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助手

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「前からすこし気になってて、聞きたかった事があるんですが。いいですか?」

「何だい?寝間着パジャマの色なら情熱の赤さ。今度見せてあげるよ」

 そんな物には興味はない。後サラリと如何わしい発言は止めて貰いたいものだ。

「遠慮しておきます」

「つれないねぇ。それで?何が聞きたいんだい?子猫ちゃん」

 ウィンクしてきたが、軽くスルーして聞きたかった事を聞いて見る。

「王子は最初暴露の探偵役として私を選んだんですよね?」

「ああ、まさかそれが運命の赤い糸に繋がっているなんてね。人生とは驚きの連続だよ」

 元許嫁の秘密の暴露から繋がる運命の赤い糸とか、嫌な運命の糸もあった物だ。まあそんな事はどうでもいい。聞きたいのは何故それが私だったのかだ。私は王子の寝言を無視して話を進める。

「王子位顔の広い御方なら、私よりもっと適切な人物を雇えたのでは?」

 事前に著名な方何人かに断られているとは聞いているが、普通学院でちょっと有名になった程度の探偵崩れを雇うだろうか?

 公爵様はあっさり私の推理に降参してくれたから良かったものの。どこの誰ともわからない人間の推理なんて、ケチを付けられて蹴り飛ばされる可能性の方が高かった――確たる証拠もなかったし。そう考えるともっと著名な。それこそ探偵でなくとも、高名な有識者の方が良かった筈だ。だが選ばれたのは私……そこがどうしても分からない。

それとも王子に乗せられた間抜けは私だけだったのだろうか?

「ああ、その事かい。君の事は親友のジョンから聞いていたからね」

 ジョン……その名を聞き、去年学院をさった友人の事を思い出す。どうやら彼伝いで私の事を王子は知った様だ。

 ジョン・ワトスン。今はワトスン伯爵と呼ぶのが正しいだろう。学院における私の依頼主第一号で、それ以来私の助手を名乗っては仕事を取って来てくれた人物だ。私を名探偵と周りに触れ込んだのも彼で。最初は死ぬ程恥ずかしかったが、そのお陰で鳴かず飛ばずだった 仕事こづかいかせぎが順調に周り始めたわけだから、彼には今でも感謝している。

「まるで不思議な力でも持っているかの様に謎を解いてしまう名探偵だと、彼は言っていたよ。不思議な力って所にすごく興味が湧いてしまってね。それでいい機会だからと、あの時君に頼んでみたのさ」

 問題を解決する度に「君には魔法を超えた何か不思議な力があるとしか思えない」とよく彼が言っていたのを思い出す。しかしそれを鵜呑みにした王子が私に興味を持つとは。世の中どう転ぶか分からない物だ。

 つまり、彼のせいで 王子との婚約やっかいごとが転がり込んできたという事に成る。そう考えると、何余計な事してくれてんのよという気分だ。今度会う事があったら文句の一つでも言ってやるとしよう。

「まあ公爵側は此方側への負い目があった訳だし。例え君が無名でも、強気に出て来る事は無いと思っていたからこその判断ではあるけどね」

 すべて計算づくの上。その上で自身の好奇心を満たした訳か。相変わらず食えない王子様だわ。それだけに、益々私と婚約したのかが分からない。引く手あまたの王子が、態々私と婚約するメリットがあるとは思えないのだが。考えれば考える程謎だ。

「成程、納得しました」

「納得してくれたかい?それじゃあ天気も良い事だし、デートに行くとしよう」

「へ?デート?」

「善は急げだ」

 そう言うと王子は立ち上がり、私をソファーから立たせて歩き出す。

「ちょ、ちょっと王子。そんな急に、困ります」

「大丈夫大丈夫、良い場所知ってるから」

 誰も場所の話などしていない。相変わらず気持ちよく人の言葉を無視してくれる人だ。私は小さく溜息を吐き、半ばあきらめ気味に連れていかれる。

言っておくが、別に手を引かれてドキドキなどしてはいない。
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