異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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7章 更なる強さを求めて

209 土のメーデクェイタ

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「悪い。ちょっとこれからリーネ借りていいかな?」

「えっ?えっ?」


 一度自宅に戻り、リーネを拉致する。


「突然悪いね。ただちょっと思いついたことがあってさ。
 リーネには今のうちから、迷宮の外の世界がどんなに広いかを見せておきたいんだよ」

「迷宮の外の世界の、広さ……」


 マーサを拾いにホムロの店へ。


「やぁやぁご両人。そろそろミルズレンダに行くから、マーサ準備いい?
 あ、ホムロ。リーネ用の装備出来てたら今受け取るわ」

「相変わらずむちゃくちゃやってんだなぁテメェは……。
 装備は出来てるぜ。サイズも合ってると思うが、一応確認してくれるか」

「えっ?えっ?えええええええ……!?」

「リーネ、それはカンパニーに必要な備品なんだから素直に受け取るように。
 マーサ。これからどう状況が転ぶか正直読めないからな。覚悟しとけよ」

「ああそりゃ良いんだけどよ。本当にトレポール工房とか他の職人に危害加えるつもりなのか……?」

「いや、その気はなくなったわ。つうか魔物素材の調達の方法もちょっと思いついたんだ。
 マーサの等級も魔物素材の供給制限もどうでも良くなった。っていうか、下手すると立場逆転するかもしんないわ」

「はぁ?
 ……なにをする気か知らねぇけど、他の職人に迷惑をかけないんだったらいいよもう……。
 っていうかその気はなくなったってなんだよ……。完全に本気だったんじゃねぇか……」

「迷惑どころか、ミルズレンダ自体はどんどん発展していくんじゃないかな。今の体制にしがみついてる職人達がどうなるかは知らないけど。俺が直接何かする気はないよ」


 装備品のサイズ調整が終わったリーネが戻ってくる。


「よし。それじゃ行こうぜ。極力揉め事はなし。仮にマーサの待遇が改善しなくても、もう気にしなくていいから」


 店の外にてゲートを発動。


「テメェマジで空間魔法使えるんだな……。
 ちょっと前まで棍棒野郎だったってのに、今じゃマジで一流の冒険者様になっちまったんだなぁ」

「はは、ホムロの棍棒のおかげだな。ま、空間魔法が使えるからって一流かって言われると微妙だけどね。
 そんじゃホムロまた来るわ……って、ホムロもミルズレンダ行きたかったリする?」

「……いや、昔は俺もあそこで鍛冶の修行をしたんだが、あんまり肌に合わなくてな。今さら行きたいとも思えねぇな」


 確かにホムロにミルズレンダは似合わない。


「ははは、ホムロにはベイクが肌に合ったってわけだ。俺もミルズレンダは肌に合いそうにねぇわ。
 そんじゃな。また来るわ」


 ゲートに入って、本日2度目のミルズレンダ訪問。


「こんなに……、こんなにあっさり、ベイクの外に出られる、なんて……」

「はは、今からそんなんじゃ身が持たないぞリーネ。
 これからは迷宮に入らなくても生きられる時代が来るからな。
 お前だってどこにでもいけるし、なんにでもなれるようになるんだ。
 さ、まずは商工ギルドでさっさと用事を済ませようか」


 放心しているリーネを促し、ふわわとつららを肩に乗せたマーサと一緒に商工ギルドへ。
 なんだろ。肩が広くて背も高いから居心地いいんだろうか?
 俺より背が高いもんなぁマーサは。


 商工ギルドに入ると、ジジイとアル、そして見たことのない獣人の、多分男か?がギルドの中央で待ち受けていた。


「来たか!貴様らがローサルを脅迫し、マーサルを誑かした冒険者だな!
 我がミルズレンダは、貴様らの不当な要求には決して屈することは無いぞ!」


 ふむ?どちらさま?


「マーサさんや。ローサルって人とあのなんか叫んでる人ってどなた?」

「あ、ああ。ローサルってのはジジイのことだよ。『ローサルグイン』ってんだ。
 そんで今喋ってる獣人の男は、メーデクェイタ家当主の『メーデクェイタ・ゼルポーナス』だ。
 なんでもジジイと一緒に昔パーティ組んで迷宮に入ってたらしいぜ」

「へぇ?マーサの一件って四大精霊家まで関わってんだ?
 腐ってんねミルズレンダ」


 一歩前に出る。
 話が出来るとは思わないけど、避けられる騒動は避けたいしな。


「お初にお目にかかります、メーデクェイタ家当主殿。俺は異風の旋律のトーマと言います。
 じゃこちらからの要求は全て取り下げますので、それでお話は終わりですね。お疲れ様でした」

「……はぁっ!?
 い、いやふざけるなっ!!マーサルを置いていくのを忘れるんじゃない!!」

「は?マーサはもう職人等級返上済みですよ。そしてこちらの、マーサの職人等級の復帰要求は取り下げました。
 今のマーサは職人でも何でもありません。ミルズレンダに縛り付けられる理由は無いですよね?」

「ふざけるなと言っているだろう!!マーサルはシルバーライト級の職人だぞ!?ミルズレンダの技術を全て修めた、史上最高の天才と言っていい職人なんだ!!
 そんなマーサルがミルズレンダから出るなんて、許されるはず無いだろうがっ!!」


 やっぱ話通じないなぁ。ディオーヌ様が突然変異なだけで、貴族って基本的にクソなんじゃねぇのかなぁ。


「当主殿。話聞いてます?マーサはもうシルバーライト級職人じゃありませんよ?」

「そんなことはない!私の一存でなんとでも差し替えられる!
 マーサルよ!お前はシルバーライト級職人なのだ!ミルズレンダで生きるべき職人なのだ!」

 うっわ。
 最高峰の等級を貴族様の一存で左右出来ちゃうんだ。

 やっぱなんの価値も無いんじゃねぇか、職人等級って。


「ゼルのじいちゃん。悪いけどアンタがなにを言おうと、私はもうシルバーライト級職人に戻る気も、ミルズレンダで生きていく気もないんだよ。
 私は正規の手続きに則って職人等級を返上したぜ。それを不当な理由で妨げるのであれば、王都まで話持ってっても私は構わねぇんだぜ。
 全ての職人には引退の自由が認められているんだからな」

「なぜだ!?お前ほどの職人など、今までのミルズレンダの歴史全てを見渡しても1人も居なかった!!
 そんなお前がなぜミルズレンダを捨てると言うのだ!!?」

「……ゼルのじいちゃんよ。なぜだと?なぜって言ったのか?
 そのミルズレンダ史上最高の職人とやらに、テメェら今まで何してたんだよ?
 なぁジジイよ。なぁアルよ。お前ら今まで私になにをしてきたんだ?この場で言ってみろよ。自分のしてきたことに正当性がある思ってんならよぉ!!!」


 ほんとアホらしいなこの街は。
 最高の職人と認めておきながら、その存在を否定する。
 捨てられそうになったら慌てて縋りつく。


「なぁ!じいちゃんも知ってたのか!?じいちゃんも協力してたのか!?
 そのミルズレンダ最高の職人様はよぉ!!もう何年もまともに鍛冶をしてねぇんだよ!!!
 なぁじいちゃん答えろよ!!私から鍛冶を奪っておきながら、なにがミルズレンダで生きるべきだぁ!?
 お前らが私を殺したんだろうが!!ミルズレンダが私を捨てたんだろうが!!!被害者面してんじゃねええええええええええ!!!!」


 くっだらねぇ茶番劇ではあるけど、まぁ戦闘になるよりはマシかな。

 めんどくさいことこの上ないけど、穏便な展開と言えなくもないな、うん。
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