異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
157 / 580
6章 波乱のヴェルトーガ

138 指名依頼

しおりを挟む
「これは……、まさか本当だなんて……」


 ディオーヌ様が、ハルの識別の書を見て震えている。
 まぁそりゃそうだろうね。
 この世界に生まれた生物には、必ず付与されてるスキルなんだもんな。
 免疫力強化と環境適応の2つは。


 一応祝福の儀は全員で入って、識別も受けなおしたけれど、ハル以外にスキルの獲得者はいなかった。
 仕方ないね。SPそんなに稼げてないしな。

 ハルは元から持っている『リンカーズ会話理解』に加えて、『免疫力強化:小』『環境適応:小』。
 そして無事に『暗視』と『魔装術』を取得した。

 ま、ハルはステータス確認で見れるんだけどね。


「ハル。環境適応取ったから、多分2階層の湿地帯は、かなり楽になると思うぞ」

「ほんと!?あそこホントにキツかったから助かるぅ」


 魔装術にも慣れさせて、魔力量増加トレーニングも開始だなぁ。


「トーマさん。この識別の書、私が預かっても宜しいかしら?
 リヴァーブ王国の外から来たという話をする際に、なによりの証拠となりますから」

「俺は構わないけど、ハルはいいのか?」

「うん。私も構いません」

「ご協力感謝します。ハルさん」


 ディオーヌ様は御付きの人が持っていた、なんかごっつい金属製っぽい箱に、ハルの識別の書を仕舞った。

 あれが自分の識別の書だったら恥ずかしいな。
 ハルも早速後悔してそう。


「よし。とりあえず捜査協力も、これで終わりでいいですかね?」


 今日は迷宮行くか迷うな。
 とりあえず1度宿で一眠りしよう。


「……いえ、トーマさん。もう少し協力してもらえませんか?」

「え?」


 まだ解放してくれないの?
 1回寝たいんだけど。


「ヴェルトーガを治める水のタイデリア家当主、タイデリア・ディオーヌの名で、異風の旋律に依頼します。
 内容は、異邦人の犯罪者集団の鎮圧の協力。
 報酬は希望があれば窺いますが、とりあえず空間魔法のスクロールを提供しましょう。
 どの魔法になるかは、働き次第ということでいかがでしょうか」

「……1等級指定の犯罪者集団に太刀打ち出来るほどのパーティじゃないですよ?ウチは」

「直接戦闘を行って、鎮圧に加わって欲しいとまでは言いません。
 貴方達の知識と発想が無いと、今回の事件、解決出来ないような気がしますの」

「……これって、今すぐ返事しないと駄目ですか?
 一旦持ち帰って相談することって出来ます?」

「ああ、それは勿論構いませんわよ。
 私のほうも冒険者ギルドに、正式に依頼を出しておきます。
 ここヴェルトーガに住まう者たちのために、どうか協力して頂きたいですわ」


 ディオーヌ様は部屋を出て行こうとする。


「ディオーヌ様、1つだけ教えてもらえますか?
 いくら犯人に接触したといっても、ディオーヌ様まで冒険者ギルドに来たのは何故ですか?」


 四大精霊家当主が、知り合いとはいえ、ただの冒険者の情報提供に立ち会うために直々に足を運ぶなんて、ちょっと異常だろ。
 何か理由があったんじゃないのか?


「ああ、それはシンくんに会いたかっただけですわ」


 そっちかよ!!!ほんとブレねぇなこの人は!!!


「それでは御機嫌よう。
 色好い返事を期待しておりますわ」


 超が付くほどの美人だし、家柄も良くて大金持ち。
 立ち振る舞いにも気品があって、他人を思いやる心も持ってるのに、変態なんだよなぁ。

 変態なんだよなぁ……。


「なんかすげぇ疲れたわ……。
 とりあえず宿に戻って1度休もうぜ。依頼の話もしなきゃだし」

「そうだね。でもちょっと意外だった。
 トーマなら、あそこで即答して依頼を請けるかと思ったよ」

「あーそういうのも宿に帰ってからにしようぜ。
 帰る途中に適当に食えるもの買って、宿で一旦落ち着こう」

「はーい。色々あって目が冴えちゃったけど、ご飯食べれば眠くなるかなー?」

「そうですね。トーマに聞きたいことが増えてしまった感じですよね」

「うん。私も流石に一旦休みたいな。
 初めて魔物を殺したとか、そんなこと気にしてる場合じゃなくなっちゃった」


 ハルにとっては、幸運だったのか不幸だったのか分からないな。


 帰り道で目に付いた屋台で適当に食べれるものを買って、水のせせらぎ亭に戻ってきた。

 俺が泊まっている部屋は、元々は4人部屋なので一番広い。
 ここで軽く物を摘みながら、依頼の件を相談する。


「俺個人の心情だけで言えば、出来れば請けたくねぇんだわ。
 相手の能力が本当に読めないし、読めないけど強力で反則なのは、間違いないからさ。
 かなり危険度の高い依頼だと思うんだ」

「それは確かにね。僕はチート能力っていまいちよく分かってないけれど、無制限転移能力者はこの目で見たから。
 あれと同じくらいの理不尽な能力者が複数居るって時点で、危険度は計り知れない」

「私は出来れば請けたいな。
 私もハロイツァに狙われて、結局は無事だったけど。
 今も慰み者にされている人がいるなら、助けてあげたいよ」

「私も被害者を助けてあげたいとは思いますが……。
 そのために我々の手に負えない依頼に手を出すのは、正直反対ですかね」

「うん。危険な依頼だと思う。でも私は請けたいな。
 私やトーマが悪いわけじゃないけれど、誰かが止めなきゃいけないなら、私たちが止めてあげたいって思う」


 そうなんだよなー。
 別に俺らが悪いわけじゃないはずなんだけど、微妙に申し訳ない気持ちになるんだよな。
 うちの転移者が迷惑かけてすみません的な。


「俺は請けたくない。本気で請けたくないんだけどさ……。
 俺らって、1回相手を撃退してるわけじゃん?右腕まで切り捨ててさ。
 調子乗ってるときに、手痛い反撃を喰らった時って、どんな反応を想像するよ?」

「ん~。私だったら怒るか怖がるかかなー?」

「ですね。私だったら逃げます。
 怪我も治せるのだったらなおさら、これ以上の接触は避けると思います」

「僕は……どうかな。
 ただリーンが言った様に、怒るか怯えるか、だろうね」

「うん、トーマの言いたいことが分かった。
 怒るか怯えるかの選択肢なら、チート能力持ちなら、自分の能力に絶対の自信を持っているのなら、内心怯えていたとしても、怒りと能力に任せて行動を起こしそうだ、ってことよね?」

「そうなんだよな~……。出来れば関わりたくないんだけどさぁ。
 多分俺たち、もうあいつらの標的になってる気がするんだよね……。
 全部丸投げしてベイクに帰っちゃうのも、アリっちゃアリだけどさ。
 標的にされてるなら、逆に潰しておかないと安心できないじゃん?
 だから正直請けるしかないんだよな~。成功報酬も出るわけだし?
 俺たちが単独で狙われるよりは、ヴェルトーガ全体と協力体制にある状態でぶつかる方が、まだ安全なわけだし。
 はぁ~、せっかくの観光が全部台無しだよ、マジで」

「危険な依頼だけど、請けた方が安全度は高い、か」

「素直じゃないなー。
 困ってる人を助けたいって言えば良いんだよー?」

「依頼を請けることはまぁいいんですが……。
 トーマみたいなのを相手にしなきゃいけないと思うと、正直震えます」

「うん。確かに私、というか日本人を集めたがってる感じもしたよね。
 関わりたくなくても、向こうから狙われてる状態なんだね」

「おっけー。結論が出たことだしとりあえず1回寝ようぜ。
 一旦全部忘れて休ませてくれ~。ったくもう!」


 せめて成功報酬だけは、もぎ取ってやるからなぁ!
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

処理中です...