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11章 新たな都市の建設
453 ファータートル
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「ええ~!? 帰っちゃったの!? 私も会いたかったのにー!」
「まぁまぁ勘弁してくれよセンパイ。なんだか人に囲まれてるのが居心地悪そうに見えたからさ」
夕食後に、ふわわとつららに指をはむはむされながら、今日の出来事を報告する。
「見た感じ、敵意や害意に敏感な動物っぽかったな。それと本気じゃなかったとはいえ、スキルありのガルムの速度にあっさり付いてきたあたり、リヴァーブ王国って本来フィールダーに乗って移動する事を想定されてる気がしたよ。
力のほうは未知数だけど、速度と持久力は申し分なかったし」
「スキルありのペルやガルムなら、障害物がなければ3日くらいで王国の端から端まで移動できそうだもんね。
僕たちが行商の時に使ってた『毛亀』は、力は強いから荷物の運搬は楽なんだけど、速度があまり出せなかったからね」
「あーあー。1度お前らと解散した時に馬車引いてた魔物な。ファータートルってのかあの毛むくじゃら」
「そーそー。父さんたちが行商を始めた頃は、背中に荷物を背負って走り回ってたんだって! ファータートルって足が遅いから、父さんたちの速い移動が喜ばれたんだってさー」
「うん。住み分けってやつかな。遅くても大量の商品を運搬したい人も居れば、少量でも少しでも早く荷物を届けたい人もいるんだもんね」
「この国ってゲートがないと、生まれた場所で一生を過ごすのも珍しくないですからね。そのくらい都市間の移動というのは困難で命がけだったんですよ。
最近はカンパニーでやってる馬車サービスのおかげで、信じられないほど移動の敷居は下がってますけどね」
「そういやアレで使ってんのって、ファータートルじゃなくてアサルトドラゴンなんだよな。無料でアサルトドラゴンの引く馬車が使えるって、大分頭がおかしいんだぜ?
大規模な狩猟団でも維持費に苦労してるってのによぉ」
マーサが言う通り、カンパニーの馬車サービスでアサルトドラゴンを採用したのは、俺がペルとアサルトドラゴンくらいしか馬車を引く生き物を知らなかったからなんだよな。
経費に煩いジーンさんがニコニコしていたから、結構お金食うんじゃないかね。
「そうだなぁ。無料のままだと恒久的に続けるのは難しいから、次かその次くらいの異邦人転移のタイミングで有料化してもいいかもな。1つの都市移動で銀貨1枚くらいでも、充分黒字になるだろ」
「その金額設定なら、今の村落なら負担にならないかな……?
無料で使えてる今のほうがおかしいんだし、早めに告知しておけば不満は出ないかも……?」
「あ、金額設定で思い出したわ。シンが個人口座のほうのお金、出来れば使っちゃいたいって話をしてたんだけど、リーン、トルネ、ハルも同じ意見だったりする?」
「あーーー! そうだったよ! みんな聞いてよ! トーマだけ個人口座のお金、僕らに黙って使い切っちゃったんだよ!? ズルくないっ!?」
「なんでお金を使わせなかった事を怒られてるのかわからないっす。いやぁ異風の旋律の初期メンバーは住む世界が違うっすね」
「ルイナスリームの初期運営資金がトーマの個人口座って話だもんねぇ。しかも毎回カンパニーにもお金入れてるんでしょ? トーマがルイナスリームで探索したら、それだけでルイナスリーム破産しちゃいそう」
「んー。私は別に無理に使いきる必要はないと思ってるけどさー。使いもしない私の口座に入れておくよりは、世に出しちゃうべきかなとは思うかなぁ?」
「リーンに同じくですね。装備もマーサが作ってくれますし、生活費は全くかかりませんし、仮にお金に困ったら、その時に稼げばいいだけです。大金が私の口座に入ったままなのは、あまり良くないですね」
「うん。私も口座のお金は1度リセットしたいかな。多少の貯金は欲しいと思うけど、今の残高は過剰も過剰すぎるよ」
「おっけー。じゃあもしかしたら、ベイクの南辺りの土地を買う時に使わせてもらうかもしれないわ。
出来れば鳥獣保護区みたいなのを作りたいんだよね。土地も余ってるわけだし」
ルイナスリームを俺の個人資産で運営できるくらいの経済だからな。4人の資産を使えば、相当範囲の土地の購入が可能だと思う。
そもそも、土地の購入って概念があるかどうかが疑問だけど。
「保護区かぁ……。理想は共存だけど、今のあの子達はまだ人に慣れてないし、数も少ないもんね……」
「加えてあいつら野菜好きみたいだから、そこで餌も育てられたらと思うんだよね。砂漠に農地を作るよりは簡単な作業だと思うし」
「トーマは相変わらず色々考えてんだなぁ。私は装備のことしか考えられねぇわ」
「保護区か……。ゲイザーが動物で、農地を住処にしていた場合、一緒に保護できそうだね。
ただ広大な面積が必要そうで、そのためにはやっぱり王の許可が必要、かな。トーマ頑張ってね」
「まったく、シンもいい性格になってきたもんだよ。
これでも異邦人の街を立ち上げてきたんだからな。動物達が安心して暮らせる場所もついでに作っちまおうぜ」
「そうね。それにフィールダーが増えれば、将来的に馬車引きとして共存できるようになるかもしれない。人側にとてもメリットは大きいと思うわ」
まだ俺達の中で話してるだけだから、机上の空論っていうか皮算用に近いかもしれないけどな。
せっかく仲良く生きていけそうなんだから、その為の環境作りくらいはがんばってみよう。
「まぁまぁ勘弁してくれよセンパイ。なんだか人に囲まれてるのが居心地悪そうに見えたからさ」
夕食後に、ふわわとつららに指をはむはむされながら、今日の出来事を報告する。
「見た感じ、敵意や害意に敏感な動物っぽかったな。それと本気じゃなかったとはいえ、スキルありのガルムの速度にあっさり付いてきたあたり、リヴァーブ王国って本来フィールダーに乗って移動する事を想定されてる気がしたよ。
力のほうは未知数だけど、速度と持久力は申し分なかったし」
「スキルありのペルやガルムなら、障害物がなければ3日くらいで王国の端から端まで移動できそうだもんね。
僕たちが行商の時に使ってた『毛亀』は、力は強いから荷物の運搬は楽なんだけど、速度があまり出せなかったからね」
「あーあー。1度お前らと解散した時に馬車引いてた魔物な。ファータートルってのかあの毛むくじゃら」
「そーそー。父さんたちが行商を始めた頃は、背中に荷物を背負って走り回ってたんだって! ファータートルって足が遅いから、父さんたちの速い移動が喜ばれたんだってさー」
「うん。住み分けってやつかな。遅くても大量の商品を運搬したい人も居れば、少量でも少しでも早く荷物を届けたい人もいるんだもんね」
「この国ってゲートがないと、生まれた場所で一生を過ごすのも珍しくないですからね。そのくらい都市間の移動というのは困難で命がけだったんですよ。
最近はカンパニーでやってる馬車サービスのおかげで、信じられないほど移動の敷居は下がってますけどね」
「そういやアレで使ってんのって、ファータートルじゃなくてアサルトドラゴンなんだよな。無料でアサルトドラゴンの引く馬車が使えるって、大分頭がおかしいんだぜ?
大規模な狩猟団でも維持費に苦労してるってのによぉ」
マーサが言う通り、カンパニーの馬車サービスでアサルトドラゴンを採用したのは、俺がペルとアサルトドラゴンくらいしか馬車を引く生き物を知らなかったからなんだよな。
経費に煩いジーンさんがニコニコしていたから、結構お金食うんじゃないかね。
「そうだなぁ。無料のままだと恒久的に続けるのは難しいから、次かその次くらいの異邦人転移のタイミングで有料化してもいいかもな。1つの都市移動で銀貨1枚くらいでも、充分黒字になるだろ」
「その金額設定なら、今の村落なら負担にならないかな……?
無料で使えてる今のほうがおかしいんだし、早めに告知しておけば不満は出ないかも……?」
「あ、金額設定で思い出したわ。シンが個人口座のほうのお金、出来れば使っちゃいたいって話をしてたんだけど、リーン、トルネ、ハルも同じ意見だったりする?」
「あーーー! そうだったよ! みんな聞いてよ! トーマだけ個人口座のお金、僕らに黙って使い切っちゃったんだよ!? ズルくないっ!?」
「なんでお金を使わせなかった事を怒られてるのかわからないっす。いやぁ異風の旋律の初期メンバーは住む世界が違うっすね」
「ルイナスリームの初期運営資金がトーマの個人口座って話だもんねぇ。しかも毎回カンパニーにもお金入れてるんでしょ? トーマがルイナスリームで探索したら、それだけでルイナスリーム破産しちゃいそう」
「んー。私は別に無理に使いきる必要はないと思ってるけどさー。使いもしない私の口座に入れておくよりは、世に出しちゃうべきかなとは思うかなぁ?」
「リーンに同じくですね。装備もマーサが作ってくれますし、生活費は全くかかりませんし、仮にお金に困ったら、その時に稼げばいいだけです。大金が私の口座に入ったままなのは、あまり良くないですね」
「うん。私も口座のお金は1度リセットしたいかな。多少の貯金は欲しいと思うけど、今の残高は過剰も過剰すぎるよ」
「おっけー。じゃあもしかしたら、ベイクの南辺りの土地を買う時に使わせてもらうかもしれないわ。
出来れば鳥獣保護区みたいなのを作りたいんだよね。土地も余ってるわけだし」
ルイナスリームを俺の個人資産で運営できるくらいの経済だからな。4人の資産を使えば、相当範囲の土地の購入が可能だと思う。
そもそも、土地の購入って概念があるかどうかが疑問だけど。
「保護区かぁ……。理想は共存だけど、今のあの子達はまだ人に慣れてないし、数も少ないもんね……」
「加えてあいつら野菜好きみたいだから、そこで餌も育てられたらと思うんだよね。砂漠に農地を作るよりは簡単な作業だと思うし」
「トーマは相変わらず色々考えてんだなぁ。私は装備のことしか考えられねぇわ」
「保護区か……。ゲイザーが動物で、農地を住処にしていた場合、一緒に保護できそうだね。
ただ広大な面積が必要そうで、そのためにはやっぱり王の許可が必要、かな。トーマ頑張ってね」
「まったく、シンもいい性格になってきたもんだよ。
これでも異邦人の街を立ち上げてきたんだからな。動物達が安心して暮らせる場所もついでに作っちまおうぜ」
「そうね。それにフィールダーが増えれば、将来的に馬車引きとして共存できるようになるかもしれない。人側にとてもメリットは大きいと思うわ」
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