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5章 カルネジア・ハロイツァ

106 念願の11階層

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「ついに11階層に来た……。長かったわぁマジで」


 10階層に到達したのっていつだっけ?少なくともソロの頃だったよなぁ。

 って、シンとリーンと再会してから、まだそんなに時間経ってないか?

 デスマに始まり、トルネ襲撃、ハロイツァ撃退までの日々が濃密過ぎて、時間感覚が死んでるなぁ。
 まさか最後に、ハロイツァのアホまで立ちはだかるとはね……。


 初めて降り立った11階層。
 11階層から50階層までを中層域と呼ぶらしい。
 中層域の幅が広い気がするんだけど、実際中層域で活動する冒険者が一番多いらしい。

 51階層以降は全て深階層域と呼ばれ、そこで活動するには少なくとも、4等級くらいの実力は必要との事。
 なんの訓練もせずに、身体能力だけで3等級になったハロイツァは、紛れもないチートキャラだった訳だ。


 ちなみにここ、ベイクの迷宮は89階層まであるらしい。
 89階層到達後、迷宮の拡張は確認されておらず、管理は上手く行っているそうだ。

 当然だけど、迷宮都市の迷宮は、都市の管理する財産・資源扱いなので、勝手に迷宮を殺すと重罪になる。

 
 都市部の外にも割と頻繁に新しい迷宮は誕生し続けているようで、国に報告後、不要と判断された迷宮は討伐対象となる。
 管理外迷宮を殺すことを専門に活動している冒険者も居るそうだ。
 そういった冒険者は3等級以上の者が多いらしい。


 なぜ迷宮を殺す必要があるかと言えば、植物が光合成で二酸化炭素から酸素を生み出してくれるように、迷宮は大気中の魔力を吸って、それを養分としているからだ。
 つまり迷宮が増えすぎると、周辺地域の魔力が枯渇してしまうということを意味する。

 人がしっかり管理すれば、魔法素材の源泉となり得る反面、管理が出来ないと、魔力を食い尽くして凶悪な迷宮が生まれ、枯渇した魔力を補うために魔物が迷宮の外に出て、他の命を脅かしてしまうそうだ。
 まぁいわゆる、迷宮のスタンピードってやつだと思えばイメージしやすいな。


 ちなみに迷宮外でも魔物は出る。なのでこの世界の行商のリスクは結構高いらしい。
 だからこそ、成功すればリターンも大きいらしいのだが。


 さて、流石に中層域というだけあって、なんというか魔力の濃度が来い。

 地図を見ると、10階層と比べてかなり広くなっているようだ。
 まぁ全部回る予定もないけどね。宝箱やイベントがあるわけでもなし。


 11階層からは、木みたいなものが立ってたり、中央まで届く石の柱が立ってたりと、障害物というか遮蔽物みたいなものが所々見られるようになった。
 戦闘に利用できればいいけど、そもそも迷宮の一部なので、あまり信用は置かないことにする。


 探索を続けていると、いぬねこコンビがフードから飛び降りて距離を取った。そろそろ敵が出るらしい。
 しかしこの2匹、最近は誰より早く敵を察知し、自力でフードから飛び降りるので、今まで以上に手がかからなくなった。
 この2匹、生まれたばかりなのに、有能すぎて尊い。


「そろそろ敵が出るみたいだ。気合入れて行こう」


 仲間に声をかけつつ歩を進める。


「来たよ!数はかなり多そう!」


 俺も数百メートル単位のレーダーが欲しいなぁ。
 現在は有効範囲15メートルくらい?戦闘中に使う分には充分なんだけどねー。
 

 そしてブラックウルフさんは高速で走ってきて、勢いそのまま俺たちに襲い掛かってきた。

 外見的には灰色の毛皮で、赤い目の大型犬、ってか狼?みたいな感じだね。

 10階層までと比べるとかなり動きが早く、柱なんかを蹴って、立体的な動きなんかも織り交ぜてくる。
 まぁ今の俺たちが、この程度の速度域で遅れを取る事はないのだが。

 バッサバサと斬り捨てて、残りはあと10体くらいかな、と思ったあたりで、急に距離を取るブラックウルフ。

 俺たち全員を囲むようにして、一斉に遠吠えをあげ始めた。


 ウォォォォォォン。ウォォォォォォォォン。ウォォォォォォォォォォン。
 

 ……む、なんだこれ?
 ちょっと気持ち悪くなってきた?

 ……これって攻撃されてるのか!


 すぐさま音魔法で自分の周りを消音、そのままシン、リーンを回収してトルネのいる場所で全員合流。全員を音魔法で防御する。
 こういう搦め手は初めてだから、びっくりするな。


「助かったよトーマ。魔力感知にも引っかかるから、どうやら魔力を乗せた咆哮のようだね」

「このままじゃトーマの傍から離れられないね。どうやって切り抜けるの?」

「そうですね。私達もトーマくらい音魔法が扱えればいいのですが」


 なんかリンカーズの人は固定観念があるのか、生活魔法の活用があまり上手じゃないんだよなぁ。


「まぁそんなの決まってる。ここから攻撃すればいいだけだ。
 今の皆は、それぞれ遠距離攻撃、持ってるだろ?」


 俺はスリングショットで、遠吠えウルフを狙い打つ。
 魔力を乗せた遠吠えではあったけど、物理的な干渉力はないのか、ダーティストーンはちゃんと飛んでいった。

 シンはストーンバレットを選択。エアスラッシュは射程短いからな。

 リーンはフレイムアロー、トルネは投げナイフで、確実に相手を仕留めていく。


 流石に遠吠えしたままではいい的だと気付いたようで、最後に慌てて襲ってきたが、君らそもそも接近戦で勝てないから離れたの忘れたんですか?
 普通に返り討ちにして、戦闘終了。


 ……かと思ったら、おかわりがまぁまぁの規模でやってきた。あの遠吠えは攻撃だけじゃなくて、救難信号の役割りも果たしたらしい。
 まぁ大して消耗してないから、問題もない。

 増援にはロングソードを仕舞って、ダガー1本で応戦。距離を取ろうとした個体から、スリングショットで優先的に撃ち殺していく。厄介な攻撃はさせなきゃいいだけだ。


 今度こそ戦闘終了。ふわつらコンビも合流してドロップ品を回収する。
 ドロップ品は『狼の牙』。単価80リーフ。鍛冶の素材になるらしい。67個も落ちていた。


 10階層と比べて、一気に難易度上がってない?
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