異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
154 / 580
6章 波乱のヴェルトーガ

135 対策会議① カミングアウト

しおりを挟む
「ギルドマスター、警備隊隊長、そしてディオーヌ様自らがおいでになられた。
 皆様もうお揃いになっているので、お前達もすぐ会議室まで来て欲しい」


 おっと、軽く眠ってしまっていたようだ。
 同じく眠っていたみんなも、今ので目が覚めたらしく、案内の男に付いていった。


「失礼します。情報提供者のパーティを連れてきました!」

「入れ」


 直ぐに入室の許可が出され、案内の男に促されて入室する。
 案内してきた男は、俺たちが入室すると出て行った。


「またすぐお会いしてしまいましたねトーマさん。
 ヴェルトーガの騒動に巻き込んでしまってお恥ずかしい限りですが、馬鹿猫を退けるほどの冒険者であるトーマさんが居るときで良かった、とも考えてしまいますね」


 ……馬鹿猫って、もしかしてハロイツァのことか?


「先日振りですディオーヌ様。
 微力ながら、ヴェルトーガの治安維持に協力させていただきますよ」


 軽く会釈しておく。


「お前達のことは簡単に聞いているぞ。異風の旋律の諸君!
 ワシは、ヴェルトーガの冒険者ギルドマスターを勤めている『ガガンザ』だ!
 優秀な冒険者をヴェルトーガは歓迎しているぞ!」


 そう言って右手を差し出してきたので、握手しておく。
 握手の文化って、リンカーズにもあるのね。

 ガガンザは岩のような筋肉に覆われた、2メートル近い身長の大男だ。
 年齢は50代くらいに見えるかな。
 人種っぽいし、白髪もない。


「俺はヴェルトーガ警備隊隊長の『ベンベム』だ。
 正直こちらは少々手詰まりでな。
 そちらの情報提供には期待している」


 ワニ?トカゲ?もしくは大穴のドラゴン?
 なんらかの爬虫類の獣人であろうベンベムは、握手こそしなかったけれど、軽く会釈してくれた。
 「トーマです。よろしく」と、こちらも会釈を返す。


「さて、一応前提を確認しておこう。
 君たちは、誘拐犯と思われる男に襲われ、これを撃退。
 襲ってきた相手の風貌と、能力を教えてくれると聞いている。間違いないか?」


 ガガンザが確認してきたので「相違ありません」と返事をする。


「色々確認したいことがあるが、1つ1つ確認していこう。
 まずは襲ってきた男の風貌を教えてくれ」

「はい。10代後半から20代前半くらいの黒髪の男性。
 身長は俺より高かったと思います。
 顔の特徴は……、そうですね。俺のように、彫りが浅くて平坦な顔だと思います。
 一見した感じでは、装備らしい装備は身につけていませんでした。
 一応右手は斬り落としてありますが、回復されていたら分かりません」

「ふむ。特徴らしい特徴は、黒髪で若い男というところか。
 黒髪は比較的珍しいからな。それだけでも助かる」


 相手は転移能力持ちだからなぁ。
 目撃情報も痕跡もなかったことだろう。


「それでトーマさん。相手の能力とは一体なんなのですか?」

「はい、ディオーヌ様。
 実際に俺が体験した事実と、そこから俺たちが推論したことがありますが。
 相手は魔法名を必要としない転移スキル持ちで、恐らく魔力の溜め時間も必要ありません。
 スキルを発動した瞬間に自由に移動できる、転移スキルの使い手だと思われます」


 俺は襲われた時の状況を、なるべく細かく説明する。


「確かに……、制限無しの転移スキル使いだと仮定すれば、目撃者が居ないのも無理もないが……」

「だが確かに状況を考えると、能力の予想には納得できる部分は多いぞ。
 ワシとて馬鹿げた能力だとは思うが、それがあると考えると、辻褄が合ってしまう」

「トーマさん。他に何か根拠があるのでは?
 無制限転移スキルなど、恐らく私なら、この目で見ても直ぐには受け入れられないでしょう。
 でもトーマさんは、襲われた直後に思い至っておりますよね?
 私達が知らない情報を根拠に、推察しているような気がしてならないのですが、差し支えなければ教えてもらえませんか?」


 教えろと恫喝してこないだけ、ディオーヌ様は理性的なんだろうな。
 異世界転移者と、リンカーズの住人の常識の違いに気付いて、すぐに指摘してくるあたり、この人を敵に回すのは避けたい。


「そうですね。
 教えるのは構いませんが、俺が話すことが信じられなくても、それは俺の責任じゃありません。
 皆さんが信じられなかろうが、嘘だと思おうが、俺は責任を持てません。
 ですが、俺がこうして捜査に協力しに来ている事実を重視してもらえたら嬉しいですね」


 簡単な前置きで、一応責任逃れもしておく。
 戯言を!とか言ってキレられても、こっちだって困るからな。


「俺と、こっちのハルもなんですけど、元はリヴァーブ王国の外から転移して来ました。
 そして、今回の犯罪者も、恐らく俺たちと同郷である、というのが俺たちの情報の根底ですね」

「……リヴァーブ王国の外ですって?トーマさん、貴方は一体何を」

「信じられないというのは理解できます。
 ただ捜査に協力する気はありますよ。
 戯言だと切って捨てるなら、ここで話は終わります」


 そう言って一旦口を閉じる。
 信じられないなら話は終わりだ。

 話が進まないから協力する義理もない。
 その時はとっととベイクに帰ろう。


「リヴァーブ王国の外と言うのは、具体的にはどこになるんだ?」

「場所は分かりません。
 俺は気付いたらいきなりベイク付近に立っていたんですよ。
 なので元の場所も分からないし、帰り方も分かりません。
 ついでに言うなら、リヴァーブ王国に転移させられた理由も知りません」

「……なぜ犯罪者達が、自分たちと同郷だと思うのだ?」

「第一印象は勿論外見ですね。
 俺たちの故郷の人間は、黒髪で薄い顔が一般的でしたから。
 そしてもう1つは、これも印象の話になってしまって根拠と言っていいのか分かりませんが、外から来たやつって浮いてるんですよね。
 リヴァーブ王国民なら誰でも知っていることを知らないから。
 そういう雰囲気って、なんとなく感じ取れると思います。
 俺自身、散々変人扱いされてますし」


 そのおかげで、異風の旋律なんてパーティ名にさせられたくらいだからな!


「……話の腰を折りました。
 信じる信じないは、まずトーマさんの話を聞き終えてから判断します。
 まずはトーマさんが私達に伝えたい、最も重要な情報をまず教えてくれますか?」


 信じられない、という感情や常識は一旦置いて、まずは情報の引き出しにかかるか。


「そうですね。私が伝えたいのは大まかには4点。
 犯人は、恐らく単独犯ではないだろうということ。
 その全員が、何らかの非常識な能力を有しているであろうということ。
 犯人たちはリヴァーブ王国に地の利もなく、かつ常識もないであろうということ。
 犯人たちは非常識な能力はありますが、恐らく祝福の儀をまだ知らないであろうということ、ですね」


 今後はもっと転移者が押し寄せる可能性もあるけど、それは今回の件には関係ないので保留しておく。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...