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10章 壁外世界
385 銀世界
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馬車を降りて『遠目』を発動する。
正直吹雪いてる事しか分からないな。
これは雪原地帯というよりは吹雪地帯って言う方が近い気がする。
「これは……、雪、という奴かい?
知識としては知っていたけど、見るのは生まれて初めてだよ。
まさか灼熱の砂漠の先が、視界遮る吹雪に覆われているなんて、流石に予想してなかったな……」
ファーガロン様も降りてきて、呆然と吹雪の先を見つめている。
見るのは生まれて初めて? ならなんで雪の事を知ってるんだ……、ってそうか。ヴェルトーガの開放型迷宮に雪原エリアが存在してたな。王国に雪が降らなかったとしても、雪の存在はみんな知っててもおかしくないのか。
「これが……、砂漠の果て……。シルグリイド家が追い求めた、その答えなのね」
カンカンがファーガロン様の腕を抱いたままで白い世界に想いを馳せている。
環境適応スキルのおかげで寒さは感じないけれど、砂漠とはまた違ったベクトルで苛酷な環境だなぁ。
「とりあえず、用事が無ければこの先に進む気にはなれないかなぁ……。エリアキーパーだって居るだろうし、吹雪ってかなり苛酷な環境だし。
でも次のエリアの境界まで結構距離がありそうだし、雪って使い道が多そうだし、砂漠都市の建設はこの近辺にするのがいいかもな」
「うん。まさか砂漠に雪が降り積もる光景を目にする事になるなんてね。
トーマの言う通り雪は使い道の多い資源だと思うし、採取しやすい場所に都市を作るのは賛成かな」
「そっすねぇ。氷系魔法って結構定番だと思うんすけど、この世界には存在してないんすもんねぇ。
おかげでカンナっちが唯一の氷魔法使いっすよ」
「ア~サ~ヒ~? ここにはカンカンもファーガロン様もいるって忘れてないかしら? アサヒは罰として、今日は1人で寝なさいよね」
「ちょちょちょ!? なに言ってるんすかカンナっち! 落ち着くっす! 話せばわかるっす!」
アサヒとカンナが漫才をしているがとりあえずスルー。
というか話題的に、俺が口を挟んでも薮蛇にしかならない気がする。
「マーサ。とりあえず鱗の加工が可能かって、この場で試せる? もし可能であれば、もうこの場でターミナル設置してから帰還したいと思うんだけど」
「ん。試すのは可能だぜ。設備的に万全じゃねぇが、一応仕事道具は持ってきてあるしな。
早速試してみらぁ。ちょっと時間を貰うぜ」
「ねぇねぇトーマ! あの白いのって雪って言うんだよね!? 触っても平気なのー!?」
「あ? ああ、こっちでは雪は一般的ではないんだな。
ヴェルトーガの開放型迷宮でも見たろ。あれって本来はこうやって、空から降ってきたものが降り積もって出来るもんなんだよ。元々は水だから危険はないぞ。ただ魔物だけには気をつけてな」
「ええ~……! みんなは迷宮で見たことあったんだねっ……!
危険がないなら触ってきてみるねっ……! リーン、私も行くよー……!」
リーンとリーネが吹雪の中を走り回っている。
環境適応スキルのおかげで寒さも感じないだろうしな。
寒くないなら雪のイメージって大分優しくなる気がする。
「私はこのまま周囲警戒を続けますね。エリアキーパーなんかが来る事はないと思いますけど、ファーガロン様とカンカンを危険に晒すわけには行きませんし」
「そうだね。なら僕もこのままトルネと一緒にファーガロン様たちの護衛を続けるよ。
トーマはマーサのほうを手伝ってくれないかな? クラフトスキルを持ってるのってトーマだけでしょ?」
「ん、なるほど。じゃあちょっとマーサのほう手伝ってくるよ。2人とも宜しくな」
馬車から離れて、スナネコ達に囲まれているマーサの元に向かう。
スナネコたちは雪にはあまり興味を示していないみたいだな。
コタツでも作ったらみんな入っちゃうんだろうか?
「ん? トーマか、どうした? 加工は悪いけどもうちょっと時間くれ」
「いやいや、クラフト系スキルを持ってるのって俺だけだからさ。マーサの手伝いに回されたんだよ。
スキルだけで手伝えることがあれば、遠慮なく言ってくれ」
「おっマジか! そりゃ助かんぜ! トーマは魔力成型も出来るから、多分手伝えると思うぜ!」
そう言ってマーサは1本の杖のような物を渡してくる。
「これは『再成型』が付与されてる魔導具だ。流石に工房においてある魔力成型用のポットは携帯出来ねぇからよ。そういう時に使うための魔導具だぜ」
「へぇ~色々あるんだなぁ。というか考えてみれば当たり前か。国境壁とか都市の城壁なんて、いちいち工房で作ってたら追いつかないもんな。
でもこれ1本だけじゃ、あんまり手伝いできなくないか?」
「あのなぁ……。私はトーマみたいに魔力が多くないんだよ。それにこの鱗の大きさ見ろっての。リモデリングでどれだけの魔力が引っ張られるか分かったもんじゃねぇよ」
「なるほどな。確かに交代要員が居るだけでも大分変わってくるのか。
分かった。なんでも言ってくれ。マーサの指示に従うよ」
せっかく杖を渡されたので、俺からリモデリングとやらを試してみることにした。まずは鱗の形をスキルで変えることが出来るのかを確認する。
干渉する範囲をちゃんと意識しつつ、魔導具に魔力を通していく。
魔導具で干渉した範囲だけ50センチくらい伸びている。ふむ。スキルでの成型は可能なようだ。
魔力消費も大したことがないな。多分リモデリングは固定消費なんだろう。
「っしゃあ! リモデリングで干渉できるなら何も問題ねぇぜ!」
「俺も手伝えるようで何よりだよ。でもさ。魔導具があるならみんなでも手伝えるんじゃないの?」
「ああ、俺も詳しい原理は分かっちゃいねぇんだけどさ。クラフトスキルを再現する魔導具は、やっぱりクラフトスキルを持ってないと発動できねぇんだよ。
リモデリングは魔力成型の術式付与された魔導具だからな。魔力成型を使わないと発動してくれねぇのさ。
原理を聞かれても私もわかんねぇ。そういうもんだと思ってたからな」
あーなるほどね。職人の立場を守るための制限なのかもしれない。
魔力さえあれば誰でも職人と同じことが出来るようになったら、クラフトスキル取る奴居なくなるもんなぁ。
ほんとこの世界って、良く考えられてるような、何も考えられてないような、変なチグハグさが拭えないんだよなぁ……。
正直吹雪いてる事しか分からないな。
これは雪原地帯というよりは吹雪地帯って言う方が近い気がする。
「これは……、雪、という奴かい?
知識としては知っていたけど、見るのは生まれて初めてだよ。
まさか灼熱の砂漠の先が、視界遮る吹雪に覆われているなんて、流石に予想してなかったな……」
ファーガロン様も降りてきて、呆然と吹雪の先を見つめている。
見るのは生まれて初めて? ならなんで雪の事を知ってるんだ……、ってそうか。ヴェルトーガの開放型迷宮に雪原エリアが存在してたな。王国に雪が降らなかったとしても、雪の存在はみんな知っててもおかしくないのか。
「これが……、砂漠の果て……。シルグリイド家が追い求めた、その答えなのね」
カンカンがファーガロン様の腕を抱いたままで白い世界に想いを馳せている。
環境適応スキルのおかげで寒さは感じないけれど、砂漠とはまた違ったベクトルで苛酷な環境だなぁ。
「とりあえず、用事が無ければこの先に進む気にはなれないかなぁ……。エリアキーパーだって居るだろうし、吹雪ってかなり苛酷な環境だし。
でも次のエリアの境界まで結構距離がありそうだし、雪って使い道が多そうだし、砂漠都市の建設はこの近辺にするのがいいかもな」
「うん。まさか砂漠に雪が降り積もる光景を目にする事になるなんてね。
トーマの言う通り雪は使い道の多い資源だと思うし、採取しやすい場所に都市を作るのは賛成かな」
「そっすねぇ。氷系魔法って結構定番だと思うんすけど、この世界には存在してないんすもんねぇ。
おかげでカンナっちが唯一の氷魔法使いっすよ」
「ア~サ~ヒ~? ここにはカンカンもファーガロン様もいるって忘れてないかしら? アサヒは罰として、今日は1人で寝なさいよね」
「ちょちょちょ!? なに言ってるんすかカンナっち! 落ち着くっす! 話せばわかるっす!」
アサヒとカンナが漫才をしているがとりあえずスルー。
というか話題的に、俺が口を挟んでも薮蛇にしかならない気がする。
「マーサ。とりあえず鱗の加工が可能かって、この場で試せる? もし可能であれば、もうこの場でターミナル設置してから帰還したいと思うんだけど」
「ん。試すのは可能だぜ。設備的に万全じゃねぇが、一応仕事道具は持ってきてあるしな。
早速試してみらぁ。ちょっと時間を貰うぜ」
「ねぇねぇトーマ! あの白いのって雪って言うんだよね!? 触っても平気なのー!?」
「あ? ああ、こっちでは雪は一般的ではないんだな。
ヴェルトーガの開放型迷宮でも見たろ。あれって本来はこうやって、空から降ってきたものが降り積もって出来るもんなんだよ。元々は水だから危険はないぞ。ただ魔物だけには気をつけてな」
「ええ~……! みんなは迷宮で見たことあったんだねっ……!
危険がないなら触ってきてみるねっ……! リーン、私も行くよー……!」
リーンとリーネが吹雪の中を走り回っている。
環境適応スキルのおかげで寒さも感じないだろうしな。
寒くないなら雪のイメージって大分優しくなる気がする。
「私はこのまま周囲警戒を続けますね。エリアキーパーなんかが来る事はないと思いますけど、ファーガロン様とカンカンを危険に晒すわけには行きませんし」
「そうだね。なら僕もこのままトルネと一緒にファーガロン様たちの護衛を続けるよ。
トーマはマーサのほうを手伝ってくれないかな? クラフトスキルを持ってるのってトーマだけでしょ?」
「ん、なるほど。じゃあちょっとマーサのほう手伝ってくるよ。2人とも宜しくな」
馬車から離れて、スナネコ達に囲まれているマーサの元に向かう。
スナネコたちは雪にはあまり興味を示していないみたいだな。
コタツでも作ったらみんな入っちゃうんだろうか?
「ん? トーマか、どうした? 加工は悪いけどもうちょっと時間くれ」
「いやいや、クラフト系スキルを持ってるのって俺だけだからさ。マーサの手伝いに回されたんだよ。
スキルだけで手伝えることがあれば、遠慮なく言ってくれ」
「おっマジか! そりゃ助かんぜ! トーマは魔力成型も出来るから、多分手伝えると思うぜ!」
そう言ってマーサは1本の杖のような物を渡してくる。
「これは『再成型』が付与されてる魔導具だ。流石に工房においてある魔力成型用のポットは携帯出来ねぇからよ。そういう時に使うための魔導具だぜ」
「へぇ~色々あるんだなぁ。というか考えてみれば当たり前か。国境壁とか都市の城壁なんて、いちいち工房で作ってたら追いつかないもんな。
でもこれ1本だけじゃ、あんまり手伝いできなくないか?」
「あのなぁ……。私はトーマみたいに魔力が多くないんだよ。それにこの鱗の大きさ見ろっての。リモデリングでどれだけの魔力が引っ張られるか分かったもんじゃねぇよ」
「なるほどな。確かに交代要員が居るだけでも大分変わってくるのか。
分かった。なんでも言ってくれ。マーサの指示に従うよ」
せっかく杖を渡されたので、俺からリモデリングとやらを試してみることにした。まずは鱗の形をスキルで変えることが出来るのかを確認する。
干渉する範囲をちゃんと意識しつつ、魔導具に魔力を通していく。
魔導具で干渉した範囲だけ50センチくらい伸びている。ふむ。スキルでの成型は可能なようだ。
魔力消費も大したことがないな。多分リモデリングは固定消費なんだろう。
「っしゃあ! リモデリングで干渉できるなら何も問題ねぇぜ!」
「俺も手伝えるようで何よりだよ。でもさ。魔導具があるならみんなでも手伝えるんじゃないの?」
「ああ、俺も詳しい原理は分かっちゃいねぇんだけどさ。クラフトスキルを再現する魔導具は、やっぱりクラフトスキルを持ってないと発動できねぇんだよ。
リモデリングは魔力成型の術式付与された魔導具だからな。魔力成型を使わないと発動してくれねぇのさ。
原理を聞かれても私もわかんねぇ。そういうもんだと思ってたからな」
あーなるほどね。職人の立場を守るための制限なのかもしれない。
魔力さえあれば誰でも職人と同じことが出来るようになったら、クラフトスキル取る奴居なくなるもんなぁ。
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