【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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王家の本気は凄いのです。

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突如リリーの婚約話が持ち上がった翌朝。

リリーの父ウィリアムは、けたたましい馬車の走音で目が覚めた。
昨晩はリリーの婚約や今後のスペンサー家について、息子のアーサーと遅くまで相談していた為、あまり寝た気がしない。

馬車の音はどんどん大きくなり、スペンサー家の屋敷の前で突然止んだ。

『こんな朝っぱらから何事だ?』

ウィリアムがベッドから体を起こし、眠気の残る頭を振り、扉の向こうの様子を伺っていると、執事の慌ただしい足音と、急かすようなノックの音が響いた。

「何があった?」

低い声でウィリアムが尋ねると、切羽詰まった声が返ってきた。

「旦那様、大変です!王家の使いがお見えです!!」

王家の使い?
こんな朝早くに??

窓の外を見るが、どうみても日が昇るか昇らないかという時刻である。

「すぐに用意する。応接室でお待ちいただくように。」

嫌な予感しかしないと思いつつ、ウィリアムは支度を始めた。



応接室に入り、使いの者と挨拶を済ませると、大量の書類らしきものを手渡された。
ズシッと重い。

「こちらに記入をし、本日の登城の際にお持ち下さいとのことです。」

はぁぁ??
今日提出?
今からこれ全部に目を通せと??

ウィリアムは慌てて中身を確認し、嫌な予感は的中するものだと実感した。
全て、リリーの婚約関連のものだったからである。

婚約に関する契約書だけでもかなりの量だが、リリー御披露目の夜会、王子妃教育の日程表、学院の入学手続き書類など、とんでもなく広範囲に渡って用意されていた。

昨日いきなり婚約を迫っておいて、昨日の今日でこれは・・・

「いくらなんでも早急に進め過ぎでは?」

王家に雁字搦めにされるリリーを案じ、父として思わず文句が出てしまう。

使いの者も、ウィリアムに同情するように、

「お察しします。確かに異例のことですね。」

と最初は言っていたのだが、思い出したように咳払いをすると、威厳のある声で告げた。

「国王からのお言葉を申し上げます。『婚約は双方共通の意思だと捉えている。ラインハルトも適齢期であり、早々に進める必要があると考える。進捗が滞るとラインハルトが怖・・・じゃなかった、今後の予定に影響を与える為、速やかな対処を望む』とのことです。」

おいおい、そこまで一言一句、素直に伝える奴がいるか?
威厳も何もあったものではないな。
やはり、第3王子と王妃が国王を操っているのだろう。
確かにあのお二人には底知れぬ怖さがあるが・・・

ジトッとした目で使いの男を見ると、視線を明後日の方角に逸らされた。


コンコン


ノックの音と共に、アーサーが入ってきた。
やはりあの騒音が気になったのだろう。

アーサーは使いの男に頭を下げると、広げられた書類の束に目をやり、驚きの声をあげた。

「父上、これはどういうことですか?話が進みすぎています。リリーの意見も訊かずに勝手なことを!!」

「そうだよな、そう思うよな。私だってそう思うよ。しかしな・・・」

使いの男は聞いていないふりをしている。

「今日の登城までに記入しないといけないんだ。お前も手伝ってくれ。」

「はぁぁ??今日の登城?時間が無いですよ!!」

不平を言いつつも、素直に書類に手を付け始めるアーサー。
結局、王家に逆らうことなど出来やしないのだから、早く片付けるにこしたことはないのである。

使いの者達が立ち去った後、アーサーがぼやいた。

「よくもまあ、これだけ一晩で準備しましたよね。王家の本気を感じますよ。」

「確かにな。迷惑な話ではあるが。」


父子が愚痴をもらしつつ奮闘している頃、リリーはまだ夢の中であった。




その時刻、王宮では。

「父上、昨日お願いしたスペンサー家への書類はどうなりましたか?」

国王が息子に詰め寄られていた。

「夜明け前に使いに持たせたぞ。聞いて驚け?御披露目の夜会も企画済みな上、お前と一緒に通えるように学院の手続きも混ぜといてやったぞ。」

「さすがは父上!!こうしてはいられません。リリーにお披露目用のドレスを用意しなければ!!母上ー、相談があるのですがー」

王妃を探しながら去っていく後ろ姿を見送りながら、国王はホッと息を吐いた。

なんとか乗り切ったようだ。

子供の婚約話に振り回された二人の父親は、寝不足のままこの後対面したのであった。


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