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4章 2人のために出来ること
063 デスマーチ2日目~3日目
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2度目の探索を終えてホムロの家で休む。
休憩と装備品のメンテナンスが済んで、これから3度目の探索に向かおうと迷宮に向かうと、なんだか沢山の人が集まっていた。
「あ、トーマさん!言われたとおり人を集めてきたんだ!冒険者ギルドで正式に依頼も請けてきたよ。
新しく集まったのは13人で、俺たちと合わせても20人にならなかったけど大丈夫だった?」
どうやら俺待ちだったらしい。
しかしなんか、随分ポーターの子達の態度が軟化した気がするな?
まぁ報酬良いから従順にもなるか
「ああ、お前らに無理がないようなら大丈夫だ。
一応全員が1度経験するまでは、経験者が1人は参加してくれ。
1日10回の探索が終わるまでは何時になろうと続けるから、順番はお前らで勝手に話し合って、充分な休息を取れるように気を配ってくれ。
疲れたり、体調崩してる奴に参加されても邪魔なだけだからな」
簡潔にこちらの意見を伝える。
「よし、じゃあ今回潜る5人は前に出ろ。ポーション配るからすぐ飲んでくれ」
暗視ポーションを服用させ、空いた容器を回収する。
「おしじゃあ早速行こう。他のやつらは冒険者ギルドでちゃんと休んどけよ」
3度目の探索を開始する。
さっさと8階層に到着、魔物を狩り始める。
普段の探索では俺もドロップ品を背負っているが、今回は専門のポーターがいるので俺は荷物持ちをしないことにした。
と言っても完全に手ぶらで探索しているわけではないけど。
まず、暗視ポーションは俺が携帯している。これを失うとポーターを中に連れてこられないので、他の者に管理させるのは少し怖いのだ。
次にスリングショットで撃ち出す用の弾。普段は腰に10~15発分くらいのダーティストーンをぶら下げているのだが、今回は1回の探索時間が長めなので、背嚢にもそれなりの数を入れてある。
戦闘が終わるごとに腰の袋に補充する形だ。
背嚢の中で暗視ポーションを割ってしまわないように厳重に包んである。
ホムロの店に戻る度に使った分を補充する。
そして最後はスクロールだ。
スクロールは資金稼ぎの切り札だし、仮に無断で使用されると取り返しが付かない。
賠償させるのにしても、ポーターたちの収入では何年かかるか分かったもんじゃない。
使われたら困るのだから、始めから持たせないに限る。
そんなことを考えながら回っているのだが、なんとなく魔物との遭遇率が低い気がする。
殲滅スピードに魔物の発生速度が追いついていないようだ。
ん~……、階層変えるしかないかな。
「魔物が減ってるから9階層に移動するぞ。
お前らがやることは変わらないから安心してくれ」
一瞬悲鳴のようなものが聞こえた気がするが、構ってる余裕はない。
道中の魔物を蹴散らしながら9階層に向かった。
「やっぱコイツらちょっとめんどくせぇなぁ」
9階層に来て戦ってみたが、予想通りコボルトがウザい。
散開の形を取るから1体ずつ接近戦で倒すのが手間だし、知能があるからか、ポーターの方に攻撃を仕掛けようとする個体もちらほら出てくる。
魔物の数が減った8階層よりは早いが、正直あまり効率が良くないような気がする。
ふむ、なんか良い手はないかなぁ?
ポーターたちがドロップ品を回収しているのを見ながらボーっと考えていると、ふと気付いた。気付いてしまった。
ああ、こんな簡単なことに気付かないなんてどうかしてた。というかやっぱり思考が鈍ってきていたんだろう。
なんで俺がコボルトの都合に合わせて動いてやる必要があるんだ。
コボルトに俺の都合を押しつけりゃ良いだけじゃないか。
次にコボルトとあったら早速試してみよう。
俺が思いついた策なんて考え付いてみれば至極単純な策だった。
追いかけて倒すのが面倒なら、やつらの方から向かって来てもらえばいいって話。
コボルトに接近し、奴らが散開をし始めたらスリングショットで射撃する。ただこれだけ。
残弾には余裕があるので出し惜しみなし。
コボルトはなまじ知能があるから『このまま距離が離れた状態では一方的に撃ち殺される』ことが理解できてしまう。
なら奴らが次に取る行動は何か?当然距離を詰めて俺を仕留めにかかってくる。
遠距離攻撃を持たないコボルトに出来る事はそれしかないのだから。
こうなるとあとは近寄ってきたコボルトを返り討ちにするだけで良いので、殲滅効率がとても良くなった。
弾丸の減りは早くなったが、今回の装備関連の費用は既に前払い済みなので惜しくもない。
店に戻る度に補充出来るのだから、ガンガン使っていける消耗品だ。
ふむ、テレビゲームに嵌ったことのある人ならわかると思うのだが、効率良く狩りを行うのはとても気分が良い。
慣れてくると退屈で単調な作業と化してしまいがちではあるが、たとえ退屈でも効率の悪いことをあえてやるほど不快なこともない。
無駄を楽しむという考え方は理解できるし、俺も拘ったスタイルのプレイヤーには好感を抱いているが、無駄を楽しむことと無駄なことを強いられることは、意味合いが全く違うのだ。
その後も探索を繰り返していく。
なんていうか徹夜のテンションとでも言えば良いのか、今俺は変な興奮状態にあるような気がするな。
目標に向けてただひたすらに出来る事に集中する。
現在進行形で奴隷落ち中の2人には申し訳ないけれど、不思議な高揚感がある。
目標が明快なためなのか、思考は常に鮮明で澄んでいて、雑念の入る余地がない。
9階層の魔物も減ってきたように感じたタイミングで10階層に移動。
ポイズンスパイダー?スリングショット先生が一撃で殺ってくれました。
なんか回数も時間の感覚も分からなくなってきたけれど、ポーションが切れたので10回目の探索が終了したようだ。
なんとか夜が明ける前に、目標だった10回を終わらせることが出来た。
そのまま夜が明けるまではソロで探索に入る。
ホムロのところにおいてあったソロ用のリュックに持ち替えて、いざ出陣じゃー!
おー周囲に気を使わずに済むって素晴らしい!
なんか俺って根っからのソロプレイヤーなんだなぁとか思ってしまうな。
荷物がいっぱいになって戻ってくると、夜が明けていた。
明日はもうちょっと余裕があると良いなぁ。
ホムロの店で補修再生3倍だー!とか謎のテンションでとっとと寝る。
ホムロに起こされ、ソロで持ち帰ったドロップ品と、昨日拾ったスクロールを持って冒険者ギルドへ。
これでデスマーチも折り返し地点だ。
休憩と装備品のメンテナンスが済んで、これから3度目の探索に向かおうと迷宮に向かうと、なんだか沢山の人が集まっていた。
「あ、トーマさん!言われたとおり人を集めてきたんだ!冒険者ギルドで正式に依頼も請けてきたよ。
新しく集まったのは13人で、俺たちと合わせても20人にならなかったけど大丈夫だった?」
どうやら俺待ちだったらしい。
しかしなんか、随分ポーターの子達の態度が軟化した気がするな?
まぁ報酬良いから従順にもなるか
「ああ、お前らに無理がないようなら大丈夫だ。
一応全員が1度経験するまでは、経験者が1人は参加してくれ。
1日10回の探索が終わるまでは何時になろうと続けるから、順番はお前らで勝手に話し合って、充分な休息を取れるように気を配ってくれ。
疲れたり、体調崩してる奴に参加されても邪魔なだけだからな」
簡潔にこちらの意見を伝える。
「よし、じゃあ今回潜る5人は前に出ろ。ポーション配るからすぐ飲んでくれ」
暗視ポーションを服用させ、空いた容器を回収する。
「おしじゃあ早速行こう。他のやつらは冒険者ギルドでちゃんと休んどけよ」
3度目の探索を開始する。
さっさと8階層に到着、魔物を狩り始める。
普段の探索では俺もドロップ品を背負っているが、今回は専門のポーターがいるので俺は荷物持ちをしないことにした。
と言っても完全に手ぶらで探索しているわけではないけど。
まず、暗視ポーションは俺が携帯している。これを失うとポーターを中に連れてこられないので、他の者に管理させるのは少し怖いのだ。
次にスリングショットで撃ち出す用の弾。普段は腰に10~15発分くらいのダーティストーンをぶら下げているのだが、今回は1回の探索時間が長めなので、背嚢にもそれなりの数を入れてある。
戦闘が終わるごとに腰の袋に補充する形だ。
背嚢の中で暗視ポーションを割ってしまわないように厳重に包んである。
ホムロの店に戻る度に使った分を補充する。
そして最後はスクロールだ。
スクロールは資金稼ぎの切り札だし、仮に無断で使用されると取り返しが付かない。
賠償させるのにしても、ポーターたちの収入では何年かかるか分かったもんじゃない。
使われたら困るのだから、始めから持たせないに限る。
そんなことを考えながら回っているのだが、なんとなく魔物との遭遇率が低い気がする。
殲滅スピードに魔物の発生速度が追いついていないようだ。
ん~……、階層変えるしかないかな。
「魔物が減ってるから9階層に移動するぞ。
お前らがやることは変わらないから安心してくれ」
一瞬悲鳴のようなものが聞こえた気がするが、構ってる余裕はない。
道中の魔物を蹴散らしながら9階層に向かった。
「やっぱコイツらちょっとめんどくせぇなぁ」
9階層に来て戦ってみたが、予想通りコボルトがウザい。
散開の形を取るから1体ずつ接近戦で倒すのが手間だし、知能があるからか、ポーターの方に攻撃を仕掛けようとする個体もちらほら出てくる。
魔物の数が減った8階層よりは早いが、正直あまり効率が良くないような気がする。
ふむ、なんか良い手はないかなぁ?
ポーターたちがドロップ品を回収しているのを見ながらボーっと考えていると、ふと気付いた。気付いてしまった。
ああ、こんな簡単なことに気付かないなんてどうかしてた。というかやっぱり思考が鈍ってきていたんだろう。
なんで俺がコボルトの都合に合わせて動いてやる必要があるんだ。
コボルトに俺の都合を押しつけりゃ良いだけじゃないか。
次にコボルトとあったら早速試してみよう。
俺が思いついた策なんて考え付いてみれば至極単純な策だった。
追いかけて倒すのが面倒なら、やつらの方から向かって来てもらえばいいって話。
コボルトに接近し、奴らが散開をし始めたらスリングショットで射撃する。ただこれだけ。
残弾には余裕があるので出し惜しみなし。
コボルトはなまじ知能があるから『このまま距離が離れた状態では一方的に撃ち殺される』ことが理解できてしまう。
なら奴らが次に取る行動は何か?当然距離を詰めて俺を仕留めにかかってくる。
遠距離攻撃を持たないコボルトに出来る事はそれしかないのだから。
こうなるとあとは近寄ってきたコボルトを返り討ちにするだけで良いので、殲滅効率がとても良くなった。
弾丸の減りは早くなったが、今回の装備関連の費用は既に前払い済みなので惜しくもない。
店に戻る度に補充出来るのだから、ガンガン使っていける消耗品だ。
ふむ、テレビゲームに嵌ったことのある人ならわかると思うのだが、効率良く狩りを行うのはとても気分が良い。
慣れてくると退屈で単調な作業と化してしまいがちではあるが、たとえ退屈でも効率の悪いことをあえてやるほど不快なこともない。
無駄を楽しむという考え方は理解できるし、俺も拘ったスタイルのプレイヤーには好感を抱いているが、無駄を楽しむことと無駄なことを強いられることは、意味合いが全く違うのだ。
その後も探索を繰り返していく。
なんていうか徹夜のテンションとでも言えば良いのか、今俺は変な興奮状態にあるような気がするな。
目標に向けてただひたすらに出来る事に集中する。
現在進行形で奴隷落ち中の2人には申し訳ないけれど、不思議な高揚感がある。
目標が明快なためなのか、思考は常に鮮明で澄んでいて、雑念の入る余地がない。
9階層の魔物も減ってきたように感じたタイミングで10階層に移動。
ポイズンスパイダー?スリングショット先生が一撃で殺ってくれました。
なんか回数も時間の感覚も分からなくなってきたけれど、ポーションが切れたので10回目の探索が終了したようだ。
なんとか夜が明ける前に、目標だった10回を終わらせることが出来た。
そのまま夜が明けるまではソロで探索に入る。
ホムロのところにおいてあったソロ用のリュックに持ち替えて、いざ出陣じゃー!
おー周囲に気を使わずに済むって素晴らしい!
なんか俺って根っからのソロプレイヤーなんだなぁとか思ってしまうな。
荷物がいっぱいになって戻ってくると、夜が明けていた。
明日はもうちょっと余裕があると良いなぁ。
ホムロの店で補修再生3倍だー!とか謎のテンションでとっとと寝る。
ホムロに起こされ、ソロで持ち帰ったドロップ品と、昨日拾ったスクロールを持って冒険者ギルドへ。
これでデスマーチも折り返し地点だ。
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