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9章 異邦人が生きるために
313 2度目の試験
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探索。訓練。独立支援。
そんな感じに忙しく日々を送っていると、昇級試験の日はあっという間にやってきた。
恐らく俺たちが昇級試験を受けるのは、これが最後だろうからな。
今回は俺も見学することにした。
最近ふわわとつららはマーサとセットになっていることが多い。
元々動物は室内で飼うのが主流のこの世界では、俺みたいに連れ回すほうが珍しい。
マーサの肩が気に入ったのか、毎朝肩に乗って工房に行ってるんだよねぇ。
ま、流石にベイクで危険な目に遭う事はもうないだろう。
それにマーサのやる気がアップするなら悪くない。
2匹が嫌々従ってるならともかく、自主的にマーサにくっついてる以上、俺に止める権利はない。
ちょっぴりフードが軽く感じるけどな。
試験は陽天の報せからなので、いつも通り5回の探索を済ませる。
もう完全に作業でしかないな、ベイクの迷宮は。
他の都市の迷宮を攻略することも視野に入れてみるかな?
「おう。全員遅れずに来たようで、感心感心。
そんでトーマはなにしに来たんだ? お前どうせ昇級する気無いんだろ?」
「昇級する気は全くないけど、試験って見学出来ないもんなの?
異風の旋律のみんなが2等級に上がるのを、この目で見ようと思ってたんだけど」
「見学かよ、ったく。
試験の見学は全く問題ねぇぞ。見てて楽しいかどうかは分からんがな。
それじゃあ先に訓練場に行っててくれ。試験官たちも準備があるからな」
オーサンを見送って訓練場で待つ。
しかし俺が来た頃は訓練場も無人だったのに、今やチラホラ人がいるってのは感慨深いなぁ。
訓練場で雑談して待っていると、オーサンを先頭にして10人ほど訓練場にやってきた。
この人たちが立会人と試験官か。
「待たせたな。これより4等級から2等級までの昇級試験を始めさせてもらおう。
試験は4等級から順に行い、そこで実力不足と判断された場合は、次の昇級試験は受けられない。
休憩など必要な場合はその都度申し出てくれ」
とうとう昇級試験が始まるようだ。
落ちる事は心配してないけど、試験ってだけで妙に緊張する。
「それで、トーマは本当に受けなくていいんだな?」
「へ? おれ6等級だし、今回の試験受けれないだろ。受ける気もないけど」
「5等級への昇級試験は俺が担当できるだが、まぁ本人にやる気がないなら無理強いは出来ねぇか。
それじゃこれより昇級試験を開始させてもらう。
まずは4等級試験からだ。1人ずつ前に出てくれ」
そうして始まった昇級試験だったのだが、特に語るべき事はなかった。
既にハルも含めて、一般の冒険者の枠に収まる実力じゃないらしく、4等級試験官も2等級試験官も瞬殺で試験は終了した。
「――――こりゃあ確かに俺も、鍛えなおしておいたほうが良さそうだな。
お前らみたいなのばかりになった日には、今のままじゃ指導すらままならなくなっちまいそうだ」
「ま、オーサンには今まで通り、新人を導いてもらえればいいと思うけどな。
結局のところ、始めで躓かなければみんな苦労はしないし、後は勝手に強くなってくれるさ」
「まさにお前らみたいに、ってこったな。
へっ、これからリヴァーブ王国は変わっていきそうじゃねぇか。
俺ももういい歳だってのに、なんだかワクワクしてくるじゃねぇかよぉ?」
この世界って肉体年齢をスキルで補えるような気がするんだけど、実際のところどうなんだろうな。
試験の結果は言うまでもなく全員合格だった。
「これでお前らは、名実共にベイクの最強パーティになったわけだ。
更なる躍進を期待してるぜ」
これ以上の騒動は心から勘弁願いたい。
試験が終わったので商工ギルドへ。
王都での話次第では、当分異邦人を預かる事になるかも知れないから、それ用の宿舎も用意しておきたい。
「あ、トーマさんちょうど良かったよ!」
商工ギルドに入るなり、ポポリポさんが声をかけてきた。
「こんちはポポリポさん。なにか俺に用事?」
「そうそう! 前にチラッと話したと思うんだけど、トーマさんを3等級に上げる話が本決まりになってねぇ。
トーマさんの都合が良ければ、今すぐ3等級にあげちゃいたいんだけど構わないかい?」
おっと。冒険者の昇級を避けてたら、商人等級が上がるのか。
「別に問題ないけど、どうして昇級することになったの?
カンパニーの活動が商売として認められたって理由なら、ちょっと時間がかかりすぎてる感じがするけど」
「ああ、カンパニーの話はこじつけって奴だねぇ。
実際にはトーマさんの商工ギルドへの入金額が凄まじすぎてね。その辺の1等級商人と比べても、全く遜色ないくらいの資産を持ってるのさ。
その上でお金を貯め込まずにどんどん使ってくれるおかげで、ベイク全体が活気付いてきてるだろう? その貢献度が認められたって寸法だよ。
トーマさんたちに対する、商工ギルドからの感謝の印みたいなもんさ」
「了解。感謝の印なんて言われちゃったら断れないな。手続き宜しくね。
それとまた人が増えるかもしれないから、適当に物件を見繕って欲しい。
あとこれは確認なんだけど、ベイクの城壁の外側に家を建てる場合って、誰に許可取ればいいのかな?」
「えーとちょっと待っておくれよ。まずは身分証を渡してくれるかい? ん、ありがとさん。
物件探しはいいけど、ベイクは人が増えつつあるからね、今までより少しお金がかかるかも知れないよ?
それと障壁外に作るってのは、今話題になってる都市間移動馬車に関することかい?
もしそうであるなら、商工ギルドか狩人ギルドに申請してもらえば自由にしていいよ。元々城壁外建築に関する決まりなんかないからねぇ。
ただし、将来的にベイクの城壁が拡張された場合は、移転指示に従うことを約束してもらうよ」
「それは全然構わないよ。自由にしていいなら話は早いな」
ポポリポさんと今後の打ち合わせをして、商人等級が3等級に昇級し、身分証が上級身分証になった。
まさか商人等級上がって上級身分証貰うことになるとはねぇ。
これでますます、冒険者等級をあげる必要がなくなったな。
そんな感じに忙しく日々を送っていると、昇級試験の日はあっという間にやってきた。
恐らく俺たちが昇級試験を受けるのは、これが最後だろうからな。
今回は俺も見学することにした。
最近ふわわとつららはマーサとセットになっていることが多い。
元々動物は室内で飼うのが主流のこの世界では、俺みたいに連れ回すほうが珍しい。
マーサの肩が気に入ったのか、毎朝肩に乗って工房に行ってるんだよねぇ。
ま、流石にベイクで危険な目に遭う事はもうないだろう。
それにマーサのやる気がアップするなら悪くない。
2匹が嫌々従ってるならともかく、自主的にマーサにくっついてる以上、俺に止める権利はない。
ちょっぴりフードが軽く感じるけどな。
試験は陽天の報せからなので、いつも通り5回の探索を済ませる。
もう完全に作業でしかないな、ベイクの迷宮は。
他の都市の迷宮を攻略することも視野に入れてみるかな?
「おう。全員遅れずに来たようで、感心感心。
そんでトーマはなにしに来たんだ? お前どうせ昇級する気無いんだろ?」
「昇級する気は全くないけど、試験って見学出来ないもんなの?
異風の旋律のみんなが2等級に上がるのを、この目で見ようと思ってたんだけど」
「見学かよ、ったく。
試験の見学は全く問題ねぇぞ。見てて楽しいかどうかは分からんがな。
それじゃあ先に訓練場に行っててくれ。試験官たちも準備があるからな」
オーサンを見送って訓練場で待つ。
しかし俺が来た頃は訓練場も無人だったのに、今やチラホラ人がいるってのは感慨深いなぁ。
訓練場で雑談して待っていると、オーサンを先頭にして10人ほど訓練場にやってきた。
この人たちが立会人と試験官か。
「待たせたな。これより4等級から2等級までの昇級試験を始めさせてもらおう。
試験は4等級から順に行い、そこで実力不足と判断された場合は、次の昇級試験は受けられない。
休憩など必要な場合はその都度申し出てくれ」
とうとう昇級試験が始まるようだ。
落ちる事は心配してないけど、試験ってだけで妙に緊張する。
「それで、トーマは本当に受けなくていいんだな?」
「へ? おれ6等級だし、今回の試験受けれないだろ。受ける気もないけど」
「5等級への昇級試験は俺が担当できるだが、まぁ本人にやる気がないなら無理強いは出来ねぇか。
それじゃこれより昇級試験を開始させてもらう。
まずは4等級試験からだ。1人ずつ前に出てくれ」
そうして始まった昇級試験だったのだが、特に語るべき事はなかった。
既にハルも含めて、一般の冒険者の枠に収まる実力じゃないらしく、4等級試験官も2等級試験官も瞬殺で試験は終了した。
「――――こりゃあ確かに俺も、鍛えなおしておいたほうが良さそうだな。
お前らみたいなのばかりになった日には、今のままじゃ指導すらままならなくなっちまいそうだ」
「ま、オーサンには今まで通り、新人を導いてもらえればいいと思うけどな。
結局のところ、始めで躓かなければみんな苦労はしないし、後は勝手に強くなってくれるさ」
「まさにお前らみたいに、ってこったな。
へっ、これからリヴァーブ王国は変わっていきそうじゃねぇか。
俺ももういい歳だってのに、なんだかワクワクしてくるじゃねぇかよぉ?」
この世界って肉体年齢をスキルで補えるような気がするんだけど、実際のところどうなんだろうな。
試験の結果は言うまでもなく全員合格だった。
「これでお前らは、名実共にベイクの最強パーティになったわけだ。
更なる躍進を期待してるぜ」
これ以上の騒動は心から勘弁願いたい。
試験が終わったので商工ギルドへ。
王都での話次第では、当分異邦人を預かる事になるかも知れないから、それ用の宿舎も用意しておきたい。
「あ、トーマさんちょうど良かったよ!」
商工ギルドに入るなり、ポポリポさんが声をかけてきた。
「こんちはポポリポさん。なにか俺に用事?」
「そうそう! 前にチラッと話したと思うんだけど、トーマさんを3等級に上げる話が本決まりになってねぇ。
トーマさんの都合が良ければ、今すぐ3等級にあげちゃいたいんだけど構わないかい?」
おっと。冒険者の昇級を避けてたら、商人等級が上がるのか。
「別に問題ないけど、どうして昇級することになったの?
カンパニーの活動が商売として認められたって理由なら、ちょっと時間がかかりすぎてる感じがするけど」
「ああ、カンパニーの話はこじつけって奴だねぇ。
実際にはトーマさんの商工ギルドへの入金額が凄まじすぎてね。その辺の1等級商人と比べても、全く遜色ないくらいの資産を持ってるのさ。
その上でお金を貯め込まずにどんどん使ってくれるおかげで、ベイク全体が活気付いてきてるだろう? その貢献度が認められたって寸法だよ。
トーマさんたちに対する、商工ギルドからの感謝の印みたいなもんさ」
「了解。感謝の印なんて言われちゃったら断れないな。手続き宜しくね。
それとまた人が増えるかもしれないから、適当に物件を見繕って欲しい。
あとこれは確認なんだけど、ベイクの城壁の外側に家を建てる場合って、誰に許可取ればいいのかな?」
「えーとちょっと待っておくれよ。まずは身分証を渡してくれるかい? ん、ありがとさん。
物件探しはいいけど、ベイクは人が増えつつあるからね、今までより少しお金がかかるかも知れないよ?
それと障壁外に作るってのは、今話題になってる都市間移動馬車に関することかい?
もしそうであるなら、商工ギルドか狩人ギルドに申請してもらえば自由にしていいよ。元々城壁外建築に関する決まりなんかないからねぇ。
ただし、将来的にベイクの城壁が拡張された場合は、移転指示に従うことを約束してもらうよ」
「それは全然構わないよ。自由にしていいなら話は早いな」
ポポリポさんと今後の打ち合わせをして、商人等級が3等級に昇級し、身分証が上級身分証になった。
まさか商人等級上がって上級身分証貰うことになるとはねぇ。
これでますます、冒険者等級をあげる必要がなくなったな。
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