異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

閑話029 重視すべきは ※?視点

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「異世界で生きていけるように、1つだけで願いを叶えて差し上げましょう」


 ――――いやぁ参っちゃった。
 まさかこの若さで死んでしまうなんて、想像もしてなかったよ。

 それでも2度目の人生を異世界で送れるなんて、まぁプラスマイナスゼロではあるかな?
 別に日本に不満なんてなかったけど、異世界生活は魅力的だよね!


「すっげーーー! 僕ホントに異世界に来ちゃったよーーー!?」


 プラスマイナスゼロなんて言ってごめんなさい!
 これからの生活、とっても楽しみだよ!


 まず僕は近くに街に行き、すぐに冒険者登録をして装備を整えた。
 拠点を探すよりも収入の確保を優先。
 いくら節約したって、収入がなければ問題の先延ばしにしかならないよね。

 案の定、所持金の銀貨10枚は装備を整えただけでなくなったけど、装備があるから迷宮に入って稼ぐのはそれなりに簡単だった。

 まずは収入を得て、なるべく良い装備品を整え、戦闘技術を磨きながら、どんどん迷宮の先へ進むことを優先する。
 ロールプレイングゲームだって、最初の街で稼ぐよりも、少しでも先に進んだほうが効率よく稼げるからね。
 その分危険ではあるんだけど、最初はちょっと無茶もしよう。大切なのは最初だから。

 僕はこれでも地球ではまぁまぁ優秀に見られていた自信はあるんだけど、周りとの能力差ってそんなにないと思っていた。
 僕が優秀に見られていた理由は唯1つ。僕が早熟だったからだろう。

 父さんにもよく言われたなぁ。
 最終的にどこに到達できるかよりも、如何に早く底から抜け出すかの方が重要なんだって。
 
 時間さえかければ、大抵の人は大抵のことが出来るんだって言われたし、実際僕もそう思う。
 何かを始めるのに手遅れなんて事はない、そんな言葉を否定する気はないんだけどさ。

 10歳の時に分数の計算を出来ても普通だけど、5歳で出来れば注目される。
 15歳で因数分解が出来るのは普通でも、10歳の時に出来れば天才扱いだ。

 父さんが勉強を強制してきたことなんて1度だってなかったけど、人生に成功したければ周囲なんて気にせず、とにかく少しでも早く進めっていう教えは、僕の感性にピッタリ嵌った気がした。

 だから僕は多少の危険性があったとしても、先に進むことを優先するんだ。


 この世界にはスキルシステムがあって、魔物を倒して任意のスキルを覚えることで強くなるらしい。
 つまり、誰もが最終的に到達できる場所は、同じである可能性が高い。

 この世界の妙に現実的なシステムを考えると、無限にスキルを取得できるとは思えない。
 恐らくスキル数には限りがあるはずだ。
 
 この世界で成功するために、まずは可能な限りスキルの取得を急いでいく。



 僕が8等級に上がった頃、僕が活動するボールクローグで大事件が起きた。
 どうやら迷宮から魔物が氾濫してくるらしい。これってスタンピードってやつなのかな?

 ――――どうしよう?
 このままここに留まるのは危険だろうか?


 夜が明けて街を歩いて回ってみると、どうやらこの街はスタンピードに真っ向から挑む選択をしたみたい。

 ん~、どうしよう?
 ゲームだったらイベントだと思って参加するけど、この世界って蘇生とかないみたいなんだよねぇ……。

 そんな感じで迷っていたら、低級冒険者向けに装備品が配られた。
 僕が購入したよりも上等な装備だったので、装備更新のために節約していたお金が浮いた。

 うん。お金も出来たし、先延ばしにしていたスキルの取得に踏み切ろう。
 スキルを優先するか装備を優先するかで、先の読めないスキルよりも装備を優先していたんだけど、装備が更新できたなら迷う必要はないよね!

 無事にスキルを取得できたので、ボールクローグ防衛戦にも参加してみる気になった。
 だって新しいスキルを手に入れたんだし、誰だって試してみたいじゃない?

 防衛戦への参加資格は、魔装術が使えるかどうかだった。
 危ない危ない。スキル取得してきて良かった!
 

 防衛戦開始直前、まるでゲームのような音楽が戦場に流れた。
 こんな音楽、この世界にあるわけないよね?
 つまり、僕以外にも日本人がこの戦闘に参加してるってことか。


 始めのうちは良かったけど、僕は早い段階で足手纏いになってしまい、後方支援部隊に回された。
 うん。悔しいけど仕方ない。
 今の僕に勝てるような魔物じゃなかったからね。

 
 どれくらいの時間が経ったか分からない。
 必死に後方支援部隊として走り回っていたら、いつの間にか戦闘音が聞こえなくなってきているのに気付く。

 後方部隊からも視認できるような巨大な魔物がチラホラ見えたのに、なんと誰も死なずに乗りきったらしい!
 凄いなこの世界! この世界では僕なんか落ち零れの駆け出しに過ぎない。

 チート能力ではない、誰もが覚えられるスキルだけで、ここまでの戦闘力を身につけられるんだ!
 やっぱりどんどん先に進んで、いっぱいSPを稼ぐ必要がありそうだ。


 ――――スタンピードの最後に、真っ白で巨大なドラゴンが現れた。
 どこか弛緩していた空気が一変し、緊張感と絶望感が漂い始める。

 どうやら相手は神話の時代に語られるバケモノで、全員が街への退避を言い渡された。
 退避するのは良いんだけど、街に篭ったくらいでやり過ごせるの?

 アイツ空飛んでるし、ボールクローグの城壁なんて、何の意味もなさないと思うんだけど……。
 一応街には戻ったけれど、この後どうするべきか。
 あのバケモノの矛先が向く前に、この街から徒歩ででも脱出すべきかな……?


 僕が結論を出す前に、あのバケモノは討伐されてしまったらしい。
 最後に走った緑の閃光が、トドメの一撃だったんだって。


 英雄の凱旋で街は騒がしかったけれど、僕はそんなもの気にしている余裕はなかった。
 だって大量のSPが獲得できていたんだもの!
 英雄様よりも自分のほうが大事だ! 早くスキルを取得しないと! 


 僕はバケモノを見ただけで戦うことを諦めてしまったけれど、スキルを突き詰めていけば、あんなバケモノだって倒せるくらいの力が身に付くんだ。
 それを証明してくれた英雄さんたちには感謝してもいいな!


 氾濫からの勝利に沸くボールクローグだったけど、流石にスキル神殿は開いていた。
 受付しようと走っていくと、同じタイミングで1人の冒険者が走ってきた。
 
 このタイミングでスキルを獲得しにきたってことは、ひょっとして日本人なのかな?


「ねぇ。ひょっとして日本人……?」


 どうして声をかけたのかは分からない。
 ずっと1人でやってきて、人恋しくなっていたのかも知れない。

 声をかけた相手は、ニッコリ笑って頷いてくれた。
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