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3回目の転生
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チッ、またこの世界か……。
薄々そうじゃないかとは思ってたけどさ。
私は可愛い赤ん坊には似つかわしくない、悪態をついたつもりだった。
ーーが、実際は赤ん坊が舌打ちをするのは不可能で、誰にも気付かれずに失敗に終わった。
でも舌打ちしたくなるのも仕方の無い事だと思う。
きっと私の話を聞けば、みんな私に同情してくれるはずーー。
私は今、この乙女ゲームの世界に3回目の転生を果たしたところだ。
望んでなかったけど。
ちょっと何を言っているのかわからないと思われるかもしれないが、確かに私自身3回目となる赤ん坊の身体を今まさに体験している。
私の人生を諦観した態度が異様なのか、使用人達の慌てふためく様子が伝わってくるが、そんなことは知ったこっちゃない。
フン、私がその辺の赤ん坊のように、泣き喚くとでも思っているわけ?
甘い!
転生3回目の私を舐めてもらっちゃ困るってもんよ。
ーーまあ、見た目は赤ん坊だけどね。
私は元々は……いや、前の前の前の人生では日本人だった。
ん?待てよ。それってつまり、前前前世ってことじゃね?
うわ、ナチュラルにあの有名な前前前世を使うときが来るとは!
名前を聞かれても、昔過ぎてもう忘れちゃってるけど。
とにかく、もう記憶も曖昧だけど、私はかつて日本人だった。
当時の私は、彼氏とは名ばかりのモラハラ男に振り回される哀しい人生を送っていて、そのストレスの唯一の捌け口が乙女ゲームだった。
『きらめきプリンス 学園でつかまえて』
今思えばダッサいタイトルな上、内容も非常に安っぽいゲームだった。
実際売れ残っていたらしく、投げ売り状態だったものを偶然手に入れた。
それでもすっかり荒んでいた私の心は何故か慰められ、最終的にモラハラ男のイザコザに巻き込まれて死ぬまで、私は『きらプリ』にハマっていた。
あ、『きらプリ』とは私が勝手に略して呼んでいただけなので、多分同じ日本人でも誰にも通じない呼び名だと思う。
最初の人生が呆気なく幕を閉じた後、私は転生していることに気付いた。
しかも、乙女ゲーム『きらプリ』の世界に。
「マジか!?誰を攻略しちゃう?」なんて浮かれた直後、私は自分が悪役令嬢の一人だと気付いた。
正確に言うと、攻略対象である宰相の次男の婚約者だ。
そして悲しいことに、この宰相の次男は前世のモラハラ彼氏と顔が激似だったのである。
詰んだ……。
サイアクだ……。
私は婚約者に選ばれないように奮闘しまくった。
なるべく関わらないように避けまくり、婚約話も泣いて嫌がり、学園への入学を拒んで家出騒動まで起こした。
その結果……。
まあ、見事に全部無駄だったよねぇ~。
ことごとく見えない力に阻まれて、『ああ、これがゲームの強制力ってやつか!』って思い知らされたよねぇ~。
結局、私は宰相の次男と婚約し、学園に入学。
そこへゲームの主人公が現れて、宰相の次男は彼女にメロメロ。
私は虐めてもないのに悪役令嬢として断罪され、地方の年寄り貴族の後妻にされたーー。
って!
私が何をしたっちゅーねん!!
そもそも婚約者にもなりたくなかったのに、私ちっとも悪くないよね?
解せない……。
ま、旦那は高齢だったから、何もされないままあっさり天に召されて、残された私は趣味に生きたからそれなりに悪くはない人生だったとは思う。
覆面作家として書いたドロドロな愛憎小説、めっちゃ売れたしね。
で、寿命で死んで、気付いたら2回目の『きらプリ』世界への転生。
「またかよ、やってらんねーよ」と思ったら、今度は1回目とは違う令嬢に生まれ変わっていた。
またもや悪役令嬢だが、今度は騎士団長の次男の婚約者である。
もしかして、前回よりかはマシかも?
いや、待てよ。
騎士団長の次男って、主人公に出会ってマトモになっただけの、元は手がつけられないヤンキーじゃなかったっけ?
嫌な予感しかしなかった私は、今回も運命に抗いましたよ。
一生懸命抵抗して、抵抗してーーまたしても強制力に負けたよね、うん。
どんだけ強い強制力なんだよ!
お陰でゲーム通りに、断罪後は修道院行きだったよ!!
でも2回目の転生ではいいこともあった。
素敵な兄、アルバーノがいたのである。
あまりにも素敵過ぎて、この人と恋愛出来ないのなら結婚なんてどうでもいいとすら思ったほどだ。
そう考えると、修道院行きもある意味良かったのかもしれない。
若くして、あっさりと流行り病で死んだけどさ。
そして3回目の今に至るのだ。
薄々そうじゃないかとは思ってたけどさ。
私は可愛い赤ん坊には似つかわしくない、悪態をついたつもりだった。
ーーが、実際は赤ん坊が舌打ちをするのは不可能で、誰にも気付かれずに失敗に終わった。
でも舌打ちしたくなるのも仕方の無い事だと思う。
きっと私の話を聞けば、みんな私に同情してくれるはずーー。
私は今、この乙女ゲームの世界に3回目の転生を果たしたところだ。
望んでなかったけど。
ちょっと何を言っているのかわからないと思われるかもしれないが、確かに私自身3回目となる赤ん坊の身体を今まさに体験している。
私の人生を諦観した態度が異様なのか、使用人達の慌てふためく様子が伝わってくるが、そんなことは知ったこっちゃない。
フン、私がその辺の赤ん坊のように、泣き喚くとでも思っているわけ?
甘い!
転生3回目の私を舐めてもらっちゃ困るってもんよ。
ーーまあ、見た目は赤ん坊だけどね。
私は元々は……いや、前の前の前の人生では日本人だった。
ん?待てよ。それってつまり、前前前世ってことじゃね?
うわ、ナチュラルにあの有名な前前前世を使うときが来るとは!
名前を聞かれても、昔過ぎてもう忘れちゃってるけど。
とにかく、もう記憶も曖昧だけど、私はかつて日本人だった。
当時の私は、彼氏とは名ばかりのモラハラ男に振り回される哀しい人生を送っていて、そのストレスの唯一の捌け口が乙女ゲームだった。
『きらめきプリンス 学園でつかまえて』
今思えばダッサいタイトルな上、内容も非常に安っぽいゲームだった。
実際売れ残っていたらしく、投げ売り状態だったものを偶然手に入れた。
それでもすっかり荒んでいた私の心は何故か慰められ、最終的にモラハラ男のイザコザに巻き込まれて死ぬまで、私は『きらプリ』にハマっていた。
あ、『きらプリ』とは私が勝手に略して呼んでいただけなので、多分同じ日本人でも誰にも通じない呼び名だと思う。
最初の人生が呆気なく幕を閉じた後、私は転生していることに気付いた。
しかも、乙女ゲーム『きらプリ』の世界に。
「マジか!?誰を攻略しちゃう?」なんて浮かれた直後、私は自分が悪役令嬢の一人だと気付いた。
正確に言うと、攻略対象である宰相の次男の婚約者だ。
そして悲しいことに、この宰相の次男は前世のモラハラ彼氏と顔が激似だったのである。
詰んだ……。
サイアクだ……。
私は婚約者に選ばれないように奮闘しまくった。
なるべく関わらないように避けまくり、婚約話も泣いて嫌がり、学園への入学を拒んで家出騒動まで起こした。
その結果……。
まあ、見事に全部無駄だったよねぇ~。
ことごとく見えない力に阻まれて、『ああ、これがゲームの強制力ってやつか!』って思い知らされたよねぇ~。
結局、私は宰相の次男と婚約し、学園に入学。
そこへゲームの主人公が現れて、宰相の次男は彼女にメロメロ。
私は虐めてもないのに悪役令嬢として断罪され、地方の年寄り貴族の後妻にされたーー。
って!
私が何をしたっちゅーねん!!
そもそも婚約者にもなりたくなかったのに、私ちっとも悪くないよね?
解せない……。
ま、旦那は高齢だったから、何もされないままあっさり天に召されて、残された私は趣味に生きたからそれなりに悪くはない人生だったとは思う。
覆面作家として書いたドロドロな愛憎小説、めっちゃ売れたしね。
で、寿命で死んで、気付いたら2回目の『きらプリ』世界への転生。
「またかよ、やってらんねーよ」と思ったら、今度は1回目とは違う令嬢に生まれ変わっていた。
またもや悪役令嬢だが、今度は騎士団長の次男の婚約者である。
もしかして、前回よりかはマシかも?
いや、待てよ。
騎士団長の次男って、主人公に出会ってマトモになっただけの、元は手がつけられないヤンキーじゃなかったっけ?
嫌な予感しかしなかった私は、今回も運命に抗いましたよ。
一生懸命抵抗して、抵抗してーーまたしても強制力に負けたよね、うん。
どんだけ強い強制力なんだよ!
お陰でゲーム通りに、断罪後は修道院行きだったよ!!
でも2回目の転生ではいいこともあった。
素敵な兄、アルバーノがいたのである。
あまりにも素敵過ぎて、この人と恋愛出来ないのなら結婚なんてどうでもいいとすら思ったほどだ。
そう考えると、修道院行きもある意味良かったのかもしれない。
若くして、あっさりと流行り病で死んだけどさ。
そして3回目の今に至るのだ。
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