異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

287 スタンピード④ 消耗と大型魔物

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 櫓の上で、魔力を回復しながら援護射撃を繰り返す。
 本当にボールクローグの戦士達の実力は凄い。
 混ざり出した大型魔物の処理に手間取っているように見える場所が1つもない。戦い慣れている。

 エルハの采配も悪くないらしく、各部隊が魔力切れを起こす前に、上手に予備部隊と入れ替えているようだ。
 すげぇな。確かに有能らしい。後方にいて、前線の消耗具合を把握出来てるんだからな。

 
 しかし翠緑の風はすげぇな。魔装術を使わなくてもかなりの威力を叩きだせる。おかげで魔力回復も順調だ。


「トルネーっ! ここは俺だけで大丈夫そうだ! リーン側の部隊を手助けしてやってくれーっ!」


 中央の最前線で奮闘しているトルネに指示を出す。
 ここは俺1人で問題無さそうだ。


「ハルもシンの援護に向かってくれ。向かう途中でウィンドストームでもぶっ放しちゃってくれよ」

「うん。別に中央だけに魔物の圧力が集中してるわけじゃないみたいだしね。
 今の私なら、3発くらいは放てるかな? ウィンドストーム」


 ハル先生。やっちゃってくだせぇ。

 各櫓には引くほど矢を置いてあるから、まだ当分弾切れの心配はないはずだ。
 俺用の矢はストレージに詰め込んで来てあるから、多分最後まで持つんじゃないかな。
 まぁ切れたら突っ込めば良いだけなんだけど。


 段々3メートルを超える魔物が増えてきたな。
 見覚えのない魔物もチラホラいる。

 とりあえず魔装術を使わなくても射抜ける感じの魔物を優先して落としていく。
 勿論最優先しているのは飛んでいる魔物だけど。

 戦線が全く崩れないおかげで、射手はかなり余裕をもって攻撃できている。
 おかげで飛行型の魔物を殲滅しながらでも、地上に援護射撃が出来るくらいの余裕がある。


 迷宮殺しをして回ってたときの迷宮は、ベイクを基準とするならば、35~45階層クラスの魔物が出現する感じだった。
 途中から歩兵部隊の中には戦力外になってしまう部隊もあるかもしれないけれど、もしそうなったら終わりは近いってことになる。


 被害状況、どうなってるのかな……。
 通信手段でもあればリアルタイムで情報交換が出来るんだけどなぁ。
 
 先ほどからペルたち人員輸送部隊が何度か街を往復する姿は目にしているので、怪我人はチラホラ出始めてるみたいなんだよなぁ。

 死人を出さないってのが現実的じゃないってのは重々承知だけどな。
 それでもやり通さないと、今後の異邦人の扱いに関わってきそうなんだよねぇ。

 だってさぁ。5箇所同時氾濫だよ? 異邦人は見つけ次第処分! って流れになってもなんら不思議じゃない。
 人的被害さえなければ、まだ何とか取り返しが付く、はず……。


 ひたすらに、ただひたすらに魔物を射殺していく。
 さっき一瞬ウィップナーガが見えたな。ベイクの30階層を越えてきたか。

 大型の魔物が増えてきたおかげで、氾濫の密度は少し低くなってきている。
 代わりに魔物が強くなってきて、先ほどから負傷者による部隊入れ替えが何度も行われている。

 頼むぜみんな。怪我はしてもいいから、死んでくれるなよ……!


 俺の前の戦線の維持が辛くなってきているようだ。
 レッサーワイバーンが現れ始めたって事は、間もなくベイク40階層級の魔物が出現するはず。部隊の戦力を上回り始めたか。
 しゃあない。俺も降りて戦線の維持に貢献しよう。

 櫓から飛び降り、そのまま止まらずに最前線に突っ込む。
 はっ! 40階層級がナンボのもんだってんだ。こちとら64階層ソロ攻略してんだぜ、っと。

 ダガーで魔物を殺しまくっていると、あまり足元に魔物の死体が散乱していない事に気付く。よく持ちこたえてくれていたが、少しずつ戦線が押されていたようだな。

 殺す。殺す。斬り殺す。
 やってる事はソロ探索と変わらないんだけど、迷宮と違って魔物がバラけているのが面倒くさい。
 でもバラけてくれているおかげで、会話する余裕があるのはいい。


「なぁ! ここの場所で死んだ冒険者は出たか!?」

「あぁ!? 残念ながら全員しぶとく生き残ってるぜ! まぁ損耗は激しいがなぁ!」

「ははは! いいね! 何よりやる気になる言葉だよ! その調子でよろしくぅ!」


 いいねぇボールクローグ! 未曾有の大災害を前にして、誰も死ぬ気がないってのは最高にいいぜ!

 あとは俺が目の前の魔物を殺しきれば、犠牲者ゼロも夢じゃなくなってきたってことだよなぁ!

 殺す。殺す。殺し尽くす。
 お前らなんかに滅ぼさせねぇよ。

 ブラックタイガーの首を落としながら弓に持ち替え、気付いた端からレッサーワイバーンを落としていく。
 目に見える範囲にいなくなったらダガーに持ち直して殲滅再開。

 遠目にグランドタートルが見える。
 翠緑の風ならグランドタートルの頭を一撃でぶち抜ける。

 いやぁマーサさん、いい仕事してますねぇ!


 グランドタートルって何階層で出るんだっけな? 確か40階層は過ぎてたと思うけど。
 一応こっちの想定では、グランドドラゴンが波になって押し寄せてくるのが最悪のパターンで、グランドドラゴンはベイク50階層の魔物だ。
 出て欲しくはないが、出たら出たで氾濫終了のお知らせみたいなもんだ。


 最後に心核魔獣も出てくるからな。こんな魔物に魔力を消費するわけにはいかない。
 最小の動きで最大の結果を出せ。最大効率で魔物を殺し続けろ。

 集中しろ。まだ削れる。もっと省ける。
 大型の死体が邪魔だな。
 足を置く位置にも気を払え。魔物を殺す位置まで計算しろ。

 殺す。殺す。殺す。殺す。

 常時発動型パッシブスキルが充実したおかげか、体は軽くて疲労も感じない。
 今までやってきた動きの無駄が自分で理解できる。
 まだ削れる。まだ先がある。
 もっと集中しろ。もっと洗練しろ。
 氾濫はこれで終わりじゃないんだ。常に先を見据えて行動しろ。


「……あら?」


 次の魔物がいない?
 それで改めて周りを確認すると、魔物が一体もおらず、他の冒険者の姿もなかった。

 どうやら次の魔物を意識するあまり、かなり突出してしまったみたいだな。

 魔物がいないここにいても仕方ない。
 戻ってみんなに加勢しよう。
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