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気になる令嬢。(第3王子視点)
しおりを挟む城の廊下を歩いていると、向こうから母上が歩いてくるのが見えた。
あの服装は、またお忍びで町に行ってきたに違いない。
いいことでもあったかな?
機嫌が良さそうだ。
「ごきげんよう、母上。町で楽しいことでもありましたか?」
「ああ、ラインハルト!いいところに。ちょうど話したいことがあったのよ。あとで部屋にいらっしゃい。」
「畏まりました、母上。」
母上と別れて、一度自分の部屋に戻る。
僕はラインハルト。
この国の第3王子だ。
母は王妃だが、時々目立たないワンピースを着て町に出かけている。
頭の回転が早く行動的な母は、町で刺激を受けては、父である国王に様々なことを進言していた。
今日も町で何か発見があったのだろう。
僕に話があるっていうのは珍しいけど。
しばらく経って、僕は母上の部屋を訪れた。
母上は、テーブルに置かれた本をペラペラとめくっている。
ん?
『初めての酪農』『王子様との秘密の恋愛』
「またずいぶん変わった本を買ってきたのですね。」
思わず言ってしまう。
いくら行動的と言っても、まさか王宮で酪農を始める気か?
それに、なぜ恋愛小説・・・。
王子様って、この国の王子はあなたの息子達ですよね?
「今日、面白い女の子に出会ったのよ、本屋で。王子様との恋愛小説が好きで、酪農に詳しいの。」
「はぁ。」
だから母上も興味を持って、本を買ったということだろうか。
しかし、女の子が酪農?
平民の女の子に会ったのだろうが、何故その話を僕に?
意味がわからず、気のない返事になってしまう。
「その子ね、スペンサー伯の娘なのよ。伯爵と同じ色の瞳をしていたわ。お互い名乗ってはいないし、向こうは全然私の事に気付いていなかったけど。」
「は?伯爵令嬢?令嬢が酪農を?」
確かにあそこの領地は酪農が盛んな地だと聞いたことはあるが。
って、スペンサー伯?
ふいに思い出した。
「この前、スペンサー伯が、娘が帰ってくるって大騒ぎして早退していましたが、もしかして。」
「そうよ、その娘よ。最近まで領地にいたと言っていたわ。」
領地育ちの、令嬢らしからぬ娘。
ちょっと興味を持った。
「王子様が出てくる小説が好きだと言うから、理由と、王子様と何がしたいのか訊いてみたのよ。」
あー、一気に興味が冷めていく。
どうせ見た目と地位、お金なのだろう。
よくあることだ。
きっと綺麗なドレスを着て、一緒に踊りたいとかなんとか・・・
「ミルクスープを作ってあげたいんですって。」
ミルクスープ?
思わず母上を見つめた僕に、母上はいたずらっ子のように笑いながら言った。
「王子様は公平で愛情深くて素敵だけど、大変だろうから、得意料理のミルクスープで癒したいんですって。ラインハルト、胃が弱いからちょうどいいわね。」
クスクスと王妃は笑っていたが、ラインハルトは戸惑っていた。
そんなことを言う令嬢に、今まで出会ったことがなかったからである。
「ミルクスープか。」
思わず微笑みながら呟く。
飾り気のない素朴な料理に、優しさと温かい人柄を感じる。
会って、話してみたいと素直に思った。
そんな僕を、母上が静かに微笑みながら見ていた。
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