383 / 580
9章 異邦人が生きるために
344 固定観念
しおりを挟む
「いやぁ全然ダメだったわ。砂漠をちょっと体験してきただけって感じ」
現在ベイクに帰還して、いつもの会話タイム。
時間いっぱいまで砂漠地帯を調査したんだけど、魔物との遭遇は数回程度。それも既に知られている魔物ばかりだった。
シザーマウンテンは会えなかったけど、デザートスプラッシュには遭遇できた。
でもあれは騎乗用には使えないわ。長時間砂の表面に出られないっぽいので、何かの表示に砂に潜られたら馬車が大破してしまう。夕飯に出てきた切り身が最高に旨かったことだけが救いだ。
「やっぱり効率が悪いよね。どうにか魔物の方から近付いてきてくれるように出来ないかなぁ?
積極的に襲ってこない魔物なんて、想像した事もなかったよ」
「うん。罠とか誘導とか出来れば良いんだけどね。そもそも魔物がどうして人を襲ってくるのか、その理由も良く分かってないんじゃ難しいかな」
「まさか魔物に襲われなくて悩む日が来るなんて……。なんだか頭が混乱しちゃうよ……」
「ウィルスレイアってこの王国で1番研究が進んでる都市なんすよねぇ? そこで有力な情報がないとすると、手探りになるのは仕方なんじゃないっすか?」
「――――いえ、そう言いきるのは早いんじゃない? 私たちはウィルスレイアを知り尽くしているわけではないんだから、もう1度シルグリイド家を頼ってみたらいいんじゃないかしら?」
カンナの言葉に少し驚く。言われてみれば俺、少し視野が狭くなってないか? リヴァーブ王国のこと、リンカーズの事を理解するのが良いけど、その知識に思考が囚われてしまうのは良くない。
明日シルグリイド家にコンタクトを取ってみよう。確かギルドで連絡がつくっていってたっけ。
「すっごいよマーサ! これサイコー! 私の希望以上の出来だよー!」
「ええ。これは本当に素晴らしいです。まるで手に吸い付くようによく馴染みます」
「はっはっは! どうやら気に入ってくれたみてぇだな! 同じ男を愛する者に贈るんだ。半端な物を渡すわけにゃいかねぇってもんよ!」
リーン、トルネ、マーサの3人が帰宅した。
マーサから2人の武器が完成したと報告されて、3人で工房に行っていたのだ。
俺たちは今後の方針会議のために、今回は同行しなかった。
「リーンの持ってる武器は、ランドビカミウリの尻尾を元に作った心核武器、名付けて『ホワイトテイル』ってところだな。スネークソードと比べて特に追加した機能はねぇが、性能は比べ物にならねぇはずだ。
やろうと思えば、空に浮いてる雲さえぶった切って見せると思うぜ」
リーンが持っているのは真っ白なスネークソードだ。
ランドビカミウリのテイルスイングは脅威だったからなぁ。アレを参考にした武器だと思うと頼もしい。
「トルネの槍は、ランドビカミウリの背骨を切り出した心核武器。こっちは『白閃槍』と命名させてもらったぜ。
魔力を込めながら突撃すると、体全体が1つの槍と化して魔物を貫くことが出来るはずだ」
トルネが持っているのは、トルネと同じくらいの全長の真っ白な槍だった。
牙とか爪じゃなくて骨なのか。確かに体の中で1番硬い部分って骨のなのかも知れないな。
「今回のエリアキーパーではお留守番に決まっちゃったけど、これで絶対トーマの役に立ってみせるからねー!
雲でも山でも両断してやるんだからー!」
「そうですね。出産を優先するのは仕方がありませんから。この子の力を示す機会は見送る事にします」
2人の力を疑っちゃいないけど、流石にお腹に子供がいるわけだからな。エリアキーパークラスの魔物との戦闘は控えてもらわないと。
「それとトーマ、ハル。翠緑の風を1回貸してくれ。矢の回収機能を追加させてもらうからよ。
矢の魔法付加はトーマにでも頼んでくれ。私よりも沢山魔法覚えてっからな」
おお、ついに矢の回収機能が実現するのか!
これはちょっと期待が膨らむなぁ! 攻撃魔法を付加すれば、矢の威力も倍増しそうだし?
「ハルの心核武器はちょっと待ってくれな? 弓をもう1本作るのはあまり意味がない気がしててよ。
それとトーマ。ダガーとウォーハンマー分、追加で心核を3つくれ。
全員に心核武器が行き渡ったら、トーマとシンの防具を最優先で製作させてもらうぜ」
「うん。了解だよ。正直言って翠緑の風ですら、私にはオーバースペック気味だからね。心核武器にそこまで強い憧れもないし」
「っていうか気が早い話だけど、砂漠エリアでのエリアキーパーも倒しちゃうと、また凄い素材が手に入っちゃうんだよねー? でも私たちって、これ以上の装備の更新って、必要ないよねー? ものすっごく持て余しそうな気がするよー」
「そうだよなぁ……。でもそんなすげぇ素材、絶対自分で扱ってみてぇし……。
今後の装備製作は、半分趣味みたいになっちまうかも知れねぇなぁ。安易に流通させるのも不味い素材だと思うしよぉ」
「城壁とかに流用しちゃうしかないんじゃない? 壁外領域だから危険性は高いわけだし、大量に消費できるし、僕たちにはもうあまり必要性もないわけだし」
「ラ、ランドビカミウリ級の魔物の素材で城壁作りですか……! ご、豪快というか、勿体無いというか……」
「ま、素材の心配は無事に討伐できてからで遅くないだろ。まずは砂漠地帯の攻略が最優先だ。
みんな、頼りにさせてもらうからな?」
まずするべき事は砂漠地帯の移動手段の確保。
そこから砂漠地帯のエリアキーパーを討伐。砂漠地帯の調査をして、都市建設をする。
やるべき事は明確だ。
俺の理想の異世界生活までもう少し。
ここが気張りどころって奴だろう。
現在ベイクに帰還して、いつもの会話タイム。
時間いっぱいまで砂漠地帯を調査したんだけど、魔物との遭遇は数回程度。それも既に知られている魔物ばかりだった。
シザーマウンテンは会えなかったけど、デザートスプラッシュには遭遇できた。
でもあれは騎乗用には使えないわ。長時間砂の表面に出られないっぽいので、何かの表示に砂に潜られたら馬車が大破してしまう。夕飯に出てきた切り身が最高に旨かったことだけが救いだ。
「やっぱり効率が悪いよね。どうにか魔物の方から近付いてきてくれるように出来ないかなぁ?
積極的に襲ってこない魔物なんて、想像した事もなかったよ」
「うん。罠とか誘導とか出来れば良いんだけどね。そもそも魔物がどうして人を襲ってくるのか、その理由も良く分かってないんじゃ難しいかな」
「まさか魔物に襲われなくて悩む日が来るなんて……。なんだか頭が混乱しちゃうよ……」
「ウィルスレイアってこの王国で1番研究が進んでる都市なんすよねぇ? そこで有力な情報がないとすると、手探りになるのは仕方なんじゃないっすか?」
「――――いえ、そう言いきるのは早いんじゃない? 私たちはウィルスレイアを知り尽くしているわけではないんだから、もう1度シルグリイド家を頼ってみたらいいんじゃないかしら?」
カンナの言葉に少し驚く。言われてみれば俺、少し視野が狭くなってないか? リヴァーブ王国のこと、リンカーズの事を理解するのが良いけど、その知識に思考が囚われてしまうのは良くない。
明日シルグリイド家にコンタクトを取ってみよう。確かギルドで連絡がつくっていってたっけ。
「すっごいよマーサ! これサイコー! 私の希望以上の出来だよー!」
「ええ。これは本当に素晴らしいです。まるで手に吸い付くようによく馴染みます」
「はっはっは! どうやら気に入ってくれたみてぇだな! 同じ男を愛する者に贈るんだ。半端な物を渡すわけにゃいかねぇってもんよ!」
リーン、トルネ、マーサの3人が帰宅した。
マーサから2人の武器が完成したと報告されて、3人で工房に行っていたのだ。
俺たちは今後の方針会議のために、今回は同行しなかった。
「リーンの持ってる武器は、ランドビカミウリの尻尾を元に作った心核武器、名付けて『ホワイトテイル』ってところだな。スネークソードと比べて特に追加した機能はねぇが、性能は比べ物にならねぇはずだ。
やろうと思えば、空に浮いてる雲さえぶった切って見せると思うぜ」
リーンが持っているのは真っ白なスネークソードだ。
ランドビカミウリのテイルスイングは脅威だったからなぁ。アレを参考にした武器だと思うと頼もしい。
「トルネの槍は、ランドビカミウリの背骨を切り出した心核武器。こっちは『白閃槍』と命名させてもらったぜ。
魔力を込めながら突撃すると、体全体が1つの槍と化して魔物を貫くことが出来るはずだ」
トルネが持っているのは、トルネと同じくらいの全長の真っ白な槍だった。
牙とか爪じゃなくて骨なのか。確かに体の中で1番硬い部分って骨のなのかも知れないな。
「今回のエリアキーパーではお留守番に決まっちゃったけど、これで絶対トーマの役に立ってみせるからねー!
雲でも山でも両断してやるんだからー!」
「そうですね。出産を優先するのは仕方がありませんから。この子の力を示す機会は見送る事にします」
2人の力を疑っちゃいないけど、流石にお腹に子供がいるわけだからな。エリアキーパークラスの魔物との戦闘は控えてもらわないと。
「それとトーマ、ハル。翠緑の風を1回貸してくれ。矢の回収機能を追加させてもらうからよ。
矢の魔法付加はトーマにでも頼んでくれ。私よりも沢山魔法覚えてっからな」
おお、ついに矢の回収機能が実現するのか!
これはちょっと期待が膨らむなぁ! 攻撃魔法を付加すれば、矢の威力も倍増しそうだし?
「ハルの心核武器はちょっと待ってくれな? 弓をもう1本作るのはあまり意味がない気がしててよ。
それとトーマ。ダガーとウォーハンマー分、追加で心核を3つくれ。
全員に心核武器が行き渡ったら、トーマとシンの防具を最優先で製作させてもらうぜ」
「うん。了解だよ。正直言って翠緑の風ですら、私にはオーバースペック気味だからね。心核武器にそこまで強い憧れもないし」
「っていうか気が早い話だけど、砂漠エリアでのエリアキーパーも倒しちゃうと、また凄い素材が手に入っちゃうんだよねー? でも私たちって、これ以上の装備の更新って、必要ないよねー? ものすっごく持て余しそうな気がするよー」
「そうだよなぁ……。でもそんなすげぇ素材、絶対自分で扱ってみてぇし……。
今後の装備製作は、半分趣味みたいになっちまうかも知れねぇなぁ。安易に流通させるのも不味い素材だと思うしよぉ」
「城壁とかに流用しちゃうしかないんじゃない? 壁外領域だから危険性は高いわけだし、大量に消費できるし、僕たちにはもうあまり必要性もないわけだし」
「ラ、ランドビカミウリ級の魔物の素材で城壁作りですか……! ご、豪快というか、勿体無いというか……」
「ま、素材の心配は無事に討伐できてからで遅くないだろ。まずは砂漠地帯の攻略が最優先だ。
みんな、頼りにさせてもらうからな?」
まずするべき事は砂漠地帯の移動手段の確保。
そこから砂漠地帯のエリアキーパーを討伐。砂漠地帯の調査をして、都市建設をする。
やるべき事は明確だ。
俺の理想の異世界生活までもう少し。
ここが気張りどころって奴だろう。
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる