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3章 別れと出会い
054 魔装術
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「やーやーホムロ。魔装術覚えたからそれ用の装備が欲しいんだ。流石に一気には買えないけど適当に見繕っておいてくれる?
あー、どちらかと言えば武器を優先して欲しいかな」
とだけ告げて、次は服屋に移動する。
「迷宮に着ていけるような服が欲しい。ある程度の防御力と魔法耐性がついてる服ってあるかな」
ということで用意してもらったのが、蜘蛛の魔物の糸で作られた服だった。斬撃に特に強い耐性を持ち、魔物素材なので魔法にも強いとのこと。
上下込みで銀板6枚。音魔法と同じ値段でした。
そしてカズラの魔法薬店にも寄る。
「カズラさん。明日から暗視ポーション必要なくなった。今日の分で一旦終わりにしてもらって良いかな」
暗視ポーションの発注も止めた。
一度宿に戻って荷物を整理。そして試しに短剣に魔装術を使ってみる。
魔力がゴソっと抜き取られる感覚がして、その抜き取られた魔力が短剣を覆っているのが分かる。装備に魔力を纏わせるスキル、魔装術か。
こうして維持しているだけでもガリガリと魔力が消費されていく。常に使用した状態で戦闘を行うのは、今の俺には無理かも知れない。探索に使うなら、シャドウボアなどの耐久力の高い魔物をしとめる際に一瞬だけ発動する、みたいな使い方をする必要があるだろう。
ずっと魔装術を発動していると流石に吐き気と眩暈がしてきた。10分くらいなら維持し続けられるかなぁ。魔装術を打ち切る。
とその瞬間、ピキリと嫌な音が響いて短剣に亀裂が走った。
アチャーやってしまった。安物の武器だと魔装術には耐えられないんだなぁ。この短剣は後でホムロの所に持っていこう。
最後となる暗視ポーションをぐいっと飲み干し、6階層に到着する。
なんか軽く運動したほうが疲労が抜けるの早い気がするなぁ?
何度か戦っているとシャドウボアと遭遇。いつも通り正面から突進してきたので、今回はスリングショットを使わずに短剣で仕留めてみる。
突進を回避してすれ違ったときに魔装術を発動、後ろ足に向かって切り払い、後ろ足が根元から斬り飛ばされた。
おお、なんの手応えもなく、まるで豆腐を斬ったみたいだ。
そのまま正面に移動し太い首をかき切ってみる。やはり刃に何の抵抗もない。
流石に刃渡りが足りないので首を切り離すことは出来なかったが、喉を切り裂いたおかげで致命傷には充分だった模様。うーん、シンとリーンも魔装術さえ覚えてたらシャドウボアなんかに苦戦することはなかっただろうなぁ。
すぐに魔装術を打ち切り短剣を確認してみる。なんともないな。時間にして10秒にもなってなかっただろうし、武器破壊には至らなかったようだ。
ジョギングしながら6階層の魔物を殺して回る。そういえばキラーラットくんには借りがあったな。思いついたことがあるので試してみよう。
キラーラットには以前石斧を思い切り避けられた経験がある。
今思い出しても腹立つ出来事ではあるが、結局のところキラーラットの高い回避力を支えているのは、エコーロケーションによる空間把握能力だと思う。
つまりは音魔法でヤツのエコーロケーションに干渉することで、空間把握を邪魔することが出来るんじゃないだろうかと思ったのだ。そして思いついたら試してみるべきである。
音魔法に感あり。キラーラットが接近してくる。
あまり早い段階でエコーロケーションにちょっかいかけてしまうと、単純に俺の姿を見失って攻撃行為を中止してしまうことだろう。できるだけ引き付けないとね。
まずはキラーラットの攻撃を回避、カウンターで石斧を振りながら音魔法発動。俺にぶつかってくる音を魔法でキャッチし反射を禁ずる。
ぐちゃりと鈍い感触と共に石斧部分がキラーラットにクリーンヒット。
トーマ選手、ホームランです!と言いたいところだけど石斧では遠くに飛ばすことは出来なかった。良いところセンター前って程度かな。
ふぅ、ともかくこれで借りは返したぜキラーラット!一方的にだけどね!
一旦戻って換金を済ませ、ホムロの店で武器を修理する。
「どんな扱い方したらこうなんだよぉ!?」
とか叫んでいたけどきっとホムロも疲れているんだろう。今度何か差し入れでも持って来よう。
武器の修理を待つ間に、ダーティ装備を全部外して、魔装術に対応できる防具だけを身につけた状態で全身に魔装術を纏ってみる。
うん、1分待たずにギブアップ。目の前に星が飛んでいるぅ。
魔装術を全身に常に発動した状態で探索を続けるとか、めちゃくちゃハードル高いことが分かった。
魔装術でシャドウボアを相手取ることも出来るようになったので、石斧は手放すことにしてホムロに返却してしまう。
ちなみに1リーフたりともお金は戻ってこないので、売却ではないのだ。
本日2度目にして最後の迷宮探索。訓練明けは回数を重ねるごとに体調が良くなっていくので、先ほどよりも快調なペースで殲滅を繰り返す。
特に石斧を手放したことで重量が減って、移動がスムーズになった。
なんだか視界もクリアだし思考もクリアだ。探索をしていると余計なことを考える暇がない。ただただ目の前の敵を最短最速で殺すために思考の無駄が削ぎ落とされていき、動きが洗練されていく。
体を動かしながらも思考は次の動きをイメージ、体はそれをなぞっていく。集中している?いやこれは没頭しているって感じだ。
なんだか今日の探索で、新しい何かが掴めた様な気がした。
あー、どちらかと言えば武器を優先して欲しいかな」
とだけ告げて、次は服屋に移動する。
「迷宮に着ていけるような服が欲しい。ある程度の防御力と魔法耐性がついてる服ってあるかな」
ということで用意してもらったのが、蜘蛛の魔物の糸で作られた服だった。斬撃に特に強い耐性を持ち、魔物素材なので魔法にも強いとのこと。
上下込みで銀板6枚。音魔法と同じ値段でした。
そしてカズラの魔法薬店にも寄る。
「カズラさん。明日から暗視ポーション必要なくなった。今日の分で一旦終わりにしてもらって良いかな」
暗視ポーションの発注も止めた。
一度宿に戻って荷物を整理。そして試しに短剣に魔装術を使ってみる。
魔力がゴソっと抜き取られる感覚がして、その抜き取られた魔力が短剣を覆っているのが分かる。装備に魔力を纏わせるスキル、魔装術か。
こうして維持しているだけでもガリガリと魔力が消費されていく。常に使用した状態で戦闘を行うのは、今の俺には無理かも知れない。探索に使うなら、シャドウボアなどの耐久力の高い魔物をしとめる際に一瞬だけ発動する、みたいな使い方をする必要があるだろう。
ずっと魔装術を発動していると流石に吐き気と眩暈がしてきた。10分くらいなら維持し続けられるかなぁ。魔装術を打ち切る。
とその瞬間、ピキリと嫌な音が響いて短剣に亀裂が走った。
アチャーやってしまった。安物の武器だと魔装術には耐えられないんだなぁ。この短剣は後でホムロの所に持っていこう。
最後となる暗視ポーションをぐいっと飲み干し、6階層に到着する。
なんか軽く運動したほうが疲労が抜けるの早い気がするなぁ?
何度か戦っているとシャドウボアと遭遇。いつも通り正面から突進してきたので、今回はスリングショットを使わずに短剣で仕留めてみる。
突進を回避してすれ違ったときに魔装術を発動、後ろ足に向かって切り払い、後ろ足が根元から斬り飛ばされた。
おお、なんの手応えもなく、まるで豆腐を斬ったみたいだ。
そのまま正面に移動し太い首をかき切ってみる。やはり刃に何の抵抗もない。
流石に刃渡りが足りないので首を切り離すことは出来なかったが、喉を切り裂いたおかげで致命傷には充分だった模様。うーん、シンとリーンも魔装術さえ覚えてたらシャドウボアなんかに苦戦することはなかっただろうなぁ。
すぐに魔装術を打ち切り短剣を確認してみる。なんともないな。時間にして10秒にもなってなかっただろうし、武器破壊には至らなかったようだ。
ジョギングしながら6階層の魔物を殺して回る。そういえばキラーラットくんには借りがあったな。思いついたことがあるので試してみよう。
キラーラットには以前石斧を思い切り避けられた経験がある。
今思い出しても腹立つ出来事ではあるが、結局のところキラーラットの高い回避力を支えているのは、エコーロケーションによる空間把握能力だと思う。
つまりは音魔法でヤツのエコーロケーションに干渉することで、空間把握を邪魔することが出来るんじゃないだろうかと思ったのだ。そして思いついたら試してみるべきである。
音魔法に感あり。キラーラットが接近してくる。
あまり早い段階でエコーロケーションにちょっかいかけてしまうと、単純に俺の姿を見失って攻撃行為を中止してしまうことだろう。できるだけ引き付けないとね。
まずはキラーラットの攻撃を回避、カウンターで石斧を振りながら音魔法発動。俺にぶつかってくる音を魔法でキャッチし反射を禁ずる。
ぐちゃりと鈍い感触と共に石斧部分がキラーラットにクリーンヒット。
トーマ選手、ホームランです!と言いたいところだけど石斧では遠くに飛ばすことは出来なかった。良いところセンター前って程度かな。
ふぅ、ともかくこれで借りは返したぜキラーラット!一方的にだけどね!
一旦戻って換金を済ませ、ホムロの店で武器を修理する。
「どんな扱い方したらこうなんだよぉ!?」
とか叫んでいたけどきっとホムロも疲れているんだろう。今度何か差し入れでも持って来よう。
武器の修理を待つ間に、ダーティ装備を全部外して、魔装術に対応できる防具だけを身につけた状態で全身に魔装術を纏ってみる。
うん、1分待たずにギブアップ。目の前に星が飛んでいるぅ。
魔装術を全身に常に発動した状態で探索を続けるとか、めちゃくちゃハードル高いことが分かった。
魔装術でシャドウボアを相手取ることも出来るようになったので、石斧は手放すことにしてホムロに返却してしまう。
ちなみに1リーフたりともお金は戻ってこないので、売却ではないのだ。
本日2度目にして最後の迷宮探索。訓練明けは回数を重ねるごとに体調が良くなっていくので、先ほどよりも快調なペースで殲滅を繰り返す。
特に石斧を手放したことで重量が減って、移動がスムーズになった。
なんだか視界もクリアだし思考もクリアだ。探索をしていると余計なことを考える暇がない。ただただ目の前の敵を最短最速で殺すために思考の無駄が削ぎ落とされていき、動きが洗練されていく。
体を動かしながらも思考は次の動きをイメージ、体はそれをなぞっていく。集中している?いやこれは没頭しているって感じだ。
なんだか今日の探索で、新しい何かが掴めた様な気がした。
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