【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

文字の大きさ
43 / 69

私、王子様が好きです。

しおりを挟む

「『コンヤクってどういう意味でしょう?』から始まって、『ハルト様って人気がないの?』を通っての、影武者発言ですよ?全然伝わらないので困ってしまいました。」

と言いながら、ラインハルトに困った様子は全く見られない。
むしろリリーの反応を思い返しては、愛おしくて仕方がないといった表情で微笑んでいる。

「まあ!!ふふふっ。私の想像以上の反応だったのね。そんなに楽しそうな状況なら、そばで見ていたかったわぁ。」

「母上でも駄目です。あんな可愛いリリーは僕以外には見せませんよ。」

先ほどまでの緊張が解けたのか、いつもの余裕を取り戻したラインハルトが母の前で惚気ている。

「あら、この子ったら。抜け目のないあなたのことだから大丈夫だとは思うけれど、多少なり強引だったと思っているなら、ちゃんとリリーちゃんを大切にするのよ?しばらくは節度を持ってね?」

ラインハルトの目を見つめ、母として、かつて王族に好意を持たれて苦労した先輩として、王妃はラインハルトに言い聞かせた。

「もちろんですよ。今回は少し焦って事を進めてしまいましたが、婚約出来たらあとはリリーのペースに合わせて、ゆっくり二人の仲を進めていくつもりです。多分・・・出来れば・・・」

語尾が小さくなっていくラインハルトに、リリーの今後を心配して、王妃は小さく溜め息をついた。


◆◆◆


一方、その頃のスペンサー家。

王家の馬車が立ち去り、見えなくなった途端、リリーは家族であるウィリアム、アン、アーサーに囲まれていた。

「リリー、何があった!大丈夫か?全然降りてこないから心配したぞ。」

「ごめんなさい、お父様。」

「おかえりなさい。体調は悪くないのね?」

「ただいま戻りました。はい、お母様。私は元気です。」

「誰か他に馬車に乗っていたのかい?」

「はい、お兄様。ハルト様が送って下さっ・・・」

そこでリリーは、ラインハルトとの約束を思い出した。
耳元で囁かれた言葉を。

あ、お父様に婚約のことを伝えなきゃいけないわ!

思い出したらすぐにでも実行しなければいけない気にさせられた。
催眠術にでもかけられたような気分だ。

「リリー?どうした?疲れちゃった?」

途中で言葉が途切れたリリーを、アーサーが心配そうに覗き込む。

「いえ、大丈夫です。」

笑顔で兄に答えると、リリーは父に向き直り、ウィリアムを呼んだ。

「お父様。」

「なんだい?」

「ハルト様に婚約者になってほしいと言われました。」

「ほう、婚約者かー。婚約者とはまた・・・え?婚約!?」

家族が絶句し、一瞬静寂が広がる。
が、すぐさま立ち直ったのか、また口々に話し出した。

「婚約!?婚約って、僕が知ってるあの婚約!?え?もう??展開早くない??」

さすが親子ですね。
お父様が私と同じようなことを言ってます。

「あらあら、おめでとう、リリー。」

お母様は肝が座っているというか、動じてなくて凄いです。

「父上が今日昇爵したのに、もう婚約!?これでは、あからさま過ぎじゃないか!!」

何があからさまなのでしょう?
お父様が侯爵になったのと婚約って、関係あります?

リリーがキョトンとしていると、母のアンがとりあえず屋敷に入ろうと皆を促した。
確かに外で話すことでもない。
4人はいつものように、居間に移動した。


「さて、リリーはラインハルト様からの婚約の申し出を受けいれたということだね?」

「はい。いつのまにかそんな感じに。」

「ん?」

「私も最初はお断りしていたんです。身分とか、貴族社会に疎いこととかが気になって。でも気付いたら『はい』って言ってたんですよね。」

『不思議ですよねー』みたいな言い方に、ウィリアムはガックリと肩を落とす。
そんな超常現象にあったかのような反応を・・・

アーサーが父の続きを請け負った。

「リリーはちゃんと考えたの?婚約したいって、第3王子と結婚したいって思ったの?」

「ええっと、正直あまり考える時間がなくて・・・」

「あの王子めー!!」「こんな話は無効だ!!」と、憤り始めた兄と父だったが、冷静な母が二人を静めた。

「あなた達、ちょっと黙っててちょうだい。リリー、あなたはラインハルト様をどう思っているの?私はあなたが最近楽しそうなのは、ラインハルト様に好意を持っているからだと思っていたわ。」

私の気持ち・・・

「私、ラインハルト様のことが好きなのか、自信がなかったんです。王子様だし、釣り合わないし。小説の王子様みたいだから気になってるだけかもって。だから突然婚約って言われても意味がわからなくて。ラインハルト様に好かれてるとも思ってなかったですし。」

いやいや、そこは気付こうよ!と父と兄は突っ込みたかったが、今は耐えた。

「でも、私が影武者で、違う方が本当の婚約者だったらと考えたら、悲しくなってしまって。それで気付いたんです。私、ラインハルト様が好きなんだって。」

「ラインハルト様には伝えたの?好きですって。」

「そういえば伝えてなかったです。『はい』としか。」

「では、伝えないとね。きっと喜んで下さるわ。」

「はい!私、ハルト様が好きですってちゃんと伝えます!」

「ええ。良かったわね、リリー。幸せになるのよ。」

「お母様!!」


なんだか二人で感動的ないい感じになっている。

その影で父と兄は静かに叫んでいた。

「影武者ってなんの話!?」「結局、『はい』って言わされただけなんじゃ・・・」

しかしリリーの幸せそうな様子に、『良かったな』と頭を撫でることしか出来なかった。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

【完結】ありのままのわたしを愛して

彩華(あやはな)
恋愛
私、ノエルは左目に傷があった。 そのため学園では悪意に晒されている。婚約者であるマルス様は庇ってくれないので、図書館に逃げていた。そんな時、外交官である兄が国外視察から帰ってきたことで、王立大図書館に行けることに。そこで、一人の青年に会うー。  私は好きなことをしてはいけないの?傷があってはいけないの?  自分が自分らしくあるために私は動き出すー。ありのままでいいよね?

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。 見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、 幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。 心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、 いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。 そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、 この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、 つい彼の心の声を聞いてしまう。 偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、 その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに…… 「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」 なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た! 何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、 あれ? 何かがおかしい……

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

処理中です...