【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

文字の大きさ
28 / 69

再現されると心臓に悪いです。

しおりを挟む
どうしましょう。
王宮の木に登ったことが、王家の方にバレてしまいました。

叱責に備え、リリーは身構えて体を固くした。

が、誰も怒り出す気配がなく、不思議に思ったリリーは恐る恐る顔を上げた。

皆、クスクスと面白そうに笑っている。

あれ?怒るどころか、笑われてるんですけど??

戸惑うリリーに、王妃が説明してくれた。

「ふふふ、リリーちゃんの武勇伝ならうちの家族全員が知っているわ。もちろん、主人もね。ハリーが何度もリリーちゃんの話をするんだもの。」

「ええ、もう耳にタコが出来ましたわ。」

ソフィアも頷いている。


えええっ!!
知っていて優しくして下さるなんて、なんて器が大きい・・・
というか、王族って思ってたよりフレンドリーでユルい感じなのかしら?
国王様までご存知なんて。
しかも武勇伝扱いされてるわ。

令嬢に武勇伝は必要ないのだが、リリーは怒られなかったことに安心して、おかしさに気付いていない。


側ではハリーが立ち上がって、身振り手振りであの時の再現を始めていた。

「バババーって登ってね、リリーお姉ちゃんはポッケにマイクを入れたの。マイクの顔だけポッケから出ててね。」

ハリーはこと細かにリリーの様子を再現し、真似て見せる。

よく覚えてますね。
でも恥ずかしいので、そのくらいにしていただけると・・・。

「ハリー様、そのお話はそれくらいに・・・」

「ええ~っ!!まだここからなのに。あと、様はイヤ!!」

悲しげに言われ、リリーも可哀想に思うが、だからと言って簡単に気安く呼ぶことは出来ない。
困っていると、

「ハリーがこんなに懐くのは珍しいんだ。好きに呼んであげてくれるかい?」

王太子様に言われたら断れません。
ハリー君呼び復活です。

「ハリー君?」

呼びかけてみると、嬉しそうに

「うん、じゃあ続きねー。」

いやいや、続きはいらないんですー!

その間にも、ハリーは足を滑らせたリリーの真似をしている。

「でね、ハルトお兄ちゃまが、ズルってなったリリーお姉ちゃんをこう、ぎゅってしてね。」

きゃああああ!!
そこまでしっかり再現しちゃうんですか!

リリーが心臓に悪いと、居たたまれない思いでいるのに、肝心のラインハルトは「よく見ていたなー。」なんて呑気に笑っている。

男性陣はラインハルトに「よく受け止めたな!偉いぞ!」とか言いながら肩を叩いて誉めているし、女性陣は「あらー、若いっていいわー。ドキドキしちゃう」と喜んでいる。

何なのかしら、この状況。
アットホームさが胸に痛いわ・・・。

「で、マイクに餌をあげなくちゃいけないから、僕は帰ってきたの。」

ようやく終わったのね。
精神的に追い詰められた気がするわ・・・。

しかし、ハリー劇場はまだ終わっていなかったのである。

「でも、その後もこっそり見てたのー。」

え?終わったんじゃ?

「お兄ちゃま、お姉ちゃんをクルッてして、パパみたいにぎゅーってしてた。」

エッヘンと胸を張り、「よく見てて偉いでしょー」と言っている。

あああぁぁぁぁ、そこは見てなくていいところなんですー。

その部分は初めて聞いたと盛り上がる人々の中、王妃がリリーに尋ねた。

「リリーちゃん、ラインハルトとの散策は楽しかった?」

「はい。ハルト様は小説の王子様みたいに完璧なエスコートで、あやうく勘違いして好きになってしまうところでした。」

大分王妃に慣れたリリーが、テヘッと冗談っぽく言ってみる。

「勘違いじゃないし!もう、手強いなぁ。でも更に燃えてきたよ!!これからはもっとガンガン行くから!」

ラインハルトが兄のノアに愚痴っているのは、リリーの耳には入っていなかった。



リリーが帰っていった後、王太子が王妃と話していた。

「母上に聞いていた以上に面白い令嬢でしたね、リリーちゃんは。次は父上も呼びましょう。」

「そうね。こんなに楽しいことに誘わなかったら、後で拗ねて大変だもの。」

リリーの知らないところで、国王との対面が決定していたのだった。




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。 そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。  私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?  自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。 見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、 幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。 心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、 いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。 そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、 この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、 つい彼の心の声を聞いてしまう。 偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、 その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに…… 「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」 なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た! 何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、 あれ? 何かがおかしい……

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

処理中です...