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6章 波乱のヴェルトーガ
136 対策会議② チート能力者
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「これから、更に非常識な話が続きます。
確認したいことや指摘する部分があれば、遠慮なくお願いします。
俺自身、完全に事態を把握しているわけではありませんから」
まぁ全部信じてもらう必要はない。
結果的に、今回の事件の解決に結びつけば充分だ。
「1点目。なぜ複数犯を疑うのか。
ハルがこの国に来た時の話になるのですが、この国に送られる際に、望みを1つ叶えて貰えるそうなんです。
恐らく今回襲ってきた男は、転移能力を望んだのでしょう。
でも、シンに腕を斬られていることもあって、あの男の戦闘力はさほど高くありません。
5等級冒険者を連れ去る事は出来ても、扱いきれるとは到底思えません。
恐らく、戦闘に特化した能力を持つ仲間がいると想定してます」
「望みを叶える、だと……?それでは、それではまるで!」
「はい。俺は直接会うことは出来ませんでしたが、俺をリヴァーブ王国に送った相手は『神』を名乗っていましたよ。
世界の管理者にして、この世界の創造主と自称してました。
根拠を聞かれても答えようがありませんが、少なくとも俺は真実だとは思ってます」
「創造神にして世界の管理者……?
この世界に居る神々よりも高位の存在……?」
「トーマって、神様に会ったことあるの?」
「直接会ったことはないって言ったばっかだろ。
おかげで俺は望みも聞いて貰えなかったし、散々だよ」
実際感謝したり恨み言いったり、俺の中での神様の評価って、定まってないんだよな。
リーンとトルネのことがあるから、最終的にはプラス評価って感じだけど。
「送り主が神かどうかは分かりません。
今重要なのは、送られてくる人は、1つだけ願いを聞いて貰えるということです。
転移能力者だけで、複数の人を連れ去って管理できるとはとても思えませんので、犯人は複数犯だと予想しました」
「……ええ、まずは事件に関係のある話だけ進めましょうか。
確かに戦闘能力のない者が、5等級冒険者を扱いきれるとは思いませんが、それならば、考えたくはありませんが、被害者を殺害してしまえば済む話ではありませんか?
死体は転移で遠くに遺棄すれば……」
「そこで1つ、確認しておきたいことがあるんです。
行方不明者って、もしかして全員若い女性だったりしませんか?」
「……そういう、ことですか。
はい。現在確認されている行方不明者は5名。
いずれも10~20歳の女性ですね……」
「そうですか。
となると、酷い扱いを受けている可能性は高いですが、まだ命だけは助けられるかもしれません。
私達の故郷でも殺人は非常に重い罪で、常識的な思考を持っていれば、簡単に人を殺すことは出来ないと思います。
……勿論、誘拐や暴行も非常に重い罪ではあるのですが」
「今考えても仕方ないことに、時間をかけても仕方ありません。
話を進めてください」
「はい。2点目の全員が非常識な能力を持っているというのは、望みを使って能力を得ているということですね。
それで、ある程度ではありますが、能力にはいくつか候補があります」
「続けなさい」
ディオーヌ様に促されたけど、一旦ハルに話を振る。
「なぁハル。異世界転生物でさ、パッと思いつくチート能力って何がある?
長距離転移もチートだよな?」
「うん。パッと思いつくものなら、容量無制限で、入れた物の時間が停止する亜空間収納?
あとは回復魔法は外せないよね。
鑑定なんかもチートかなぁ?でも能力が一つで鑑定はハズレ?
あとは、覚えるだけで世界最強になれるような攻撃能力とか、危険予知能力とか?
最近だとネットに繋がれる能力や、あっちの持ち物を持ち込める能力なんかも人気だよね!
成長ボーナスとか、テイム能力なんかも捨てがたいかしら?」
「ハルーストップストップ。
ハルがファンタジー大好きなのは分かったから、ちょっと待って」
「……貴方達はいったい何を仰っているのかしら?
チート能力とはなんのことです?」
「はい。俺たちの故郷では、あまりにも非常識で理不尽な、反則級に便利で強力な能力のことを、チート能力と呼ぶ場合があります。
無制限の即時転移は、まさにチート能力と言えますね。
そして、俺たちも相手も同じ故郷を持つもの同士、ある程度発想は似ていると思うんです。
まぁここからは完全に根拠無しの想像になりますが」
ディオーヌ様が小さく頷く。
「まず間違いなくいると思うのが3つ。
荷物を好きなだけ携帯できる能力と、右腕の欠損すら直せる回復能力者、そして戦闘に特化した能力者ですね。
犯人が何名いるかは不明ですが、恐らく戦闘系能力者は、1人では無いと思います。
そして無制限携帯能力と強力な回復魔法は、チート能力を考えた時に真っ先に浮かぶものだと思います」
「欠損すら直せる回復魔法……。
無制限に物を運べる能力……。
そして、即時転移能力者か。
正に神の御業と呼ぶに相応しいな。
犯罪者で無ければいくらでも身の立てようがあったものを……」
全くだよ。
転移とアイテムボックスを使えば、行商だけで、笑いが止まらないくらい稼げるだろうに。
魔法治療院と競合するけど、回復魔法で金取ってもいい。
戦闘力があるなら、それこそ冒険者として身を立てれば良かったのになぁ。
「トーマさんの話が真実であったと仮定して。
そのような理不尽な能力を備えた集団を止める術など、あるのでしょうか?」
ディオーヌ様が話をまとめて、更には先に進めてくれた。
実際大切なのは、どう対応するかだもんな。
「対抗策はあると思います。
私もハルもそうなのですが、リヴァーブに来たばかりで、常識も知識もありません。
チート能力に目を奪われがちですが、逆に言えばそれ以外の能力は平凡なはずなんです」
1人1つしか能力が貰えないことが前提であるならば、付け入る隙はいくらでもある。
チート能力さえなければ、今まで喧嘩する機会すら少ない、平和な日本に住んでいた人間なのだから。
確認したいことや指摘する部分があれば、遠慮なくお願いします。
俺自身、完全に事態を把握しているわけではありませんから」
まぁ全部信じてもらう必要はない。
結果的に、今回の事件の解決に結びつけば充分だ。
「1点目。なぜ複数犯を疑うのか。
ハルがこの国に来た時の話になるのですが、この国に送られる際に、望みを1つ叶えて貰えるそうなんです。
恐らく今回襲ってきた男は、転移能力を望んだのでしょう。
でも、シンに腕を斬られていることもあって、あの男の戦闘力はさほど高くありません。
5等級冒険者を連れ去る事は出来ても、扱いきれるとは到底思えません。
恐らく、戦闘に特化した能力を持つ仲間がいると想定してます」
「望みを叶える、だと……?それでは、それではまるで!」
「はい。俺は直接会うことは出来ませんでしたが、俺をリヴァーブ王国に送った相手は『神』を名乗っていましたよ。
世界の管理者にして、この世界の創造主と自称してました。
根拠を聞かれても答えようがありませんが、少なくとも俺は真実だとは思ってます」
「創造神にして世界の管理者……?
この世界に居る神々よりも高位の存在……?」
「トーマって、神様に会ったことあるの?」
「直接会ったことはないって言ったばっかだろ。
おかげで俺は望みも聞いて貰えなかったし、散々だよ」
実際感謝したり恨み言いったり、俺の中での神様の評価って、定まってないんだよな。
リーンとトルネのことがあるから、最終的にはプラス評価って感じだけど。
「送り主が神かどうかは分かりません。
今重要なのは、送られてくる人は、1つだけ願いを聞いて貰えるということです。
転移能力者だけで、複数の人を連れ去って管理できるとはとても思えませんので、犯人は複数犯だと予想しました」
「……ええ、まずは事件に関係のある話だけ進めましょうか。
確かに戦闘能力のない者が、5等級冒険者を扱いきれるとは思いませんが、それならば、考えたくはありませんが、被害者を殺害してしまえば済む話ではありませんか?
死体は転移で遠くに遺棄すれば……」
「そこで1つ、確認しておきたいことがあるんです。
行方不明者って、もしかして全員若い女性だったりしませんか?」
「……そういう、ことですか。
はい。現在確認されている行方不明者は5名。
いずれも10~20歳の女性ですね……」
「そうですか。
となると、酷い扱いを受けている可能性は高いですが、まだ命だけは助けられるかもしれません。
私達の故郷でも殺人は非常に重い罪で、常識的な思考を持っていれば、簡単に人を殺すことは出来ないと思います。
……勿論、誘拐や暴行も非常に重い罪ではあるのですが」
「今考えても仕方ないことに、時間をかけても仕方ありません。
話を進めてください」
「はい。2点目の全員が非常識な能力を持っているというのは、望みを使って能力を得ているということですね。
それで、ある程度ではありますが、能力にはいくつか候補があります」
「続けなさい」
ディオーヌ様に促されたけど、一旦ハルに話を振る。
「なぁハル。異世界転生物でさ、パッと思いつくチート能力って何がある?
長距離転移もチートだよな?」
「うん。パッと思いつくものなら、容量無制限で、入れた物の時間が停止する亜空間収納?
あとは回復魔法は外せないよね。
鑑定なんかもチートかなぁ?でも能力が一つで鑑定はハズレ?
あとは、覚えるだけで世界最強になれるような攻撃能力とか、危険予知能力とか?
最近だとネットに繋がれる能力や、あっちの持ち物を持ち込める能力なんかも人気だよね!
成長ボーナスとか、テイム能力なんかも捨てがたいかしら?」
「ハルーストップストップ。
ハルがファンタジー大好きなのは分かったから、ちょっと待って」
「……貴方達はいったい何を仰っているのかしら?
チート能力とはなんのことです?」
「はい。俺たちの故郷では、あまりにも非常識で理不尽な、反則級に便利で強力な能力のことを、チート能力と呼ぶ場合があります。
無制限の即時転移は、まさにチート能力と言えますね。
そして、俺たちも相手も同じ故郷を持つもの同士、ある程度発想は似ていると思うんです。
まぁここからは完全に根拠無しの想像になりますが」
ディオーヌ様が小さく頷く。
「まず間違いなくいると思うのが3つ。
荷物を好きなだけ携帯できる能力と、右腕の欠損すら直せる回復能力者、そして戦闘に特化した能力者ですね。
犯人が何名いるかは不明ですが、恐らく戦闘系能力者は、1人では無いと思います。
そして無制限携帯能力と強力な回復魔法は、チート能力を考えた時に真っ先に浮かぶものだと思います」
「欠損すら直せる回復魔法……。
無制限に物を運べる能力……。
そして、即時転移能力者か。
正に神の御業と呼ぶに相応しいな。
犯罪者で無ければいくらでも身の立てようがあったものを……」
全くだよ。
転移とアイテムボックスを使えば、行商だけで、笑いが止まらないくらい稼げるだろうに。
魔法治療院と競合するけど、回復魔法で金取ってもいい。
戦闘力があるなら、それこそ冒険者として身を立てれば良かったのになぁ。
「トーマさんの話が真実であったと仮定して。
そのような理不尽な能力を備えた集団を止める術など、あるのでしょうか?」
ディオーヌ様が話をまとめて、更には先に進めてくれた。
実際大切なのは、どう対応するかだもんな。
「対抗策はあると思います。
私もハルもそうなのですが、リヴァーブに来たばかりで、常識も知識もありません。
チート能力に目を奪われがちですが、逆に言えばそれ以外の能力は平凡なはずなんです」
1人1つしか能力が貰えないことが前提であるならば、付け入る隙はいくらでもある。
チート能力さえなければ、今まで喧嘩する機会すら少ない、平和な日本に住んでいた人間なのだから。
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