【完結】田舎育ち令嬢、都会で愛される

櫻野くるみ

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変わる日常と、変わらないリリー。

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日が昇ってからそれなりの時間が経過した頃、ようやくリリーは目を覚ました。
伸びをしつつ、辺りの明るさから、完全に寝過ごしたことを悟った。

随分と寝坊してしまいました。
昨日は胸がドキドキして、なかなか寝られなかったから・・・

そうなのだ。
ラインハルトとの馬車の中でのアレコレを思い出し、ベッドの中で遅い時刻までジタバタしていたのである。
しかも、ラインハルトと次に会えた時に、「好きです」と伝える場面を頭の中で想像していたら、羞恥が許容量を超え、気付けばそのまま気を失うように寝てしまっていたのだった。

身支度を済ませ、侍女のアイラと部屋を出ると、何故か屋敷の雰囲気がいつもより慌ただしい気がする。

「ねえ、アイラ。なんだか落ち着かない雰囲気ね。皆バタバタしているし。何かあったのかしら?」

何かあったも何も、全てリリーの婚約のせいで大変な状況に陥っているのだが、本人は全く気付いていない。

「朝早くから、王宮の使いの方が見えたのです。」

「まあ!何か王宮で大変な事が起こったのかしら?ハルト様が無事だといいのだけれど。」

『いえいえ、全てそのラインハルト様とお嬢様が原因ですよ』とも言えず、「きっと旦那様からお話がありますよ」とだけアイラは伝えた。
侍女に過ぎない自分が、余計なことを言うべきではないと判断したからである。


リリーが食堂へ向かうと、いつもならとっくに出かけているはずの父と兄の姿があった。

「お父様、お兄様、おはようございます。寝坊してごめんなさい。お父様もお兄様も、今日はゆっくりなのですね。もしかして、お仕事と学院がお休みなのですか?」

「おはよう、リリー。いや、今から登城するところだ。急ぎの案件があったんだが、今書類が出来上がったところでね。食事がてら、最後の点検をアーサーとしていたんだよ。」

「リリー、おはよう。僕は今日は学院を休んだんだ。父上の手伝いがあったし、ちょっと面倒なことになりそうだからね。さっきオーウェンが訪ねてきたから、学院には彼から伝えてもらうことにしたよ。」

そう、今から一時間ほど前に、隣家に住むアーサーの親友、オーウェンが我が家へやってきた。
明け方の馬車の音は、隣にもバッチリ聞こえ、心配した彼はアーサーを迎えがてら、様子を見に来てくれたのである。
ちなみに、アーサーが学院の寮を引き払ったタイミングで、オーウェンも同じく自宅から通うことにした為、朝は共に登校することも多いのだ。

書類と格闘するアーサーから、リリーの婚約の話を聞いたオーウェンは、話の進み具合の早さに驚いていた。
だが、彼が何より心配したのは親友アーサーのことだった。
リリーの婚約によって、王家と繋がりが出来るスペンサー家の嫡男であるアーサーは、いまだ婚約者も恋人もいない。
こんなチャンスを、独身の令嬢が居る家が見逃すはずもなく、第3王子との婚約が公になれば、アーサーに結婚話がひっきりなしに舞い込むことは想像に難くない。
察しの良い貴族は、ウィリアムの昇爵と、朝方の王家の暴走馬車から、すでにリリーとの婚約に気付いているかもしれない。
そうなれば、学院でのアーサーももはやいつも通りに過ごしては居られず、一騒動起きるのは目に見えている。

ひとしきりアーサーの身を案じたオーウェンは、学院への休みの伝言を引き受けた後、アーサーに提案した。

「いい案がないこともないけどね。うちの妹と婚約でもすれば?気心しれてるし。色々な意味でいいパートナーになると思うけど?」

そう意味深に言い残し、去っていった。

さて、どうしたものか・・・

アーサーはオーウェンの提案について、それからずっと思案していた。


「王宮からの使いはどんな要件だったのですか?私、寝ていて全然気付かなかったです。」

あの騒音で!?

ウィリアムとアーサーは、騒動の中心人物でありながらそのことにも気付かず、のほほんと朝食を摂り始めたリリーに呆れ、驚いたが、これから一番大変なのはリリーなのである。
とりあえず使いの目的をリリーに伝えなければならないが、ウィリアムは登城しなければならない。
きっと国王が待ちわびていることだろう。

「私は登城せねばならない。詳しい事はアーサーが教えてくれる。リリー、落ち着いてアーサーの話をよく聞くんだよ?」

「ちょっ、父上!?逃げる気ですか!こんな大切な話は父上から・・・」

「いや、急がなければいけないしな。では代わりにお前が国王に謁見してくれるか?」

「無理に決まっているでしょう!」

「では、リリーのことは頼んだぞ!」

「父上ー!!」

なんだかよくわからないが、リリーの前で父子の会話が繰り広げられていた。

何を揉めているのでしょう?
でも二人とも顔色が悪いわ。
寝不足かしら?

モグモグとパンを食べながら、リリーだけが日常と変わらず呑気だった。


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