異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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5章 カルネジア・ハロイツァ

086 トルネ

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「よし。話も纏まったところで一度帰ろう。
 シン。重症の怪我人を治療するなら何処に連れて行けばいい?
 まだ日没してないか、日が落ちてたとしても時間が経ってないはずだし」

「魔法治療院はいつでも開いてる筈だよ。場所は僕が案内できる。
 ただこの傷だと、最低でも金貨6枚は取られると思うよ。いいの?」

「必要経費だ。割り切るしかないさ。
 迷宮の出口で拘束を解いてやるから、治療して欲しかったら口裏合わせろよ。
 その後奴隷契約を済ませてから、魔法治療院で傷を治してやる」

「はい。絶対に逆らいません。宜しくお願いします」


 めっちゃ従順になったもんだな。まぁまだ命助かったワケでもないが。


「そういやお前、名前は?俺達の事は紹介要らないよな?」

「はい、皆様の事は存じております。トーマ様、シン様、リーン様ですよね。
 私の名前はカルネジ……いえ、私の名前はトルネです」

「カルネジアの名は捨てるのか?」

「はい。私にとってカルネジアの名は、呪いでしかありませんでしたから」



 迷宮を出る前に拘束を解き、トルネを背負って改めて迷宮を出る。


「む?怪我人か。魔物にやられたのか?」


 やはり警備の兵士に声をかけられた。


「いや、彼女が冒険者に襲われていたので救助したんだ。
 照明の魔法で不意を付いたから、相手がどうなったかは分からない。
 中年男性4人のパーティだった」

「ああ!確かにこの女性が、男4人と迷宮に入って行ったのは覚えているぞ。暴行目的だったのか。
 相手がどうなったかは分からないんだったな?」

「ああ、俺達が遭遇したのは7階層だったけどな。
 暗視を覚えていない彼女のために、他4人で魔物を掃討するという話だったんだそうだ」


 話は作るが、なるべく事実も伝えることにする。
 スキルを使えない者が、冒険者に頼んでパワーレベリングを行う事は、珍しくないらしいからな。


「はい。7階層の奥地に行くと彼らは突然豹変して……。
 足と腹を刺され、もう駄目かと思いました」


 まぁ刺したのは俺だけど。


「アンタも災難だったが、トーマに見つけてもらって良かったな。
 話は分かった。行っていいぞ。4人の事はこっちに任せてくれ。
 この女性の事はトーマに任せていいのか?」


 まぁもう全員死んでるんですけどね。「任された」と言って入り口を抜ける。
 正直ここが一番の難関だと思ってたから、無事抜けられてかなりほっとしている。



 まずはスレイの奴隷商館に。店は閉まっていたが人は残っていたので、トーマが緊急の案件で来たとスレイに伝えて欲しい、と頼んだらスレイがすっ飛んできた。


「トーマさん!?2人を連れてうちに来ては、商工ギルドで会っていた意味が……!」

「ああ、それはもう意味が無いから良いんだよ。今日は奴隷の個人間契約に来たんだ。
 俺とこのトルネとの契約、契約内容は俺への絶対服従で。
 俺とトルネの話はついてるから、すぐ対応して欲しいんだよね」


 もう情報が漏れて襲撃までされたので、密会の意味はなくなったこと、襲撃者を返り討ちにして奴隷契約を承諾させたことを伝えて、さっさとスレイに奴隷契約をしてもらう。


「ちなみに、奴隷を解放しようと思ったら、どうすればいいんだ?またスレイのところで手続きしてもらう感じ?」

「そういう事になるな。奴隷契約は国に定められた奴隷商人以外には、成立も破棄も出来ないようになっている。
 解放する気になったらもう一度、うちに来てもらうことになるな」


 まぁ奴隷契約を適当に色んな人が成立、解放出来たら、奴隷制度なんて成り立たんわな。


「それではトルネさん。貴方は『絶対服従』という条件で、トーマさんの奴隷になることを承諾するか?」

「承諾します」


 そういうとトルネの左手の甲に奴隷印が現れた。犯罪奴隷印は赤色なんだけど、普通の奴隷印は白いんだな。


「ああ、奴隷印は消しちゃって良いよ。
 あー。あとスレイ。斥候探してもらってるの、見つかってないならやめて良いわ。
 トルネが斥候の知識あるらしいから、こいつに教えてもらうことにした」


 魔装術が無いので迷宮での経験は無いそうだが、カルネジア家での教育で、迷宮の知識は一通り厳しく仕込まれたそうだ。
 ちなみにベイクではなく、シャンダリアとかいう迷宮都市らしいけど、勿論聞いたことはない。



 奴隷契約が済んだので、シンの案内で魔法治療院とやらに行ってみる。
 外観は思ったより大きくないな。もしかしたら入院する場所ってわけじゃないのかな。


「済みません怪我人なんですけど、魔法治療お願いできますか?」


 受付があったので問い合わせてみる。


「はい、大丈夫ですよ。患部と怪我の程度は?」


 中年のおっさんが応対してくれる。ナースさんが良かったなぁ、って異世界リンカーズにナースは居ないか。けっ!


「腹と両足を剣で刺されています。現在は止血ポーションを服用した状態ですね」

「なるほど、重症ですね。治療には金貨8枚頂いても?」


 くっ、シンの見立てよりも高いか。


「はい、お願いします」


 と金貨を渡して治療を頼んだ。


「確かに頂きました。それではすぐに始めましょう。こちらにおいでください」


 そうして奥の、診療室みたいな場所に案内させられた。


 移動中にシンがこっそり教えてくれたが、魔法治療院というのは高価すぎて、治療費を後払いや分割で頼む人が多いらしい。
 一括で先払いしたので、俺達はかなり高待遇扱いで即時治療を受けられた、という話らしい。

 じゃあ一括で払えなかった場合は?

 治療魔法使いの手が空いていたとしても、なかなか治療を受けられず、一定額が支払われた時点でようやく、みたいな感じらしい。

 
 まぁ治療後に踏み倒して逃げるケースもあるらしいから、一概に魔法治療院が悪いとも言いがたい。

 
 どこの世界も医療費ってのは高額だなぁ。
 日本だって、国民皆保険制度があってこその医療水準なんだろうし。
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