異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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7章 更なる強さを求めて

208 王国の中と外

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「へぇ。あんたらが話題の異風の旋律さんか。ベイクでは最近よく聞くね」


 身分証を渡し、一応全員狩人ギルドの登録も済ませる。


「その歳で5等級冒険者ってのはなかなか有望だね。
 さて、今日はなにしに来たのかな?狩人生活を始めたいってんなら歓迎するよ」

「ああ、実は今度魔物素材を使って装備を作ることになってね。こっちの2人は見たとおり亜人なんだが、2人に合わせた装備を作るために、亜人に近い魔物の素材が欲しいんだよ。
 魔物素材と言えば狩人ギルドだって聞いたからさ。情報があれば教えて欲しい」

「へぇ?5等級で魔物素材を使った個人専用装備を作るとは、噂通りなかなかイカレてんね。
 場所の指定はあるかい?ってああ、出現地域がベイク周辺じゃなくてもいいかって意味ね」

「ああ、見つかるならどこでもいいよ。これでもゲート利用するくらいの余裕はあるんだ」

「ははは、流石は期待のパーティだ。羽振りが良くて何より。
 一応魔物の情報は狩人ギルドの大切な情報だから、情報提供料で金貨1枚貰うけどいいかな?」


 冒険者ギルドと違って有料なんだな。
 大人しくアートンに金貨を支払う。


「おお、ゴネずに支払った冒険者って初めて見たよ。それじゃ2階の個室で話そう。案内するよ」


 アートンに続いて2階へ上がった。

 案内された部屋は、20人前後が座れるような、会議室といったイメージの部屋だ。


「いやさ、冒険者ギルドでは迷宮に出る魔物の情報を無料で提供してるでしょ?
 だから初めてここに来た冒険者ってのは、大概情報料を渋るんだよね。
 階層ごとに決まった魔物が出る迷宮と違って、外の魔物の情報は命を左右する価値だってあるってぇのにさ」

「俺の場合はスムーズに話を進めたいだけだよ。でも金を取ったって事は情報には期待していいんだよな?」

「まぁね。狩人ギルド職員たるもの、リヴァーブ王国内の全ての魔物の情報を把握して無いといけないからね。じゃないと狩人達への協力なんて出来ないからさ。
 もしメモがしたいならそこの紙とペンを使っていいからね。ただしメモした紙を第三者に見せたり、紛失したりするのは勘弁してね?
 問題が起きたら罰則の対象になりかねないから」

「了解。んじゃ誰かメモしてくれるか」

「うん。私がやりたい。最近は結構読み書きできるようになってきたんだ。
 シン、間違ってたら指摘してね?」

「わかった。ハルは僕が見ておくからメモは任せてよ」


 ハルが紙とペンを手元に用意する。


「つうわけでアートン。説明頼むわ」

「おう。じゃああんたらは初回だし、ちょっと基礎的な話からさせてもらうぜ?
 魔物にも色々種族があるんだけどよ、基本的に獣人系の魔物をビースト、亜人系をハイブリッド、人種系をヒュームって呼んでるんだ。
 今回はそっちの2人用ってことだし、猫と犬のハイブリッドの説明でいいか?」

「ああ、問題無い。少なくとも居場所は知っておきたい」

「OK。猫のハイブリッド『森の中で光るものグリーントーチ』は、リヴァーブ王国の北に広がる大森林地帯に出現が確認されてる。
 犬のハイブリッド『山に巣食う者マウントハウンド』は、リヴァーブ王国の南側の大山岳地帯のあらゆる場所に出現するぜ。
 とりあえず忠告しとくが、リヴァーブ国境壁の外側は魔物の領域だからな。腕に自信があるにしても、必ず現地の狩人を雇うことをオススメするぜ」

「『国境壁』の外側ね……。つまりゲートで直接飛んでいくことは無理ってことか」

「はは、冒険者にはピンと来ないかもしれないが、狩人の仕事はゲートでいけない場所も多いんだ。
 まぁハイブリッドは基本的にリヴァーブ王国から離れた場所には出ないから、比較的狙いやすいと思うぜ。
 北は『ボールクローグ』、南はミルズレンダまではターミナルで飛んでいけっから、そこから国境壁に向かっていくのがいいんじゃないか。
 現地での案内もその地の狩人ギルドに聞けばいいと思う」


 お、北のボールクローグは行ったことないが、ミルズレンダからいけるのは助かるな。
 つうかミルズレンダってリヴァーブの南側に位置してたのか。


「ちなみに、ビーストとかハイブリッドって間違いなく魔物なんだよな?そういう人種ってワケじゃなくて?」

「ああ、間違いなく魔物だぜ?
 スキルを覚えられなくて、増えるのに生殖行為が必要なく勝手に発生して、人類全てに恐ろしいまでの憎悪を抱いてる生物が魔物だからな。
 なんで魔物が人類を強く憎んでいるのか、そりゃわかってないんだけどな」


 魔物にも明確な定義があるのね。そして自然発生するなら殲滅しても気に病むこともない。
 そういえばアートンはさっきから『出現』って言ってるな。『生息』とは違うってワケか。


「これ以上の詳しい情報は現地のギルドで聞いてくれ。
 あんたらの腕を疑うわけじゃないが、必ず現地の狩人を雇えよ?安全性が全く変わってくるからな。
 解体だってしたことないだろうしよ」

「ああ、約束するよ。助かったよアートン。また何かあれば頼む」

「おう、仕事だからな。料金さえ払ってもらえりゃいくらでも協力するぞ。
 興味があったら狩人として活動してみてくれてもいいんだ。狩人ってのは万年人手不足だからな」


 アートンの勧誘は適当に誤魔化して、狩人ギルドを後にした。


「それにしてもボールクロ-グとウィルスレイアにも行くって事は、トーマは四大精霊家領を全て回ることになるんだね」

「へ?そうなん?」

「そうそう。北のボールクローグは火のカルネジア家、西のヴェルトーガは水のタイデリア家、南のミルズレンダは『土のメーデクェイタ家』、東のウィルスレイアは風のシルグリイド家がそれぞれ治めているんだ。
 リヴァーブ王国の王都『ネヴァルド』は王国の中心に位置していてね。王国の東西南北をそれぞれの精霊家が管理、守護、拡張を任されているんだよ」

「へ~。今までずっと迷宮に篭ってたからな。王国の地理とか位置関係とか初めて知ったよ」

「うん。面白いね。リヴァーブ王国の歴史を感じるっていうか」

「その中でも西のヴェルトーガは大海に阻まれて、東のウィルスレイアは大砂漠に阻まれて、南のミルズレンダは大山岳地帯に阻まれていて、長いこと拡張が成功していないんだ。
 なので今は前線って言われると、北の大森林地帯の拡張を進めている場所を指すことが多いかな」


 全然拡張出来てないじゃん!

 ディオーヌ様ですら苦戦してるのか。
 確か船を沈めるほどの大型の魔物が出るって言ってたもんなぁ。


「ふふ、父さんたちと色んな場所に行くのも楽しかったけど、トーマと一緒だともっと広い世界を旅できるんだなんてすっごく楽しい!
 まさか壁の外にいける日が来るなんて思わなかったな~」

「私もまさかボールクローグを訪れる日が来るなんて思いませんでしたねぇ……。つくづくあの時命乞いして良かったと思いますよ」

「うん。いいね。まさに『冒険者』って感じ。迷宮に篭ってるだけじゃ冒険してるって感じしないもんね!」


 今までずっと迷宮にばかり目を向けていたから、リヴァーブ王国の広さってものに初めて触れたような気がするなぁ。
 
 ただ純粋にこの世界を楽しみたかったなぁ。
 ま、そうすると俺も送られてくることが無かったわけだし、異邦人のトラブルは必要経費みたいなものかね?
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