異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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11章 新たな都市の建設

456 ゲイザー

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 ダリッツさんにゲイザーのことを聞いた上で作戦を考える。
 ゲイザーたちは野菜を盗みはするけれど、職員に危害を加えてきた事はないそうだ。
 職員から攻撃を受けても、ただ逃走するだけで、反撃のようなことをしてきた事はないらしい。

 これはほぼ確定でいいよな? ゲイザーは魔物じゃない、動物のはずだ。


 どうして人懐っこい動物であるゲイザーが、人と関わってこようとしないのか。理由は1つ。ゲイザーに近付く人間、農業従事者や狩人が、ゲイザーに対して強い敵意や攻撃の意志を持っているからだろう。
 となると、ゲイザーの調査にダリッツさんを同行させるのは不味いか。害獣を目にして怒りを抑えられるかは分からないもんな。


「ダリッツさん。ゲイザーが魔物でなかった場合、彼らは私たちの会話を理解することが出来るほど頭がいいんです。なのでまず、俺達だけに任せてもらえませんか?
 魔物ではない彼らを総称して、俺たちは動物と呼んでいるのですけど、動物は警戒心が強く、敵意に対して非常に敏感です。農地の職員が一緒に居ては、姿を現してくれないかもしれませんから」

「動物、ですか。私にはあまり難しいことは分かりませんけど、あいつらを追っ払えるのでしたら、どんな指示にも従いますよ!
 職員が居ない方が良いのでしたら……。この辺りは収穫が済んだばかりなので、数日職員が近寄っていませんね」


 農地の地図を広げながらダリッツさんが説明してくれる……、のはいいんだけど、中央農地の地図って極秘情報じゃないの? こんなに気軽に見せてもらって良いんだろうか?

 俺がちょっと気まずそうにしているのに気付いたのか、ダリッツさんは地図について説明してくれた。


「ああ、心配しなくていいですよ。一応形式的には極秘情報扱いではありますけど、農地の構造なんて知ってどう悪用するんだって話だと私は思ってますよ。
 それに今のトーマさん達はゲイザーを追い払うために動いてくれている、つまり中央農地のために働いてくれる職員扱いだと言っていいでしょう。地図を見せても問題ないですよ」


 え、言っていいの? 問題ないの? ホントに?

 ……藪を突いて蛇を出したくもないから、突っ込むのは止めておく。


 ダリッツさんが地図で説明してくれた、収穫が既に終わった区画まで、リーネ、ふわわ、つららと共に移動する。


「それで、どうするの……? ダリッツさんのお話だと、見つけにくいって話だったけど……」

「ああ、ここは1つ、正面突破でいこうと思う。音魔法で可能な限りの広範囲に呼びかけて、あっちの方から訪ねてきてもらう作戦だ。
 もしも魔物だった場合は音魔法の魔力に釣られて俺に襲い掛かってくるだろうし、動物だった場合は俺の言葉が理解できるはずだからな。敵意さえ抱いていなければ、普通に姿を現してくれると思う」


 フィールダーと違って、農地の職員に敵視されてるゲイザーは、早く保護しないと危険だ。なんらかの要因で、一気に絶滅させられてしまう危険がある。

 音魔法で最大範囲に拡声し、更に風魔法を使って可能な限り広範囲に向かって呼びかける。


「おーいゲイザー。ここの野菜を食べてる鳥のお前らのことだ。
 俺は冒険者のトーマ。お前らと話がしたいと思ってここを訪ねてきたんだ。
 ここの野菜を盗んでいるお前達は、ここの人間達から敵視されていて、いつ危害が加えられてもおかしくない状況なんだ。俺はその状況を変えて、お前達が安心して暮らしていけるようにしていきたいと思ってるんだ。
 俺の話が理解できたのなら、俺の居る場所まで来て欲しい。危害は加えないと約束するから」


 空中に向かって叫び続ける中年冒険者。客観的には見たくない絵だな!

 出来る事はやったので、後は少しこのまま待ってよう。失敗したらふわわとつららに頑張ってもらえばいいし。

 
 ふわわとつららのしっぽの付け根辺りを軽く撫でながら待っていたら、複合センサーに反応があった。
 その場所に目を向けてみても、なんだかなにが居るのか本当に目視しにくい。なんでだ?

 10メートルくらい離れた場所に、まぁまぁ大型の鳥が降り立った。地球で例えるなら、やっぱり大型犬くらいかな? 秋田犬とかそんなもん? よく飛べるなぁ。


「――――は?」


 なんて暢気なことを考えていたら、驚きの光景が飛び込んできた。

 鳥が地面に降り立った途端、鳥の全身が風景に溶け込むような色に変化した。コイツ、迷彩……、いや、擬態能力持ちなのか!
 道理で視認しにくいワケだ。しかも変化速度も急激で、擬態のクオリティもかなり高い。もはや魔法に近いレベルだな。魔法使えないはずだけど。

 っと。まずはコンタクトを図らないとな。こっちから呼び出しておいて放置するわけにはいかない。


「来てくれてありがとう。俺がトーマだ。お前らのことはゲイザーと呼ばせてもらうぜ」

「えっ、えっ、えええっ……!? あんな大きい鳥が、なんでこんなに見え難いの……!?」


 迷彩や擬態なんて概念がないであろうリーネは落ち着くまで時間がかかりそうだな。
 そしてやっぱりゲイザーからのリアクションはないか。この世界の動物はもうちょっと鳴いてほしいわ。


「それじゃまずは来てくれたお礼に、野菜を提供しようと思う。食べるか?」


 ストレージから野菜を取り出すと、ゲイザーは特に警戒もせずに俺に近付いてきて、野菜を口で受け取って、そのまま立ち去らずにもしゃもしゃと野菜を啄ばんでいる。

 うん、餌付けって偉大だなぁ。
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