319 / 580
8章 異風の旋律
287 スタンピード④ 消耗と大型魔物
しおりを挟む
櫓の上で、魔力を回復しながら援護射撃を繰り返す。
本当にボールクローグの戦士達の実力は凄い。
混ざり出した大型魔物の処理に手間取っているように見える場所が1つもない。戦い慣れている。
エルハの采配も悪くないらしく、各部隊が魔力切れを起こす前に、上手に予備部隊と入れ替えているようだ。
すげぇな。確かに有能らしい。後方にいて、前線の消耗具合を把握出来てるんだからな。
しかし翠緑の風はすげぇな。魔装術を使わなくてもかなりの威力を叩きだせる。おかげで魔力回復も順調だ。
「トルネーっ! ここは俺だけで大丈夫そうだ! リーン側の部隊を手助けしてやってくれーっ!」
中央の最前線で奮闘しているトルネに指示を出す。
ここは俺1人で問題無さそうだ。
「ハルもシンの援護に向かってくれ。向かう途中でウィンドストームでもぶっ放しちゃってくれよ」
「うん。別に中央だけに魔物の圧力が集中してるわけじゃないみたいだしね。
今の私なら、3発くらいは放てるかな? ウィンドストーム」
ハル先生。やっちゃってくだせぇ。
各櫓には引くほど矢を置いてあるから、まだ当分弾切れの心配はないはずだ。
俺用の矢はストレージに詰め込んで来てあるから、多分最後まで持つんじゃないかな。
まぁ切れたら突っ込めば良いだけなんだけど。
段々3メートルを超える魔物が増えてきたな。
見覚えのない魔物もチラホラいる。
とりあえず魔装術を使わなくても射抜ける感じの魔物を優先して落としていく。
勿論最優先しているのは飛んでいる魔物だけど。
戦線が全く崩れないおかげで、射手はかなり余裕をもって攻撃できている。
おかげで飛行型の魔物を殲滅しながらでも、地上に援護射撃が出来るくらいの余裕がある。
迷宮殺しをして回ってたときの迷宮は、ベイクを基準とするならば、35~45階層クラスの魔物が出現する感じだった。
途中から歩兵部隊の中には戦力外になってしまう部隊もあるかもしれないけれど、もしそうなったら終わりは近いってことになる。
被害状況、どうなってるのかな……。
通信手段でもあればリアルタイムで情報交換が出来るんだけどなぁ。
先ほどからペルたち人員輸送部隊が何度か街を往復する姿は目にしているので、怪我人はチラホラ出始めてるみたいなんだよなぁ。
死人を出さないってのが現実的じゃないってのは重々承知だけどな。
それでもやり通さないと、今後の異邦人の扱いに関わってきそうなんだよねぇ。
だってさぁ。5箇所同時氾濫だよ? 異邦人は見つけ次第処分! って流れになってもなんら不思議じゃない。
人的被害さえなければ、まだ何とか取り返しが付く、はず……。
ひたすらに、ただひたすらに魔物を射殺していく。
さっき一瞬ウィップナーガが見えたな。ベイクの30階層を越えてきたか。
大型の魔物が増えてきたおかげで、氾濫の密度は少し低くなってきている。
代わりに魔物が強くなってきて、先ほどから負傷者による部隊入れ替えが何度も行われている。
頼むぜみんな。怪我はしてもいいから、死んでくれるなよ……!
俺の前の戦線の維持が辛くなってきているようだ。
レッサーワイバーンが現れ始めたって事は、間もなくベイク40階層級の魔物が出現するはず。部隊の戦力を上回り始めたか。
しゃあない。俺も降りて戦線の維持に貢献しよう。
櫓から飛び降り、そのまま止まらずに最前線に突っ込む。
はっ! 40階層級がナンボのもんだってんだ。こちとら64階層ソロ攻略してんだぜ、っと。
ダガーで魔物を殺しまくっていると、あまり足元に魔物の死体が散乱していない事に気付く。よく持ちこたえてくれていたが、少しずつ戦線が押されていたようだな。
殺す。殺す。斬り殺す。
やってる事はソロ探索と変わらないんだけど、迷宮と違って魔物がバラけているのが面倒くさい。
でもバラけてくれているおかげで、会話する余裕があるのはいい。
「なぁ! ここの場所で死んだ冒険者は出たか!?」
「あぁ!? 残念ながら全員しぶとく生き残ってるぜ! まぁ損耗は激しいがなぁ!」
「ははは! いいね! 何よりやる気になる言葉だよ! その調子でよろしくぅ!」
いいねぇボールクローグ! 未曾有の大災害を前にして、誰も死ぬ気がないってのは最高にいいぜ!
あとは俺が目の前の魔物を殺しきれば、犠牲者ゼロも夢じゃなくなってきたってことだよなぁ!
殺す。殺す。殺し尽くす。
お前らなんかに滅ぼさせねぇよ。
ブラックタイガーの首を落としながら弓に持ち替え、気付いた端からレッサーワイバーンを落としていく。
目に見える範囲にいなくなったらダガーに持ち直して殲滅再開。
遠目にグランドタートルが見える。
翠緑の風ならグランドタートルの頭を一撃でぶち抜ける。
いやぁマーサさん、いい仕事してますねぇ!
グランドタートルって何階層で出るんだっけな? 確か40階層は過ぎてたと思うけど。
一応こっちの想定では、グランドドラゴンが波になって押し寄せてくるのが最悪のパターンで、グランドドラゴンはベイク50階層の魔物だ。
出て欲しくはないが、出たら出たで氾濫終了のお知らせみたいなもんだ。
最後に心核魔獣も出てくるからな。こんな魔物に魔力を消費するわけにはいかない。
最小の動きで最大の結果を出せ。最大効率で魔物を殺し続けろ。
集中しろ。まだ削れる。もっと省ける。
大型の死体が邪魔だな。
足を置く位置にも気を払え。魔物を殺す位置まで計算しろ。
殺す。殺す。殺す。殺す。
常時発動型スキルが充実したおかげか、体は軽くて疲労も感じない。
今までやってきた動きの無駄が自分で理解できる。
まだ削れる。まだ先がある。
もっと集中しろ。もっと洗練しろ。
氾濫はこれで終わりじゃないんだ。常に先を見据えて行動しろ。
「……あら?」
次の魔物がいない?
それで改めて周りを確認すると、魔物が一体もおらず、他の冒険者の姿もなかった。
どうやら次の魔物を意識するあまり、かなり突出してしまったみたいだな。
魔物がいないここにいても仕方ない。
戻ってみんなに加勢しよう。
本当にボールクローグの戦士達の実力は凄い。
混ざり出した大型魔物の処理に手間取っているように見える場所が1つもない。戦い慣れている。
エルハの采配も悪くないらしく、各部隊が魔力切れを起こす前に、上手に予備部隊と入れ替えているようだ。
すげぇな。確かに有能らしい。後方にいて、前線の消耗具合を把握出来てるんだからな。
しかし翠緑の風はすげぇな。魔装術を使わなくてもかなりの威力を叩きだせる。おかげで魔力回復も順調だ。
「トルネーっ! ここは俺だけで大丈夫そうだ! リーン側の部隊を手助けしてやってくれーっ!」
中央の最前線で奮闘しているトルネに指示を出す。
ここは俺1人で問題無さそうだ。
「ハルもシンの援護に向かってくれ。向かう途中でウィンドストームでもぶっ放しちゃってくれよ」
「うん。別に中央だけに魔物の圧力が集中してるわけじゃないみたいだしね。
今の私なら、3発くらいは放てるかな? ウィンドストーム」
ハル先生。やっちゃってくだせぇ。
各櫓には引くほど矢を置いてあるから、まだ当分弾切れの心配はないはずだ。
俺用の矢はストレージに詰め込んで来てあるから、多分最後まで持つんじゃないかな。
まぁ切れたら突っ込めば良いだけなんだけど。
段々3メートルを超える魔物が増えてきたな。
見覚えのない魔物もチラホラいる。
とりあえず魔装術を使わなくても射抜ける感じの魔物を優先して落としていく。
勿論最優先しているのは飛んでいる魔物だけど。
戦線が全く崩れないおかげで、射手はかなり余裕をもって攻撃できている。
おかげで飛行型の魔物を殲滅しながらでも、地上に援護射撃が出来るくらいの余裕がある。
迷宮殺しをして回ってたときの迷宮は、ベイクを基準とするならば、35~45階層クラスの魔物が出現する感じだった。
途中から歩兵部隊の中には戦力外になってしまう部隊もあるかもしれないけれど、もしそうなったら終わりは近いってことになる。
被害状況、どうなってるのかな……。
通信手段でもあればリアルタイムで情報交換が出来るんだけどなぁ。
先ほどからペルたち人員輸送部隊が何度か街を往復する姿は目にしているので、怪我人はチラホラ出始めてるみたいなんだよなぁ。
死人を出さないってのが現実的じゃないってのは重々承知だけどな。
それでもやり通さないと、今後の異邦人の扱いに関わってきそうなんだよねぇ。
だってさぁ。5箇所同時氾濫だよ? 異邦人は見つけ次第処分! って流れになってもなんら不思議じゃない。
人的被害さえなければ、まだ何とか取り返しが付く、はず……。
ひたすらに、ただひたすらに魔物を射殺していく。
さっき一瞬ウィップナーガが見えたな。ベイクの30階層を越えてきたか。
大型の魔物が増えてきたおかげで、氾濫の密度は少し低くなってきている。
代わりに魔物が強くなってきて、先ほどから負傷者による部隊入れ替えが何度も行われている。
頼むぜみんな。怪我はしてもいいから、死んでくれるなよ……!
俺の前の戦線の維持が辛くなってきているようだ。
レッサーワイバーンが現れ始めたって事は、間もなくベイク40階層級の魔物が出現するはず。部隊の戦力を上回り始めたか。
しゃあない。俺も降りて戦線の維持に貢献しよう。
櫓から飛び降り、そのまま止まらずに最前線に突っ込む。
はっ! 40階層級がナンボのもんだってんだ。こちとら64階層ソロ攻略してんだぜ、っと。
ダガーで魔物を殺しまくっていると、あまり足元に魔物の死体が散乱していない事に気付く。よく持ちこたえてくれていたが、少しずつ戦線が押されていたようだな。
殺す。殺す。斬り殺す。
やってる事はソロ探索と変わらないんだけど、迷宮と違って魔物がバラけているのが面倒くさい。
でもバラけてくれているおかげで、会話する余裕があるのはいい。
「なぁ! ここの場所で死んだ冒険者は出たか!?」
「あぁ!? 残念ながら全員しぶとく生き残ってるぜ! まぁ損耗は激しいがなぁ!」
「ははは! いいね! 何よりやる気になる言葉だよ! その調子でよろしくぅ!」
いいねぇボールクローグ! 未曾有の大災害を前にして、誰も死ぬ気がないってのは最高にいいぜ!
あとは俺が目の前の魔物を殺しきれば、犠牲者ゼロも夢じゃなくなってきたってことだよなぁ!
殺す。殺す。殺し尽くす。
お前らなんかに滅ぼさせねぇよ。
ブラックタイガーの首を落としながら弓に持ち替え、気付いた端からレッサーワイバーンを落としていく。
目に見える範囲にいなくなったらダガーに持ち直して殲滅再開。
遠目にグランドタートルが見える。
翠緑の風ならグランドタートルの頭を一撃でぶち抜ける。
いやぁマーサさん、いい仕事してますねぇ!
グランドタートルって何階層で出るんだっけな? 確か40階層は過ぎてたと思うけど。
一応こっちの想定では、グランドドラゴンが波になって押し寄せてくるのが最悪のパターンで、グランドドラゴンはベイク50階層の魔物だ。
出て欲しくはないが、出たら出たで氾濫終了のお知らせみたいなもんだ。
最後に心核魔獣も出てくるからな。こんな魔物に魔力を消費するわけにはいかない。
最小の動きで最大の結果を出せ。最大効率で魔物を殺し続けろ。
集中しろ。まだ削れる。もっと省ける。
大型の死体が邪魔だな。
足を置く位置にも気を払え。魔物を殺す位置まで計算しろ。
殺す。殺す。殺す。殺す。
常時発動型スキルが充実したおかげか、体は軽くて疲労も感じない。
今までやってきた動きの無駄が自分で理解できる。
まだ削れる。まだ先がある。
もっと集中しろ。もっと洗練しろ。
氾濫はこれで終わりじゃないんだ。常に先を見据えて行動しろ。
「……あら?」
次の魔物がいない?
それで改めて周りを確認すると、魔物が一体もおらず、他の冒険者の姿もなかった。
どうやら次の魔物を意識するあまり、かなり突出してしまったみたいだな。
魔物がいないここにいても仕方ない。
戻ってみんなに加勢しよう。
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる