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7章 更なる強さを求めて
195 マーサの作品
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「ん~。例えばマーサの作った装備が役に立つって分かれば、評価が変わって待遇も変わったりとか?」
「いや、難しいだろな。そもそも私の作る武器って未完成のモノも少なくねぇし。
もし有用だとしても、職人は一度決めたことを簡単に覆さねぇんだよ。新しいモノを望みつつも、結局なにより伝統を重んじる人種だからな、職人ってやつは」
まあ腕がいいからこその頑固さでもあるんだろうけどな。
当事者にしてみれば迷惑でしかないが。
「とりあえず未完成品でもいいからマーサの製作品見せてよ。もし完成品にするのに必要なものがあれば、協力できるかも知れないし」
「ああ?物好きな奴だな。
まぁいい。現状話が進まねぇしな。気分転換ぐれぇにゃなるか。
ちょっと待ってろ」
マーサは立ち上がって店の奥に消えていった。っつうか2匹を抱いたまま行きやがった。
「そういえばアルってここにいたままでいいの?ギルドに戻んなくて平気なの?」
「ああ、トーマっちは外から来たんだったね。
ミルズレンダは職人の立場が強いって言ったっしょ?もしも客が職人の機嫌を損ねたら、ギルドの職員が責任持って対応しなきゃならんワケですよ。
ってワケで、客と職人の話が終わるまでギルド員が立ち会うっつーのが、ミルズレンダではあたりめーなのさっ」
ふぅん?ベイクとは色々勝手が違うなぁ。
っつうか素材の流通にまで口出ししてくるあたり、職人連中増長してるようにしか思えない。
「例えば俺の名義で素材を買って、それをマーサに渡すとかは無理なの?」
「ムリっすねぇ。ミルズレンダでは素材の流通先は厳しくチェックされっからさ。いち冒険者に高級素材が流れるってことはありえねぇんよ。
他の職人さんに頼むなんてことももちろん無理だしね。
俺としてもトーマっちもマーサルさんも気にいってっけど、2人と心中はできないからね。他の職人敵に回す行為に協力はできねぇんだわ。ワリーと思うけどね」
「ああ、もちろんアルに、つうか他の人に迷惑をかけるつもりはないよ。
一番角が立たない方法は、やっぱり自力で素材集めてくることか?」
「だね~。流石に流通に乗せない素材までは誰も管理できないし、文句の言いようもないっしょ。
ただマーサルさんも言ってたけど、いくらトーマっちがゲート使えるっても、王国全部回って素材集めるのは現実的とは思えないかな~」
「金で冒険者に依頼するのは?」
「……ん~、多少は楽になるけど、やっぱ大変じゃない?そもそも素材の入手先がわからないとどうにもならないっしょ?
どこに何の魔物が居るのか分かってれば、多少は効率的に回れっと思うけどさ。魔物素材って迷宮では入手できないから、王国全土の魔物に詳しい奴なんていんのかねぇ?」
王国全土の魔物に詳しい奴、か。結局は魔物探しの話に戻るんだな。
金でも力でもない、情報が足りなくて動けないてのは辛いな。解決方法が思いつかない。
「わりーわりー待たせちまったな。未完成品含めて持ってきたからよ。
ここだとあぶねーもんもあるから裏庭に行くぞ」
両手ででかい木箱を抱えてマーサが戻ってきた。ふわわとつららを肩に乗せて。
めっちゃ仲良くなってるやんけ。
マーサに続いて店の裏庭にきて、とりあえず木箱の中身を物色する。
なんか見覚えのあるモンが混ざってんな。
「これってキラーソーサーの皿じゃねぇの?アイツも迷宮外で出るんだ?」
「お、トーマはキラーソーサーと戦ったことあんのか!
これは魔物素材じゃなくてな、あいつの武器を真似て作った出来損ないなんだよ。
ここの迷宮にもキラーソーサー出るんだけどよ。アイツみたいに自由自在に刃物を飛ばせたらすっげぇ強い武器になると思って、自在に動かせるところまでは作ったんだけどよ。重大な欠陥があってなぁ」
「キラーソーサーの武器を再現したって時点でとんでもないと思うけどな。欠陥てのはアレか。魔装術に対応できないってことか?」
「そうそうそれなんだよなぁ。皿を高速回転させながら魔力で動かせる装置までは作れたんだけどよ。魔装術だけはどうしようもないんだよ。そして魔装術がないと深い階層で使えねぇってのはトーマも分かるだろ?」
魔装術は体から離れてもほんの少し維持されるけど、キラーソーサーの武器は飛ばし続けてこその脅威なわけだからなぁ。魔装術とは相性が悪い。
「確かにアイツの皿も強度は低かったからな。横から叩いたら簡単に破壊できたし。
牽制にさえ使えればいいと割り切って、使い捨て武器に、とかは?」
「魔力で動かす仕組みを組み込むのが大変でなぁ。使い捨てで運用できる代物じゃねぇわ」
「じゃあもう攻撃力を諦めて、全力で硬度だけを高めるとかどうよ?高速回転してるんだから、硬度があれば最低限の攻撃力はあるんじゃない?まぁ大型の魔物なんかには使えないとしてもさ」
「いやいや、硬さなんて追求したら重くなんだろ?魔力で操作可能な高速回転の皿ってのはこの重さが限界だよ。これ以上重くしたら魔力で飛ばすのはムリだな」
「ガードストーン使ったり、ブレスエレメントの素材使ったりは?」
「……なるほど、防具素材か。ん~、いい線行ってるような気もするんだけど、そいつらってあくまで防御素材だからな。攻撃に使ったときに硬度が得られるかっつうと、正直上手くいかねぇ気がする」
これも駄目か。まぁマーサがずっと完成させられなかった武器だからな。俺が簡単に完成させられるわけないか。
「軽くて丈夫な素材って言ったら、俺に思いつくのはダーティウッドくらいしかないな」
「いやいや、ダーティ素材って魔力にクソ弱いのは知ってんだろ?魔力を通して操作しようもんなら空中分解するわ」
「いやさ、別に皿の形に拘らないんだったら、こう、プロペラみたいな形にしてさ。回転部分と接触部分を分けて考えればいけるんじゃねぇかなって」
プロペラって言っても分からないだろうから、地面に指で絵を描いて説明する。俺って絵心ねぇな!
まぁ要はヘリコプターみたいに、中心を回転させてメインローター部分で敵に攻撃すればいいんじゃねぇかな。
「まぁでも強い魔物は魔力体なんかも多いから、ダーティ素材をそのまま使っても駄目か。
ダーティ素材と敵との接触部分に、魔力を通さず、軽くて強度もある素材、なんて都合のいいものを挟めれば、解決しそうな気もするんだけど」
少なくともそんな素材は今のところ見たことがないんだよな。というかリンカーズの戦闘って魔装術が根幹にあるから、魔力を通さない素材ってあんまり利用価値無いと思うんだよね。下手したら神様も必要ないと判断して用意してないかもしれない。
「……いや、いやいやいやいや!!!
もしかしたら、もしかしたらだけど、完成出来るかも知れねぇ!!!
トーマ!もう1回イチから全部説明してくれ!考えをまとめてぇんだ!!」
おやおや?ひょっとしてご都合主義素材、あるんですかね?
「いや、難しいだろな。そもそも私の作る武器って未完成のモノも少なくねぇし。
もし有用だとしても、職人は一度決めたことを簡単に覆さねぇんだよ。新しいモノを望みつつも、結局なにより伝統を重んじる人種だからな、職人ってやつは」
まあ腕がいいからこその頑固さでもあるんだろうけどな。
当事者にしてみれば迷惑でしかないが。
「とりあえず未完成品でもいいからマーサの製作品見せてよ。もし完成品にするのに必要なものがあれば、協力できるかも知れないし」
「ああ?物好きな奴だな。
まぁいい。現状話が進まねぇしな。気分転換ぐれぇにゃなるか。
ちょっと待ってろ」
マーサは立ち上がって店の奥に消えていった。っつうか2匹を抱いたまま行きやがった。
「そういえばアルってここにいたままでいいの?ギルドに戻んなくて平気なの?」
「ああ、トーマっちは外から来たんだったね。
ミルズレンダは職人の立場が強いって言ったっしょ?もしも客が職人の機嫌を損ねたら、ギルドの職員が責任持って対応しなきゃならんワケですよ。
ってワケで、客と職人の話が終わるまでギルド員が立ち会うっつーのが、ミルズレンダではあたりめーなのさっ」
ふぅん?ベイクとは色々勝手が違うなぁ。
っつうか素材の流通にまで口出ししてくるあたり、職人連中増長してるようにしか思えない。
「例えば俺の名義で素材を買って、それをマーサに渡すとかは無理なの?」
「ムリっすねぇ。ミルズレンダでは素材の流通先は厳しくチェックされっからさ。いち冒険者に高級素材が流れるってことはありえねぇんよ。
他の職人さんに頼むなんてことももちろん無理だしね。
俺としてもトーマっちもマーサルさんも気にいってっけど、2人と心中はできないからね。他の職人敵に回す行為に協力はできねぇんだわ。ワリーと思うけどね」
「ああ、もちろんアルに、つうか他の人に迷惑をかけるつもりはないよ。
一番角が立たない方法は、やっぱり自力で素材集めてくることか?」
「だね~。流石に流通に乗せない素材までは誰も管理できないし、文句の言いようもないっしょ。
ただマーサルさんも言ってたけど、いくらトーマっちがゲート使えるっても、王国全部回って素材集めるのは現実的とは思えないかな~」
「金で冒険者に依頼するのは?」
「……ん~、多少は楽になるけど、やっぱ大変じゃない?そもそも素材の入手先がわからないとどうにもならないっしょ?
どこに何の魔物が居るのか分かってれば、多少は効率的に回れっと思うけどさ。魔物素材って迷宮では入手できないから、王国全土の魔物に詳しい奴なんていんのかねぇ?」
王国全土の魔物に詳しい奴、か。結局は魔物探しの話に戻るんだな。
金でも力でもない、情報が足りなくて動けないてのは辛いな。解決方法が思いつかない。
「わりーわりー待たせちまったな。未完成品含めて持ってきたからよ。
ここだとあぶねーもんもあるから裏庭に行くぞ」
両手ででかい木箱を抱えてマーサが戻ってきた。ふわわとつららを肩に乗せて。
めっちゃ仲良くなってるやんけ。
マーサに続いて店の裏庭にきて、とりあえず木箱の中身を物色する。
なんか見覚えのあるモンが混ざってんな。
「これってキラーソーサーの皿じゃねぇの?アイツも迷宮外で出るんだ?」
「お、トーマはキラーソーサーと戦ったことあんのか!
これは魔物素材じゃなくてな、あいつの武器を真似て作った出来損ないなんだよ。
ここの迷宮にもキラーソーサー出るんだけどよ。アイツみたいに自由自在に刃物を飛ばせたらすっげぇ強い武器になると思って、自在に動かせるところまでは作ったんだけどよ。重大な欠陥があってなぁ」
「キラーソーサーの武器を再現したって時点でとんでもないと思うけどな。欠陥てのはアレか。魔装術に対応できないってことか?」
「そうそうそれなんだよなぁ。皿を高速回転させながら魔力で動かせる装置までは作れたんだけどよ。魔装術だけはどうしようもないんだよ。そして魔装術がないと深い階層で使えねぇってのはトーマも分かるだろ?」
魔装術は体から離れてもほんの少し維持されるけど、キラーソーサーの武器は飛ばし続けてこその脅威なわけだからなぁ。魔装術とは相性が悪い。
「確かにアイツの皿も強度は低かったからな。横から叩いたら簡単に破壊できたし。
牽制にさえ使えればいいと割り切って、使い捨て武器に、とかは?」
「魔力で動かす仕組みを組み込むのが大変でなぁ。使い捨てで運用できる代物じゃねぇわ」
「じゃあもう攻撃力を諦めて、全力で硬度だけを高めるとかどうよ?高速回転してるんだから、硬度があれば最低限の攻撃力はあるんじゃない?まぁ大型の魔物なんかには使えないとしてもさ」
「いやいや、硬さなんて追求したら重くなんだろ?魔力で操作可能な高速回転の皿ってのはこの重さが限界だよ。これ以上重くしたら魔力で飛ばすのはムリだな」
「ガードストーン使ったり、ブレスエレメントの素材使ったりは?」
「……なるほど、防具素材か。ん~、いい線行ってるような気もするんだけど、そいつらってあくまで防御素材だからな。攻撃に使ったときに硬度が得られるかっつうと、正直上手くいかねぇ気がする」
これも駄目か。まぁマーサがずっと完成させられなかった武器だからな。俺が簡単に完成させられるわけないか。
「軽くて丈夫な素材って言ったら、俺に思いつくのはダーティウッドくらいしかないな」
「いやいや、ダーティ素材って魔力にクソ弱いのは知ってんだろ?魔力を通して操作しようもんなら空中分解するわ」
「いやさ、別に皿の形に拘らないんだったら、こう、プロペラみたいな形にしてさ。回転部分と接触部分を分けて考えればいけるんじゃねぇかなって」
プロペラって言っても分からないだろうから、地面に指で絵を描いて説明する。俺って絵心ねぇな!
まぁ要はヘリコプターみたいに、中心を回転させてメインローター部分で敵に攻撃すればいいんじゃねぇかな。
「まぁでも強い魔物は魔力体なんかも多いから、ダーティ素材をそのまま使っても駄目か。
ダーティ素材と敵との接触部分に、魔力を通さず、軽くて強度もある素材、なんて都合のいいものを挟めれば、解決しそうな気もするんだけど」
少なくともそんな素材は今のところ見たことがないんだよな。というかリンカーズの戦闘って魔装術が根幹にあるから、魔力を通さない素材ってあんまり利用価値無いと思うんだよね。下手したら神様も必要ないと判断して用意してないかもしれない。
「……いや、いやいやいやいや!!!
もしかしたら、もしかしたらだけど、完成出来るかも知れねぇ!!!
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