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9章 異邦人が生きるために
343 砂漠地帯
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現在砂漠地帯を幌馬車で爆走中。
気温が高く乾燥しているのは分かるんだけど、何故か不快感はないという不思議な感覚。
環境適応スキルはしっかりと仕事をしてくれているらしい。
「そういやドリチルってなんの獣人なの? 今まで見たことのない容姿だから分からなくて。
もし差し支えなかったら教えてくれない?」
「ん? 構わぬよ。俺は亀の獣人だ。
水がなくても戦闘力が落ちたりする事はないから、安心するといい」
へぇ。亀の獣人なんているのか。言われて見れば亀だって分かるけど、答えを知らないと分からないな。
獣人だと元の生物の特性を受け継ぐもんだと思ってたけど、環境適応のおかげなのかデメリットはないみたいだ。
「砂漠地帯で活動する狩人の目から見て、従魔に向いてる魔物って心当たりある?」
「ふむ。一般的な狩人として活動する範囲で良ければ、いくらでもあるのだがなぁ。異風の旋律の要求を満たす魔物となると、ちょっと思い当たるものがないな。
単純な利便性で言えばデューンサラマンダーはかなり優秀だ。砂漠地帯に適応した生態で、扱い易く手もかからない。街に入れることが出来るもの大きいな。
アサルトドラゴンは砂漠地帯に適応した魔物ではないが、砂漠地帯でも問題なく活動できる能力を持っている。だが砂漠地帯では体力消耗も激しく、長期の遠征には向かないだろうな」
「なるほど。その2体以外には従魔に適した魔物っていない?」
「どうであろうなぁ。俺たちは狙った魔物を狩るだけが仕事だ。警戒のために周辺地域の魔物の情報収集は必須だが、目的以外の魔物に近づくことがまずあまりないのだよ。
ブラクムール大図書館に記載されている情報ですらアテにならなかったのだから、結局は手探りで探すしかなかろうな。
候補としては、砂漠地帯を泳ぐ大魚『砂漠遊魚』。この馬車を大きく越える巨体の魔物で、砂の中を自由に泳ぐ魚型の魔物だ。泳ぐ速度が早く、鱗も強靭で戦闘力も低くない。それに旨いぞ。
だがこいつは砂の中でしか生きれないからな。少し使い勝手が悪い」
砂の中を泳ぐ魚かぁ。魔法で砂を操作してるのかな? 砂の外に出られない理由は分からないけど。
「あとは『山脈蠍』なんてサソリがいる。
こいつは名前どおりかなりの大型で、戦闘力だけなら相当高い。砂漠に適応した魔物だしな。
問題点はその大きさと、生態があまり良くわかっていないこと。異風の旋律なら問題なく制圧できるだろうが、従魔にした後管理出来ないのでは意味がないからな。
これ以上は俺にはわからん。役に立てなくて済まんが 」
「いやいや助かるよ。デザートスプラッシュとシザーマウンテンの事は覚えておく。
ま、結局は総当りで探すしかないか。面倒かけるよ」
ボールクローグ以外の地域は、領土拡張にあまり乗り気じゃなかったみたいだからなぁ。殆ど情報がなくても仕方ないか。
なんだか最近新しい事実だったり、手探りでやらなければいけないことが増えた気がする。
これは恐らく、新しく創造されたがゆえの弊害なのかもしれないなぁ。リヴァーブ王国にも建国から今に至るまでの歴史が存在しているみたいだけど、そういう設定だってだけの可能性もありそうだ。
「とりあえずこの辺りが、日没までに帰ってこられる範囲では1番遠くになるか。もう少し距離を稼いでも良いが」
「へ? 今まで1度も戦闘してないよな? ボールクローグの大森林では、魔物がひっきりなしに襲ってきたんだけど、砂漠地帯って魔物少ないのか?」
「魔物が少ないというか、あまり密集していないというほうが近いかもしれん。それにあまり積極的に襲ってくる魔物は少ないな。
どちらかと言うと待ち伏せをする魔物が多い。自分の縄張りに入るまでは一切関知せず、一定範囲まで近付くと突然襲い掛かってくる、という感じだろうか」
「うへぇ……。それって魔物の調査がめんどくさい奴じゃん……。
とりあえず降りるか。魔物がいたら教えてくれ。出来れば魔物の探し方からご教授願うわ」
馬車から降りる。靴越しにも砂の熱さが伝わってくるのだが、スキルのおかげで体への影響は無さそうだ。ホント不思議な感覚だな。
乾燥していて砂粒も飛んでくる。
気温と砂の熱さもあって、環境適応なしだと相当辛い環境だな。
スキルなしの異邦人をここに集めるのは、ちょっとばかり可哀想だったかも。
ま、甘やかしてばかりもいられない。
「砂漠地帯での活動には問題なさそうだけど、魔物の生態調査に関しては、何かいい方法を考えないとダメかもな。未知の魔物を手探りで探すのは、ちょっと効率が悪そうだ」
「そうだねぇ。普通だったら戦闘を避けられるのはありがたいことだけど、今の僕たちは魔物を探しに来てるわけだから、砂漠の魔物とは相性が最悪だ」
「砂漠って凄いねー。ほんとにどこまでも砂しかないよー? なんの目印もないし、迷っちゃいそうだねー」
「本当ですね。現地の狩人がいなければ街への帰還もままなりません。私達にはゲートがあるので遭難の危険は少ないでしょうが」
「うん。ゲートもあるし環境適応もあるし、ストレージで食料も多めに持ち運べるし、水魔法も使えるからね。魔法とスキル様々って感じかな」
「この砂の世界が、リヴァーブ王国と同じくらい広がってるんだよね……? 本当に凄いよ……。私が今ここに立っているのが信じられない気分……」
手探り感が拭えないけど、壁外都市計画の第1歩なのは間違いない。
移動手段の重要度は非常に高い。なんとか成果を出したいところだ。
気温が高く乾燥しているのは分かるんだけど、何故か不快感はないという不思議な感覚。
環境適応スキルはしっかりと仕事をしてくれているらしい。
「そういやドリチルってなんの獣人なの? 今まで見たことのない容姿だから分からなくて。
もし差し支えなかったら教えてくれない?」
「ん? 構わぬよ。俺は亀の獣人だ。
水がなくても戦闘力が落ちたりする事はないから、安心するといい」
へぇ。亀の獣人なんているのか。言われて見れば亀だって分かるけど、答えを知らないと分からないな。
獣人だと元の生物の特性を受け継ぐもんだと思ってたけど、環境適応のおかげなのかデメリットはないみたいだ。
「砂漠地帯で活動する狩人の目から見て、従魔に向いてる魔物って心当たりある?」
「ふむ。一般的な狩人として活動する範囲で良ければ、いくらでもあるのだがなぁ。異風の旋律の要求を満たす魔物となると、ちょっと思い当たるものがないな。
単純な利便性で言えばデューンサラマンダーはかなり優秀だ。砂漠地帯に適応した生態で、扱い易く手もかからない。街に入れることが出来るもの大きいな。
アサルトドラゴンは砂漠地帯に適応した魔物ではないが、砂漠地帯でも問題なく活動できる能力を持っている。だが砂漠地帯では体力消耗も激しく、長期の遠征には向かないだろうな」
「なるほど。その2体以外には従魔に適した魔物っていない?」
「どうであろうなぁ。俺たちは狙った魔物を狩るだけが仕事だ。警戒のために周辺地域の魔物の情報収集は必須だが、目的以外の魔物に近づくことがまずあまりないのだよ。
ブラクムール大図書館に記載されている情報ですらアテにならなかったのだから、結局は手探りで探すしかなかろうな。
候補としては、砂漠地帯を泳ぐ大魚『砂漠遊魚』。この馬車を大きく越える巨体の魔物で、砂の中を自由に泳ぐ魚型の魔物だ。泳ぐ速度が早く、鱗も強靭で戦闘力も低くない。それに旨いぞ。
だがこいつは砂の中でしか生きれないからな。少し使い勝手が悪い」
砂の中を泳ぐ魚かぁ。魔法で砂を操作してるのかな? 砂の外に出られない理由は分からないけど。
「あとは『山脈蠍』なんてサソリがいる。
こいつは名前どおりかなりの大型で、戦闘力だけなら相当高い。砂漠に適応した魔物だしな。
問題点はその大きさと、生態があまり良くわかっていないこと。異風の旋律なら問題なく制圧できるだろうが、従魔にした後管理出来ないのでは意味がないからな。
これ以上は俺にはわからん。役に立てなくて済まんが 」
「いやいや助かるよ。デザートスプラッシュとシザーマウンテンの事は覚えておく。
ま、結局は総当りで探すしかないか。面倒かけるよ」
ボールクローグ以外の地域は、領土拡張にあまり乗り気じゃなかったみたいだからなぁ。殆ど情報がなくても仕方ないか。
なんだか最近新しい事実だったり、手探りでやらなければいけないことが増えた気がする。
これは恐らく、新しく創造されたがゆえの弊害なのかもしれないなぁ。リヴァーブ王国にも建国から今に至るまでの歴史が存在しているみたいだけど、そういう設定だってだけの可能性もありそうだ。
「とりあえずこの辺りが、日没までに帰ってこられる範囲では1番遠くになるか。もう少し距離を稼いでも良いが」
「へ? 今まで1度も戦闘してないよな? ボールクローグの大森林では、魔物がひっきりなしに襲ってきたんだけど、砂漠地帯って魔物少ないのか?」
「魔物が少ないというか、あまり密集していないというほうが近いかもしれん。それにあまり積極的に襲ってくる魔物は少ないな。
どちらかと言うと待ち伏せをする魔物が多い。自分の縄張りに入るまでは一切関知せず、一定範囲まで近付くと突然襲い掛かってくる、という感じだろうか」
「うへぇ……。それって魔物の調査がめんどくさい奴じゃん……。
とりあえず降りるか。魔物がいたら教えてくれ。出来れば魔物の探し方からご教授願うわ」
馬車から降りる。靴越しにも砂の熱さが伝わってくるのだが、スキルのおかげで体への影響は無さそうだ。ホント不思議な感覚だな。
乾燥していて砂粒も飛んでくる。
気温と砂の熱さもあって、環境適応なしだと相当辛い環境だな。
スキルなしの異邦人をここに集めるのは、ちょっとばかり可哀想だったかも。
ま、甘やかしてばかりもいられない。
「砂漠地帯での活動には問題なさそうだけど、魔物の生態調査に関しては、何かいい方法を考えないとダメかもな。未知の魔物を手探りで探すのは、ちょっと効率が悪そうだ」
「そうだねぇ。普通だったら戦闘を避けられるのはありがたいことだけど、今の僕たちは魔物を探しに来てるわけだから、砂漠の魔物とは相性が最悪だ」
「砂漠って凄いねー。ほんとにどこまでも砂しかないよー? なんの目印もないし、迷っちゃいそうだねー」
「本当ですね。現地の狩人がいなければ街への帰還もままなりません。私達にはゲートがあるので遭難の危険は少ないでしょうが」
「うん。ゲートもあるし環境適応もあるし、ストレージで食料も多めに持ち運べるし、水魔法も使えるからね。魔法とスキル様々って感じかな」
「この砂の世界が、リヴァーブ王国と同じくらい広がってるんだよね……? 本当に凄いよ……。私が今ここに立っているのが信じられない気分……」
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移動手段の重要度は非常に高い。なんとか成果を出したいところだ。
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