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10章 壁外世界
361 蛇神
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その姿を例えるなら、まるで夜空にカーテンでもかかっているかのようだった。
夜空という海を泳ぐリュウグウノツカイみたいだ。
あまりにも大きすぎて、速度も距離感も掴めない。
でも間違いなく、一直線にこっちに向かってきている!
「全員今すぐ馬車に乗れっ!! みんな、全力で退却!!」
固まって動かないアサヒとカンナを脇に抱えて、馬車に飛び込む。
全員が馬車に入った瞬間、馬車が猛スピードで走り出す。
窓から顔を出して後方を確認するが、距離が離せているのか縮まっているのかすら分からない……!
だが直感で分かる。
あれがエリアキーパー、蛇神ユリバファルゴアで間違いない……!
一直線にこちらに向かってきているのは間違いないが、その胴体はまるでオーロラのように空に揺らめいている。まさに泳いでいるようにしか見えない。
遠目を使用して姿を確認すると、なんと目を合わせてきやがった。完全に認識されてるな……!
その胴体は平らで縦長。そしてどこまでも長い。胴体の先が見えないほどに。
表面は黄色い鱗で覆われていて、かなり防御力が高そうだ。
エリアキーパーだから、魔法やブレスなんかの遠距離攻撃を持っていても不思議じゃないんだが、撃ってくる気配がない。
遠近感が狂ってるけど、実際にはどれくらい距離が離れてんだ……?
「……あれがユリバファルゴアで間違いなさそうだね。速度的には互角っぽく見えるけど、逃げ切れると思う?」
「……どうかな。エリアキーパーって言うくらいだから、一定範囲から出てこないと思いたいけどな。
しかし想定外だったぜ、アイツの知覚範囲を舐めてた。俺達を発見したのは偶然じゃないはずだ」
「うん。そういえば神話に出てくるランドビカミウリも、縄張りに入った途端に人類に襲い掛かってきたんだよね? 一定の範囲を周回してる感じなのかな」
「トーマどうするの? ホワイトテイルならあそこまで攻撃が届くと思うけど、牽制してみる?」
「――――いや、それはギリギリまでやめておこう。攻撃してしまうと、もはや言い訳が出来ない戦闘状態に突入してしまう。
エリアキーパーの目撃情報がある以上、逃げ切ることは可能なはずなんだよ。だからギリギリまで戦闘行為は控えて、逃げに徹しよう」
この世界の敵対存在は、神様が人間に都合の良いように用意した存在だからな。どことなくシステマチックな部分を感じる。認識されただけなら逃げ切れても、戦闘状態になったら逃走不可能になるって可能性もありえる。
「トーマ。ギリギリまで控えるのは構いませんが、そのギリギリってどういう状況ですか?」
「決まってる。ウィルスレイアの城壁が見えてもアイツが追ってくるようなら、この場で迎撃するしかない。いくらなんでもあんなバケモノ、ウィルスレイアまで引っ張るわけにはいかないからな」
「2人ともっ……! 大丈夫……!? アサヒ……! カンナ……! しっかりして……!!」
リーネの声に、脇に抱えたままのアサヒとカンナに目を落す。
2人とも小刻みに震えていて、視点も定まってない。
「悪いシン。ちょっとユリバファルゴアのほう頼む」
「了解。異変があればすぐに知らせるよ」
窓から顔を引っ込めて、顔面蒼白な2人に向き合う。
「アサヒ! カンナ! しっかりしろ! 気を強く持て!」
「なんなんすかあれ……。なんなんすかあれ……。なんなんすか、いったいなんなんすかあれ……!」
「あんな……、あんなバケモノがいるなんて……。あんなバケモノを呼び出す奴等に与していたなんて……!」
ちっ! 何度呼びかけてみても反応してくれない!
精神安定があってもこれか……!
俺たちと違って、段階的に強くなったワケじゃないからな。やはりまだエリアキーパーと対峙するのは早すぎたか……!
「2人ともしっかりしろ! 大丈夫だ! 何も心配しなくて良い! しっかりしろ!」
「「…………っ」」
ダメだ、完全に意識が囚われている。
ユリバファルゴアの姿を見て、恐怖に染まってしまっている。
2人を正気に戻すには、なにか衝撃を与えないとダメそうだ。
思考が停止するほどの衝撃か……。なにか方法は……。
「ちっくしょー! 責任持って貰ってやるから、後で文句言うんじゃねぇぞ!」
虚ろな目をしたアサヒの口に、思い切り口付けする。
これだけだと足りないかも知れないので、思い切り口の中で舌を暴れさせる。
これは気付けのためであって、断じて好きでやってるわけではないっ。
なかなか効果が現れないが、諦めずにアサヒの口内を蹂躙する。
「――――っ!? ……んん!? むふぅ!?」
最後に思い切り舌を吸いながら口を離し、そのままカンナの唇も奪う。
口付けした程度ではやはり反応がないので、カンナの口内で丁寧に舌を動かす。
アサヒも体感3分くらいかかったからな。カンナの口の中で丹念に舌同士を絡ませる。
「んー!? んっ……! ふ……! んんっ……!」
どうやらカンナも戻ってきたようだ。両手をバタバタさせて暴れ始めた。
でも手間かけさせた罰だ! もう少しこのまま続けてやるっ。
暴れていた両手は段々動きを止めて、やがて両手を俺の首に回してきた。
「ン……、んん……、ちゅ……、ふ……」
ユリバファルゴアに追われていて、仲間も嫁も居る空間で、俺は何をしてるんだ。
そうは思っても口が離せない。
カンナと貪るように唾液を交換し合う。
「だーーー! やりすぎ! やりすぎっすから! カンナっちももう正気に戻ってるっすから! 一旦ストーップ!」
アサヒの体当たりのような制止が入って、ようやくカンナの口を解放する。
まるで別れを惜しむように、舌を引っ張り出すくらいに吸いながら。
口内に溜まった唾液を飲み干して、現状確認に移る。
「シン。ユリバファルゴアはどうなった?」
「いやその切り替えの早さは見事だと思うけどね。大丈夫。逃げ切れたみたいだ。結構前にね」
「うん。トーマってば、この非常時に楽しみすぎでしょ? 女子高生の唇はそんなに美味しかったのかな?」
「帰ったら全員に同じことしてもらうからねー? 終わるまで絶対に許さないんだからっ」
「ん。トーマってキス魔なところありますよね。非常時こそ興奮するものがあるんでしょうか」
「う、うん……。私もトーマにキスしてもらうのは大好きだから、いっぱいして欲しいな……?」
「トーマー! 責任取って貰ってくださいっすよー! もうトーマにマーキングされちゃったっすからねー!?」
「はぁ……。はぁ……。
……大好き。大好きトーマ。おねがい、もっとして……?」
「うん。俺が悪かったから一旦みんな落ち着こうか。
アサヒもカンナもちゃんと貰ってやるよ。これから死ぬまで宜しくな。
俺のせいで最後はめちゃくちゃになっちまったけど、全員無事でなによりだ」
甘く見ていたつもりはないけど、アレは明らかにランドビカミウリよりも格上だろうな。
つうかでか過ぎて距離すら測れなかったからな。あんなの倒せるもんだろうか?
ちょっと予想以上にヤバイ相手っぽい。
まだ姿を見ただけだっていうのにこれだよ。嫌になるわ。
夜空という海を泳ぐリュウグウノツカイみたいだ。
あまりにも大きすぎて、速度も距離感も掴めない。
でも間違いなく、一直線にこっちに向かってきている!
「全員今すぐ馬車に乗れっ!! みんな、全力で退却!!」
固まって動かないアサヒとカンナを脇に抱えて、馬車に飛び込む。
全員が馬車に入った瞬間、馬車が猛スピードで走り出す。
窓から顔を出して後方を確認するが、距離が離せているのか縮まっているのかすら分からない……!
だが直感で分かる。
あれがエリアキーパー、蛇神ユリバファルゴアで間違いない……!
一直線にこちらに向かってきているのは間違いないが、その胴体はまるでオーロラのように空に揺らめいている。まさに泳いでいるようにしか見えない。
遠目を使用して姿を確認すると、なんと目を合わせてきやがった。完全に認識されてるな……!
その胴体は平らで縦長。そしてどこまでも長い。胴体の先が見えないほどに。
表面は黄色い鱗で覆われていて、かなり防御力が高そうだ。
エリアキーパーだから、魔法やブレスなんかの遠距離攻撃を持っていても不思議じゃないんだが、撃ってくる気配がない。
遠近感が狂ってるけど、実際にはどれくらい距離が離れてんだ……?
「……あれがユリバファルゴアで間違いなさそうだね。速度的には互角っぽく見えるけど、逃げ切れると思う?」
「……どうかな。エリアキーパーって言うくらいだから、一定範囲から出てこないと思いたいけどな。
しかし想定外だったぜ、アイツの知覚範囲を舐めてた。俺達を発見したのは偶然じゃないはずだ」
「うん。そういえば神話に出てくるランドビカミウリも、縄張りに入った途端に人類に襲い掛かってきたんだよね? 一定の範囲を周回してる感じなのかな」
「トーマどうするの? ホワイトテイルならあそこまで攻撃が届くと思うけど、牽制してみる?」
「――――いや、それはギリギリまでやめておこう。攻撃してしまうと、もはや言い訳が出来ない戦闘状態に突入してしまう。
エリアキーパーの目撃情報がある以上、逃げ切ることは可能なはずなんだよ。だからギリギリまで戦闘行為は控えて、逃げに徹しよう」
この世界の敵対存在は、神様が人間に都合の良いように用意した存在だからな。どことなくシステマチックな部分を感じる。認識されただけなら逃げ切れても、戦闘状態になったら逃走不可能になるって可能性もありえる。
「トーマ。ギリギリまで控えるのは構いませんが、そのギリギリってどういう状況ですか?」
「決まってる。ウィルスレイアの城壁が見えてもアイツが追ってくるようなら、この場で迎撃するしかない。いくらなんでもあんなバケモノ、ウィルスレイアまで引っ張るわけにはいかないからな」
「2人ともっ……! 大丈夫……!? アサヒ……! カンナ……! しっかりして……!!」
リーネの声に、脇に抱えたままのアサヒとカンナに目を落す。
2人とも小刻みに震えていて、視点も定まってない。
「悪いシン。ちょっとユリバファルゴアのほう頼む」
「了解。異変があればすぐに知らせるよ」
窓から顔を引っ込めて、顔面蒼白な2人に向き合う。
「アサヒ! カンナ! しっかりしろ! 気を強く持て!」
「なんなんすかあれ……。なんなんすかあれ……。なんなんすか、いったいなんなんすかあれ……!」
「あんな……、あんなバケモノがいるなんて……。あんなバケモノを呼び出す奴等に与していたなんて……!」
ちっ! 何度呼びかけてみても反応してくれない!
精神安定があってもこれか……!
俺たちと違って、段階的に強くなったワケじゃないからな。やはりまだエリアキーパーと対峙するのは早すぎたか……!
「2人ともしっかりしろ! 大丈夫だ! 何も心配しなくて良い! しっかりしろ!」
「「…………っ」」
ダメだ、完全に意識が囚われている。
ユリバファルゴアの姿を見て、恐怖に染まってしまっている。
2人を正気に戻すには、なにか衝撃を与えないとダメそうだ。
思考が停止するほどの衝撃か……。なにか方法は……。
「ちっくしょー! 責任持って貰ってやるから、後で文句言うんじゃねぇぞ!」
虚ろな目をしたアサヒの口に、思い切り口付けする。
これだけだと足りないかも知れないので、思い切り口の中で舌を暴れさせる。
これは気付けのためであって、断じて好きでやってるわけではないっ。
なかなか効果が現れないが、諦めずにアサヒの口内を蹂躙する。
「――――っ!? ……んん!? むふぅ!?」
最後に思い切り舌を吸いながら口を離し、そのままカンナの唇も奪う。
口付けした程度ではやはり反応がないので、カンナの口内で丁寧に舌を動かす。
アサヒも体感3分くらいかかったからな。カンナの口の中で丹念に舌同士を絡ませる。
「んー!? んっ……! ふ……! んんっ……!」
どうやらカンナも戻ってきたようだ。両手をバタバタさせて暴れ始めた。
でも手間かけさせた罰だ! もう少しこのまま続けてやるっ。
暴れていた両手は段々動きを止めて、やがて両手を俺の首に回してきた。
「ン……、んん……、ちゅ……、ふ……」
ユリバファルゴアに追われていて、仲間も嫁も居る空間で、俺は何をしてるんだ。
そうは思っても口が離せない。
カンナと貪るように唾液を交換し合う。
「だーーー! やりすぎ! やりすぎっすから! カンナっちももう正気に戻ってるっすから! 一旦ストーップ!」
アサヒの体当たりのような制止が入って、ようやくカンナの口を解放する。
まるで別れを惜しむように、舌を引っ張り出すくらいに吸いながら。
口内に溜まった唾液を飲み干して、現状確認に移る。
「シン。ユリバファルゴアはどうなった?」
「いやその切り替えの早さは見事だと思うけどね。大丈夫。逃げ切れたみたいだ。結構前にね」
「うん。トーマってば、この非常時に楽しみすぎでしょ? 女子高生の唇はそんなに美味しかったのかな?」
「帰ったら全員に同じことしてもらうからねー? 終わるまで絶対に許さないんだからっ」
「ん。トーマってキス魔なところありますよね。非常時こそ興奮するものがあるんでしょうか」
「う、うん……。私もトーマにキスしてもらうのは大好きだから、いっぱいして欲しいな……?」
「トーマー! 責任取って貰ってくださいっすよー! もうトーマにマーキングされちゃったっすからねー!?」
「はぁ……。はぁ……。
……大好き。大好きトーマ。おねがい、もっとして……?」
「うん。俺が悪かったから一旦みんな落ち着こうか。
アサヒもカンナもちゃんと貰ってやるよ。これから死ぬまで宜しくな。
俺のせいで最後はめちゃくちゃになっちまったけど、全員無事でなによりだ」
甘く見ていたつもりはないけど、アレは明らかにランドビカミウリよりも格上だろうな。
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