異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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7章 更なる強さを求めて

211 表と裏

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「この流れになったのは偶然だけどさ。リーネ。あとでマーサと話してみるといい。
 お前の世界がまた広がると思うぜ」

「……どういうこと、ですか……?」


 まったく話についていけず、混乱した様子のリーネに声をかける。


「マーサはお前とは反対でな。
 家族によって赤子の頃から迷宮に入れられ、物心つく頃には職人として必要なスキルを全て取得。そのあと職人としてあらゆる技術を学ばされ、この街史上、最高の職人と言われるようになった。
 でその結果が、何年もこの街の連中全てから疎まれ、拒絶されていたんだよ」

「……!?
 な、なんで……!?スキルも技術も身につけたのに……!?
 街の人みんなに拒絶されてきたって、それじゃまるで……!」

「……そう、まるでお前みたいだったんだよ。流石にお前ほど酷い環境じゃ無かったみたいだけどな。
 いいかリーネ。迷宮に入ってスキルを得たって、マーサみたいに拒絶されることはあるんだ。でもこれは逆に、迷宮に入らなくっても必ずしも不幸になるわけじゃないってことだとも思うんだよ。
 リーネとマーサは裏と表だと思う。機会があったらゆっくり話してみな。お互い色々思うことがあると思うぜ」


 そんなことを話していると、奥のほうからバタバタと1人の男が走ってきた。


「す、済みません!ワタクシ、商工ギルドマスターの『カサルテ』と申します!
 なにかご用命があるとかで、はい。ワタクシが、案内させていただきます、はい。
 と、とりあえずこちらへ。会議室を用意してあります、はい」

「あ、初めまして。冒険者のトーマっす」


 カサルテさんに案内されて、2階の会議室に通された。


「改めましてトーマさん。ワタクシも常々、ミルズレンダの行き過ぎた職人優遇は問題だと感じておりました。
 先ほどの件が、問題に一石を投じることになるかもしれません。はい。
 ミルズレンダの商工ギルドマスターとして、感謝申し上げます。はい。
 そしてマーサルシリルさん。ワタクシどもが無力なせいで、貴方には長らく辛い想いをさせてしまいました。改めて謝罪申し上げます。はい」

「い、いやいや!商工ギルドが謝るこっちゃねぇって!悪いのは結局職人側なんだからよ」


 実際問題、領主まで加担してる話を商工ギルドで解決できるわけなかったな。
 マーサに謝罪したカサルテさんは、改めて俺に向き直った。


「それはそれとして、トーマさんは大丈夫でしょうか?曲がりなりにもここは職人都市ミルズレンダ。世界中から最高峰の職人と魔物素材が集まる都市です。
 マーサさんが居るなら職人には困らないでしょうが、先ほどのゼルポーナス様の様子を考えると、やはり素材を回してもらえなくなる可能性がありますよ?
 しかもマーサさんは職人等級を返上していますので、それは正当な行いとして認められると思うんですよ。はい」


 語尾が気になって仕方ないけど、この人は中立的な立場に思えるな。まぁ仮にあっちのスパイだとしても、やることは変わらないか。


「それは全く心配要らないよ。これから先、冒険者と狩人の数が一気に増えていくからね。
 そして迷宮のドロップアイテムと違って、魔物素材は必ずしもギルドに卸す必要があるわけじゃないから。
 冒険者ギルドと違って、魔物素材の流通を完全に操作するのはミルズレンダでも不可能でしょ?
 それにいざとなったら自分で取りに行けばいいだけだし。多少めんどくさいけどね」

「な、なぜこれから冒険者と狩人の数が増えるんでしょうか?はい」

「おれがそう仕向けるから。スキルを得るために何年も無駄にするのは勿体無いよ。
 スキルを得る時間を大幅に短縮して、若い人たちの能力を一気に底上げするんだ。
 流通を管理しようとしても、ミルズレンダでは捌き切れないほどの魔物素材が出回るようになるだろうね。
 ってことで、なるべく大きめの物件を買いたいんだよね。複数でもいいけど」

「……なにをされるおつもりなんですか?はい」

「いや?単純に子供達や若い奴等に戦い方を教えてやるだけだよ。一番大変な時期さえ抜ければあとは早いからさ。
 今まで10年かかっていた道が2年、3年で終わるようになるだけでも、状況は一変すると思わない?」


 俺の問いかけには答えず、カサルテさんは腕を組んでうんうん唸っている。


「とりあえずワタクシたちも、ルールに則った行いであれば対応させていただきます、はい。
 でも何らかの違反行為や犯罪行為を認めるわけにはいきませんので、ある程度監視や調査をさせてもらうかもしれません、はい」

「うん。疚しいことをするつもりも、他人様に迷惑をかける気も全く無いよ。
 また近いうちミルズレンダに来る予定が出来たからさ。その時までにお願いね」


 最後に狩人ギルドと救貧院の場所を確認して、商工ギルドを後にした。
 ちなみにまだ固まってて逆にびっくりした。


「ねぇねぇトーマ。ミルズレンダだとカンパニーの活動、邪魔されちゃうんじゃないのー?」

「それならそれで手を引くだけだし。ここで妨害されるなら別の場所でやればいいだけだな」

「それに、ベイクの景気が良くなってるらしいからね。僕たちの邪魔をすれば結局ミルズレンダが置いていかれるだけの話、そういうことだね」

「まぁ、トーマのカンパニーの怖いところって、妨害してもあんまり意味が無いんですよね。元々困窮してる人たちを相手にするわけですから。
 今まで相手にしていなかった人たちが、勝手に莫大な利益を生み出してくれる。邪魔されたとしても、元々何も持ってない人たちですから。ご自由に、って感じですか」

「うん。妨害するくらいなら乗っかっちゃったほうが断然いいんだよね。
 でもここの人たちはどうかなぁ?そんな合理的な考え方が出来る人には見えなかったね」

「……なにが起きてるのか、なにをしようとしてるのか、よく分からないですけど……。
 でもトーマさんは、何かを変えようとしてるんですね……」

「私もここ何年かですっかり牙を抜かれちまってたって気付かされたぜ……。
 この私としたことが、こんな亡霊みたいな都市と心中するところだったと思うとゾッとすらぁな」

 
 話をしながら、救貧院に到着する
 話を聞くとやはりラクではないと言うことなので、金板5枚ほど寄付する。
 取引先の印象は良くしておくに限る。


 そして狩人ギルドへ。
 マウントハウンドを狩りたいので、案内できる狩人の紹介を依頼。

 狩人ギルドを出てベイクに帰った。


「そういえば、なんでお前はジジイと大人しく待ってたんだ?そこからあの流れは理解できないんだけど」


 とマーサに聞けば、ジジイはマーサのミルズレンダ出奔に理解を示して、しかし孫を託す相手を見極めたいとか何とか言って、あそこで待っていたらしい。なのにいきなり武器を持って襲い掛かっていったから、マーサもめちゃくちゃ驚いたと。

 まぁ……、冷遇されてる中で、師匠でも祖父でもある相手を疑えってもの難しいか。


 はぁ~。
 今日1日色々ありすぎて疲れちゃったわ。
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