異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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10章 壁外世界

359 パワーレベリング

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「トーマ~? 今夜は覚悟してもらうからね~?」

「全くです。お酒に酔わせてなんて許せません。これは全力でいかせてもらいますよ」

「ペルで6日か。恐らくスナネコのほうが早いし、砂漠には余計な遮蔽物もあまりないと思うから、3日くらいで端まで到達できるかも。その途中でエリアキーパーが居るとするなら、下手すると1日で目撃できる可能性があるね」

「うん。シンのスルースキルって何気に高いよね? それにしてもシャネルたちのおかげで、エリアキーパーの場所が一気に手が届く範囲になっちゃったかな」

「装備品の完成が遅れてて申し訳ねぇ! でもお前らの命を守るためにゃあ、半端なもんを渡すわけにもいかねぇんだ! もうちょっとだけ時間をくれ!」

「う~ん……。トーマぁ……。くすぐったいよぉ……? むにゃむにゃ」


 リーネさんは未だに酒が抜けずに寝ております。


「マーサは気にしなくて良い。別に納期なんて決まってねぇし、俺とシンだって準備が万端なわけじゃないしな。
 焦って死ぬくらいなら、じっくり構えて生きるほうを選ぶさ。
 それと酒はリーネが勝手に飲んだんだからな? 別に俺が飲ませたわけじゃないから」

「いやいやトーマ。思い切り楽しんできた人がそれ言っても説得力ないっすからね? まぁ夫婦間の話なのでなにも問題はないっすけど」

「――――ねぇ。今回はエリアキーパーとの戦闘は予定してないのよね? 私たちも同行させてもらえないかしら?」


 カンナからの意外なお願いに少し驚く。
 戦闘する予定はないから連れて行くのは構わないけど。


「カンナっち? いきなりどうしたっすか?」

「いえね。私たちが加担したロンメノが生み出した心核魔獣がどれ程の存在だったのか、私たちが知らないのはダメなんじゃないかなって思うのよ。知ったから何が変わるって話でもないのだけど」

「んー? そこは気にしなくていいんじゃないかなー。アサヒとカンナが直接加担したわけじゃないし、結果的にトーマに制圧されちゃったわけだしー?」

「うっ、あれはトーマが異常すぎるわよ。レンジさんの電速ですら反応できないのに、それを上回る短距離転移移動なんて対応できるわけないじゃないっ……!」

「んん……。確かにうちらが直接何かをしたってわけでもないっすけど、このまま何も知らないでいるのも、確かにちょっと後味悪いっすね……。
 みんなのご迷惑にならないんなら、私も同行させて欲しいっす」

「んー、迷惑にはならないと思うけどな……。ランドビカミウリよりも強いと思われるユリバファルゴアを、『精神安定』なしで直接見て大丈夫かねぇ……?」

「うん。確かにそれは危ないかも知れないね。生まれたてのランドビカミウリですらあの迫力だったから、いきなりあれ以上の魔物を見るのは、心が折れたりしかねないかな」

「そう言えば、結局ハイブリッドで『精神安定』が取れるかは分かってなかったんだよね? せっかくだから2人に検証してもらうのも悪くないんじゃないかな?
 『精神安定』は重要なスキル群の前提条件になってるからね。今のうちに確認しておくのは大切だと思う」

「確かにシンの言うとおりではないですか? 『任意発動スキル強化』も『深層集中』も『精神安定』がないと取得できませんから。異邦人も増えたことですし、殺人などが起こる前に検証しておくべきでしょう」


 あー……。下手に精神安定の条件を知った奴が、殺人を犯す可能性はありそうだなぁ。
 でもあんまり時間を無駄にするわけにもいかないし……。


「んー。じゃあ悪いけど2人とも。明日早朝のシンとの探索に1回だけ付き合ってくれ。それで間違いなく必要SPは獲得できるから。そんでまたアイツ……、ベイクの狩人ギルドの……、確かアートンだったっけ。アートンに人間型の魔物、女性型ヒュームの居場所を教えてもらって、明日のうちに覚えてしまおう。
 ミルズレンダ以外なら、多分即日いけるだろうしな」

「え……と? トーマとシンの探索って……、まさか、よね?」

「まさかの88階層探索だよ。SP足りなきゃ意味無いからな。大丈夫。絶対守るから」

「いやいやいや!? セリフだけ見たらイケメンっすけど、内容的にはブラックすぎっすよ!?」


 いやぁ精神安定が今まで発動したなぁって実感できたことってあんまりないんだけど、多分アレがなかったら結構死んでた場面多い気がするんだよな。
 エリアキーパー見学に同行するなら強制参加ってことで納得してもらう。


 翌朝2人を叩き起こして、88階層探索に同行させる。
 ふっ、燃え尽きた後だから、女子高生の2人部屋に入っても何も思うところはなかったぜ。


「それじゃトーマは弓持ちだし、2人の護衛をお願いね。今日は僕が遊撃を担当するよ」

「了解。よろしく頼むよ。状況次第では俺も手伝うわ」


 88階層で弓使うのは初めてだな。
 マーサのおかげで矢が自動で戻ってくるようになって弾切れの心配もないし、弓の練習のつもりで頑張ってみるか。





「ううう。異風の旋律、頭おかしいっすよ~……」

「す、少しは強くなったつもりで居たけど、ほんとまだまだだったわね私達……」

「いやいや、2人ともスゲー頑張ってると思うよ。俺って2人と同じ転移日数の頃には、多分まだ20階層のあたりだったと思うし」

「うん。そう考えると私も意味分からないよね。大体トーマのせいなんだけど」

「ハルの時は苦労させちゃったねー。アサヒとカンナは無理せず自分のペースで強くなって良いんだよー? 先輩の私がいつでも相談に乗るからねーっ」


 リーンセンパイが更に勢力の拡大を目論んでおられる。

 朝食後に狩人ギルドのマートンに、金貨1枚払って女性型ヒュームの情報を聞こう。
 でも良く考えたらハルもトルネも久我たちを殺したことで精神安定を得たのだから、性別は関係なかったことに気付いた。


「ヒュームだったら、ボールクローグの大森林に住んでる『森の賢人グリーンフット』だな。
 ビースト、ハイブリッド、ヒュームって仲が悪いらしくて、同じところに居たがらねぇらしい。
 あんたら以前、グリーントーチを狩ったことあるんだよな? だったら少し離れた場所を探してみると良いぜ。現地の狩人なら詳しい場所も分かってっかもだがよ」


 ボールクローグ近郊に出る魔物だったとしたら、迷宮の氾濫のおかげで、みんな精神安定覚えられたりするのか……?
 でもあの時グリーントーチを見た覚えがない。氾濫には出現しなかった可能性もありそうだ。


 ボールクローグへ移動。狩人ギルドにはクリーヌが居たので、せっかくなので案内を依頼。
 クリーヌは氾濫のおかげで兄弟がスキルを得たらしく、上の兄弟で集まって4人で活動するようになったそうだ。
 ぼっち卒業おめでとう! ま、クリーヌは元々兄妹待ってただけなんだけどさ。


 グリーンフットは割と簡単に討伐することが出来た。
 というか大森林でも音魔法の吸引力は変わらなかったのだ。

 賢人なんていう割にはムッキムキでフッサフサだった。3メートル近い大男で、迷彩色なのか、暗い緑色をした魔物だった。ヒュームっていう割には人っぽくなくて罪悪感を感じずに済んだわ。


 街に帰還して祝福の儀を受けてもらうと、無事に『精神安定』が取得できたようだった。
 88階層の探索で8000SP以上獲得できていたので、他にも色々取得出来たみたいで、ちょっと複雑そうにしていた。

 ま、ホントはパワーレベリングは好きじゃないんだけどな。
 それでもエリアキーパーに会いに行くってんなら、やっぱ必要なスキルだと思う。

 さて、明日こそエリアキーパー見学に出発しよう。
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