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11章 新たな都市の建設

465 試食

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 多分そろそろ、いつもソロ探索に向かう時間くらいかな?

 大型のベッドには、6人の嫁が寝息を立てている。
 お風呂でも全員1度ノックアウトしたのに、その後寝室に運んで更に相手してもらったからなぁ。
 流石にみんなグロッキー状態のようだ。

 お腹も大分大きくなってきたなぁ。
 そろそろ迷宮踏破の方も、シンに変わってもらった方がいいかなぁ?

 はぁ~。俺ももうすぐ父親になるのか。

 それまでにルイナスリームと保護区の問題を終わらせて、俺もじっくり子育てに参加させてもらいたいな。

 寝ている6人の頭を撫でてから、ヴェルトーガの迷宮に探索に向かった。


 朝の探索の時にスカーさんが現れる可能性もちょっと危惧していたが、流石に朝イチで押しかけてくることはなかったらしい。
 
 探索を終えたら野菜を仕入れ、更にボールクローグでなるべく沢山の果実や木の実を購入し、朝食後にネヴァルドの商工ギルドから中央農地に移動した。


「やぁやぁトーマさん、お待ちしてましたよ!
 成功するかは分かりませんけど、野菜以外を食べさせてみる試み、とても興味深いですよ、あはは!」

「どうもダリッツさん。お忙しいところ度々訪問させてもらって申し訳無い。ゲイザーに関してはいつも協力してもらって感謝してますよ。
 ちなみに餌を用意してみてどんな感じですか?」

「ええ。おかげさまで収穫前の野菜を荒らされる事はなくなりました。まだ数日ですけどね、あはは。
 まさかあのにっくきゲイザーと意思の疎通が図れるなんて、本当に想像も出来ませんでしたよ……」

「問題が起きていないようで何よりです。それで今日は色々な食材を持ち込んでみたんですけど……。
 もし良かったら。ダリッツさんも立ち会ってみませんか? かなり見えにくい生き物ではあるんですけどね」


 今回の結果次第では、もしかしたらすぐにゲイザーを引き取ることも出来るかもしれないからな。
 にっくき存在ではあったかもしれないけれど、最後くらいは姿を見てみたかったりしないかな?


「そう、ですね……。私が居ても大丈夫でしたら、是非立ち合わせてください。
 今はもう、彼らに対する怒りは収まっていると思います。ゲイザーを前にしても、恐らく怒りが湧いてくる事はないでしょう」

「決まりですね。では早速参りましょうか」


 ダリッツさんと連れ立って、前回ゲイザーと交流した場所に向かって移動する。


「そう言えば餌やりを始めてから、ゲイザーを目にする事はあったんですか?」

「いえ、残念ながら確認出来ていませんね。ずっと張り付いて居るわけにもいきませんし。用意した餌は、職員が誰も見ていない時を見計らって食べていたみたいです」


 う~んそうなのか。やっぱり職員さん達を警戒してるのかなぁ。

 っと、別に向こうに着いてから呼びかける必要はないよな。移動しながらでも声かけておこう。


「おーいゲイザーのみんな。トーマだ。
 今日はみんなに色んな食べ物を持ってきたから、食べ比べをしてみて欲しい。先日俺と会った場所に集まってくれないかー?」

「ト、トーマさん? 今のはいったい? 大声なのに耳には負担がなかったですけど、いったいなんだったんですか?」

「ああ、音魔法の応用なんですよ。普通の声量を魔力に乗せて拡散したんです。なので少し変わった聞こえ方がしたかもしれないですね」


 単純な拡声効果だけではなく、音量はそのままで音の拡散だけを行うなんて応用も、今の俺には簡単だ。


 目的地に着くと、ゲイザーたちは既に集まっていてくれた。でも数は15羽くらいしかいない。
 ま、食べ比べさえ試せればいいんだから、全員来てもらう必要はないか。腹減ってないのかもしれない。


「こ、これがゲイザーですか……!? まさかこんなに近距離で見ても、姿を確認しにくいだなんて思ってなかったですよ……!」


 ダリッツさんがあわあわしている。無理もない。
 こいつらの超高性能擬態能力は、既に知っている俺が見ても恐ろしい光景だもん。


「集まってくれてありがとう。今回は皆が何を食べるか知りたいから、色々な食べ物を用意してみたんだ。
 興味がある物は試してみて欲しい」


 生肉、焼いた肉、木の実、果実、考えられる限りの種類の食べ物を用意してみた。

 ゲイザーたちも素直に食べてくれて、しかもちゃんと1口ずつじか食べてない。
 この世界の動物、マジで俺より頭いいんじゃねぇの?

 全部の食べ物を試してもらった後、今食べた野菜に加えて農地の野菜も追加で並べて、1番好きな食べ物の前に集まって欲しいとお願いしたところ、残念ながら全員が農地の野菜を選んでしまった。

 野菜以外では、木の実を好んだけれど、生肉でも普通に問題ないらしい。
 なら話は早いな。


「野菜を食べなくても生きていけるならさ。悪いけど農地からは引っ越してもらえないかな? 食い物は用意するよ。
 今野菜も育てる準備してるけど、すぐには育たないから、ちょっとの間は野菜を我慢してもらうことになっちゃうんだ。それでも、引っ越してもらえればこの農地の人たちは助かるんだ。だから受け入れてもらえると嬉しい。
 ……受け入れてもらえるなら、片方の翼だけ上げてみてくれ」


 そうお願いすると、みんな片方だけ翼を上げてくれた。やっぱりこの世界の動物は本当に人に友好的だ。
 感謝の言葉と共に翼を下げさせると、俺の隣りでダリッツさんが静かに涙を流していた。


「私たちのために、無理を言って済まなかったね。
 君たちがここの野菜を1番好きだと言ってくれたこと、それを誇りに頑張ろうと思う。君達が食べる野菜の栽培にも全力で協力させてもらうよ。
 今まで君達の事を何も知ろうとしないで悪かった。君達は、ただここの野菜を気に入ってくれていただけだったのにね……。
 今まで、本当に済まなかった……!」


 ダリッツさんは泣きながら、深く静かに頭を下げた。
 そんなダリッツさんの姿を、ゲイザーたちは不思議そうに眺めているのだった。
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