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9章 異邦人が生きるために
342 壁外地域の魔物調査
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「騎乗用の魔物は絶対に必要だ。これが用意出来るか出来ないかで、全体の作業の進行にも影響が出ると思う。
何か良さそうな魔物は見つかったか?」
「んー難しいね。一応ブラクムール大図書館でも調べてみたんだけど、あまり有用な情報がなくて。
狩人ギルドでも聞いてみたんだけど、アサルトドラゴンが人気で、あとはほとんど戦闘力を持たないような魔物が多かったよ。
狩人として扱うなら充分かもしれないけど、遠くまで遠征するには力不足だと感じたね」
う~ん。手がかりなしか。
ならもう自分で捜しに行くしかないよな?
「マーサ。従魔の鎖だっけ? それってすぐに作れる?
既製品を買っても良いけど、マーサが作った物の方が信頼度高いからな。時間かからないなら頼みたい」
「ああ、それなら問題ねぇぜ。スキル強化のおかげで、製作の時間がめちゃくちゃ短縮されたしな。
いくつ欲しい? とりあえず5つくらいありゃあ充分か?」
「5つでいいんじゃないかなー? 今回は何も分かってない状態だしねー。
すぐに用意できるんなら、必要になってからまた作れば良いでしょー」
「了解だ。5つくれぇ今日中に用意してやるよ。
私に手伝えることがあるときは、遠慮なく言ってくれよな!」
小型の魔物を複数従えるか、大型の魔物を1体従えるかもまだ分からないからなぁ。
ま、とりあえず今日は国境壁の外を調査してみますかねぇ。
いつもの5人にリーネを加えてウィルスレイアへ移動。
国境壁外に行く時はリーネを連れて行きたいし、銀の乙女にも王国の領土を測ってもらっているため、ボールクローグに行ってもやることがなかったりする。
狩人ギルドへ行き、国境壁の外の魔物を調べたい旨を伝える。
時間は日没まで、騎乗魔物を所有していること、報酬は白金貨2枚で依頼を出す。
さて、どんな狩猟団が受けてくれるかな?
「今街にいる狩人でギルドから紹介できるのはこの2組かな。
『砂塵の槍』ってところと、『砂の瞬き』ってところだ」
「ん~。そう言われても選びようがないな。
ギルドのお勧めはどっち? それか団の特徴があれば教えてほしい」
「あ~~、正直どっちでも問題なく依頼はこなせると思う。
特徴かぁ……。砂塵の槍はアサルトドラゴンを使役していて、砂の瞬きはデューンサラマンダーを使役してるって事くらいか。
実力的にも団の構成的にもほとんど差がない2組だと思うよ」
「アサルトドラゴンは分かるけど、デューンサラマンダーってどんなの?」
「ん? 国境壁への観光はしなかったのか? あそこで馬車を引いてるのがデューンサラマンダーだ」
あー! あのゴツい肌をしたトカゲかぁ。
アサルトドラゴンはどこにでもいるけど、デューンサラマンダーのほうがこの辺の魔物っぽいよな。
「それなら砂の瞬きにしようかな。デューンサラマンダーって多分砂漠地帯にしか出ない魔物だろうし、砂漠の移動には有利そうだ」
「おう。それじゃ今連れてくっから待っててくれ」
そうしてギルド員に連れて来られたのは、爬虫類系の獣人だった。
蛇獣人のスカーさん以来の爬虫類系だわ。
「俺は砂の瞬きの団長の『ドリチル』だ。よろしく頼む」
「異風の旋律のトーマだ。砂漠地域に入るのは初めてだからな。こっちこそよろしく」
調査目的であること、戦闘は全員がこなせる事などを伝えて、早速調査に向かう。
砂の瞬きが使役しているのはデューンサラマンダー、つまりは大型魔物ではないので、小さめの馬車を多数所有しているタイプの狩猟団だ。
アサルトドラゴンやペルのような大型の生物は都市に入れないが、デューンサラマンダークラスの大きさなら都市内に入ることが出来るというメリットがある。
反対に大型魔物のメリットは、言うまでもなくその運搬能力だ。
「なるほど。砂漠地帯を長期間遠征するための騎乗用生物か。
確かにアサルトドラゴンでは長期間の砂漠での活動には不向きだろうし、デューンサラマンダーでは戦闘力不足やもしれんな。
今騎乗魔物として知られている生物では、適当な生物は居らんかもしれん」
「そっかぁ。ま、その為の調査だからな。今日は初めてだし、日没までに帰ってこれる範囲内で、出来るだけ遠い場所まで見てみたいかな?
ドリチル。調査が何回も必要な場合、また請けてくれる?」
「ほう? それは願ってもない話だ。報酬は破格だし、依頼人の戦闘力は俺たちを上回っているわけだからな。俺たちのほうが護衛してもらっているようなものだろう。
それで白金貨2枚は破格過ぎる。なるべく優先させてもらおう」
よし、明日以降の調査にも付き合ってくれそうだ。
なるべく同じ狩猟団に付き合ってもらいたいよな。毎回相手が変わるとめんどくさいし。
「しかし、砂漠を走ってるのに馬車の速度が落ちないのはすげぇな。車輪埋まってるはずだろ?」
「そうなのだ。デューンサラマンダーは単純な力も強いのだが、足先から水魔法なのか土魔法なのか、砂を操作してしっかり踏みしめることが出来るらしいぞ。
なので彼らは砂漠の中でも普通の地面のように踏ん張ることが出来る、と狩人ギルドで教わった。
まさに砂漠を生きるための魔物よな。その適応性が気に入って、使役することにしたのだよ」
「となると、やっぱり砂漠の調査にはアサルトドラゴンよりも、砂漠地域に適応した生物を選ぶほうが良いね。
流石に今日1日で良い魔物が見つかるとは思ってないけど、選ぶ目安くらいにはなるかな?」
「んー。というか今の話を聞いて、馬車の方も改良すべきなんじゃないかなー? トーマだったら出来るんじゃない? 砂に沈まない車輪」
「確かに、デューンサラマンダーが行っていることが生活魔法で再現可能であるならば、トーマなら問題なく作れそうですよね」
「うん。もしくは馬車を引く生物にキャリーを付与したら、馬車の重量も軽減できたりするかもね。
馬車の重量を軽減した上で、車輪の下の砂を固める、とか?」
「う~ん。私にはちょっと難しいかな……。
でも、地域に対応した馬車って必要だよね……。いつかヴェルトーガの西に進む時にも応用できそうな経験だし……」
地域対応型、環境適応型の馬車か。
確かに造船をする場合にも活きてきそうだし、少し真面目に考えてみるかな?
はは。みんなも随分頭が柔らかくなってきたもんだ。
何か良さそうな魔物は見つかったか?」
「んー難しいね。一応ブラクムール大図書館でも調べてみたんだけど、あまり有用な情報がなくて。
狩人ギルドでも聞いてみたんだけど、アサルトドラゴンが人気で、あとはほとんど戦闘力を持たないような魔物が多かったよ。
狩人として扱うなら充分かもしれないけど、遠くまで遠征するには力不足だと感じたね」
う~ん。手がかりなしか。
ならもう自分で捜しに行くしかないよな?
「マーサ。従魔の鎖だっけ? それってすぐに作れる?
既製品を買っても良いけど、マーサが作った物の方が信頼度高いからな。時間かからないなら頼みたい」
「ああ、それなら問題ねぇぜ。スキル強化のおかげで、製作の時間がめちゃくちゃ短縮されたしな。
いくつ欲しい? とりあえず5つくらいありゃあ充分か?」
「5つでいいんじゃないかなー? 今回は何も分かってない状態だしねー。
すぐに用意できるんなら、必要になってからまた作れば良いでしょー」
「了解だ。5つくれぇ今日中に用意してやるよ。
私に手伝えることがあるときは、遠慮なく言ってくれよな!」
小型の魔物を複数従えるか、大型の魔物を1体従えるかもまだ分からないからなぁ。
ま、とりあえず今日は国境壁の外を調査してみますかねぇ。
いつもの5人にリーネを加えてウィルスレイアへ移動。
国境壁外に行く時はリーネを連れて行きたいし、銀の乙女にも王国の領土を測ってもらっているため、ボールクローグに行ってもやることがなかったりする。
狩人ギルドへ行き、国境壁の外の魔物を調べたい旨を伝える。
時間は日没まで、騎乗魔物を所有していること、報酬は白金貨2枚で依頼を出す。
さて、どんな狩猟団が受けてくれるかな?
「今街にいる狩人でギルドから紹介できるのはこの2組かな。
『砂塵の槍』ってところと、『砂の瞬き』ってところだ」
「ん~。そう言われても選びようがないな。
ギルドのお勧めはどっち? それか団の特徴があれば教えてほしい」
「あ~~、正直どっちでも問題なく依頼はこなせると思う。
特徴かぁ……。砂塵の槍はアサルトドラゴンを使役していて、砂の瞬きはデューンサラマンダーを使役してるって事くらいか。
実力的にも団の構成的にもほとんど差がない2組だと思うよ」
「アサルトドラゴンは分かるけど、デューンサラマンダーってどんなの?」
「ん? 国境壁への観光はしなかったのか? あそこで馬車を引いてるのがデューンサラマンダーだ」
あー! あのゴツい肌をしたトカゲかぁ。
アサルトドラゴンはどこにでもいるけど、デューンサラマンダーのほうがこの辺の魔物っぽいよな。
「それなら砂の瞬きにしようかな。デューンサラマンダーって多分砂漠地帯にしか出ない魔物だろうし、砂漠の移動には有利そうだ」
「おう。それじゃ今連れてくっから待っててくれ」
そうしてギルド員に連れて来られたのは、爬虫類系の獣人だった。
蛇獣人のスカーさん以来の爬虫類系だわ。
「俺は砂の瞬きの団長の『ドリチル』だ。よろしく頼む」
「異風の旋律のトーマだ。砂漠地域に入るのは初めてだからな。こっちこそよろしく」
調査目的であること、戦闘は全員がこなせる事などを伝えて、早速調査に向かう。
砂の瞬きが使役しているのはデューンサラマンダー、つまりは大型魔物ではないので、小さめの馬車を多数所有しているタイプの狩猟団だ。
アサルトドラゴンやペルのような大型の生物は都市に入れないが、デューンサラマンダークラスの大きさなら都市内に入ることが出来るというメリットがある。
反対に大型魔物のメリットは、言うまでもなくその運搬能力だ。
「なるほど。砂漠地帯を長期間遠征するための騎乗用生物か。
確かにアサルトドラゴンでは長期間の砂漠での活動には不向きだろうし、デューンサラマンダーでは戦闘力不足やもしれんな。
今騎乗魔物として知られている生物では、適当な生物は居らんかもしれん」
「そっかぁ。ま、その為の調査だからな。今日は初めてだし、日没までに帰ってこれる範囲内で、出来るだけ遠い場所まで見てみたいかな?
ドリチル。調査が何回も必要な場合、また請けてくれる?」
「ほう? それは願ってもない話だ。報酬は破格だし、依頼人の戦闘力は俺たちを上回っているわけだからな。俺たちのほうが護衛してもらっているようなものだろう。
それで白金貨2枚は破格過ぎる。なるべく優先させてもらおう」
よし、明日以降の調査にも付き合ってくれそうだ。
なるべく同じ狩猟団に付き合ってもらいたいよな。毎回相手が変わるとめんどくさいし。
「しかし、砂漠を走ってるのに馬車の速度が落ちないのはすげぇな。車輪埋まってるはずだろ?」
「そうなのだ。デューンサラマンダーは単純な力も強いのだが、足先から水魔法なのか土魔法なのか、砂を操作してしっかり踏みしめることが出来るらしいぞ。
なので彼らは砂漠の中でも普通の地面のように踏ん張ることが出来る、と狩人ギルドで教わった。
まさに砂漠を生きるための魔物よな。その適応性が気に入って、使役することにしたのだよ」
「となると、やっぱり砂漠の調査にはアサルトドラゴンよりも、砂漠地域に適応した生物を選ぶほうが良いね。
流石に今日1日で良い魔物が見つかるとは思ってないけど、選ぶ目安くらいにはなるかな?」
「んー。というか今の話を聞いて、馬車の方も改良すべきなんじゃないかなー? トーマだったら出来るんじゃない? 砂に沈まない車輪」
「確かに、デューンサラマンダーが行っていることが生活魔法で再現可能であるならば、トーマなら問題なく作れそうですよね」
「うん。もしくは馬車を引く生物にキャリーを付与したら、馬車の重量も軽減できたりするかもね。
馬車の重量を軽減した上で、車輪の下の砂を固める、とか?」
「う~ん。私にはちょっと難しいかな……。
でも、地域に対応した馬車って必要だよね……。いつかヴェルトーガの西に進む時にも応用できそうな経験だし……」
地域対応型、環境適応型の馬車か。
確かに造船をする場合にも活きてきそうだし、少し真面目に考えてみるかな?
はは。みんなも随分頭が柔らかくなってきたもんだ。
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