異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
240 / 580
7章 更なる強さを求めて

210 職人の矜持

しおりを挟む
「ほらお三方。マーサが聞いてますよ。
 今までマーサがどんな扱い方をされてきたのか3人ともご存知でしょ?マーサを引き止めたいなら話した方がいいんじゃないですかね。
 それとも後ろ暗い理由でもあんの?」


 マーサに問いかけられても、俺が返答を促しても、3人は固まったまま喋ろうとしない。


「マーサ。こいつら喋んないから、俺の予想でいいなら全部言っちゃうおうか?」

「はぁ!?知ってんのならハナっから説明しやがれ!!」


 なんで俺が噛みつかれなきゃなんねぇんだよ。はーアホらし。


「まぁこいつら結局、お前の才能に嫉妬してるだけなんだよ。ジジイも言ってたしな。
 自分たちが苦労して得たスキルを、マーサは物心ついた時から持ってて、俺はあんなに苦労したのに、マーサは何の苦労もなくスキルを得るなんて許せない。妬ましい。羨ましい。
 マーサが成功するなんて許せない。そうだ。マーサに素材を供給するのをやめよう。ミルズレンダ史上最高の職人が、ミルズレンダの全てを修めた職人が、才能の劣る自分に逆らえないなんて愉快で仕方ない。
 苦しめ。もっと苦しめ。お前の苦しむ姿が俺たちの楽しみなんだ。
 俺たちのマーサ。お前がミルズレンダを出ることは許さない。お前は俺たちの最高の玩具なんだ」


 一旦言葉を切って3人を見るも、特に反応はない。


「……って感じだろ。キッモ。
 見ろよ。3人とも言い返しもせず震えてるだろ?あれって図星だから言い返す言葉が出てこないんだよ」

「嫉妬だと……?玩具だと……?そんな、そんなくだらねぇ理由だったって言うのか!?
 私が何年も鍛冶が出来なかった理由は、そこまでくだらねぇ理由だったって言うのかよっ!?」


 俺の言葉を否定もしないし、マーサの言葉にも返答しない。
 まさに話にならないって奴だな。

 ジジイに歩み寄って、強制的に目を合わせる。


「ジジイ……ローサルだったか。お前がマーサをそういう存在に作り上げただろうが。
 生まれたばかりの赤子を背負って、お前がスキルを覚えさせたんじゃねぇのかよ。
 鍛冶の技術を叩き込んだのだってお前だろうが。
 お前本当に職人かよ?職人が自分の作品に嫉妬してどうすんだ?
 自分の作品に自分で傷をつけて遊ぶようなお前は、本当に職人を名乗っていい存在なのか?
 トレポール工房が、ミルズレンダが連綿と繋いできた歴史の果てに生まれた最高の職人を否定したお前は、職人を名乗っていいのか?
 作品を愛せない職人なんかを、作品が愛してくれるわけないだろ」


 アルに歩み寄って目を合わせる。


「なぁアルよ。さぞかし楽しかったんだろうなぁ。
 幼い頃から何でも出来た天才の女の子が、何にも出来ずに自分に頼る様を見ているのは、どんなに興奮した?
 俺がなんとかするから!俺が助けてみせるから!って言ってる裏で、マーサの冷遇に加担していてどんな気分だったんだ?
 マーサがスキルを覚えるのが早かった理由は、ミルズレンダの人間なら誰でも知ってんだろ?幼馴染のお前なら、誰よりも知っていたはずだよな?そんなのマーサじゃなくてローサルがしたことだってことを。
 マーサになんの落ち度も無いことなのにお前は勝手に嫉妬して、マーサに追いつく努力もせずに、マーサを引き摺り下ろすことで快感を得ていたんだよな?
 なんだっけ?マーサが好きとか言ってたっけ?あれってさ、自分が冷遇してることも知らずに、健気に自分に頼ってる馬鹿なマーサの姿を見るのが、好きで好きでたまらないってことなんだろ?」


 ゼルポーナスに向き直る。


「それでなんでしたっけ?リヴァーブ王国四大精霊家が1つ、土のメーデクェイタ家当主、ゼルポーナス殿。
 お前達の不当な要求には屈しない、でしたっけ?ご立派ですね。
 で?お前らがマーサにしてきた行いは不当じゃなかったのか?
 ふざけるなって言ってたな。お前らがマーサにやってたことこそふざけてんじゃねぇのか?
 俺に対してマーサを誑かしたとか言ってたよな?マーサを苦しめ続けていたお前らが、どの口下げてそんなこと言ってんだ?」


 ロビーの中央に移動し、音魔法全開で声を上げる。


「なにが職人都市ミルズレンダだ!!!なにがシルバーライト級の最高峰の職人だ!!!
 職人都市の歴史が生み出したマーサに怯えて、よってたかって否定して、それでもてめぇら職人かよ!?
 新しい才能に嫉妬するのは仕方ねぇ。でもそこから奮起してより良いものを求めるのが職人じゃねぇのかよ!?
 お前ら全員知ってたんだろが!!マーサの才能も!!マーサの境遇も!!全部知ってて目を逸らしてやがったんだろ!?
 職人都市が聞いて呆れるぜ!!
 ここの奴等には職人としての矜持ってものが、欠片も残ってねぇらしいな!!!」


 ここまで言っても誰一人動くものはいない。がっかりだよ。
 ベイクに根ざした最高の職人とは、比べるのも失礼な連中しかいないのかよ。


「お前らさ。俺の言ってることが間違ってて、自分が正しいことをしている自信があるなら、出るとこ出てもいいんだぜ?
 職人都市ミルズレンダの歴史が産んだ史上最高の職人を、伝統ある工房と四大精霊家が結託して潰そうとしてたわけだからな。
 よりにもよって、職人都市であるミルズレンダで、領主本人が関わってる事件だもんなぁ。王家も本気で調査してくれることだろうな?
 領主本人が主導して、街ぐるみで1人の職人を数年に渡って冷遇していたって真実をしっかり暴いてくれるだろうよ。
 リヴァーブ王国の歴史上、犯罪奴隷に落ちた精霊家の当主って、今まで前例あるのかねぇ」


 何度もディオーヌ様と話したおかげで、精霊家当主とやらを前にしても何にも感じないな。
 というか同じ精霊家当主なのに、ディオーヌ様と比べて小物過ぎて話にならない。


「誰も言い返してもこないし、俺の言葉を否定する奴もいないってことは、俺が言ったことが全部事実ってことみたいだぞマーサ。
 これで満足した?」


 言うだけ言ったのでマーサに納得した確認する。


「満足も納得も理解も出来ねぇよ……。
 ただ1つ、私の居場所なんか始めから無かったってことだけはわかったぜ……。
 文句の1つも言ってやりてぇとこだがよ。トーマが全部言っちまったから言葉が出ねぇや……」

「ま、言いたいことがないなら終わりでいいだろ。人の足を引っ張ることしか考えない奴っているもんなんだよなぁ。
 そんな奴と無理に向き合う必要は無い。付き合うだけ疲れるだけだからな」


 日本だろうが異世界だろうが、自分が上に行くことを諦めて、人の足を引っ張ることが楽しくなっちゃう奴って、別に珍しくもなんとも無いからな。関わるだけ時間の無駄。


「そんじゃ今回の話は、マーサの職人等級を返上したってことで終わりでいいかな?反応も無いし終わりでいいな。
 じゃあ済みません。ミルズレンダの物件を買いたいんですけど、どなたか対応してもらえませんかー?」

「「「「「はぁ!!?」」」」」


 ミルズレンダの住民驚くのはいいんだけど、なんで仲間まで同じ反応なんですかね?


「いや、はぁじゃなくて。あちらさんの話は終わったみたいなんで、次は俺の用件を済ませたいんだよね。
 そこの若い職員は使えなくなったみたいだから、誰か他の職員さん対応してくれない?」

「じゃなくて!?いいのかよトーマ!?あいつらまた私らの邪魔をしてくるんじゃねぇのか!?ほっといていいのかよ!?」

「一度人の邪魔をする楽しみに溺れたやつって、もう絶対直らないんだよね。今なにをしてもどうせまた邪魔してくるよ。それとも殺しちゃう?ってそういうわけにも行かないでしょ?
 足を引っ張られても沈まないほどの力をつければ良いんだよ。そうしたら逆にあいつらの方から手を離せなくなるんだからさ。
 あいつら本人に付き合うのは時間の無駄だ。今後あいつらは完全に無視していいよ。っつうか無視しろ」


 土の精霊家は典型的なゴミ貴族だったなぁ。

 ディオーヌ様はなんなの?突然変異か何か?
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...