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本屋にお出かけします。
しおりを挟む王都に戻って数日。
リリーはお菓子を作ったり、そのお菓子を持ってお隣のジェシーを訪ね、一緒にお茶をしたりして楽しく過ごしていた。
リリーの領地での話を訊きたがるジェシーに、面白おかしく牛達の話を聞かせる。
「最初の頃なんて、言うことをきいてくれなくて、追いかけっこばかりでね・・・」
「牛のフンって量がすごいの!うっかり転んじゃった時なんてね・・・」
などの話を、ジェシーが驚いたり、笑ったりして熱心に聞いている。
とても令嬢のお茶会に相応しいとは思えない内容に、控えている侍女達は複雑な顔をしているが、ジェシーが楽しそうにしているので止められない。
10年前はリリーが聞き役だったが、今は逆である。
ふふっ、変な感じね。
でも昔のジェシーの笑顔だわ。
リリーは嬉しかった。
日に日にジェシーは前向きになり、昔の明るさを取り戻しつつあった。
二人の兄であるアーサーとオーウェンは、学院に戻っていった。
元気にお見送りをするリリーとジェシーに苦笑をしながら手を振っていた二人だったが、オーウェンがリリーと目があった時に、目を細めながら
「ありがとう。」
と呟いたので、リリーも笑顔で頷いた。
今日、リリーは侍女のアイラと町の本屋に来ている。
一応お忍びという形で、平民の娘が着るようなワンピースに身を包んでいるが、もともと領地では作業服ばかりだったので、リリーにとってはむしろ綺麗目な格好といえる。
しかも、リリーは見た目が地味だと自負しているし、所作も令嬢らしさが足りない為、町に溶け込んでいた。
誰も注目していないわ。
これなら恋愛小説も選び放題ね。
令嬢の立場で恋愛小説を買うことに、少し気が引けていたリリーだったが、安心する。
恋愛小説を読むのが大好きなのだが、領地では新作は手に入りにくく、種類も少なかった。
王都で本屋に訪れるのを、ずっと楽しみにしていたのである。
ジェシーも小説が好きなので本屋に誘ってみたが、ドレスを新調する為に仕立て屋さんが来る予定らしく、泣く泣く断られた。
今まで屋敷に籠っていたジェシーを、静かに見守ってきたジェシーの母だったが、明るくなった今がチャンスとばかりに、張り切って仕立て屋を呼んだらしい。
ジェシーはそんな母にちょっとうんざりしているようだったが、ゆくゆくはリリーも夜会やお茶会に出席せねばならない。
その時に『田舎育ち』などの悪口を言われても、リリーは自分が守ってみせると奮起したようだ。
私だってジェシーを守るわ。
優しい幼馴染みの気遣いが嬉しいと思いながら、リリーは兄、アーサーお薦めの路地裏の本屋に足を踏み入れたのだった。
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