~超能力探偵レア・ホームズは第三王子にロックオンされる~身分違い過ぎて周りの反応があれなので勘弁して欲しいんですけども?

manji

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過去話⑤

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 毒瓶の出元はワトスン伯爵家。此処で間違いない。そして容疑者はジョンの父親、ワトスン伯爵その人。私が最も怪しいと睨んでいた人物だ。

 ジョンとメアリーは本当に深く愛し合っていた。とは言え、平民と伯爵家の嫡男では身分が違い過ぎる。だからメアリーが騎士になるのを待って、準貴族になってから彼は父親にメアリーを紹介する積もりだった。

 だが伯爵はそれよりも先に気づいてしまったのだろう。ひょっとしたら、リーン辺りが腹いせに伯爵にチクった可能性もある。兎に角、平民との交際をよく思わななかった伯爵は彼女をその手にかけたのだ。人を使って。伯爵自ら捜査に圧力を掛けたのなら、あの杜撰な捜査も頷けるという物。

 店員が自殺したのは口封じの為だろう。命をお金に変えさせたか、もしくは人質などを取って脅していた可能性も考えられる。いずれにせよ伯爵ならそれ位お手の物だろう。そして実行犯を始末されてしまうと、そこから先を辿るのは極端に難しくなる。そこまで徹底している以上、自身に繋がる証拠など残してはいないだろう。

「手詰まり……か」

 ここまでは、あくまでも超能力による追跡と推論によるものだ。確たる証拠はない。仮に超能力で忍び込んで証拠を集めても、その証拠に伯爵が関わっている事を証明するのは不可能だ。使用人からの証言も当然期待できないだろう。唯一の手立ては、彼の手を借りる事だけだが……気が進まない上に、それでもメアリーの件を立証するのは難しい。良くて毒物の不正所持程度だ。

 だがこのまま諦めるわけには行かない。彼女達の為にも。私は可能な限り瞬間移動と透視を駆使して、屋敷内を隅々まで調べ尽くす。そして気づく。伯爵の秘密に。どうやら彼はもう先が長くない様だ。

 幾ら交際をよく思っていなかったとはいえ、いきなり殺すのはやり過ぎだと思ったが。成程、そう言う訳だったか。余命幾ばくもない身だったから、殺しなどという性急な手段に伯爵は出たのだろう。

 ならこのまま黙っておくべきか?どうせ伯爵は長くない。因果応報とは言わないが、もう長くないのなら、態々ジョンに実の父親を憎ませる必要はないだろう。時が経てば裁きは間違いなく下されるのだから。

 だがこのままでは――私は迷う。

結局、私は彼女と相談したうえで黙っている事を選び。
事件は迷宮入りした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 あれから2年。ワトスン伯爵は無くなり、ジョンはその跡を継いで伯爵になっている。最後に会ったのは彼の結婚式が最後だ。もう1年以上前になる。きっと忙しいのだろう。

「はいこれ」

 王子との話でジョンの名前が出たので昔を懐かしんでいると、急に王子から手紙を渡される。そこにはワトスン伯爵夫妻の名が記されてあった。

「この前の社交界でジョンとあってね」

 社交界か。実はそこへは私も誘われていた。王子の婚約者として。しかし見世物になるのが目に見えていたので、丁寧に断らせて貰った……のだが。どうやら社交界にはジョン達も出席していた様だ。旧友と会うチャンスだったなら、ちょっとぐらい見世物になっても行けば良かったと少し後悔する。まあ知らなかったんだからしょうがないか。

「それで、婚約祝いのメッセージとして、その手紙を君に渡す様に頼まれたのさ。夫妻にね。さ、僕に遠慮せず呼んでくれて構わないよ」

「ありがとうございます」

 私は王子にお礼を言って、手紙の封を切る。そこにはこう書かれていた。

"親愛なる名探偵ホームズ。まずは婚約おめでとうと言わせてくれ。まさか君が王子と婚約する何て、君は本当に僕を驚かせてくれる"

ビックリなのは私も同じよ。
ていうか、概ね貴方のせいなんだけどね。

 今度会ったら文句を言ってやらねばなるまい。そう心に決め、手紙を読み進める。そこには彼の近況。どれだけ多忙な日々を送っているかだとか、変な事件があったから暇だったら解決して欲しいだとか、他愛無い内容が続く。

”今度機会があったら、僕達夫婦と王子と君とで、是非お茶を楽しみたいな。その機会を楽しみにしているよ"

そして手紙の最後は差出人の名前で締め括られる。

ジョン・ワトスン。
メアリー・ワトスンと。

「ジョンの奥さんも君の友達だったんだろ?」

「ええ、大事な親友です」

 彼女は死んではいなかった。正確には私が死なせなかったと言うのが正解だろう。実際彼女の口にした毒は余裕で致死量に達するもので、普通なら確実に死んでいただろう。普通ならばだ。

 だが私は超能力者だ。咄嗟に彼女の体内を透視して毒の影響を確認し、転移で体外に排出して見せた。正直、あの時の私の処置は正に神業レベルだったと言っていい。人間やれば出来るものだ。凄いぞ私!

 そして状況から暗殺を疑った私は、彼女を超能力で仮死状態にした。生存が相手に知られれば、改めて彼女が殺される可能性が高いと判断したからだ。兎に角、先に犯人を捕まえる事を優先した訳だが……結局それは実現できていない。

 お陰で彼女はジョンの父親が亡くなるまでの4か月間、死者として身を顰める羽目になってしまう。窮屈な生活だったろうが、それでもジョンが父親を憎むよりはましだと彼女は笑っていた。

 父親の死後、彼女とジョンは電撃結婚する。これは伯爵夫人になれば、生存を知った犯人にもおいそれと手出しできない――ジョンには犯人を伝えていない――というジョンの考えからだ。まあこれに関しては、ジョンが早く結婚したかっただけという気がしないでもない。

あれ?

 手紙の裏面に文字が掛かれている事に気づく。

"追伸。妻を殺そうとしていたのが父だという事は僕も気づいていたよ。何せ君とメアリーは凄く分かり易い人間だからね。君達の反応を見ていれば一発さ"

そっか気づいてたのか……
気づいていて、知らない振りをしていたのか。
ジョンらしい優しさだ。

”だから父が今際の際で言ってやったのさ。メアリーは生きてて、父さんが死んだら直ぐに彼女と結婚するってね。あの時の父の顔と言ったらなかったよ。まあ僕の大切な人を傷つけた罰だ。当然の報いだよね。あ、これは妻には内緒だよ。それじゃあまた会う日まで。名探偵である君の相棒、ジョン・ワトスンより"

 親に対する復讐。本来なら心を痛めるべき内容なのだろうが。明るい雰囲気のにじみ出る文に、ついつい微笑んでしまう。彼は本当に変わらない。

早く2人に会いたいな。
まあ王子を含めて4人というのは少しあれな気もするけど。

 二人との再会を思い浮かべ、ニヤニヤする私なのであった。
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