~超能力探偵レア・ホームズは第三王子にロックオンされる~身分違い過ぎて周りの反応があれなので勘弁して欲しいんですけども?

manji

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手品がバレた?

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「ありがとございます!!」

 報酬を受け取り、そそくさとその場を去ろうとすると手を掴まれる。

「ははは、そう急がなくてもいいだろう。ゆっくりしていってくれ」

「お、お一人でどうぞ!私はこの後講義が――」

「無いよね?ちゃーんと君の講義スケジュールは把握しているよ」

「ぬぐぐ」

 正直、この前の事があってから気まずくて一緒に居たくない気分なのだが、用事もないのに王子の様のお誘いを無下に断る分けにもいかない。私は理由を探して知恵を振り絞る。

「あいたたた。この前君に蹴られたお腹が痛むなぁ」

 私が口を開くよりも早く、王子は大げさにお腹を押さえて痛みを訴える。間違いなく演技だ。そもそも蹴ったのは三日前の話。未だに痛むなら内臓が大きく損傷している事に成る。当然私の脚力で王子にそんなダメージは与えられ分けがない。実際王子も大げさなアクションな割に、その顔は満面の笑みで彩られていた。本人も演技だというのを隠す気は0の様だ。

 とは言え、蹴ってしまったのは事実。その気になれば、その事でお家取り潰しだって王子には難しい事ではないだろう。突然の事だったとはいえ我ながら大失態だ。

「わかりました」

 脅迫に屈し、諦めてソファーへと腰を下ろす。

「ははは。君が傍にいてくれると、それだけで痛みが和らいでくるよ。これが愛の力って奴かな?」

 王子がウィンクを飛ばしてくる。

まったくこの王子は……

 私は呆れて溜息を吐いた。

 ここは中央棟、最上階の客室。今日は王子から、アップル伯爵の件の報酬を受け取る為にやって来ていた。今回は直接ここで待ち合わせしていた為、余計な人目についていないのが唯一の救いだ。

まあ、もう今更そんな事を気にしてもしょうがない気もするが……

 婚約こそまだ発表されてはいないが、学内ではもうかなり噂になっている。何度となく、王子が私に親密に絡んできた為だ。お陰で今日も、面識一つない伯爵令嬢に呼び止められて散々嫌味を言われる始末。噂だけでこれだ。これで発表なんてした日には、周りから言われるか分かった物じゃない。なんとか発表前に破談にならないの物かと、最近は悩み中である。

なにかいい案はない物だろうか?

「どうしたんだい?眉間に皺なんて寄せて。可憐な君にそんな表情は似合わないよ」

そう思うんなら私には構わないで欲しい。
私の眉間の皺の原因は貴方なのだから。

「ああ、そうそう。伯爵から自殺の件は黙っていて欲しいと頼まれてね。君も口外しない様頼むよ」

「どういう事です?」

「自殺じゃ体裁が悪いからね。病死って事にするらしい。まあ彼自身、娘が自殺だと信じたくないって思いがあるんだろうね」

 まあ気持ちは分からなくはない。娘が自殺だと知った時の伯爵を思い出す。ロマンスグレーが一気に老けて、軽く初老に見えた程だ。よっぽどショックだったのだろう。

「成程。分かりました」

本当に罪深い娘だ。
マーガレットは。
 
 私は絶対に長生きしようと思う。それが親に対する最高の親孝行になるのだから……

 まあ実際の所、王子と婚約してそのままいい塩梅に収まるのがそれ以上の親孝行なのだろうが。そっちは御勘弁願いたい。何としても破談に持ち込まなくては。

「君にいくつか尋ねたい事があるんだけど、いいかい?」

 王子が神妙な面持ちで尋ねてくる。でもその眼は笑っているし、体温が上がっている事から楽しんでいる事が分かる。何だか凄く嫌な予感がするのだが。

「駄目です」

「君は伯爵の使用人の一人から、毒物のルートを聞いたといったよね?マーガレットの自殺だと言うんなら、それはおかしくないかい?」

 王子は私の返事など意に介さぬ様、話を続ける。しかも内容は、一度スルーしてくれた問題だった。人が油断した所に突っ込みを入れて来るとは、王子恐るべし。一応それっぽい理由は考えていたんだけど……なんだったっけかな?忘れてしまった。

 私は頭を捻って何とか思い出そうとする。

「説明して貰えるかな?」

思い出した!

「実は毒瓶は14本あったんです!!」

「14本?」

「ええ。使用人の中に本当に毒殺を考える程追い込まれてた人がいて、その人から聞いたんです」

 出所は偶々14本一緒だった。それが私の主張だ。ちょっと苦しい気はするが……正直これくらいしか思い浮かばなかったのだから仕方ない。

「ふーん。偶々偶然の一致とそう言いたい訳かい。その割に君、自信満々だったように見えたけど」

「ど、毒の入手ルートなんてそんなホイホイ転がってる訳がありませんから。きっと同じだと思ったんです」

「ふーん、成程ねぇ」

 王子は嬉しそうに口の端を歪める。その全てを見透かす様な目を見ていると、超応力がばれたんじゃないかと背筋が寒くなる。

「じゃあもう一つ。君は死亡時刻を0時50分から1時10分だと断定したよね?どうしてそこまで詳しく分かったんだい?今この国での検死は魔法による物が基本だ。それ以上誤差を縮める方法はないからね」

「えーっと……それはですね……」

 これに対する回答は、正直馬鹿っぽい物しかない。だから最初に突っ込まれたら方針を変えていく予定だったのだが、まさか終わってから突っ込まれようとは……

王子まさか態とじゃないわよね?

 本気で超能力の事がばれたんじゃないのかと、生きた心地がしない。兎に角、イチかバチか私は口を開く。

「探偵としての勘です!」

「……」

 王子が両目を見開き、此方を見つめる。そりゃ何言ってんだこいつはってなるだろう。だが正直、これ以外の言い訳は思いつかない以上これでごり押すしかない。

「ふっ……」

「ふ?」

 ふざけるなと言いたいのだろう。やはり駄目だった様だ。

「ぶっはははははははははははははは!!」

 王子がお腹を抱え、大声を出して笑い転げる。私は何が起こったのか分からず、唯々それをボー然と眺める事しか出来なかった。やがて王子は落ち着きを取り戻してソファーに座り直し、目の端の涙を拭う。

「はーっ、はーっ。まさか勘とはね。流石僕のフィアンセだ。君には笑わせて貰ったよ」

 王子は息を整えて立ち上がり。私に左手を差し出す。

「君は最高だ。これからもよろしく頼む」

 正直王子の行動は意味不明だったが。上手く誤魔化せそうだったので、私は黙って笑顔で王子の手を握り返した。
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