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私、王子様が好きです。
しおりを挟む「『コンヤクってどういう意味でしょう?』から始まって、『ハルト様って人気がないの?』を通っての、影武者発言ですよ?全然伝わらないので困ってしまいました。」
と言いながら、ラインハルトに困った様子は全く見られない。
むしろリリーの反応を思い返しては、愛おしくて仕方がないといった表情で微笑んでいる。
「まあ!!ふふふっ。私の想像以上の反応だったのね。そんなに楽しそうな状況なら、そばで見ていたかったわぁ。」
「母上でも駄目です。あんな可愛いリリーは僕以外には見せませんよ。」
先ほどまでの緊張が解けたのか、いつもの余裕を取り戻したラインハルトが母の前で惚気ている。
「あら、この子ったら。抜け目のないあなたのことだから大丈夫だとは思うけれど、多少なり強引だったと思っているなら、ちゃんとリリーちゃんを大切にするのよ?しばらくは節度を持ってね?」
ラインハルトの目を見つめ、母として、かつて王族に好意を持たれて苦労した先輩として、王妃はラインハルトに言い聞かせた。
「もちろんですよ。今回は少し焦って事を進めてしまいましたが、婚約出来たらあとはリリーのペースに合わせて、ゆっくり二人の仲を進めていくつもりです。多分・・・出来れば・・・」
語尾が小さくなっていくラインハルトに、リリーの今後を心配して、王妃は小さく溜め息をついた。
◆◆◆
一方、その頃のスペンサー家。
王家の馬車が立ち去り、見えなくなった途端、リリーは家族であるウィリアム、アン、アーサーに囲まれていた。
「リリー、何があった!大丈夫か?全然降りてこないから心配したぞ。」
「ごめんなさい、お父様。」
「おかえりなさい。体調は悪くないのね?」
「ただいま戻りました。はい、お母様。私は元気です。」
「誰か他に馬車に乗っていたのかい?」
「はい、お兄様。ハルト様が送って下さっ・・・」
そこでリリーは、ラインハルトとの約束を思い出した。
耳元で囁かれた言葉を。
あ、お父様に婚約のことを伝えなきゃいけないわ!
思い出したらすぐにでも実行しなければいけない気にさせられた。
催眠術にでもかけられたような気分だ。
「リリー?どうした?疲れちゃった?」
途中で言葉が途切れたリリーを、アーサーが心配そうに覗き込む。
「いえ、大丈夫です。」
笑顔で兄に答えると、リリーは父に向き直り、ウィリアムを呼んだ。
「お父様。」
「なんだい?」
「ハルト様に婚約者になってほしいと言われました。」
「ほう、婚約者かー。婚約者とはまた・・・え?婚約!?」
家族が絶句し、一瞬静寂が広がる。
が、すぐさま立ち直ったのか、また口々に話し出した。
「婚約!?婚約って、僕が知ってるあの婚約!?え?もう??展開早くない??」
さすが親子ですね。
お父様が私と同じようなことを言ってます。
「あらあら、おめでとう、リリー。」
お母様は肝が座っているというか、動じてなくて凄いです。
「父上が今日昇爵したのに、もう婚約!?これでは、あからさま過ぎじゃないか!!」
何があからさまなのでしょう?
お父様が侯爵になったのと婚約って、関係あります?
リリーがキョトンとしていると、母のアンがとりあえず屋敷に入ろうと皆を促した。
確かに外で話すことでもない。
4人はいつものように、居間に移動した。
「さて、リリーはラインハルト様からの婚約の申し出を受けいれたということだね?」
「はい。いつのまにかそんな感じに。」
「ん?」
「私も最初はお断りしていたんです。身分とか、貴族社会に疎いこととかが気になって。でも気付いたら『はい』って言ってたんですよね。」
『不思議ですよねー』みたいな言い方に、ウィリアムはガックリと肩を落とす。
そんな超常現象にあったかのような反応を・・・
アーサーが父の続きを請け負った。
「リリーはちゃんと考えたの?婚約したいって、第3王子と結婚したいって思ったの?」
「ええっと、正直あまり考える時間がなくて・・・」
「あの王子めー!!」「こんな話は無効だ!!」と、憤り始めた兄と父だったが、冷静な母が二人を静めた。
「あなた達、ちょっと黙っててちょうだい。リリー、あなたはラインハルト様をどう思っているの?私はあなたが最近楽しそうなのは、ラインハルト様に好意を持っているからだと思っていたわ。」
私の気持ち・・・
「私、ラインハルト様のことが好きなのか、自信がなかったんです。王子様だし、釣り合わないし。小説の王子様みたいだから気になってるだけかもって。だから突然婚約って言われても意味がわからなくて。ラインハルト様に好かれてるとも思ってなかったですし。」
いやいや、そこは気付こうよ!と父と兄は突っ込みたかったが、今は耐えた。
「でも、私が影武者で、違う方が本当の婚約者だったらと考えたら、悲しくなってしまって。それで気付いたんです。私、ラインハルト様が好きなんだって。」
「ラインハルト様には伝えたの?好きですって。」
「そういえば伝えてなかったです。『はい』としか。」
「では、伝えないとね。きっと喜んで下さるわ。」
「はい!私、ハルト様が好きですってちゃんと伝えます!」
「ええ。良かったわね、リリー。幸せになるのよ。」
「お母様!!」
なんだか二人で感動的ないい感じになっている。
その影で父と兄は静かに叫んでいた。
「影武者ってなんの話!?」「結局、『はい』って言わされただけなんじゃ・・・」
しかしリリーの幸せそうな様子に、『良かったな』と頭を撫でることしか出来なかった。
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