異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

348 吸引力の変わらないトーマ

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「なるほど。トーマは極大範囲の音魔法で魔物をおびき寄せるわけか。
 それとユリバファルゴアと戦うために、僕とトーマの迷宮探索回数は増やすべきだよね」

「だなー。悪いけど夕食後にも何度か探索時間を取ろう。ランドビカミウリよりも強い可能性が出てきたからな。万全を期すべきだ。
 出来ればマーサの装備品が全部完成してから挑戦すべきだと思うし、それまでに砂漠地域の調査とスキル取得には、ある程度目処を立てたいな」


 強くなってもユリバファルゴアの居るところまで行けなかったら意味がないし、ユリバファルゴアの場所が分かっても倒せなかったら意味がない。
 やっぱ色々と時間足りないなぁ。異邦人が思ったよりも数少なかったのは救いだった。


 翌日、日課を済ませて砂の瞬きと合流。
 今日は魔物の襲撃が頻繁にあるかも知れない事を伝えて、いざ壁外へ。

 馬車の窓から外の景色を見る。
 どこまでも広がる砂の海。乾いた風。照りつける太陽。
 環境適応スキルのおかげで不快感もない。


 音魔法を発動する。
 なんとなく爽やかな曲がいいな。ハウスミュージックでもかけようか。

 あ~やっぱこの曲好きだなぁ。
 どことなくトロピカルな感じもしながら、空を飛んでいるような爽やかな浮遊感。
 ピアノの主旋律も美しくて耳が幸せだ。

 砂漠全てに曲を届けるつもりで音魔法を拡散する。
 どうだ魔物たちよ。この曲いいだろー? もっと聞きたければ近くに来るがいいさっ。


 気持ちよく音に浸っていると馬車が止まる。どうやら魔物が大量に現れたらしい。狙い通りだ。
 ただ、音に釣られたのか魔力に釣られたのかは分からないな。俺が気にすべき部分でもないけど。

 さて、騎乗用に使えそうな魔物はいるかなぁ?


「さて、トーマがちょっと音魔法に夢中になっちゃってるから、ここは僕が指揮を代行するよ。
 基本的に魔物は全部迎撃してもいいけど、騎乗に使えそうな魔物が居たら適当に弱らせてね。
 砂の瞬きの皆さんは魔物の回収と解体をよろしくです」

「了解した。砂漠で大量の魔物に襲われる経験などないからな。貴方たちの戦闘力をアテにさせていただこう」


 う~ん。複合レーダーでも砂の中の魔物までは感知出来ないなぁ。
 砂漠地帯って魔物に有利で人には不利に出来てるんだなぁ。

 鈴音を抜くほどの相手でもないので、ダガーで延々と魔物を刈り取っていく。

 ああいいな。BGMつき戦闘。まさにゲーム戦闘そのものだよ。


 砂の上から下からひっきりなしに魔物が襲い掛かってくる。
 俺の周囲には誰もいないので、ただ襲ってくる魔物だけに意識を向ける。

 砂の上ってのは足を取られて動きにくい。
 デューンサラマンダーに倣って、足先から土魔法を発動し足場の硬度を上げる。
 水魔法で砂を固めても、その部分ごと沈んで終わりそうだ。

 アサルトドラゴンが突っ込んでくる。お前ほんとにどこにでも出るな。

 山のようにでかいサソリが襲い掛かってくる。コイツがシザーマウンテンか。騎乗魔物には向いてない気がする。

 砂の中からサメが飛び出してくる。ある種定番だな。

 派手な柄をした巨大な蛇が襲い掛かってくる。蛇って馬車引けないよなぁ。

 ゴツゴツした鱗を持った巨大なトカゲが現れる。なんだっけ? こんなトカゲ、地球にも居たような。

 砂漠色の肌を持ったカエルが飛び掛ってくる。カエルは微妙に毒持ち多いから怖いんだよな。

 グランドタートルさん。足が遅いから重役出勤ご苦労様です。

 グランドドラゴンも出始めた。そういやコイツ地竜だもんな。砂漠地帯には強そうだ。


 次々に現れる魔物の群れを、片っ端から殲滅していく。
 今の候補はグランドドラゴンか、巨大トカゲさんかな?
 グランドタートルは足が遅すぎるし、シザーマウンテンはでか過ぎて管理が難しそうだ。

 音魔法を展開したまま、なるべく前へ前へと進んでいく。
 死体の回収もしやすいだろうし、解体の邪魔もしたくない。
 前に進めば、いまだ魔力が届いていない魔物にも音魔法が届くかも知れないわけだし。


「あートーマったら完全に楽しくなっちゃってるねー。私達の事を忘れたわけじゃないんだろうけど、優先度は下がっちゃってる気がするなー」

「うん。トーマって音楽かけると意識が明らかに変わるよね。あの状態のトーマに近寄るのはちょっと怖いかな?」

「トーマの集中力は普段も凄いと思いますけどね。音楽が入ると、更に集中が深まるとこありますね」

「流石にあの状態のトーマと手合わせはしたくないかな。
 トーマって訓練でも手を抜いてるわけじゃないんだろうけど、実戦の時の半分も集中力発揮できてないんだよね」


 その時小さく鈴音が鳴った。
 ん? 鈴音も戦いたいのか? でもたいした魔物じゃないぞ? それでもいい?
 なら仕方ない。ダガーを仕舞って鈴音を抜く。
 真っ白な刀身は相変わらずの美人さんだ。

 鈴音に思い切り魔力を注ぐ。鈴の音が聞こえる。そうか、これは喜んでるのか。

 限界まで鈴音に注いだ魔力が溢れ出す。

 戦場に鳴り響く、美しい鈴の音色。まるで他の音が消え去ったかのよう。

 一瞬置いて、周囲に居た魔物が全て両断されていた。


 おお? 鈴音を振ってすらいないというのに。

 なにが起きたか分からないが、感覚的には理解できる。
 今鈴音は俺の魔力を使って鈴の音を発生し、そこに斬撃を乗せたのだ。

 こんなの俺も出来ませんが? 鈴音さん凄すぎじゃない?

 見渡す限りの魔物が両断され、砂漠が魔物の血で染まってしまった。


「トーマ。1回音を止めてくれる? 僕たちも砂の瞬きの作業を手伝おう。
 凄く集中してたのは分かるけど、他の人の作業もあるんだから、張り切りすぎちゃダメだよ」


 いやいや、最後のは故意じゃないんだけど……。
 ま、鈴音が嬉しそうにしてるからいいか。

 皆殺しにしたって事は、騎乗に向いてるような魔物は居なかったのかな?
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