27 / 28
お披露目②
しおりを挟む
「存じ上げませんわ」
「え?あの……その……」
私がバッサリと知らないと切って捨てると、彼女は目に見えて狼狽える。盗みをほのめかされて、男爵令嬢風情なら焦ると思っていたのだろう。事前に彼女が言いがかりを付けに来るのは分かっていた。残念ながら、こっちは準備万端だ。
「大変申し上げにくいのですが、レア・ホームズ様とサロンで歓談された辺りから見当たらなかくなってしまった様で」
狼狽えるラーラの背後から女性の執事が現れ、彼女の代わりに意図を噛み砕いて伝えてくる。恐らく執事は私が言葉の意味を理解できずにいる為、こんな堂々とした態度だと思ったのだろう。舐められたものだ。
しっかし美人ねぇ。
ラーラの女執事の美しい容姿に、思わず溜息を吐きそうになる。男装の麗人にしておくにはもったいないレベルだ。
因みに高位貴族の令嬢に付く執事は、高齢の者や女性が多い。これは単純にラブロマンスを防ぐ為である。執事とのラブロマンスと言えば世の女性はキャーキャー言いそうだが、貴族からすれば醜聞以外何物でもない。傷物のレッテルが張られては、碌な嫁ぎ先が無くなってしまう。
「そうなのですか。ですがやはり私には心当たりが御座いませんわ」
パーティー会場で彼女にしつこく誘われて、仕方なしにサロンでお茶の同席を受けた分けだが。どうやらこれが狙いだった様だ。
「他の方々にもお話を伺って。部屋の方も失礼ながら調べさせて頂いたのですが、まだ見つかっていない状態なのです。大変恐縮なのですが、ご協力願えないでしょうか」
そう言うと、執事は深々と頭を下げる。まるで見つからなかったので最後にししました的な口調だが、恐らく同席した他の御婦人方の所には行っていないだろう。一応王子の婚約者だから、出来れば疑いたくなかった的な建前なのは見え見えだ。
「あれは我が家の家宝なのです!失礼だとは存じますが、どうかご協力をお願いします!」
落ち着いて調子を取り戻したラーラが涙ながらに訴える。勿論泣いている振りで、当然涙など流してはいない。バレバレも良い所だ。
後、失礼というレベルの話ではない。私自身は男爵令嬢とはいえ、今は王族の婚約者だ。その部屋を怪しいから家探しさせろだとか。見つからなかった場合、侯爵令嬢だろうと只では済まない。何せ堂々と王子の前でやっているのだから、必死だったなんて言い訳が通ると思ったら大間違いだ。
まあ向こうもそれは分かってやっているだろう。絶対に"この部屋にある"。その核心の上での行動だ。失礼だろうが何だろうが、証拠さえ見つけてしまえばお咎めの心配無用なのだから。
彼女の目的は私を婚約者の座から引きずり下ろす事なのだろう。手癖の悪い女など、王族の相手には相応しくないと示す事で。
「分かりました。どうぞ」
私はあっさりオーケーを出す。多分ここで断っても、後で正式に訴えを起こしててくるのは目に見えている。勿論私が変な事をしない様、見張りを立てた上でね。
「よ、よろしいんですの?」
まさかすんなりオーケーが出るとは思わなかったのだろう。彼女は驚いた様な表情で此方を見つめる。事を大事にするつもりはない。その必要があるなら、きっと王子が口を挟んでくるはずだ。それが無い以上、長々と相手にするのも面倒なのでさっさと終わらせてしまおう。
「ええ、私としても疑われたままではあれですし。それでラーラ様の気が御済みになられるのでしたら、喜んで協力致しますわ」
「無茶な願いを聞き入れて頂き、本当に有難うございます。それでは失礼して」
女執事が澄まし顔で慇懃に頭を下げ。一つ一つ私に確認しながら室内をチェックしだす。その様子を、ソファに腰掛けながら王子は楽し気に眺めていた。きっとその頭の中では、この件でボヘミアン侯爵家に貸しが出来るとほくそ笑んでいる事だろう。
「え?あの……その……」
私がバッサリと知らないと切って捨てると、彼女は目に見えて狼狽える。盗みをほのめかされて、男爵令嬢風情なら焦ると思っていたのだろう。事前に彼女が言いがかりを付けに来るのは分かっていた。残念ながら、こっちは準備万端だ。
「大変申し上げにくいのですが、レア・ホームズ様とサロンで歓談された辺りから見当たらなかくなってしまった様で」
狼狽えるラーラの背後から女性の執事が現れ、彼女の代わりに意図を噛み砕いて伝えてくる。恐らく執事は私が言葉の意味を理解できずにいる為、こんな堂々とした態度だと思ったのだろう。舐められたものだ。
しっかし美人ねぇ。
ラーラの女執事の美しい容姿に、思わず溜息を吐きそうになる。男装の麗人にしておくにはもったいないレベルだ。
因みに高位貴族の令嬢に付く執事は、高齢の者や女性が多い。これは単純にラブロマンスを防ぐ為である。執事とのラブロマンスと言えば世の女性はキャーキャー言いそうだが、貴族からすれば醜聞以外何物でもない。傷物のレッテルが張られては、碌な嫁ぎ先が無くなってしまう。
「そうなのですか。ですがやはり私には心当たりが御座いませんわ」
パーティー会場で彼女にしつこく誘われて、仕方なしにサロンでお茶の同席を受けた分けだが。どうやらこれが狙いだった様だ。
「他の方々にもお話を伺って。部屋の方も失礼ながら調べさせて頂いたのですが、まだ見つかっていない状態なのです。大変恐縮なのですが、ご協力願えないでしょうか」
そう言うと、執事は深々と頭を下げる。まるで見つからなかったので最後にししました的な口調だが、恐らく同席した他の御婦人方の所には行っていないだろう。一応王子の婚約者だから、出来れば疑いたくなかった的な建前なのは見え見えだ。
「あれは我が家の家宝なのです!失礼だとは存じますが、どうかご協力をお願いします!」
落ち着いて調子を取り戻したラーラが涙ながらに訴える。勿論泣いている振りで、当然涙など流してはいない。バレバレも良い所だ。
後、失礼というレベルの話ではない。私自身は男爵令嬢とはいえ、今は王族の婚約者だ。その部屋を怪しいから家探しさせろだとか。見つからなかった場合、侯爵令嬢だろうと只では済まない。何せ堂々と王子の前でやっているのだから、必死だったなんて言い訳が通ると思ったら大間違いだ。
まあ向こうもそれは分かってやっているだろう。絶対に"この部屋にある"。その核心の上での行動だ。失礼だろうが何だろうが、証拠さえ見つけてしまえばお咎めの心配無用なのだから。
彼女の目的は私を婚約者の座から引きずり下ろす事なのだろう。手癖の悪い女など、王族の相手には相応しくないと示す事で。
「分かりました。どうぞ」
私はあっさりオーケーを出す。多分ここで断っても、後で正式に訴えを起こしててくるのは目に見えている。勿論私が変な事をしない様、見張りを立てた上でね。
「よ、よろしいんですの?」
まさかすんなりオーケーが出るとは思わなかったのだろう。彼女は驚いた様な表情で此方を見つめる。事を大事にするつもりはない。その必要があるなら、きっと王子が口を挟んでくるはずだ。それが無い以上、長々と相手にするのも面倒なのでさっさと終わらせてしまおう。
「ええ、私としても疑われたままではあれですし。それでラーラ様の気が御済みになられるのでしたら、喜んで協力致しますわ」
「無茶な願いを聞き入れて頂き、本当に有難うございます。それでは失礼して」
女執事が澄まし顔で慇懃に頭を下げ。一つ一つ私に確認しながら室内をチェックしだす。その様子を、ソファに腰掛けながら王子は楽し気に眺めていた。きっとその頭の中では、この件でボヘミアン侯爵家に貸しが出来るとほくそ笑んでいる事だろう。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる