異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
349 / 580
9章 異邦人が生きるために

312 最強の能力とは

しおりを挟む
 各都市での用事を済ませ、ギルドの訓練場で手合わせをする。

 正直俺たちはもう、迷宮探索での技術向上は期待できない。
 だから仲間内で模擬戦を繰り返して、技術の向上を図るしかないのだ。


「はあぁっ!」

「ふっ!」


 シンと木剣で打ち合い続ける。
 お互い強くなったもんだと思うよ実際。

 俺たち一緒にオーサンの訓練受けるまで、まともに戦うことも出来てなかったもんな。

 シンと打ち合いながら、色々な事を考える。
 ずっと一緒に戦ってきた。
 ベイク2層の先に進むために、俺たちは手を取ることを選んだ。

 迷宮鼠なんかに殺されかけていたシンは、今や1等級冒険者を遥かに超える実力を手にした。
 『五感精度上昇』のおかげで、お互いの動きが如何に洗練されてきたのかが理解できる。

 正直な話をすれば、訓練でシンに負ける気はしない。
 しかし実践になると分からなくなる。
 単純な剣術の技術は明らかにシンのほうが高いし、心緑の流刃がシンの剣術と合わさった時、ランドビカミウリすら1撃で両断できる威力を生み出せるのだ。

 更に俺の小細工は初見殺しに使ってこそ、最大のパフォーマンスを発揮する技術だと思う。
 逆にシンの真っ当な剣術の腕は、相手に知られても殆どデメリットなく戦うことが出来る安定した力と言える。

 まずはシンのように、安定して揺らぐことのない実力を高めるのが大切だ。
 小細工は、地力を高めた上での手札の1つとして扱わなければいけない。
 決して小細工に頼ったり、小細工を切り札のように扱ってはいけないのだ。

 基本性能の向上こそが、全ての基礎であり、究極的に到達すべき点だと思う。
 レベル1のユニークスキル持ちよりも、レベル最高の通常キャラのが強いはず。

 今回ボールクローグでの騒動を終えて、みんな1段階成長したように思う。
 俺もうかうかしていられない。

 レンジを見ていて思ったのだが、俺自身複合センサーに頼りすぎているところがある。
 なので今後は訓練では複合センサーを使用せず、俺自身の五感を研ぎ澄ませることを目標にしていく。

 そして複合センサーを使わないと、シンを圧倒する事は出来ないのであった。
 やっぱシンは安定してるよなぁ。


「なぁシン。シンもかなりチート能力者と戦う機会があったよな。
 そんなシンに聞きたいんだけど、リヴァーブ王国で最強を目指すとしたら、シンはどんなチート能力を手に入れたい?」


 日本人だからこそ思いつける発想があるように、リンカーズの人だから思いつくような発想があるかも知れない。
 そして日本人にとっては、リンカーズの発想こそが盲点になるはず。


「ええ? 考えたこともなかったよそんなこと。
 ん~。パッと思いつかないなぁ。チート能力って、幅が広すぎるんだよねぇ……」

「ならこう言い換えようか。今のシンが俺を殺そうと考えるなら、どんな能力が必要だと思う?
 異邦人の発想じゃなくて、シンの発想を聞いてみたいんだよね」

「なるほど。それならかなり能力が絞れそうだね。
 少し考える時間をくれるかな」


 仲間に俺を殺す方法を尋ねるのもおかしいけど、俺が今認識している最強のリンカーズ人はシンだからな。
 お互い実力にも差がないし、具体的な意見を出してくれる気がする。


「まずトーマの戦闘能力なんだけど、この世界でも恐らく最大数のスキル取得数による、身体能力と魔力量の多さ、真面目な訓練に裏打ちされた戦闘技術、そして生活魔法による妨害が目立つよね。
 あとは使用可能な魔法の種類なんかも挙げられるけど、やっぱり基本的な身体能力と戦闘技術に加えて、他の人が真似出来ない生活魔法の応用が厄介だよね」

 
 なんでハルも未だに生活魔法を上手く使えないんだろうなぁ? 流石にリヴァーブ王国民と比べれば巧みな方なんだけど……。


「トーマが一番苦戦したのが速水とランドビカミウリだと思うから、単純に身体能力で圧倒するのが一番手っ取り早いよね。まずはこれが正攻法。
 次に考えられるのが、スキルや魔法を封印する能力かな? 僕たちのスキル取得数って異常だし、もしも無効化されたら相当な戦力ダウンだよね。生活魔法による妨害工作も封じれるわけだし。これが搦め手かなぁ」

「基本性能で圧倒的な差があると、ほんとどうしようもないからなぁ。
 そしてスキルや魔法の封印能力か。そう言うのはチートとしても定番っぽいから、今後現れてもおかしく無さそうだ。
 でも1つしか能力がもらえない縛りで封印能力を選ぶ奴は、少ないかも知れないな……」

「それと今回のタケルの扱いみたいに、洗脳してしまうのもアリだよね。魅了系チートとか言ってたっけ?
 敵に回すと厄介であるなら、敵と認識させなければいいんだし」

「あ~、確かに精神干渉系は厄介だよなぁ……。予防する方法とかないのかな?」

「そう言うのは王族貴族が知ってるかもね。権威ある人たちがタケルみたいなことになったら、影響力大きすぎるでしょ」

「ありそうだな。タケルの洗脳を解除する方法もあったわけだし。
 しかもチートスキルも基本的に魔力消費型だから、対抗策は魔法と同じ扱いでいいんだよな」


 しかも洗脳自体のハードルがめちゃくちゃ高い。
 タケルを洗脳状態にするにも、3つも4つも状態異常重ね掛けしてようやく、だったみたいだもんな。


「僕の印象だと、トーマって敵と味方に対して対応が違いすぎるんだよね。だからトーマを殺そうと思うなら、まずトーマに敵として認識されないのが大事なんじゃないかと思うよ。
 トーマを洗脳してしまえれば最高だけれど、アイソレーションを使った暗殺とか、味方の振りして警戒心を抱かせないとかかな?
 特に警戒心を抱かせない能力って、能力的にも大したことがないし、チート能力の反動も少なそうでしょ?
 それに、戦闘にも日常生活にも、意外と使い勝手が良さそうな能力じゃないかな? 生活魔法みたいで」


 警戒心を抱かせない能力、か。
 なんかそんな能力、なんかの作品で見た覚えがあるなぁ。

 確かに認識阻害系や、認識操作系の能力はかなり厄介だよな。
 そしてチート能力として、思考誘導はわりとポピュラーで、誰でも思いつく能力なんだよな。

 しかし流石は真面目なシンだ。真剣に俺を殺す方法を解説してくれた。

 俺は無敵なんかじゃないからな。
 スタートダッシュでスキルを手に入れまくっただけで、今後迷宮探索の常識が変わっていけば、俺と同数のスキル取得者はいくらでも現れるだろう。

 まさに時間の問題って奴だ。

 王族の方々も、ただちょっとだけ成長が早いオッサンだって評価をしてくれると良いんだけど。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...