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強引なのは王家の男の証らしい。
しおりを挟むラインハルトは王宮に着くなり馬車から飛び降りると、国王の執務室へと廊下を駆け出した。
一刻も早く、父である国王にリリーとの婚約の書類を作成してもらう為である。
途中、顔見知りの秘書官とすれ違い、慌てて立ち止まると念のため国王の居場所を尋ねた。
「国王なら先ほど執務を終えられ、今はサロンで王妃様とお茶を楽しまれているかと・・・」
遅かったか!!
チッと舌打ちをすると、秘書官に礼を告げ、今度はサロンへ向かって走り出した。
いつも愛想も態度も良いラインハルトの余裕のない様子に、驚いた秘書官はしばらくその場で小さくなるラインハルトの背中を見送っていた。
「父上!!」
サロンの扉をノックもせず、駆けてきた勢いそのままに体当たりのように開くと、両親が紅茶の入ったカップを片手に固まった。
「ラインハルト?そんなに慌ててどうした?」
「リリーちゃんを送ってきたのでしょう?遅かったわね。侯爵家でお茶でもご馳走になってきたの?」
息を切らせるラインハルトに、驚き目を瞬く国王と、呑気に問いかける王妃。
「いえ、送っただけです。リリーに婚約を申し込んでいたら遅くなりました。」
ブフォッ
国王が派手に紅茶を噴いた。
「はぁ!?お前、もう婚約を申し込んだのか?普通もっとこう、準備とか順序とかあるだろう!私にあらかじめ予告とか。」
「まぁまぁ、あなた。いいではないですか。で?どうだったの?」
焦る国王をなだめ、王妃が好奇心を抑えられないのか、ワクワクした様子で訊いてきた。
「それはもちろん、了承してくれましたよ。」
晴れ晴れとした顔で答えるラインハルトに、父として不安を感じた国王は恐る恐る問いただした。
「お前、まさか強引な手を使ってはいないだろうな?力ずくとか、断れない状況に持ってい・」「父上?」
ラインハルトが父の言葉を遮った。
「父上や兄上達が僕に何か言える立場だとは思えませんが?」
冷静なラインハルトの台詞と、王妃の『お前が言うか』というジトッとした視線に耐えきれずに、国王が明後日の方角を見やった。
王家の男性は血筋なのか、執着と束縛が強い。
この女性だと思ったら、絶対逃がさず、どんな手を使っても妃にしていた。
国王も過去の自分に、多少強引なやり方だった自覚があるらしく、王妃の前では口をつぐむしかなかった。
「オリバーとノアも、この子だって相手を決めたら行動が早かったけど、ラインハルトもやっぱりこの人の血をしっかり受け継いでるのねぇ。今までは全然女の子に興味が無さそうで、おっとりしてると思ってたのに、リリーちゃんと出会った途端に別人みたいになっちゃって。」
確かにラインハルトの兄達、王太子と第2王子もなかなかの囲い込み方だったと貴族の中では有名な話である。
「僕も自分で驚いていますよ。かつては父上と兄上を特殊な人達だと思っていたら、まさか自分もそうなるとは・・・」
「おいおい、家族を特殊扱いするな。むしろ今までの反動か、お前が一番危ないからな!行動は慎めよ?」
父の忠告もしれーっと聞き流すラインハルトに、王妃が思い出したかのようにアシストした。
「そういえば、風のように入ってきたけれど、婚約のことを私達に伝えるだけでいいの?」
「そうでした!父上、今すぐ婚約の書類を作り、明日の朝一で侯爵家に届けてください!!」
ブフォッ
国王が、新しく淹れ直された紅茶を再び噴いた。
「今から!?今日の執務が今終わったところなのに?明日用意すればいいだろう。1日や2日変わったところで・・・」
「ダメです!!その間にリリーの気持ちが変わったら、どう責任を取ってくれるんですか!」
「いやいや、そんな短期間に気持ちが変わるなんて、お前は一体どういう承諾のさせ方をしたんだ!」
「どういうもこういうもありませんよ。一刻も早く契約を結ばないと!」
「余裕の無さが怖いから!相手は侯爵家だぞ!?」
父子が揉め始めた中、紅茶を一口飲むと、王妃が鶴の一声を発した。
「あなた、今すぐ執務室へと戻るのです。本当にリリーちゃんが心変わりをしたら、この子が何をしでかすかわからないわ。」
ウッと唸ると、国王は諦めたように席を立った。
「結局一口も飲めなかったよ・・・」
と項垂れながら部屋を出て行く。
噴き出すだけで、紅茶を全く飲めなかったらしい。
国王が去ると、王妃はラインハルトに席を勧めた。
侍女が淹れてくれた紅茶を、ラインハルトは一気に飲み干すと、照れたように言った。
「どうやら、緊張していたみたいです。」
そんな息子に、王妃は慈愛に満ちた微笑みを向けた。
「当然よ。一世一代の告白だったんでしょう?リリーちゃんの反応が見たかったわ。」
「ふふっ、最高にトンチンカンで可愛かったですよ。『影武者なんですね!?』とか言い出すし。」
「ええっ!?ラインハルト、あなたどんな告白をしたらそんな捉え方されるのよ?」
「いや、僕も悪かったところはあるとは思いますけど、リリーもなかなかぶっ飛んだ発想を・・・」
忙しくなった父を差し置き、母と子はリリーの反応を楽しみ、サロンには笑い声が響いていた。
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