【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ

文字の大きさ
14 / 16

借りたいものって……私?

しおりを挟む
最後の令息の部は、参加者を集うアナウンスをする前から、スタート地点には大勢の令息が集合していた。
今までで一番多いのは明らかだ。
令嬢の部が恋愛を目的としたキャピキャピした若い女の子が多かったことに比べると、令息の部は年齢も容姿もバラバラの印象を受ける。
切実に結婚相手を見つけたい人や、バツイチなんかもチラホラと混ざっている上、上司や父親に認められたいという強い目的意識を持つ者もいて既にカオス状態である。
って、『キャピキャピ』はもはや死語かもしれないな。
気を付けよう……。

王太子のアレクシスも、側近のロイバーと共に出場するが、見るからにハンターのようなガツガツかつ、ピリピリしているオーラが漂う中で、二人は清廉な空気を纏っているように見える。
他の数少ない妻帯者や婚約者持ちも、仲が良好アピールの為の出場なのか、こちらも余裕な様子で配偶者や婚約者の応援に手を軽く上げて応えていた。

さて、令息の部までなんとか漕ぎ着けたわね。
これで最後だし、私とグレースで考えたお題で盛り上がればいいけれど。

進行役の私は、準備が整ったことを確認すると、「よーいドン」と高らかに声を上げた。
実行委員を助けるボランティアがそこかしこに配置されたおかげで、私はもう掛け声を言うことしか仕事が無くなってしまった。
もうこの際、よーいドンも誰かがやってくれればいいのに、何故かそれだけは誰も変わってくれないのだ。
……よーいドンって言うのが恥ずかしいからかもしれない。

今回、レースが八名ずつ行われているのと、出場者の異様な気合のせいで、熱気がすごいことになっている。
ロマンスを演出する為に私とグレースが用意したカードには、『波打つプラチナブロンドの髪の持ち主』、『フローラルな香水』から、『レースの手袋』、『触れたくなるような唇』など少し攻めた内容まで混ぜておいた。
さて、どう転ぶか見ものである

いざ始まってみると、カードを見るまでは血走った眼をしていた令息も、口説き落としたい令嬢の前では礼儀正しく、紳士的に同行をお願いしていた。
声をかけられた女の子も満更ではなさそうで、頬が紅潮している。

一時はどうなることかと思ったけれど、なるようになるものね。
もう何組カップルが出来たのかしら?
あ、ロイバー様とグレースが一緒に走っているわ。
グレース、カードを並べる時に何かズルをしたんじゃないでしょうね?

幸せそうな友人の様子は喜ばしいが、こう何度も仲睦まじい様子を見せつけられると悔しくもなってくるもので……。
つい嫉妬じみた感情のまま、よーいドンと投げやりぎみに言っていたら、最終レースになっていた。
七名のメンバーの中にはアレクシスの姿もある。

スタートの合図の前に目が合い、『頑張って!』と口の動きだけで伝えたら、余裕の笑みが返ってきた。
なんだろう、やけに自信満々である。
そして、さきほどまでは澄み切った空気を放っていたはずのアレクシスから、どういうわけか捕食者のようなオーラを感じてしまった。

あら?
アレクの様子がおかしいような……。
そんなにワインが欲しいのかしら?
おじさまに頼めば一瓶くらい分けてもらえると思うけれど。

不思議に思いつつも、私の開始の合図と共にアレクシスたちは動き出した。
王太子相手にも怯むことのない他の六名の出場者には、よほど切羽詰まった事情があるらしい。
険しい形相でカードに向かっていく。

「ええと、なになに……『女性にケーキを食べさせてもらう』!?」
「『ゴール地点でワルツを踊る』か。く~っ、よりによってワルツかよ……」
「ふむ。『同行者の素敵なところを三箇所述べる』か。困ったな……」

あ、もうお題を考えるのに疲れて、だんだん借り物競走じゃなくなってきたやつだわ。
あれじゃもう命令とか指令だものね。

そんな中、アレクシスが脇目も振らず、真っ直ぐ私の前までやってきた。

「アレク、どうしたの? あ、私に何か借りたいのね? まかせて! 実は色々仕込んであるんだから!」

借りることが出来ずに困る人がいたら可哀想だと思い、実は様々な物を隠し持っているのである。
ポケットから口紅や、着けずに持っていた指輪やブローチを出そうとしてーーアレクシスに止められた。

「いや、借りたいものはもうここにあるから」
「え? ここ?」

その瞬間、私はアレクシスに抱き上げられていた。

「ちょっ、アレク、なんで? 下ろして!」
「それは出来ないな。僕の借りたいものはセラだから」

え、借りたいものが私?

一度、心臓が止まりそうなほどの綺麗な微笑みを見せると、アレクシスは悠然と私を抱えて歩き出した。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます

白米
恋愛
侯爵家の三女・ミレイアは、控えめで目立たない“地味令嬢”。 特に取り柄もなく、華やかな社交界ではいつも壁の花。だが幼いころに交わされた約束で、彼女は王弟・レオンハルト殿下との婚約者となっていた。 だがある日、突然の婚約破棄通告――。 「やはり君とは釣り合わない」 そう言い放ったのは、表向きには完璧な王弟殿下。そしてその横には、社交界の華と呼ばれる公爵令嬢の姿が。 悲しみも怒りも感じる間もなく、あっさりと手放されたミレイア。 しかしその瞬間を見ていたのが、王家随一の武闘派にして“最強”と噂される第一王子・ユリウスだった。 「……くだらん。お前を手放すなんて、あいつは見る目がないな」 「よければ、俺が貰ってやろうか?」 冗談かと思いきや、なぜか本気のご様子!? 次の日には「俺の婚約者として紹介する」と言われ、さらには 「笑った顔が見たい」「他の男の前で泣くな」 ――溺愛モードが止まらない!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」

仙冬可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。 「で、政略結婚って言われましてもお父様……」 優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。 適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。 それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。 のんびりに見えて豪胆な令嬢と 体力系にしか自信がないワンコ令息 24.4.87 本編完結 以降不定期で番外編予定

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

処理中です...