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過去話③
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それはある日突然起やって来た。予想も出来ない悲しい未来。私は自分の目に映った物が信じられなかった。
その日私は珍しく、彼女と二人カフェで紅茶を楽しんでいた。そこは彼女のお気に入りの店で、よくジョンと来ていると惚気られた。とりとめのない、それでいて楽しい時間。それは2杯目の紅茶が届いた事で終わりを告げる。
彼女が……メアリーが私の目の前で血を吐いて倒れてしまったからだ。それが毒による物だと、私には直ぐに分かった。だが――救えなかった。私は彼女を。
「犯人はカフェの店員ですね」
調査で直ぐに毒を盛った人物が割り出される。メアリーに一目ぼれした男が、彼女に恋人がいたので無理心中を図った結果だと、調査を担当していた憲兵は告げた。
勿論そんな訳がない。一目惚れしたとはいえ、話した事も無い相手の飲み物に毒を混ぜ自分も同じ毒で死ぬ。いくら何でも話に無理がありすぎる。
「そんな馬鹿な話があるか!」
霊安室に叫び声が響く。最愛の女性を失ったジョンの雄叫びだ。今の彼は冷静とは言い難い。そんな彼にだって、その話に無理がある事位は分かる。だから叫んだのだ。
「お気持ちは分かりますが、男のポケットから遺書が出てきてまして」
事件は至って単純明快で、もう解決。だから捜査はもう打ち切りになる。憲兵はそう告げてその場を去って行く。いくら何でも捜査がずさん過ぎる。
平民が犠牲者だとはいえ、伯爵家の人間が要請しているのだ。普通はもう少し、対面上だけでも調査を続ける筈だ。にも拘らず、あっさり捜査は打ち切られた。あれは恐らく……ううん間違いなく、どこかから圧力が掛かっているに違いない。
つまり犯人は貴族という事になる。それも憲兵の捜査に口出しできるとなれば、最低でも伯爵家以上の力を持った。
「ホームズ……頼む。彼女を殺した犯人を……見つけ出して欲しい。彼女を殺しておいて……何食わぬ顔で生きて行くなんて……僕は絶対に許せない。絶対にだ……」
「分かったわジョン。でもあなたに一つ言っておくことがあるの」
そして私は打ち明ける。ある秘密を。これはメアリー毒殺に関わる秘密だ。
「ああ……そんな……ほんとうに?」
「ええ、事実よ」
「う、うぅ……メアリー」
彼は寝かされているメアリーに縋りつき、涙をぽろぽろと流す。暫くは二人っきりにしてあげよう。そう思い私は霊安室を出て行った。
その日私は珍しく、彼女と二人カフェで紅茶を楽しんでいた。そこは彼女のお気に入りの店で、よくジョンと来ていると惚気られた。とりとめのない、それでいて楽しい時間。それは2杯目の紅茶が届いた事で終わりを告げる。
彼女が……メアリーが私の目の前で血を吐いて倒れてしまったからだ。それが毒による物だと、私には直ぐに分かった。だが――救えなかった。私は彼女を。
「犯人はカフェの店員ですね」
調査で直ぐに毒を盛った人物が割り出される。メアリーに一目ぼれした男が、彼女に恋人がいたので無理心中を図った結果だと、調査を担当していた憲兵は告げた。
勿論そんな訳がない。一目惚れしたとはいえ、話した事も無い相手の飲み物に毒を混ぜ自分も同じ毒で死ぬ。いくら何でも話に無理がありすぎる。
「そんな馬鹿な話があるか!」
霊安室に叫び声が響く。最愛の女性を失ったジョンの雄叫びだ。今の彼は冷静とは言い難い。そんな彼にだって、その話に無理がある事位は分かる。だから叫んだのだ。
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「分かったわジョン。でもあなたに一つ言っておくことがあるの」
そして私は打ち明ける。ある秘密を。これはメアリー毒殺に関わる秘密だ。
「ああ……そんな……ほんとうに?」
「ええ、事実よ」
「う、うぅ……メアリー」
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