。10階層に潜ってるヤツより戦えるんじゃねぇか?」
とか言いながら、相変わらず息も切らさず一方的にボコってきやがって!
言ってることとやってることが全然噛み合ってないんですけどぉぉぉ!?
訓練終了後は恒例の夕食会。
「シンくんとリーンちゃんが居ないと、夕飯食べ切れないかもしれないわねぇ」
確かにオーサン宅がいつもより広いような気がしてしまう。1人でオーサンの家に来たの初めてだもんなぁ。
今回は大人しか居ないからなのか、お酒も出された。あまり酒は好きなほうじゃないんだけど、多少は付き合おう。
う~ん……、やっぱりアルコールを美味しく感じない。
「トーマは自分で手強いと感じるところまではどんどん進んで良い。一般の冒険者とは色々勝手が違うからな。そういった奴等と一緒にして考えても意味が無いと思うことにした」
「ふぅん?まぁ最短でも1つの階層に3日はかけて慣らすつもりだけど?」
「ああ、好きにして良い。自分で判断しろ。ただなるべく先に進むよう心がけてくれれば良い」
「へぇ~。トーマさんはとっても熱心に迷宮に潜ってるんだねぇ」
「熱心っていうか、他にやることがないだけだよ。どうせ暇なら迷宮に潜った方が強くもなれるし金も稼げるからさ」
リンカーズの娯楽って言えば、食うか飲むか女くらいしか選択肢がないからな。
女遊びには興味深々なんですけどね?日本に居た時でも利用したことがなかったから、踏ん切りがつかないんですよね。
こういう一線を軽々越えられるようでなければモテ男にはなれないということだろうか。
いやこれは関係ないか。
ユリンさんには空いてる個室で教えても良いと言われたんだが、辞退しておいた。既婚者のユリンさんと、夜に密室で2人きりになるようなことは避けたい。ユリンさん美人だしな。
ご主人には料理も習ってることだしね。不義理を働くわけには行くまいて。
「トーマってさ。女にモテないだろう?」
「…………まぁ、自覚はあるけど。でもなんでこのタイミングで?」
くくくくっ、と楽しげに笑いながらユリンさんは語ってくれた。
「女ってのはね、男には甘えて欲しいもんなのさ。男を自分に酔わせるなんて、女冥利に尽きるってもんさ。
トーマはなんていうか……、遊びが無いというか隙がないんだよ。簡単に言えば、下半身に動かされてないってこったね」
「えええ?男は下半身に従ったほうが女にモテるっての?うっそだ~」
ただしイケメンに限る、って続くやつだろそれ。
「女は男を骨抜きにしたいのさ。この男には自分が必要、この男は私が居なかったら生きていけないだろうってね。男に必要とされる自分に酔うのが女の幸せってね」
背中をバンバンと勢いよく叩かれる。
「トーマは良い男だと思うよ。真面目だしね。
でも女から見てると、トーマは1人で生きていけるんだろうなぁ、私なんて必要ないんだろうなぁ、って思えちゃうだろうね。
まぁそういう男が好きだって女も居るけど、自分だけを全力で愛してくれる男に女は惹かれるもんさ。常に一線引いてる男よりも、その線をいとも簡単に踏み越えてくるような男にね」
1人で生きていけそう、か。そもそもリンカーズに来るまでも日本で1人で生きてきたわけだから、的を射た見解だな。
でも俺がモテないのはやっぱり容姿が最大の要因だと思いますわよ奥様。
6階層探索1度で金貨1枚近い報酬が得られることが回ったので、全力でぶん回してみる。
しかし頑張っては見たものの、やはり3周の壁を突破することは出来なかった。
夜に予定も入れちゃってるからあまり遅くまで探索できないしね。
日没後もしつこく探索続けてると、暗視ポーション切れる可能性もあるし。
2日間フルでぶん回して、経費を差っ引いても金貨5枚以上の黒字だ。
リンカーズの一般的な年収は金貨15~20枚くらいだと以前シンに聞いたので、俺の収入が如何に多いかってのが伺える。
おかげさまでスキル獲得資金にも不安はなくなったし、装備の更新も捗りそうだ。
さて、金貨6枚溜まったわけだしスキルを取得しに行きたいのだが、明日はオーサンの訓練指導日なのが問題だ。スキルも欲しいが、強くなるためには訓練もすっぽかすわけには行かない。
それに訓練日は収入がなくなるし、次の日もまともに動けなくなるので、大きい買い物をするのは訓練が終わってからの方が良いだろう。訓練明けのゾンビデーにスキルを覚えに行くのが良い気がする。
一夜明けて、オーサンとの訓練日である。とうとうオーサンとマンツーマンでの訓練である。中年のおっさん2人の汗だく訓練風景、一体誰得なのであろうか。
毎度の如く、走り込みからの素振りをこなしていく。
「今回で4回目の指導だったか?始めに比べるとトーマも大分冒険者らしくなったなぁ」
走り込みも武器の練習も、訓練じゃない日も続けてるからな!特に持久走はかなり慣れた自信がある。
10日に1度の訓練が4度目ってことは、リンカーズに来て50日以上経ってるってことだからなぁ。ずっと迷宮に潜ってる身としては、流石にそろそろ冒険者が板についてきてくれないと困るってもんよ。
お昼寝休憩を挟んで模擬戦。今回は俺1人しか居ないので、交代なしでひたすらオーサンに凹られる。
「ソロで迷宮に入るやつなんてほとんど聞いたことがないからなんとも言えんが……。
トーマがまだ6階層までしか進んでないってのはちょっと信じられねぇな。10階層に潜ってるヤツより戦えるんじゃねぇか?」
とか言いながら、相変わらず息も切らさず一方的にボコってきやがって!
言ってることとやってることが全然噛み合ってないんですけどぉぉぉ!?
訓練終了後は恒例の夕食会。
「シンくんとリーンちゃんが居ないと、夕飯食べ切れないかもしれないわねぇ」
確かにオーサン宅がいつもより広いような気がしてしまう。1人でオーサンの家に来たの初めてだもんなぁ。
今回は大人しか居ないからなのか、お酒も出された。あまり酒は好きなほうじゃないんだけど、多少は付き合おう。
う~ん……、やっぱりアルコールを美味しく感じない。
「トーマは自分で手強いと感じるところまではどんどん進んで良い。一般の冒険者とは色々勝手が違うからな。そういった奴等と一緒にして考えても意味が無いと思うことにした」
「ふぅん?まぁ最短でも1つの階層に3日はかけて慣らすつもりだけど?」
「ああ、好きにして良い。自分で判断しろ。ただなるべく先に進むよう心がけてくれれば良い」
「へぇ~。トーマさんはとっても熱心に迷宮に潜ってるんだねぇ」
「熱心っていうか、他にやることがないだけだよ。どうせ暇なら迷宮に潜った方が強くもなれるし金も稼げるからさ」
リンカーズの娯楽って言えば、食うか飲むか女くらいしか選択肢がないからな。
女遊びには興味深々なんですけどね?日本に居た時でも利用したことがなかったから、踏ん切りがつかないんですよね。
こういう一線を軽々越えられるようでなければモテ男にはなれないということだろうか。
いやこれは関係ないか。
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