71 / 580
4章 2人のために出来ること
065 デスマーチ最終日
しおりを挟む
「装備の補修再生が終ったぞ。さっさと起きろ」
ホムロの声で目が覚める。
あ~これが美人の幼馴染だったらもっと目覚めが良いだろうに。
「明日の朝までぶん回すからさ。悪いけどもう一晩だけ付き合ってちょうだいな」
「……報酬は前払いで貰ってんだから、最後まで付き合ってやるさ。
お前こそ最後でヘマすんじゃねぇぞ」
ホムロの店を後にし、魔法薬を受け取りに行く。
「確かに50本受け取った。
助かったよカズラさん。アンタの協力がなければ間違いなく詰んでた。
3日間、本当にご苦労様でした」
「……私は自分の仕事をしただけさ。
トーマさんはトーマさんの仕事を全うすればいい」
言われるまでもないな。冒険者ギルドに向かう。
「よーしみんな、今日が最終日だ!思い切り稼いで帰ってくれよ!
オーサンは悪いけど今日1日付き合ってね。
あ、これスクロールとさっき2周してきた分ね」
スクロール2本と荷物の詰まったリュックを2つ渡す。
「そうだ、トーマは7等級に上がったからな。一応報告しておく。
ここまでやったんだからやり遂げて見せろよ?」
どのタイミングで昇級に必要な額に到達したのかは分からないが、7等級に上がったってことは少なくともこの2日間で200万リーフは稼げているってことだと思う。
試算は大きくは外してなかったってことだ。
それならば今日探索を済ませれば問題なく目標額に到達できるだろう。
「よし、じゃあ行こうか。みんな最後までよろしく頼む」
本日の業務を開始する。
魔物を殺しつつも考える。
今回の3日間、話を聞いた日を入れて4日間のデスマーチであるが、ぶっちゃけ日本で働いたことのある人ならば、そこまでデスマスケジュールには感じないんじゃないかと思う。
リンカーズの1日が24時間なのかは分からないけれど、1日10回探索してまだ余裕があるくらいなので、仮に1日を24時間と仮定した場合、1回の探索は2時間弱で終わっていることになる。
探索が終るごとに短時間ではあるが休むことも食事することも出来ているうえに、1日の最後は2時間くらいの睡眠が取れている。
長時間の睡眠が取れないのは辛く感じるけれど、この程度のスケジュールでデスマなんて言ったら「本当のデスマーチというものを教えて差し上げますよ」とか言いながら、謎の強キャラが襲い掛かってくるかもしれない。
俺が日本で勤めていた職場は全くブラックではなかったので、職場ではこのような進行をしたことはないが、新作ゲームを攻略するために寝食を削ったことや、オンラインゲームのイベントを一心不乱にぶん回したことは何度もある。
それに、これは俺だけの感覚かもしれないが、時間制限付きの周回って結構燃えるものがあるんだよな。
スコアの途中経過は7等級到達という報告だけで充分。あとはイベント終了までひたすらぶん回すだけ。
予測は立てたけど実際のスコアは確認してない。いったい何処まで伸ばせるか、結構楽しみだったりする。
今も助けを待っている2人には申し訳ないとは思うのだが、怒りや焦燥感、ましてや使命感なんかで4日間も動き続けることは俺には出来ない。
2人を助けることが出来なかった場合、俺は物凄く嫌な気分にはなると思うけれど、実際に俺が何か被害を被るわけでもないのだ。
我ながら薄情で嫌になるが、俺はそこまで情に厚い人間ではない。
今回のことは冷静に試算した上で、自分の手に届きそうだったから挑戦してみただけだ。
実際、オーサン、ホムロ、カズラさん、ポーターの皆、クリリクさんなど、今回協力してくれた人が1人でも協力してくれなかったら、意外と俺はあっさり諦めていたかも知れないと思う。
2人のことは助けたいと思うし、全力を尽くしていることも間違いない。
だけど俺はチートを授かった英雄様ではないのだ。
望めば全てが手に入る主人公様ではない。
自分の手の届く範囲を間違えるな。
俺に出来るのは誰にでも出来る事しかないのだから。
「冒険者ギルドで戦い方を教えてくれるの?」
「そうそう、金がかかるんだけどな。
今回の依頼で世話になってるオーサンが指導してくれるんだよ。
俺も定期的に受けてるんだけど、お前らも一緒に参加しないか?強くなれるぞ」
「僕もトーマみたいに強くなれる……?」
「ははっ、俺今35歳だぜ?お前らの年で俺と同じ訓練始めてみろよ。
お前らが35になる頃には俺どころか、ドラゴンだって倒せるようになってるだろ」
手が届く範囲は間違えちゃいけない。
でも手を伸ばすことを諦めるのはまた違う話だ。
始めは届かなくても手を伸ばし続けていれば、手が届くこともあるかもしれない。
10回の探索を終え、依頼分のノルマは達成した。
朝まではまだ時間がありそうなので、いつも通りソロ探索を開始する。
1回探索を終えた時点でまだ夜は明けていない。
念のためもう1周こなすかとも考えたが、そのせいでタイムアップになってしまっては馬鹿馬鹿しい。
俺のデスマーチはここで終了することにしよう。
冒険者ギルドに寄ってオーサンと合流する。
預けていた身分証とスクロールを受け取り、これから一緒に商工ギルドに向かう。
どんな結果になろうとも自分で見届けたいと、オーサンは同行を希望してきたのだ。
ちょうど良いので、奴隷商館まで案内を頼むことにする。
商工ギルドで口座を確認し、目標額に到達していれば奴隷商館へ。
もし足りていなければ、スクロールを売り払って補填する。
さてさて3日間+αのデスマーチ、到達スコアはどんな結果になったかな?
ホムロの声で目が覚める。
あ~これが美人の幼馴染だったらもっと目覚めが良いだろうに。
「明日の朝までぶん回すからさ。悪いけどもう一晩だけ付き合ってちょうだいな」
「……報酬は前払いで貰ってんだから、最後まで付き合ってやるさ。
お前こそ最後でヘマすんじゃねぇぞ」
ホムロの店を後にし、魔法薬を受け取りに行く。
「確かに50本受け取った。
助かったよカズラさん。アンタの協力がなければ間違いなく詰んでた。
3日間、本当にご苦労様でした」
「……私は自分の仕事をしただけさ。
トーマさんはトーマさんの仕事を全うすればいい」
言われるまでもないな。冒険者ギルドに向かう。
「よーしみんな、今日が最終日だ!思い切り稼いで帰ってくれよ!
オーサンは悪いけど今日1日付き合ってね。
あ、これスクロールとさっき2周してきた分ね」
スクロール2本と荷物の詰まったリュックを2つ渡す。
「そうだ、トーマは7等級に上がったからな。一応報告しておく。
ここまでやったんだからやり遂げて見せろよ?」
どのタイミングで昇級に必要な額に到達したのかは分からないが、7等級に上がったってことは少なくともこの2日間で200万リーフは稼げているってことだと思う。
試算は大きくは外してなかったってことだ。
それならば今日探索を済ませれば問題なく目標額に到達できるだろう。
「よし、じゃあ行こうか。みんな最後までよろしく頼む」
本日の業務を開始する。
魔物を殺しつつも考える。
今回の3日間、話を聞いた日を入れて4日間のデスマーチであるが、ぶっちゃけ日本で働いたことのある人ならば、そこまでデスマスケジュールには感じないんじゃないかと思う。
リンカーズの1日が24時間なのかは分からないけれど、1日10回探索してまだ余裕があるくらいなので、仮に1日を24時間と仮定した場合、1回の探索は2時間弱で終わっていることになる。
探索が終るごとに短時間ではあるが休むことも食事することも出来ているうえに、1日の最後は2時間くらいの睡眠が取れている。
長時間の睡眠が取れないのは辛く感じるけれど、この程度のスケジュールでデスマなんて言ったら「本当のデスマーチというものを教えて差し上げますよ」とか言いながら、謎の強キャラが襲い掛かってくるかもしれない。
俺が日本で勤めていた職場は全くブラックではなかったので、職場ではこのような進行をしたことはないが、新作ゲームを攻略するために寝食を削ったことや、オンラインゲームのイベントを一心不乱にぶん回したことは何度もある。
それに、これは俺だけの感覚かもしれないが、時間制限付きの周回って結構燃えるものがあるんだよな。
スコアの途中経過は7等級到達という報告だけで充分。あとはイベント終了までひたすらぶん回すだけ。
予測は立てたけど実際のスコアは確認してない。いったい何処まで伸ばせるか、結構楽しみだったりする。
今も助けを待っている2人には申し訳ないとは思うのだが、怒りや焦燥感、ましてや使命感なんかで4日間も動き続けることは俺には出来ない。
2人を助けることが出来なかった場合、俺は物凄く嫌な気分にはなると思うけれど、実際に俺が何か被害を被るわけでもないのだ。
我ながら薄情で嫌になるが、俺はそこまで情に厚い人間ではない。
今回のことは冷静に試算した上で、自分の手に届きそうだったから挑戦してみただけだ。
実際、オーサン、ホムロ、カズラさん、ポーターの皆、クリリクさんなど、今回協力してくれた人が1人でも協力してくれなかったら、意外と俺はあっさり諦めていたかも知れないと思う。
2人のことは助けたいと思うし、全力を尽くしていることも間違いない。
だけど俺はチートを授かった英雄様ではないのだ。
望めば全てが手に入る主人公様ではない。
自分の手の届く範囲を間違えるな。
俺に出来るのは誰にでも出来る事しかないのだから。
「冒険者ギルドで戦い方を教えてくれるの?」
「そうそう、金がかかるんだけどな。
今回の依頼で世話になってるオーサンが指導してくれるんだよ。
俺も定期的に受けてるんだけど、お前らも一緒に参加しないか?強くなれるぞ」
「僕もトーマみたいに強くなれる……?」
「ははっ、俺今35歳だぜ?お前らの年で俺と同じ訓練始めてみろよ。
お前らが35になる頃には俺どころか、ドラゴンだって倒せるようになってるだろ」
手が届く範囲は間違えちゃいけない。
でも手を伸ばすことを諦めるのはまた違う話だ。
始めは届かなくても手を伸ばし続けていれば、手が届くこともあるかもしれない。
10回の探索を終え、依頼分のノルマは達成した。
朝まではまだ時間がありそうなので、いつも通りソロ探索を開始する。
1回探索を終えた時点でまだ夜は明けていない。
念のためもう1周こなすかとも考えたが、そのせいでタイムアップになってしまっては馬鹿馬鹿しい。
俺のデスマーチはここで終了することにしよう。
冒険者ギルドに寄ってオーサンと合流する。
預けていた身分証とスクロールを受け取り、これから一緒に商工ギルドに向かう。
どんな結果になろうとも自分で見届けたいと、オーサンは同行を希望してきたのだ。
ちょうど良いので、奴隷商館まで案内を頼むことにする。
商工ギルドで口座を確認し、目標額に到達していれば奴隷商館へ。
もし足りていなければ、スクロールを売り払って補填する。
さてさて3日間+αのデスマーチ、到達スコアはどんな結果になったかな?
1
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる