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12章 俺が望んだ異世界生活
閑話041 取り残されないために ※特級冒険者視点
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「『ササッペ』様。王から呼び出しでございます。
先触れは必要ないので、可能な限り早く登城するようにと」
「ほう? 随分と焦っているようだな。よほど俺の力が必要らしい」
本来冒険者というのは自由なものだが、俺のように国に認められた特級冒険者ともなれば、国からの要請には出来るだけ応じなければならないのが辛いところだ。
面倒だが仕方ない。こういう時のための特級なのだからな。
俺はすぐに支度をして城に向かった。
王の謁見の準備が整うまで応接室に通される。ここまではいつも通りの流れなのだが、今日は一風変わった事が起こった。
「ササッペ。アンタも呼び出されたのか」
「『キッセ』? それに『トナイ』まで? 特級が全員呼び出されたということか?」
「そうみたいね。私はちょっと予想が出来てるけど、あまり楽しい話じゃあなさそうだね」
リヴァーブ王国に3人しかいない特級冒険者が1度に呼び出される事態など今まで聞いたことがない。
これはトナイの言う通り、楽しい話というわけではなさそうだ。気を引き締めねば。
謁見の準備が出来たと連絡が来て、俺たちは3人で移動する。
「今回特級冒険者たるお主達を呼び立てたのには訳がある。心して聞いて欲しい」
王の様子から、かなり重要な事が言い渡される気配を感じる。
別に何か悪事に手を染めたりした覚えもないし、特級全員が呼び出されていることからも、処罰などということではないはずだ。
俺は内心の動揺を気取られないよう気をつけながら王の説明を待つ。
「先に言っておくが、お主達の等級見直しを行う予定は今のところ一切ない。それは保証しよう。
じゃが最近冒険者達の実力が大きく変化してきておってな。今では単独で100階層を越える迷宮を踏破する者が現れ始めたのだ。
特級称号を剥奪するつもりはないが、他の冒険者に遅れをとるような事が無いように精進して欲しい。それが今回お主達を呼んだ用件なのだ」
ちっ! つまりは冒険者の強さの水準が変わるから、立場を守りたければ俺たちにも強くなれと言いたいのか。
それにしても迷宮の単独踏破者がちらほら出てきてるってのはとんでもないな。既に俺たち特級冒険者は最強でもなんでもないということか。
王からの案件は他にもあったが、このままでは特級を維持出来ないぞという脅しでしかなかった。
王との謁見が終わった後、3人で別の場所で落ち合った。
「結局のところ、このままでは特級称号を剥奪せざるを得ないという話でしかなかったな。
トナイは予想できていると言っていたが、知っていたのか?」
「まぁね。スキップオーブっていう空間魔法の魔導具が出回ってから、冒険者達の数と質は上がる一方だよ。
むしろあんたら2人が知らないほうが驚きだよ。大々的に宣伝してたってのさぁ」
「俺らは普段管理迷宮になんか用はないからなぁ。逆に情報を掴むのが遅れたって訳か。
それにしてもスキップオーブ、空間魔法の魔導具かよ。厄介なモン出回っちまったなぁ」
「俺たちの持っている空間魔法の優位性が無くなってしまったということか。
だが時代というのなら仕方ない。変わっていくなら対応すれば良いだけのこと」
現時点で特級称号の剥奪を言い渡されたわけじゃない。
今のままでは特級として相応しくないと言うなら、誰からも認められる特級冒険者となればいいだけだ。
「ま、結局はそういう事になるわね。優位性が失われただけで不利になったわけじゃないんだから。
ササッペ、キッセ。特級称号を剥奪されたりしないでよね?」
「上等じゃねぇか。対等な条件になったのなら改めて格の違いを見せ付けてやるだけの話だぜ。
せっかくだから特級の中でもこのキッセ様が最強だって証明してやる。楽しみにしておけぇ」
「ふっ。次に会うときも全員特級冒険者として会いたいものだな」
俺たちは決意を新たにして別れた。
次に会うときは、より成長した俺たちの姿を見せ付けてやろうじゃないか。
ネヴァルドの拠点に帰った俺は、ひとまず久しぶりに管理迷宮に潜ってみることにした。
最近は野良迷宮を潰す仕事ばかりしていたからな。感覚を取り戻さねば!
「前衛はしっかりと戦線を維持せよ! その間に魔法攻撃部隊! しっかりと攻撃魔法を命中させてやれぇ!」
「「「はっ!」」」
俺がリーダーを務める冒険者パーティ『王国の守護者』は、71名からなる大冒険団だ。
各メンバーがしっかりと自分の役目を果たし、一糸乱れぬ連携で魔物の群れに対抗する。
ネヴァルドの最下層で戦っても問題はなかった。
これなら最近出来たとかいう最大の管理迷宮に挑むことも可能であろう!
翌日ルイナスリームという都市に向かった。
「へぇ? 皆さんが王国の守護者なんですね。ルイナスリームは初めてですか。是非とも腕を磨いていってくださいね」
冒険者ギルドの若い受付嬢に激励される。
俺たちのことを知っていながら腕を磨いていけとはどういう意味だ?
俺たちは既に特級、冒険者として頂点にいる存在だというのに。
会う事は出来なかったが、どうやらキッセとトナイの2人も既にこの都市を訪れているらしい。負けていられんな!
俺たちは全力で迷宮を探索し、3日ほどで100階層に到達してみせた。
この迷宮は114階層が最深部らしいからな! このまま進むぞっ!
100階層以降の階層の戦闘は熾烈を極め、俺たちが長年一緒に戦うことで培ってきた絆がなければ、きっと心折れてしまっていたことだろう。
そして俺たちはついに、世界最高峰の管理迷宮を踏破してみせた。
俺たち以外にもこの迷宮を踏破している者はいるようだが、それでも多くはないだろう。
これが特級冒険者の実力というものだ!
「まぁ……。1つくらいこんなパーティがあってもいいかもしれませんね。
ササッペさん。続いて開放型迷宮も踏破を目指してみませんか? 開放型迷宮はその広さから王国の守護者さんたちと相性が良いと思いますし、なにより空間魔法のスクロールの在庫が不足気味でして。困っていたところなんですよー」
「ほう? 困っているのか。ならば安心するが良いマイナよ。俺が率いる王国の守護者が、開放型迷宮を攻略してギルドの問題も解決してやろうではないか!」
実力を示すもの重要だが、ギルドの要望に応えておくのも大切だろう。
特級冒険者の1人として、冒険者の模範となるよう行動せねばなるまい!
称号の剥奪などさせるものか!
俺はこの先もずっと、特級冒険者のササッペだ!
先触れは必要ないので、可能な限り早く登城するようにと」
「ほう? 随分と焦っているようだな。よほど俺の力が必要らしい」
本来冒険者というのは自由なものだが、俺のように国に認められた特級冒険者ともなれば、国からの要請には出来るだけ応じなければならないのが辛いところだ。
面倒だが仕方ない。こういう時のための特級なのだからな。
俺はすぐに支度をして城に向かった。
王の謁見の準備が整うまで応接室に通される。ここまではいつも通りの流れなのだが、今日は一風変わった事が起こった。
「ササッペ。アンタも呼び出されたのか」
「『キッセ』? それに『トナイ』まで? 特級が全員呼び出されたということか?」
「そうみたいね。私はちょっと予想が出来てるけど、あまり楽しい話じゃあなさそうだね」
リヴァーブ王国に3人しかいない特級冒険者が1度に呼び出される事態など今まで聞いたことがない。
これはトナイの言う通り、楽しい話というわけではなさそうだ。気を引き締めねば。
謁見の準備が出来たと連絡が来て、俺たちは3人で移動する。
「今回特級冒険者たるお主達を呼び立てたのには訳がある。心して聞いて欲しい」
王の様子から、かなり重要な事が言い渡される気配を感じる。
別に何か悪事に手を染めたりした覚えもないし、特級全員が呼び出されていることからも、処罰などということではないはずだ。
俺は内心の動揺を気取られないよう気をつけながら王の説明を待つ。
「先に言っておくが、お主達の等級見直しを行う予定は今のところ一切ない。それは保証しよう。
じゃが最近冒険者達の実力が大きく変化してきておってな。今では単独で100階層を越える迷宮を踏破する者が現れ始めたのだ。
特級称号を剥奪するつもりはないが、他の冒険者に遅れをとるような事が無いように精進して欲しい。それが今回お主達を呼んだ用件なのだ」
ちっ! つまりは冒険者の強さの水準が変わるから、立場を守りたければ俺たちにも強くなれと言いたいのか。
それにしても迷宮の単独踏破者がちらほら出てきてるってのはとんでもないな。既に俺たち特級冒険者は最強でもなんでもないということか。
王からの案件は他にもあったが、このままでは特級を維持出来ないぞという脅しでしかなかった。
王との謁見が終わった後、3人で別の場所で落ち合った。
「結局のところ、このままでは特級称号を剥奪せざるを得ないという話でしかなかったな。
トナイは予想できていると言っていたが、知っていたのか?」
「まぁね。スキップオーブっていう空間魔法の魔導具が出回ってから、冒険者達の数と質は上がる一方だよ。
むしろあんたら2人が知らないほうが驚きだよ。大々的に宣伝してたってのさぁ」
「俺らは普段管理迷宮になんか用はないからなぁ。逆に情報を掴むのが遅れたって訳か。
それにしてもスキップオーブ、空間魔法の魔導具かよ。厄介なモン出回っちまったなぁ」
「俺たちの持っている空間魔法の優位性が無くなってしまったということか。
だが時代というのなら仕方ない。変わっていくなら対応すれば良いだけのこと」
現時点で特級称号の剥奪を言い渡されたわけじゃない。
今のままでは特級として相応しくないと言うなら、誰からも認められる特級冒険者となればいいだけだ。
「ま、結局はそういう事になるわね。優位性が失われただけで不利になったわけじゃないんだから。
ササッペ、キッセ。特級称号を剥奪されたりしないでよね?」
「上等じゃねぇか。対等な条件になったのなら改めて格の違いを見せ付けてやるだけの話だぜ。
せっかくだから特級の中でもこのキッセ様が最強だって証明してやる。楽しみにしておけぇ」
「ふっ。次に会うときも全員特級冒険者として会いたいものだな」
俺たちは決意を新たにして別れた。
次に会うときは、より成長した俺たちの姿を見せ付けてやろうじゃないか。
ネヴァルドの拠点に帰った俺は、ひとまず久しぶりに管理迷宮に潜ってみることにした。
最近は野良迷宮を潰す仕事ばかりしていたからな。感覚を取り戻さねば!
「前衛はしっかりと戦線を維持せよ! その間に魔法攻撃部隊! しっかりと攻撃魔法を命中させてやれぇ!」
「「「はっ!」」」
俺がリーダーを務める冒険者パーティ『王国の守護者』は、71名からなる大冒険団だ。
各メンバーがしっかりと自分の役目を果たし、一糸乱れぬ連携で魔物の群れに対抗する。
ネヴァルドの最下層で戦っても問題はなかった。
これなら最近出来たとかいう最大の管理迷宮に挑むことも可能であろう!
翌日ルイナスリームという都市に向かった。
「へぇ? 皆さんが王国の守護者なんですね。ルイナスリームは初めてですか。是非とも腕を磨いていってくださいね」
冒険者ギルドの若い受付嬢に激励される。
俺たちのことを知っていながら腕を磨いていけとはどういう意味だ?
俺たちは既に特級、冒険者として頂点にいる存在だというのに。
会う事は出来なかったが、どうやらキッセとトナイの2人も既にこの都市を訪れているらしい。負けていられんな!
俺たちは全力で迷宮を探索し、3日ほどで100階層に到達してみせた。
この迷宮は114階層が最深部らしいからな! このまま進むぞっ!
100階層以降の階層の戦闘は熾烈を極め、俺たちが長年一緒に戦うことで培ってきた絆がなければ、きっと心折れてしまっていたことだろう。
そして俺たちはついに、世界最高峰の管理迷宮を踏破してみせた。
俺たち以外にもこの迷宮を踏破している者はいるようだが、それでも多くはないだろう。
これが特級冒険者の実力というものだ!
「まぁ……。1つくらいこんなパーティがあってもいいかもしれませんね。
ササッペさん。続いて開放型迷宮も踏破を目指してみませんか? 開放型迷宮はその広さから王国の守護者さんたちと相性が良いと思いますし、なにより空間魔法のスクロールの在庫が不足気味でして。困っていたところなんですよー」
「ほう? 困っているのか。ならば安心するが良いマイナよ。俺が率いる王国の守護者が、開放型迷宮を攻略してギルドの問題も解決してやろうではないか!」
実力を示すもの重要だが、ギルドの要望に応えておくのも大切だろう。
特級冒険者の1人として、冒険者の模範となるよう行動せねばなるまい!
称号の剥奪などさせるものか!
俺はこの先もずっと、特級冒険者のササッペだ!
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