【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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本屋での出会い。

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「わぁ、新作がこんなに!」

リリーは思わず歓声をあげた。

王都の本屋なので期待はしていたが、まさかこんなにたくさんの恋愛小説が置いてあるとは。
思わず興奮してしまう。

この本屋は、兄のアーサーお薦めの隠れた名店らしく、路地裏の目立たない場所にあり、知る人ぞ知るお店らしい。
恋愛小説を買いに行くと言いづらく、酪農の本を見に行くと告げたら、このお店を教えてくれたのだ。

つまり、このお店は通好みの専門書が充実している本屋であり、恋愛小説は形ばかりしか置いていないのだが、田舎育ちのリリーは全く気付いていない。
恋愛小説をもっと多く取り扱う店が他にたくさんあるのだが。

とにもかくにも、領地にあった本屋とは比べ物にならない小説の量に、早速リリーは本棚に手を伸ばす。
侍女のアイラは気を利かせて少し離れた場所に立ってくれている。


「こちらの本屋には初めていらしたの?」

ふいに声をかけられた。

顔を上げてみると、リリーの母親くらいの年齢だろうか。
地味な色だが上質なワンピースを身にまとった、綺麗な女性がクスクスと笑いながらリリーを見ていた。

「はい。兄のお薦めのお店だと訊いて。あの、うるさくして申し訳ありません。」

つい興奮して周りを見ていなかった為、近くに他のお客さんがいることに気付いていなかったリリーは、邪魔をしてしまったと思い謝罪した。

「ふふっ、うるさくなんてなかったわ。ただあまりにも嬉しそうだったから、つい声をかけてしまったのよ。お目当ては恋愛小説かしら?」

「恋愛小説と、酪農の本を少々・・・。」

素直にリリーが答えると、女性は驚いた顔をした。

一方、リリーも驚いていた。

この女性、物腰も柔らかだし、とても上品で洗練されているわ。
でもあの理知的で、何事も見逃さないような瞳・・・
貴族の中でも相当上位の夫人ではないかしら?

しかし田舎に籠っていたリリーは、ほとんど貴族の顔を知らない。


「酪農って、牛を育てるあの酪農よね?あなたみたいな若い女の子が、珍しい本に興味があるのね。」

「私、領地から戻ってきたばかりなんですけど、そこでずっと酪農のお手伝いをしていて。もし新しいエサの配分や、加工品が研究されている本があったら勉強したくて。」

私が領地の話をすると、私の瞳を見て、納得するように頷いていた。

「なるほどね。その瞳の色と酪農・・・、スペンサー家の令嬢ね。」

女性が何か言っていたが、リリーには聴こえず、首を傾げるリリーに女性は微笑んでみせた。


まさかこの出会いがリリーの人生を大きく変えることになるなんて、この時のリリーは知る由もなかった。
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