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11章 新たな都市の建設
455 鳥獣被害
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「お久しぶりですダリッツさん。今日は宜しくお願いします」
「ええお待ちしておりましたよ。今回は少人数でいらしたようですね。こちらこそ宜しくお願いしますよ」
ネヴァルドの商工ギルドから中央農地に飛ばしてもらった。
久しぶりに再会したダリッツさんは、急な俺たちの来訪にも、以前と変わらぬ笑顔で応対してくれた。
「それでトーマさん。本日はどのような用件でいらしたんですか? ご連絡いただいた際にはご用件を伝えられていなかったようですので。
農業に関することでしたら、大抵の事にはご協力できると思いますが」
「えっと。とりあえず用件は2つですね。1つは勿論農業についてお話を聞きたいんですけど……」
ダリッツさんに隠したままでゲイザーを探すのは無理か。
というか農地の職員の協力なしにゲイザー探しは普通に無理だよな。立ち入り禁止エリアとかありそうだし。
「2つめの用件はちょっと特殊なんです。決してふざけてるわけではありませんからね。
実は今回、中央農地で度々目撃されている鳥型の魔物の調査に来たんですよ。その鳥型の魔物、もしかしたら魔物じゃない可能性が出てきまして。
魔物じゃないのならばそれを王国中に周知しないと、彼らは狩られてしまいますから」
中央農地での目撃情報が報告されてるって事は、恐らくダリッツさんもゲイザーの存在は知っているはずだ。ここは下手に嘘をつかずに、真正面から協力を要請しちゃおう。
「鳥型の魔物……、ゲイザーと呼ばれている魔物ですね。知っていますよ。
あの生き物が、魔物じゃない可能性があると?」
「はい。知っているんだったら協力願えないでしょうか?
中央農地は人が少ない場所ですから、彼らが狩られることも少ないと思うんですけど、それでも保護しなければ数を減らしてしまうことでしょう。出来れば……」
「保護……ですか。駆除や捕獲であればご協力しても良いのですが……」
「――――え?」
ダリッツさんの雰囲気が変わる。
ダリッツさんからどす黒い感情が漏れてきているかのようだ……!
「あいつらはねえええ! 私たち職員が丹精込めて作った野菜を、空から啄ばんでいきやがるんですよっっ!
しかも見計らったかのように、収穫直前のものばかり狙ってくるのですっ!
中央農地の歴史はゲイザーとの戦いの歴史なんですよ!
トーマさん! 本当は皆殺しにして欲しいところですけど、魔物ではないというならそこまでは望みません! だけどこの中央農地から追っ払って欲しいんです! その為ならば協力は惜しみませんよぉっ! 惜しみませんともぉっ!」
うおおお! ダリッツさんが燃えておられる!
こ、これが獣害に対する生産者の怒りの声って奴か!
やべぇな。ダリッツさんは皆殺しにしたいとか言っちゃってるし、早急に対策しないとマジで全滅しかねない。
「お、落ち着いてくださいダリッツさん! 協力はありがたいですけど皆殺しは止めておきましょう!
実はその件にも関わってくる話なのかもしれないんですけど、そういった生物たちの餌用の野菜を育ててみようって思ってるんですよ。
本格的な農場を始める前の、良い事前練習にもなると思ってますし、余剰分が出れば人用の流通量にも上乗せできますし、ゲイザーたちを中央農地から追っ払うこともできますし、平和的に解決できると思うんです」
「……ははは。少々取り乱してしまいましたね。お見苦しいところを見せました。
しかし、餌用の野菜を育てるとは、なんとも贅沢な話ですねぇ。人用の野菜も正直足りていないというのに。
ですがトーマさんのお話は、ここ中央農地にとっても良いお話のようです。ぜひとも協力させてください」
「ありがとうダリッツさん。宜しくお願いします」
なんとかダリッツさんが矛を収めてくれた。
これでゲイザー殲滅作戦は未然に防ぐことが出来たようだな。
保護しに来て絶滅させるとか、勘弁してよまったく……。
「ダ、ダリッツさんが別人みたいだったね……。ダリッツさんって怒らせると怖いんだぁ……」
「リーネ。あれはダリッツさんに限った話じゃないんだよ。一次生産者っていうのは、虫や獣、自然災害なんかと日夜戦い続けているんだ。
農業従事者にとって、手間暇かけて作った作物っていうのは我が子みたいなものだっていうからな。そんな大切な作物を荒らすゲイザーに抱く怒りというのは、計り知れないものがあるんだろうよ」
「そ、そうなの……? お、野菜が我が子のようだって感覚はちょっと分からないけど、それだけ大切にしているお野菜を荒らされたら、確かに怒っても仕方ないことなんだね……?」
それでもリンカーズは野菜の価値が凄く高いから、農家は救われてる方だとは思うけどね。
あー……、でも重要度が高すぎて、半幽閉生活を強いられてるのは微妙なのかなぁ。
ダリッツさんに案内されて、応接ロビーで改めてゲイザーの情報を聞くことにする。
「正直なところ、分かっていることが少ないのですよね。大型の鳥で空を飛んでいるはずなのに、中々その姿を確認できないんです。
作物は職員が寝静まった頃に食べられてることもありますが、白昼堂々と荒らされてしまう事もあるんです。なのにゲイザーの姿は見つけられなかったりするので、本当に厄介な相手なんですよね……」
「大型なのに中々確認できない、ですが。何か理由がありそうですね。
餌を用意して、罠を仕掛けたりは出来ないんですか?」
「試したことはあるんですが、綺麗に罠だけを掻い潜って餌を食べられたりしてしまいましてね。効果がなかったんです」
人が用意したトラップを初見で掻い潜る知能は、やはりゲイザーが動物である可能性が高くなってくるな。
しかし、その辺にもいる可能性があるなら、複合センサーで捉えられたりしないかなぁ。
もしくはまたこいつらに頼らせてもらうとか?
リーネの膝の上でお昼寝しているふわわとつららを見ながら、ゲイザーとの接触方法を考えるのだった。
「ええお待ちしておりましたよ。今回は少人数でいらしたようですね。こちらこそ宜しくお願いしますよ」
ネヴァルドの商工ギルドから中央農地に飛ばしてもらった。
久しぶりに再会したダリッツさんは、急な俺たちの来訪にも、以前と変わらぬ笑顔で応対してくれた。
「それでトーマさん。本日はどのような用件でいらしたんですか? ご連絡いただいた際にはご用件を伝えられていなかったようですので。
農業に関することでしたら、大抵の事にはご協力できると思いますが」
「えっと。とりあえず用件は2つですね。1つは勿論農業についてお話を聞きたいんですけど……」
ダリッツさんに隠したままでゲイザーを探すのは無理か。
というか農地の職員の協力なしにゲイザー探しは普通に無理だよな。立ち入り禁止エリアとかありそうだし。
「2つめの用件はちょっと特殊なんです。決してふざけてるわけではありませんからね。
実は今回、中央農地で度々目撃されている鳥型の魔物の調査に来たんですよ。その鳥型の魔物、もしかしたら魔物じゃない可能性が出てきまして。
魔物じゃないのならばそれを王国中に周知しないと、彼らは狩られてしまいますから」
中央農地での目撃情報が報告されてるって事は、恐らくダリッツさんもゲイザーの存在は知っているはずだ。ここは下手に嘘をつかずに、真正面から協力を要請しちゃおう。
「鳥型の魔物……、ゲイザーと呼ばれている魔物ですね。知っていますよ。
あの生き物が、魔物じゃない可能性があると?」
「はい。知っているんだったら協力願えないでしょうか?
中央農地は人が少ない場所ですから、彼らが狩られることも少ないと思うんですけど、それでも保護しなければ数を減らしてしまうことでしょう。出来れば……」
「保護……ですか。駆除や捕獲であればご協力しても良いのですが……」
「――――え?」
ダリッツさんの雰囲気が変わる。
ダリッツさんからどす黒い感情が漏れてきているかのようだ……!
「あいつらはねえええ! 私たち職員が丹精込めて作った野菜を、空から啄ばんでいきやがるんですよっっ!
しかも見計らったかのように、収穫直前のものばかり狙ってくるのですっ!
中央農地の歴史はゲイザーとの戦いの歴史なんですよ!
トーマさん! 本当は皆殺しにして欲しいところですけど、魔物ではないというならそこまでは望みません! だけどこの中央農地から追っ払って欲しいんです! その為ならば協力は惜しみませんよぉっ! 惜しみませんともぉっ!」
うおおお! ダリッツさんが燃えておられる!
こ、これが獣害に対する生産者の怒りの声って奴か!
やべぇな。ダリッツさんは皆殺しにしたいとか言っちゃってるし、早急に対策しないとマジで全滅しかねない。
「お、落ち着いてくださいダリッツさん! 協力はありがたいですけど皆殺しは止めておきましょう!
実はその件にも関わってくる話なのかもしれないんですけど、そういった生物たちの餌用の野菜を育ててみようって思ってるんですよ。
本格的な農場を始める前の、良い事前練習にもなると思ってますし、余剰分が出れば人用の流通量にも上乗せできますし、ゲイザーたちを中央農地から追っ払うこともできますし、平和的に解決できると思うんです」
「……ははは。少々取り乱してしまいましたね。お見苦しいところを見せました。
しかし、餌用の野菜を育てるとは、なんとも贅沢な話ですねぇ。人用の野菜も正直足りていないというのに。
ですがトーマさんのお話は、ここ中央農地にとっても良いお話のようです。ぜひとも協力させてください」
「ありがとうダリッツさん。宜しくお願いします」
なんとかダリッツさんが矛を収めてくれた。
これでゲイザー殲滅作戦は未然に防ぐことが出来たようだな。
保護しに来て絶滅させるとか、勘弁してよまったく……。
「ダ、ダリッツさんが別人みたいだったね……。ダリッツさんって怒らせると怖いんだぁ……」
「リーネ。あれはダリッツさんに限った話じゃないんだよ。一次生産者っていうのは、虫や獣、自然災害なんかと日夜戦い続けているんだ。
農業従事者にとって、手間暇かけて作った作物っていうのは我が子みたいなものだっていうからな。そんな大切な作物を荒らすゲイザーに抱く怒りというのは、計り知れないものがあるんだろうよ」
「そ、そうなの……? お、野菜が我が子のようだって感覚はちょっと分からないけど、それだけ大切にしているお野菜を荒らされたら、確かに怒っても仕方ないことなんだね……?」
それでもリンカーズは野菜の価値が凄く高いから、農家は救われてる方だとは思うけどね。
あー……、でも重要度が高すぎて、半幽閉生活を強いられてるのは微妙なのかなぁ。
ダリッツさんに案内されて、応接ロビーで改めてゲイザーの情報を聞くことにする。
「正直なところ、分かっていることが少ないのですよね。大型の鳥で空を飛んでいるはずなのに、中々その姿を確認できないんです。
作物は職員が寝静まった頃に食べられてることもありますが、白昼堂々と荒らされてしまう事もあるんです。なのにゲイザーの姿は見つけられなかったりするので、本当に厄介な相手なんですよね……」
「大型なのに中々確認できない、ですが。何か理由がありそうですね。
餌を用意して、罠を仕掛けたりは出来ないんですか?」
「試したことはあるんですが、綺麗に罠だけを掻い潜って餌を食べられたりしてしまいましてね。効果がなかったんです」
人が用意したトラップを初見で掻い潜る知能は、やはりゲイザーが動物である可能性が高くなってくるな。
しかし、その辺にもいる可能性があるなら、複合センサーで捉えられたりしないかなぁ。
もしくはまたこいつらに頼らせてもらうとか?
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