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国家プロジェクト始動!
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デビュー曲が国歌に決まったとはいえ、やることはまだまだ山積みである。
振り付けや衣装だけでなく、今後のプロモーションの仕方やファンクラブ、グッズ販売についても考えなければならない。
王子がメンバーに含まれている以上、下手な売り出し方も出来ないからだ。
私は再び王妃様の部屋へ向かっていた。
『チェスターズ』が国の存亡をかけた国家プロジェクトである以上、私個人で出来ることなど限られているのだから、使えるものは使わなければ!
ありがたいことに、やらかした国王様に代わって王妃様が全権を握っている今、その王妃様に全幅の信頼を寄せられている私は無敵である。
やっぱり、アイドルには芸能事務所的な組織が必要ですよね。
そうだ、『チェスターズ事務所』を作りましょう!
社長はマリーママにお願いして、幹部にお父様の名前を連ねれば体裁は整えられますね。
王妃様と宰相という肩書は影響力が桁違いですから。
コンコココン
「どうぞー」
いつものノックをし、部屋に入る。
今日は国王様と、宰相である父にも集まってもらっていた。
「一昨日ぶりね、アイリスちゃん。その顔は、アイドル計画が順調に進んでいるってことかしら?」
「アイリスちゃん、君にまで迷惑をかけて本当に申し訳ない。私がふがいないばかりに……ううっ……」
私が挨拶をする前に国王様が泣きながら膝を突こうとする。
いくらやらかしたからと言って、一介の令嬢の私に謝る必要はないだろう。
こうやってすぐに反省出来るところがアランパパのいいところなのだが、だからこそ隣国に付け込まれてしまうのだ。
「アランパパ、止めて下さい。迷惑なんてかかっていませんよ。私、むしろ今が楽しいです!」
「いや、この状況を楽しがるのも不謹慎では……」と父が止めるのも聞かず、私は話を続ける。
「やはり私の目に狂いはありませんでした。あの三人はスターの原石だったのです! さすが私です!!」
頬を紅潮させながら、またもや自画自賛を始めた私にポカンと固まる国王様とお父様。
慣れっこなのか、今日も王妃様だけが楽しげに笑っている。
「オホホ、それは何よりね。私たちも協力は惜しまないわ。さぁ、今後について話し合いましょうか」
王妃様の言葉で皆がソファに座り、私はとりあえず現在までの結果を報告することにする。
「アイドルグループを結成することにルカリオ、キース、レンが納得してくれたので、『チェスターズ』という名前のアイドルグループを作りました。リーダーはルカリオです」
「あら、分かりやすくていい名前ね」
「アイリス、私にはアイドルグループというもの自体がまだわかっていない上、どこから収入を得ようとしているのか全く理解が出来ないのだが……」
「情けないが私もだ。アイリスちゃん、まずはそこから説明をお願いしたい」
宰相と国王から質問され、その疑問も最もなので、私は収入源について解説をすることにした。
というか、今まで誰も聞いてこなかったことのほうが驚きである。
「簡単に説明すると、『チェスターズ』がデビューして世に出ると、社交界の令嬢・夫人のみならず、庶民の方々、お子様、男性の中にも必ずファンになる人が出てきます。彼らが歌う映像やイベントでの入場券、グッズを販売したり、ファンクラブを作って会費を徴収したり、本を出したり……。利益を出す為の手段は様々です」
「グッズとは?」
「三人にちなんだ雑貨類のことですね。応援に使うペンライト、タオル、お揃いの服など色々あります。三人のメンバーカラーを決めたのですが、例えばルカリオの赤を例に説明しますと、赤いチーフをルカリオが衣装で身に付けるとします。『ルカリオのチーフ』という名前でチーフをグッズとして売り出すと、ルカリオファンが購入してくれるという訳です」
父が宰相らしい難しい顔で質問をしてきた。
「仮にそれらが広く売れたとして、チェルシー国民から集めた金を隣国への借金返済に充てては、後々この国の貧困に繋がり、結局は乗っ取られることになるのではないか?」
さすがお父様、先々の経済を見通していらっしゃる!
目先の借金返済に惑わされないところが立派です。
「初めは国内からですが、徐々に国外へも売り出すことを考えています。お父様の仰る通り、やはり外貨を取り込まないと難しいですから。……隣国のお姫様たちは三人がお好きなのですよね? あわよくば、上客になって、少しでも借金の相殺に繋がればいいのですが」
「なるほどな! しかし、悪いが私にはまだ国家予算ほどの大金が動くとは到底思えないのだが」
普通はそう考えるだろう。
前世ではアイドルをCMキャラクターに起用した途端に商品が品薄になったり、株価まで上がってファンの購買力の凄まじさがニュースになることもあったが、アイドルに興味のない人間からしたら奇妙な現象に思えるに違いない。
私は半信半疑の国王様と父に、とっておきのものを見せることにした。
「それではこちらをご覧になって下さい」
ポケットから、国歌を歌う三人が映っている水晶を取り出す。
「この映像を見ていただければ、少しはおわかりいただけるはずです」
私は自信ありげに微笑んでみせた。
振り付けや衣装だけでなく、今後のプロモーションの仕方やファンクラブ、グッズ販売についても考えなければならない。
王子がメンバーに含まれている以上、下手な売り出し方も出来ないからだ。
私は再び王妃様の部屋へ向かっていた。
『チェスターズ』が国の存亡をかけた国家プロジェクトである以上、私個人で出来ることなど限られているのだから、使えるものは使わなければ!
ありがたいことに、やらかした国王様に代わって王妃様が全権を握っている今、その王妃様に全幅の信頼を寄せられている私は無敵である。
やっぱり、アイドルには芸能事務所的な組織が必要ですよね。
そうだ、『チェスターズ事務所』を作りましょう!
社長はマリーママにお願いして、幹部にお父様の名前を連ねれば体裁は整えられますね。
王妃様と宰相という肩書は影響力が桁違いですから。
コンコココン
「どうぞー」
いつものノックをし、部屋に入る。
今日は国王様と、宰相である父にも集まってもらっていた。
「一昨日ぶりね、アイリスちゃん。その顔は、アイドル計画が順調に進んでいるってことかしら?」
「アイリスちゃん、君にまで迷惑をかけて本当に申し訳ない。私がふがいないばかりに……ううっ……」
私が挨拶をする前に国王様が泣きながら膝を突こうとする。
いくらやらかしたからと言って、一介の令嬢の私に謝る必要はないだろう。
こうやってすぐに反省出来るところがアランパパのいいところなのだが、だからこそ隣国に付け込まれてしまうのだ。
「アランパパ、止めて下さい。迷惑なんてかかっていませんよ。私、むしろ今が楽しいです!」
「いや、この状況を楽しがるのも不謹慎では……」と父が止めるのも聞かず、私は話を続ける。
「やはり私の目に狂いはありませんでした。あの三人はスターの原石だったのです! さすが私です!!」
頬を紅潮させながら、またもや自画自賛を始めた私にポカンと固まる国王様とお父様。
慣れっこなのか、今日も王妃様だけが楽しげに笑っている。
「オホホ、それは何よりね。私たちも協力は惜しまないわ。さぁ、今後について話し合いましょうか」
王妃様の言葉で皆がソファに座り、私はとりあえず現在までの結果を報告することにする。
「アイドルグループを結成することにルカリオ、キース、レンが納得してくれたので、『チェスターズ』という名前のアイドルグループを作りました。リーダーはルカリオです」
「あら、分かりやすくていい名前ね」
「アイリス、私にはアイドルグループというもの自体がまだわかっていない上、どこから収入を得ようとしているのか全く理解が出来ないのだが……」
「情けないが私もだ。アイリスちゃん、まずはそこから説明をお願いしたい」
宰相と国王から質問され、その疑問も最もなので、私は収入源について解説をすることにした。
というか、今まで誰も聞いてこなかったことのほうが驚きである。
「簡単に説明すると、『チェスターズ』がデビューして世に出ると、社交界の令嬢・夫人のみならず、庶民の方々、お子様、男性の中にも必ずファンになる人が出てきます。彼らが歌う映像やイベントでの入場券、グッズを販売したり、ファンクラブを作って会費を徴収したり、本を出したり……。利益を出す為の手段は様々です」
「グッズとは?」
「三人にちなんだ雑貨類のことですね。応援に使うペンライト、タオル、お揃いの服など色々あります。三人のメンバーカラーを決めたのですが、例えばルカリオの赤を例に説明しますと、赤いチーフをルカリオが衣装で身に付けるとします。『ルカリオのチーフ』という名前でチーフをグッズとして売り出すと、ルカリオファンが購入してくれるという訳です」
父が宰相らしい難しい顔で質問をしてきた。
「仮にそれらが広く売れたとして、チェルシー国民から集めた金を隣国への借金返済に充てては、後々この国の貧困に繋がり、結局は乗っ取られることになるのではないか?」
さすがお父様、先々の経済を見通していらっしゃる!
目先の借金返済に惑わされないところが立派です。
「初めは国内からですが、徐々に国外へも売り出すことを考えています。お父様の仰る通り、やはり外貨を取り込まないと難しいですから。……隣国のお姫様たちは三人がお好きなのですよね? あわよくば、上客になって、少しでも借金の相殺に繋がればいいのですが」
「なるほどな! しかし、悪いが私にはまだ国家予算ほどの大金が動くとは到底思えないのだが」
普通はそう考えるだろう。
前世ではアイドルをCMキャラクターに起用した途端に商品が品薄になったり、株価まで上がってファンの購買力の凄まじさがニュースになることもあったが、アイドルに興味のない人間からしたら奇妙な現象に思えるに違いない。
私は半信半疑の国王様と父に、とっておきのものを見せることにした。
「それではこちらをご覧になって下さい」
ポケットから、国歌を歌う三人が映っている水晶を取り出す。
「この映像を見ていただければ、少しはおわかりいただけるはずです」
私は自信ありげに微笑んでみせた。
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