【完結】国の借金返済のためにアイドルグループ作ります!なぜかメンバーに口説かれていますが、恋愛禁止ですよ?

櫻野くるみ

文字の大きさ
9 / 37

デビュー曲が国歌って……

しおりを挟む
グループ名が決まったのなら、次はデビュー曲を準備しなければならない。
早くデビュー曲を準備して練習しないと、彼らをお披露目することが出来ないからだ。
お披露目が出来なければお金も入ってこないわけで……。

借金返済の期限は知らないが、悠長にしていられないのは確かだろう。
出来るだけ速やかに彼らをアイドルに仕立て上げなければ。

いざとなったら、メンバー三人のトークショーだけでも、その容姿と知名度でそこそこの人は集まるだろうし、パトロンになる貴族も出てくるに違いない。
でもやっぱり格好良く歌って踊る三人が見たいのだ――私が。

「では、いよいよ本格的にアイドルデビューに向けて動き始めたいと思います。突然ですが、三人とも歌はどんな感じですか?」
「どんな感じって……ザックリしてんなー」

だって、歌は上手ですか?って尋ねにくいじゃないですか。
もしも音痴だった時に変な空気になりそうで……。

幼い頃から一緒に居ても、案外歌声なんて知らないものである。

「そんなことを言うならキース、あなたから歌ってみて下さいよ。えーと、国歌でいいです」

我がチェスター王国の国歌、『麗しのチェスター』を所望する。
美しいメロディーと歌詞を持つこの国の国歌は、式典でよく歌われるのでチェスター王国の国民なら誰もが知っている歌だ。

最初ブツブツ文句を言っていたキースだったが、結局は私に折れて歌い出した。

♪~♪~

「うわぁ! キース、上手です! 意外です!!」
「うるせーな。意外は余計だっつーの」

照れて口が悪くなっているが、キースの歌声は声量豊かでたくましく、特に低温が響く伸びやかなものだった。

これはいけます!
もし他の二人が音痴……いえ、多少イケていなくても、キースをメインボーカルにすれば!

「次はルカリオね。その後はレンに歌ってもらいます」

果たして二人の歌声は――

合格です!!
某テレビ局の、のど自慢の鐘の音が鳴り響くのが聴こえましたよ。
ブラボー!

ルカリオは音程をはずさない、譜面通りのお手本のような歌い方なのにも関わらず、とにかく声が甘い。
艶のある歌声は、いつまでも聴いていたいと思わせられる。

一番驚いたのはレンの歌声である。
細い声なのに高音がとても美しく、まるで女性が歌っているのかと思うほどだ。
自信なさげに歌っているのが勿体ないが、その様子がまたいい。

「今度は三人で一斉に歌ってもらってもいいですか? せーの!」

♪~♪~

声質の異なる三人の歌声が重なり合い、奥行きが生まれている。
同じパートを歌っているだけでこの重厚感なのだから、ハモリを入れたら更に胸を打つ歌になりそうだ。

「素晴らしいです! もうデビュー曲はこのまま国歌でもいいくらいに!」
「つーか、俺、国歌以外の歌なんて知らねーぞ?」
「歌を歌う機会はなかなかないですからね」

キースとレンに言われ、『またまたそんな』と思いながらも考えてみる。

あれ? この国って、そもそも国歌以外は子守唄と童謡しかないのでは!?
うわぁ、デビュー曲が子守唄ってなんて斬新なアイドルなのかしら?
童謡だとまるで歌のお兄さんだし――って!
選択の余地がないじゃないですか。

……まさか、初めから国歌一択!?
え、セカンドシングル以降はどうしたらいいの?

すぐさま王家御抱えの詩人、作曲家にお願いする算段を立てる私だった。
これって前途多難過ぎるのでは?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします

卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。 ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。 泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。 「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」 グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。 敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。 二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。 これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。 (ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中) もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える

たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。 そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...